• 作成日 : 2025年12月2日

建設業法の支払期日はいつ?発注者・元請けが知るべきルールと遅延の罰則を解説

建設工事の請負代金の支払期日は、当事者間の合意だけでなく、建設業法によって重要なルールが定められています。特に、元請負人と下請負人の間の取引では、下請事業者を保護するための厳格な規定が存在します。

この記事では、建設業の専門家として、発注者と元請負人、それぞれの立場で知っておくべき支払期日のルールと、支払が遅延した場合の罰則やリスクについて分かりやすく解説します。

建設業法の支払期日、2つの重要なルール

建設業法では、工事請負契約における力関係の違いを考慮し、「発注者から元請負人への支払」と、「元請負人から下請負人への支払」という2つの場面で、それぞれ支払期日に関する異なるルールを定めています。

特に、元請負人から下請負人への支払については、立場の弱い下請事業者を守るために、より厳格な規制が設けられているのが特徴です。

ルール①:発注者から元請負人への支払期日は?

工事の完成を確認した後、元請負人から支払請求を受けた日から起算して、契約で定めた期間内、最長でも50日以内に支払う必要があります。(建設業法 第24条の6)

発注者と元請負人の間の支払期日は、原則として当事者間の合意(契約)によって定められます。しかし、その合意がどのような内容であれ、元請負人から適法な支払請求書を受け取ってから50日を超えて支払日を設定することは、法律で認められていません。

支払条件のポイント

  • 契約で「1ヶ月(約30日)ルール」を決める:例えば、契約書で「請求書受領後、翌月末払い」と定めている場合は、その合意が優先されます。
  • 契約で定めがない場合:請求を受けた日から20日以内に支払う必要があります。
  • 「50日ルール」は最大期限:どのような契約を結んでいたとしても、請求日から50日以内には支払わなければならない、という最終的な期限です。

ルール②:元請負人から下請負人への支払期日は?

元請負人が「特定建設業者」であるか否かなどによって異なりますが、下請負人を保護するため、発注者からの入金状況にかかわらず、原則として工事完成後50日以内に支払う義務があります。(建設業法 第24条の6)

このルールは、元請負人が発注者から代金を受け取れていないことを理由に、下請負人への支払を遅らせることを防ぐためのものです。

元請負人が「特定建設業者」の場合

特定建設業者とは、発注者から直接請け負う1件の工事代金が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上で、そのうち5,000万円以上を下請に出す際に必要な、資本金の大きな建設業者を指します。

  • 支払期日:下請負人が工事を完成させ、引き渡しの申し出があった日から50日以内のできる限り短い期間内に支払う義務があります。

元請負人が「一般建設業者」の場合

上記以外の建設業者です。

  • 支払期日: 発注者から請負代金の支払いを受けた日から1ヶ月(約30日)以内のできる限り短い期間内に支払う義務があります。

たとえ一般建設業者であっても、下請負人が中小企業である場合など、特定の条件下では「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」(令和8年1月1日より「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)に名称変更されます)が適用されることがあります。下請法(取適法)では、親事業者は下請事業者に対し、給付を受領した日から60日以内に代金を支払う義務があります(通称「60日ルール」)。建設業法と下請法の両方が適用される場合、より短い建設業法の支払期日である50日以内が優先されます。

支払遅延にはどのような罰則があるか?

支払遅延には、年14.6%の遅延利息が発生するほか、国土交通大臣などから営業停止や建設業許可の取消しといった、非常に重い行政処分を受ける可能性があります。

遅延利息の発生

建設業法では、支払遅延に対する利息として、年率14.6%という高い利率を定めています。これは、遅延そのものに対するペナルティとしての意味合いが強いものです。これは、下請法が定める遅延損害金と同率です。

行政処分(罰則)

支払遅延が悪質であると判断された場合、国土交通大臣や都道府県知事は、その建設業者に対して勧告や指示を行います。さらに、それに従わない場合は、最長1年間の営業停止や、最も重い処分として建設業許可の取消しといった行政処分が下される可能性があります。これは企業の存続に関わる、極めて厳しい罰則といえます。

発注者として支払期日に注意すべき点は?

自社が設定した支払条件が、元請負人を通じて下請負人への不当なしわ寄せにつながっていないか、配慮することが重要です。

発注者には、直接的な下請負人への支払義務はありません。しかし、例えば発注者が元請負人への支払を不当に遅らせた結果、その影響で下請負人への支払も遅れてしまう、というケースは少なくありません。

健全なサプライチェーンを維持し、工事全体の品質を確保するためにも、発注者自身が建設業法の支払ルールを理解し、迅速な支払いを心がけることが、巡り巡って自社の利益にもつながります。

適正な支払期日の遵守が、健全な建設業界を支える

本記事では、建設業法に定められた支払期日のルールについて、発注者・元請負人それぞれの立場で解説しました。

特に元請負人から下請負人への支払については、立場の弱い事業者を守るための厳格な規定が設けられており、違反した際のリスクも非常に大きくなっています。

発注者の皆様も、自社の支払いがプロジェクト全体に与える影響を理解し、建設業法に定められたルールを尊重することが、建設業界全体の健全な発展、ひいては自社の工事の品質確保にもつながるのです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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