先輩起業家に聞くお金の話。第1回マネーフォワード会社設立ユーザー会「起業家SHIP」レポート

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2019年8月5日(月)にマネーフォワード本社で開催したコミュニティイベント「起業家SHIP」。「マネーフォワード クラウド会社設立」で起業されたユーザーの皆様をお招きし、セミナーや質問会などを行いました。

本稿では、プランノーツ代表取締役の高橋宣成さん、ロジスト株式会社代表取締役の山之内謙太郎さん、GrowthPartners税理士法人代表社員税理士の山岸秀地さんの3名に、起業家の先輩として参加者の皆様からの質問に答えていただいたパネルディスカッションの様子をご紹介します。

起業時の失敗談

【モデレーター】山本 華佳(やまもと はるか) ※写真右
株式会社マネーフォワード 事業推進本部 本部長
神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業後、シティバンク銀行に入社。資産運用関連の営業を5年経験した後、2014年マネーフォワードに入社。ビジネス向けクラウドサービス「マネーフォワード クラウドシリーズ」拡販のため、同社札幌支店の立ち上げ、札幌支店長を経て現職。 企業経営にクラウドを取り入れることで、企業の効率化、生産性向上の実現を目指し、事業拡大に向け注力する日々を送る。#私達は世の中を変えるのに忙しい。趣味は自然の中で遊ぶこと。

山本:今日は会場の皆様からの質問リクエストを交えつつ、先輩起業家として経験してきたことをお話いただきたいと思います。まず最初のテーマですが、「起業時の失敗」「困ったこと」について。高橋さんはどうでしょうか?

高橋:私がやっている事業は自分の体一つでなんとかやれる事業なので、そういう意味であんまり大きな資金調達は必要としていません。でも生活費は当然必要なので、開業当時はそういった資金調達の手段も無く困った、という経験があります。

【パネリスト】高橋 宣成(たかはし のりあき)
株式会社プランノーツ代表取締役
1976年5月生まれ。電気通信大学大学院電子情報学研科修了後、サックスプレイヤーとして活動。30歳を機に就職。モバイルコンテンツ業界でプロデューサー、マーケターなどを経験。2015年6月に独立、起業。現在はVBA、Google Apps Script、Pythonなどのプログラム言語に関する研修や、メディアやコミュニティ運営など、ノンプログラマー向け教育活動を行う。自身が運営するブログ「いつも隣にITのお仕事」は、月間100PVを超える人気を誇る。

山本:ありがとうございます。山之内さんはどうでしたか?

山之内:私は先輩と一緒に起業した犬の洋服のアパレル会社の資金繰りが悪化して、8カ月目でダメにしてしまった経験があります。私は専務取締役でしたが、お金の流れを把握していなかったんです。

当時は貸借対照表損益計算書など、会社の成績に関して全く見えていない状況でした。ただ、自分で営業をやるうちに徐々に売上の数字が見えてくるんですね。ワンちゃんの服と言えど、春夏・秋冬というシーズンがあります。秋冬物でスタートしたんですけど、半年くらいたった時に、「そろそろ春夏物の企画作らないとやばくないですか?」と先輩に言うと、先輩が山ほどダンボールに積んである秋冬物を指さして、「これ捌かないと次の服作れないよ」って言うんです。でも、夏にダウンジャケットを買う人なんかいないじゃないですか。どう捌くんだろうと思うんですけど、やっぱりお金のことになると社長のお金なので私は口を出せずにいて……。

【パネリスト】山之内 謙太郎(やまのうち けんたろう)
ロジスト株式会社代表
中小企業診断士・ITコーディネーター。大企業向けに人事ERPシステムの導入コンサルティング事業を展開。中小企業向けにはマネーフォワードクラウド導入支援やWEBマーケティング支援を実施。2017年より西新橋でWiFi電源カフェ・スペース貸し「ロジカフェ」を運営。

一方で、仕事終わりにしょっちゅう飲みに行くわけです。あとから考えるとあれは会社のお金を飲み代で使ってしまっていたのかなと。その後、資金が徐々に減っていき2カ月くらい給料無しに。一生懸命やったんですけど、さすがに個人の資金ももたなくなって、最後は頭を下げて辞めさせてもらいました。振り返ってみると、会社の息の根を止めるのは資金繰りだなと、ひしひしと勉強できたことが失敗経験としてあります。

山本:生々しいですね。そんな企業を税理士の山岸さんはたくさん見ていらっしゃるのかもしれません。どんな企業が失敗することが多い印象ですか?

山岸:資金繰りが見えていないというのは失敗の原因として大きいと思います。儲かっているのと残っているお金は別物ですし、お金が外部に流れていくタイミングは何回かあるんですがそこを把握していない経営者は結構多いです。そこをアナウンスしてあげるのが私たち税理士の仕事です。申告納税や社会保険の部分を含めて、お金を全部管理してあげることが税理士の役目かなと思います。

【パネリスト】山岸 秀地 (やまぎし しゅうじ)
GrowthPartners税理士法人代表社員税理士
株式会社GrowthPartnersConsulting代表取締役
その他複数法人の社外CFO、社外監査役を兼務
1989年埼玉県生まれ。明治大学経営学部を卒業後、24歳で税理士試験合格。大手税理士法人を3社経て、26歳でGrowthPartners会計事務所を開業。その後29歳でGrowthPartners税理士法人に組織再編し、現在クライアント数約300社・社員数15名のマネジメントを行なっている。また、書籍も3冊執筆している。VCなどから出資を受けている上場・M&Aを目指すベンチャー企業や老舗企業など多岐に渡って税務・経営顧問をしており、税務・会計だけではなく、クライアントの資金調達や経営全般を支援する「成長&安定支援型」の税理士として日々奮闘している。

私個人の話ですが、私は仲の良いメンバー3名で起業したんですが、売上は個々で管理していました。自分で売上を管理して、自分で売上を回収して、入金も個々に確認しましょうと。でも、ある時から一部のメンバーからなかなかお金が入ってこなくなりました。売掛金として売上は発生しているのに入金がない、ということがあったんですね。

最初はあまり気にしていなくても金額も大きくなってきて、その時は私も資金繰りに困りかけました。売上があがっても、入金がない。入金がないと税金も払えないですし、社会保険も負担が出来ないので。やっぱり入金まで管理することが経営者として大切なことなのかなと思いました。そこから経理のオフィスの体制とかも見直して、ある程度システム化して、クラウド会計も使って管理するようになって、ようやく会社も安定してきました。

山本:一人起業の資金調達ではどのような点に気を付ければいいですか?

山岸:創業時の融資の審査では、過去の経歴や自己資金が重視されます。よく言われるんですけど、コツコツと貯めたお金だと事業への本気度が伝わってくるので、融資をしたいという金融機関は多いですね。あとは、「こういう取引先との契約を作れる見込みがある」とか、それを見積書とか契約書で見せられると信用度が増すので理想的ですね。でも、まずは自分が事業をどうしていきたいかを熱く語っていただくのが大事だと思います。

山本:本当ですね。お金を貸すのも“人”、貸してほしいのも“人”というところで、当社の辻も創業時は資金調達をものすごい断られたと。そんなビジネスモデルでは儲からないと言われ続けて……。でも辻はパッションを伝えることで仲間を作っていけて、徐々に共感を得ていったと話していましたね。

起業してからの苦労話

山本:皆様は会社を設立してから、どのタイミングで会計や税務のことを気にするようになりましたか?

高橋:今でも気にしきれていないというのが正直なところです。今の税理士さんがかなり先行でプッシュしてくれるおかげでやれていますね。実は、今の税理士さんは3人目です。最初は報酬が安い先生で大丈夫かなと思っていたんですが、大丈夫じゃなかったんですよね(笑)。なので、ちゃんとお金をお支払いしても責任持っていただける方がいいなぁと思いますね。

山本:マネーフォワードでも事業者と税理士先生のマッチングをお手伝いしていますが、良い税理士先生に会いたいというリクエストはすごく多いですね。

会場から「一人社長の苦労話が聞きたい」というリクエストが来ています。山之内さんはフリーランスで活動されていたことがありますよね。

山之内:これは性格によると思いますが、一人でやっている時って、スペシャリストとしてのプロ意識のほうが強いので、個人という寂しさはなかったです。逆に、同じように個人で独立をしている人や他業種の同世代の友人たちとよく一緒にいたので、あまり寂しくはなかったですね。

山岸:私はお金が無くなった時は本当に悲しくなりましたね。何のためにやっているんだろうと虚しくなりました。今は仲間がいて本当に楽しいなと思いますね。社外でも頼りになる人がいれば精神的な余裕になるので、社内外でパートナーを作るということは大事だと思いますね。

起業前後でやってよかったこと

山本:起業した時、起業した後、「これはやっておいて正解だった」「だから自分は成功できた」といったことがあればお聞かせいただきたいです。

山之内:2度目の起業は自分自身の会社ということもあって、きちっと準備期間を取りました。振り返ってみて一番良かったのは、創業前に見込み客を取るということですね。創業時に、半年先の仕事の目処が立っているというのはものすごい安心感になります。ビジネスアイデアがあってスタートするにしても、最初にターゲットになるお客さんを掴んでから起業するのがスマートなスタートダッシュだと思っています。

高橋:僕の場合はブログですね。ブログで成果を出すのは本当に時間がかかります。1年半~2年くらいかかったというのが正直なところなんですけど、何が良いかというと自分の理念・価値観に共感してくださる方がお仕事をくださったり、パートナーとしてお声がけくださったりするようになるんです。マーケティングとして効果が出てくるので、一人でやっていく上ではかなり強い武器になりました。

山本:では、山岸さん、税理士という立場から成功パターンのようなものがあれば教えてください。

山岸:基本的にはお金のことを理解しようとするのは大切です。売上や経費を把握しているか、資金繰りが悪化する前に先回りして資金調達できるかは重要です。周囲の経営者や税理士に、融資や補助金・助成金をどうしたら受けれるのかを聞いて学ぶだけでも、いろいろな選択肢として自分の中に持てると思います。

起業を考えている人へのアドバイス

山本:最後に、これから起業しようという人へ伝えておきたいことを一言ずついただきたいと思います。

山之内:私は中小企業診断士として創業の相談にも乗っているんですが、よく「セーフティゾーンをしっかり作りましょう」と伝えています。少しドライかもしれないですけど、起業して失敗しても社会に戻れる自分の立ち位置を掴んでから起業しましょうということです。これは本当につまらない話ですけど、いい大学へ行っている、いい会社に勤めている、親が金持ち、なんでもいいんですよ。自分が失敗しても立ち戻れるところがあることは、起業したての時に思い切り飛び込めるかどうかに関わるんですよね。

同時にお金も大事になるので、開業資金が300万円あったとしたら150万円の初期投資でビジネスモデルを考えてください。起業したら思ったよりもお金もかかりますし、思い通りに行かないことが山ほどありますからね。

山本:高橋さんはどうでしょうか?

高橋:ビジネスモデルにもよると思いますが、当初自分は単発のお仕事が多かったので、それでいろいろな仕事を回さなきゃいけないというのがあったんですね。

なるべく今は書籍の印税とか、月額制のコミュニティなどで安定的に売上が入るようにしています。最初のうちは本当に死に物狂いで仕事を取りにいく必要があると思いますが、ちょっと余裕があるときはなるべく自分のマンパワーをかけずに、お金を生み出すような仕組み作りに力を注いだほうがいいかなと思います。

山本:山岸さんはどうでしょうか?

山岸:重複しますが、資金繰りは会社にとって本当に大切です。会社の段階ごとに必要な資金調達を知っておきましょう。上場や事業売却を考えていないなら、コツコツとある程度安定した売上を立てながら、次の事業に投資できる資金を作る。ある程度の売上が立つようになると社会的信用が得られるので、長期的に回収するお金、例えば設備投資のお金を、金融機関にアプローチして借入できるようになったりします。

その段階になると専門家が着いていないと難しいと思うので、数字のことであれば税理士や公認会計士などを頼り、ビジネスパートナーを増やしてコミュニティーを作っていくことが大事だと思います。

山本:起業前後では「お金の悩みを相談できる人がそばにいる」こと、ビジネスを大きくするために「お金の流れを把握する」ことの大切さを感じる時間となりました。

こうして起業した方々の成功も失敗も含めた経験談を聞く機会は珍しいのではないでしょうか?

登壇いただいた皆様、本日お越しいただいた皆様で情報交換いただき、起業家SHIPが皆様のビジネスを、人生を、一歩前へ進めるお役に立てましたら幸いです。本日はありがとうございました。

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