- 作成日 : 2025年10月22日
電気通信工事施工管理技士と電気工事施工管理技士の違いとは?難易度・受験資格・仕事内容を比較解説するには?
電気工事施工管理技士は主に電力・動力・照明などの電気設備工事を扱い、電気通信工事施工管理技士は通信回線・ネットワーク設備・情報伝送設備などを扱います。どちらも建設業における国家資格ですが、担当する工事の範囲が明確に分かれています。
この記事では、中小企業の経営者や店舗オーナーの方にも分かりやすく、両者の仕事内容、難易度や受験資格の違い、そして将来性について、多角的に比較しながら詳しく解説していきます。
目次
最大の違いは何か?(仕事内容と対象設備)
最大の違いは、工事の対象となる設備とその目的です。電気工事は「エネルギー供給」、電気通信工事は「情報伝達」を目的としており、これを「強電」と「弱電」という言葉で区別すると理解しやすいでしょう。
建設現場では、この二つの資格を持つ技術者がそれぞれの専門性を活かし、協力しながらプロジェクトを進めていきます。例えば、新しいオフィスビルを建てる際、照明やコンセントへの電力供給は電気工事施工管理技士が、LANケーブルや電話回線の配線は電気通信工事施工管理技士が管理します。
電気工事施工管理技士(強電系)の仕事内容
電気工事施工管理技士の仕事内容は、建物や施設における受変電設備・配電設備・照明・動力設備などの設計・施工管理・保守を統括し、安全性や法規への適合を確保することです。具体的には、人々の生活や経済活動に不可欠な電力インフラを支える役割を担います。
- 主な工事内容:
- 変電設備、送配電線路、引込線工事
- 照明設備、コンセント設備、動力設備工事
- 太陽光発電設備の設置工事
- オール電化設備の工事
電気通信工事施工管理技士(弱電系)の仕事内容
電気通信工事施工管理技士は、電話やインターネット、テレビ放送といった情報を伝達するための設備を構築・管理する工事の専門家です。 現代社会のコミュニケーション基盤を支える、極めて重要な役割を果たします。
- 主な工事内容:
- LAN配線、Wi-Fiアクセスポイント設置工事
- 光ファイバーケーブルの敷設工事
- 携帯電話基地局の設置工事
- 防犯カメラ、インターホン、放送設備の設置工事
項目 | 電気工事施工管理技士 | 電気通信工事施工管理技士 |
---|---|---|
通称 | 電工(でんこう)セコカン | 通信(つうしん)セコカン |
電気の種類 | 強電(エネルギーを供給) | 弱電(情報を伝達) |
主な対象 | 電力設備、照明、コンセント | 情報通信設備、電話、LAN |
具体例 | ビルの受変電設備、工場の動力線 | データセンター、防犯カメラ、5G基地局 |
どちらの難易度が高いか?(合格率で比較)
一概にどちらが難しいとは断定できませんが、近年の合格率を見ると、特に1級の第二次検定(実地試験)において、電気工事施工管理技士の方がやや低い傾向にあり、難易度が高いと感じる受験者が多い可能性があります。
合格率は毎年変動しますが、資格の難易度を測る一つの指標となります。以下は、近年の1級試験における合格率の目安です。
【1級 第一次検定(学科)の合格率目安】
出典:建設業振興基金 試験研修本部, 報道発表資料 (各年度)|国土交通省
- 電気工事施工管理技士:35%~50%程度
- 電気通信工事施工管理技士:40%~55%程度
【1級 第二次検定(実地)の合格率目安】
出典:同上
- 電気工事施工管理技士:35%~45%程度
- 電気通信工事施工管理技士:40%~50%程度
第一次検定の合格率は両者で大きな差はありませんが、施工経験記述などが問われる第二次検定では、電気工事の方が合格率が若干低い年が見られます。ただし、これはあくまで統計上の傾向であり、個人の実務経験や専門知識によって体感的な難易度は大きく異なります。
受験資格に違いはあるか?
受験資格の基本的な考え方(学歴に応じた実務経験年数など)は両者で同じですが、求められる「実務経験の内容」が全く異なります。
どちらの資格も、建設業法に基づく施工管理技術検定であり、受験資格の体系は共通しています。例えば、1級を受験する場合、指定学科の大学卒業者であれば3年以上、高校卒業者であれば10年以上の実務経験(指導監督的実務経験1年以上を含む)など、学歴に応じた経験年数が定められています。
※2024年度(令和6年度)から制度が改正され、1級の第一次検定は「19歳以上」で実務経験不要になりました。第二次検定は一次合格後+所定の実務経験が必要となっています。なお令和10年度までは経過措置として、旧要件でも第二次検定の受検が可能です。また、1級と2級で受験資格が異なりますので、詳細は試験実施機関の手引きを確認してください。
重要なのはその中身です。
- 電気工事施工管理技士:受験するには、変電設備や幹線設備、照明設備工事といった「電気工事」の実務経験が必要です。
- 電気通信工事施工管理技士:受験するには、LAN工事や電気通信線路工事といった「電気通信工事」の実務経験が必要です。
したがって、電気工事の経験しかない人が電気通信工事施工管理技士の試験を受けることはできず、その逆も同様です。自身のキャリアパスに沿った実務経験を積むことが、受験資格を得るための第一歩となります。
試験内容や免除制度に違いはあるか?
試験で問われる専門知識はそれぞれの分野に特化しているため全く異なり、一方の資格を持っていることで他方の試験科目が免除されるといった制度はありません。
両資格は完全に独立しており、相互の互換性はないと考えるべきです。
- 試験内容の違い:
- 電気工事:電気工学、電気設備、発電・送電、電力応用、関連法規など、強電に関する幅広い知識が問われます。
- 電気通信工事:通信工学、データ通信、ネットワーク技術、無線通信、情報セキュリティ、関連法規など、弱電に関する専門知識が中心です。
- 免除制度について:
関連キーワードにある「免除」とは、例えば技術士(電気電子部門)の資格保持者が第一次検定を免除されるなど、特定の国家資格保有者に対する制度を指すことが一般的です。電気工事と電気通信工事の資格間での直接的な科目免除は存在しません。
どちらの資格が将来性や需要があるか?
結論として、両資格ともに社会インフラを支える上で不可欠であり、将来性・需要は非常に高いといえます。ただし、成長が期待される分野は異なります。
- 電気工事施工管理技士の将来性:
脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の普及、電気自動車(EV)用充電設備の増設、データセンターの電力供給、そして高度経済成長期に建設された社会インフラの更新工事など、エネルギー分野での需要は今後ますます高まることが予想されます。 - 電気通信工事施工管理技士の将来性:
5G/6Gといった次世代通信網の整備、IoTの進展に伴う各種センサーの設置、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるネットワーク構築、スマートシティ化など、情報通信分野の技術革新とともに需要は拡大し続けます。
どちらの資格も、それぞれの分野で技術革新が進んでおり、活躍の場は広がり続けています。自社の事業領域や、個人のキャリアプランに合わせてどちらを目指すかを検討することが重要です。
事業の目的に合わせた資格の理解が成功の鍵
この記事では、「電気通信工事施工管理技士」と「電気工事施工管理技士」の具体的な違いを多角的に解説しました。両者は名前が似ていますが、「強電(エネルギー供給)」と「弱電(情報伝達)」という明確な専門領域の違いがあり、仕事内容も必要なスキルも全く異なります。
店舗やオフィスの改修を検討されている経営者の方は、必要な工事が「電力」に関わるものか、「情報通信」に関わるものかを見極め、適切な資格を持つ技術者が在籍する業者に依頼することが不可欠です。両資格の違いを正しく理解し、事業の成功につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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