経費削減のために経営者も知っておきたい、「必要経費」の基礎知識

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必要経費

企業の経営者にとって、経費削減は常に頭を悩ます問題です。コストを減らしたい!という目標を掲げ、経費にムダが発生していないか常にチェックしている経営者も多いことでしょう。ここでは、IT系中小企業の経営者にぜひ知ってほしい必要経費の基本を確認し、効果的な経費削減につなげていくためのヒントを解説します。

いまさら聞けない!経営者が知っておくべき「必要経費」の基本

必要経費とは

必要経費とは、利益を得るために払った費用を指します。決算書の「損益計算書(P/L)」に表示される役員報酬や給与などの「人件費」、地代家賃や消耗品費旅費交通費、接待交際費などの「一般管理費」が挙げられます。(「必要経費」に関する詳しい解説はこちら

ここでは、経営者にとって少々分かりづらい必要経費3つ「役員報酬」「接待交際費」「寄付金」について解説します。

接待交際費

接待交際費は、得意先や仕入先など、企業活動に関連のある人や企業へ接待、供応、慰安、贈答するために支出する費用のことをいいます。例えば経営者であれば、商談のために取引先と会食をしたり、打ち合わせをしたりという機会も多くなります。

接待交際費は、原則として税務上の費用(損金)には入れられませんが、事業規模や支払いの用途によっては一部損金に入れることができます。
例えば、資本金1億円以下の中小企業の場合、飲食費を損金算入する方法が2つあり、どちらかを選択することができます。1つ目は年間800万円を上限に飲食費を損金算入とする方法、2つ目は飲食費の50%を損金算入とする方法です。自社の接待交際費について、どこまでが損金として認められている範囲か税理士に確認しておくことが大切です。(「交際費等の損金不算入制度」についてはこちら

役員報酬

役員報酬は、その名のとおり企業のトップや経営陣に支払う報酬です。これには、臨時的なものや退職給与は含まれません。役員報酬は、決算期ごとに見直しを行う会社も多いですが、一部税務上の経費(損金)には入れられないこともあります。例えば、役員報酬は一定の金額を支払う場合や、事前に税務署に届け出をした場合には費用として認められています。ですので、毎月変動する役員報酬や、事前に税務署に届け出をしていない役員報酬、過度に高額な設定がされている役員報酬は、損金として否認されることがあり、金額の決定には慎重になる経営者がほとんどです。(役員報酬を損金扱いにするための注意点について、詳細はこちらの記事もご参考ください。

寄付金

寄付金とは、金銭などを無償で提供することをいいます。企業の中には、慈善団体に寄付をしたり、地域でお世話になっている神社へ寄付をしたりすることもあります。法人が寄付金として支出した場合、税務上の費用(損金)として計上できるのは、寄付した団体によって異なります。地方公共団体や国への寄付金なら全額が損金となりますが、特定公益増進法人であれば一部しか損金として認められません。(「寄付金の控除」に関する詳しい解説はこちら

寄付金を支払った先が、企業活動をする上で取引先や仕入れ先である場合は、「寄付金」や「見舞金」という名目で領収書をもらったとしても、取引の実態を見て交際費や福利厚生費広告宣伝費などに判定されます。どの費用項目にどのような内容で支出したか、によって税務上の費用として処理ができるか変わってくるので注意が必要です。

経営者が注目すべきは売上に対する費用の割合

決算書を目にすると、記載されている必要経費の項目にばかり目がいってしまいがちです。「消耗品費が例年に比べて多すぎる」や「交際費はもっとスリムにできるのではないか」など、必要経費の一部だけを切り取って考えてしまうのです。

しかし、企業の全体を統率するリーダーが一番に見るべきポイントは、売上全体に占める経費の割合。「一般管理費」や「人件費」のトータルが売上に対して何パーセントであるかを把握し、自社にとって適切な割合かどうかをいち早く分析することが大切です。例えば、主にソフトフェア開発を行っているIT企業であれば、売上高人件費率の割合は40~50%とするところが多く、中には7割以上を占めるという企業もあります*。

*出典:一般社団法人情報サービス産業協会「2015年版情報サービス産業基本統計調査(平成28年1月)」より、P.17「2.3.3 売上高人件費率」

経費削減、もっとも効果的なのは?

「賃借料」「リース料」などの固定費の見直し

中小企業の場合、自社ビルを持っていないということもあるでしょう。あるいは、自社ビルとは別で事務所を構えているということも想定できます。そのようなとき、ビルやテナントを賃借する「地代家賃」が毎月の必要経費として計上されます。さらに、毎月の家賃だけでなく、更新料などまとまった支出も定期的にかかることもあります。また、営業用の車、高額な設備備品などを自社で購入せずに、リースしていることも多いのではないでしょうか。

これらはすべて毎月かかってしまう固定的な費用。数十万、あるいは数百万単位で毎月の支出が確定してしまっているため、費用削減を見直すときは、こまごまとした支出よりも、こういった固定的な支出を見直す方が、年間を通して費用を削減でき、効果が得られやすくなっています。

「接待交際費」の削減

経営者が「経費削減」といわれたときに、一番に指摘される項目は「接待交際費」。確かに必要な接待交際もありますが、昔と違って今では交際費の範囲が限定されており、「損金(税務上の費用)」として処理できないケースもあるため、縮小傾向にある費用項目です。バブル時代と同じ感覚で接待交際費の支出をしている企業は、もちろん見直すべきなのですが、企業の利益につながらないものは常に見直すことで、経費削減につながります。

短絡的な経費の削減は、売上減となるリスクも

経費削減に力を入れるあまり、企業にとって必要な投資を縮小してしまっては、売上を伸ばすどころか、減少となってしまうリスクもあります。IT企業であれば、設備費や人件費は企業の利益に直結する必要経費と考えられます。エンジニアに自社の商品開発を行ってもらい、それを実現できる設備を整えることは、企業の生産力の基盤なのです。

やみくもに人件費をカットし、設備投資にお金をかけない、ということは企業の生産力を減少させ、売上の減少につながってしまいます。経費を削減する前に、どの経費が自社の成長につながるかを見極めることが、まずはとても大切なのです。

まとめ

経営者は、単に必要経費の費用項目を知るだけでなく、その数字が自社の売上にどのように貢献しているか常にチェックする必要があります。IT企業であれば、新しい設備やプログラム開発のための人材確保への投資は必要であるため、固定費の見直しや交際費の削減、業務の効率化が費用削減のポイントとなるでしょう。

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