
電子帳簿保存法に対応すると、経費精算が楽になるという想像はついているかもしれません。
ただ、実際に電子帳簿保存法に対応し、スキャナ保存を始める際どのような書類が対象で、どのような要件が必要になってくるのでしょうか?
具体的に考えてみましょう。
目次
スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存制度が対象としている書類は、国税庁が法律で保存しなければいけないと規定している書類のうち決算関係書類等(貸借対照表・損益計算書・棚卸表など)と国税関係帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)を除いた書類です。
すなわち、取引に関して相手方から受け取った取引書類及び自己が作成した取引書類の写しであり、具体例を挙げると見積書や注文書など重要度が低いものから、契約書・領収書など重要度が高いものまで含みます。ただし、書類の重要度によって認められているスキャンの入力方式が異なってきます。
国税関係書類 | 国税関係帳簿 | |||||
取引関係書類 | 決算関係書類 | |||||
スキャナ保存対象 | ○ | ○ | ○ | × | × | |
書類例 | ![]() ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() | |
書類の性格 | 資金の流れや物の流れに直結・連動する書類のうち特に重要な書類 | 資金の流れや物の流れに直結・連動する書類 | 資金の流れや物の流れに直結・連動しない書類 | 企業の一定期間の経営成績や財務状態等を明らかにするための書類 | 日々の取引を記録し集計したもの | |
書類の重要度 | 高 | 中 | 低 | 非常に高い | 非常に高い | |
スキャナ保存の入力方式 | 特に速やかに入力 | ○ | ○ | ○ | × | × |
速やかに入力/業務サイクル後速やかに入力 | ○ | ○ | ○ | × | × | |
適時に入力 | × | × | ○ | × | × |
重要度・・・高
契約書、領収書、及び恒久的施設との内部取引に関する書類のうちこれらに相当するもの並びにこれらの写し
重要度・・・中
預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、有価証券受渡し証書、社債申込書、契約申込書(定型的約款なし)、請求書、納品書、送り状、輸出証明書、及び恒久的施設との内部取引に関する書類のうちこれらに相当するもの並びにこれらの写し
重要度・・・低
検収書、入庫報告書、貨物受領証、見積書、注文書、契約申込書(定型的約款あり)、これらに準ずる書類及びこれらの写し
参考:国税庁|電子帳簿保存法Q&A|平成27年9月30日以後の承認申請対応分
スキャナ保存の入力方式
実際に運用する上でスキャナ保存の入力方式としては、タイムスタンプの付与する期限を判断基準としたとき大きく4つに分けることができます。
②速やかに入力方式(7日以内)
③業務サイクル後速やかに入力方式(1ヶ月と7日以内)
④適時に入力方式(期限なし)
これらの方式を一つずつ説明していきます。
特に速やかに入力方式(3日以内)
これは本人が作成又は受領した書類をスキャニングする場合であり、受領した書類に自ら署名しタイムスタンプを付与する方式です。ここで、タイムスタンプは書類を受領後3日以内に付与することとされています。また、この場合受領した書類の大きさがA4サイズ以下であれば、書類の大きさに関する情報は不要となりました。
これは書類の受領者がスマートフォンなどで入力することへの配慮です。理由はスマートフォン等のデジタル機器については画像の形式がJPEGになることが多いため、JPEG形式の画像データは撮影した原稿の大きさ自体には情報を保持できないというためです。
速やかに入力方式(7日以内)
これは書類を作成又は受領した本人以外がスキャニングを行う場合であり、書類を受領又は作成後7日(1週間)以内に原本とデータの確認を行いタイムスタンプを付与する方式です。
この場合は、A4サイズ以下であっても書類の大きさに関する情報が必要となります。
業務サイクル後速やかに入力方式(1ヶ月と7日以内)
これも書類を作成又は受領した本人以外がスキャニングを行う場合ではありますが、書類を受領又は作成し業務処理サイクル経過後、7日以内に原本とデータの確認を行いタイムスタンプを付与する方式です。
業務処理サイクルの最長は月次処理の1ヶ月であることに鑑み、最長で1ヶ月と7日以内に入力することとされています。
そして、この場合の業務処理サイクルとは企業内でのチェックや承認等を経てスキャニング可能となるまでの期間をさしています。
またこの場合においても、A4サイズ以下であっても書類の大きさに関する情報が必要となります。
適時に入力方式(期限なし)
これは定型的な約款が予め定められた保険契約申込書やローン申込書又は、資金や物の流れに直結しない書類に対して作成又は受領から期限なく入力することができます。また、この方式が認められる書類に関しては税務署から承認された日より前に作成又は受領した書類に関しても電子データ化することが認められています。
ただし、この方式によって入力する場合にはスキャンデータの作成及び保存に関する事務手続責任者を含め、事務の手続規定を備え付ける必要があります。
適正事務処理要件
適正事務処理要件とはスキャン保存を行う際に不適切な処理が行われないような内部統制の仕組みです。
具体的な要件としては、
イ 相互に関連する当該各事務(当該国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合にあっては、その作成又は受領に関する事務を除き、当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う事務を含むものに限る。)について、それぞれ別の者が行う体制
ロ 当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続
ハ 当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制
(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第3条第5項第4号)
という相互牽制、定期的な検査、不備が生じた際の改善体制の3つが要件となっています。
相互牽制
相互牽制とは、書類を作成又は受領してからスキャニングし、原本と電子データを確認してからタイムスタンプを付与するまでの過程を二人以上で行う体制です。ただ企業においては経費精算にあたりいくつかのステップを踏むことが通常であり、書類を作成又は受領から電子データとして保存するまで一人で完結することはあまりないと考えられます。
そこで企業側が考慮すべきこととしては、現在の承認フローを電子化した場合にどのタイミングでスキャニングするか・誰が原本と入力された電子データを確認するのかといった体制の構築となります。
定期的な検査
定期的な検査の項目としては、作業の手順やスキャンデータに不備がないかどうかをチェックします。
相互牽制の仕組み等が適正に構築されていたとしても、実際に正しく運用されていなければデータの改ざんが行われる可能性があります。
そこで、最低限1年に1回以上は定期的な検査を行う必要があり、事業の規模が大きい場合は事業規模に合わせた頻度で行うことも検討すべきです。
なお、電子データが正しいかどうかは紙の原本と突き合わせて確認を行うためスキャニングを行った後でも定期的な検査が終了するまでは原本である紙の書類を保存しておかなければなりません。
紙の書類を破棄できるタイミングは定期検査が終了し、問題がないと確認された後となります。
改善体制
具体的には、定期検査において不備があった場合に不備の内容が経営者含む幹部に報告されるとともに、これからどう改善するかという体制を予め定めておくということです。
この体制については、事業規模に応じて異なる部分はありますが適正な体制を整備するためには、最低限経営者を含む幹部に説明がなされなければ、体制の見直しをすることができないと考えられるため、幹部層を含めた検討体制が必要になります。
まとめ
・スキャナ保存対象の書類は、国税庁が法律で保存しなければいけないと規定している書類のうち決算関係書類等(貸借対照表・損益計算書・棚卸表など)と国税関係帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)を除いた書類
・書類によってスキャナ入力の方式が異なる
速やかに入力方式(7日以内)
業務サイクル後速やかに入力方式(1ヶ月と7日以内)
適時に入力方式(期限なし)
・また、適正事務処理要件はデータ改ざん防止の内部統制の仕組みである
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