- 更新日 : 2026年1月7日
建設業法の改正で何が変わる?2025年12月施行の新ルール、工期や契約への影響を解説
2024年6月に成立した改正建設業法により、建設業界のルールが大きく変わります。この改正は、長時間労働の是正や人手不足といった業界の構造的な課題に対応するためのもので、2025年12月12日に全面的に施行されました。
この記事では、今回の建設業法改正の主な内容と、それがいつから適用され、工事を発注する事業者様のビジネスにどう影響するのかを、建設業の専門家の視点から分かりやすく解説します。
目次
今回の建設業法改正は、なぜ行われたか?
建設業界が直面する「2024年問題」に代表される長時間労働の是正と、深刻化する担い手不足に対応し、産業全体の持続可能性を確保するためです。
建設業界では、長時間労働や休日の少なさが長年の課題でした。2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されたことで(通称「2024年問題」)、労働環境の改善が待ったなしの状況となっています。
しかし、短い工期や度重なる仕様変更といった取引上の慣行が、その改善を妨げる一因となっていました。今回の法改正は、こうした構造的な問題にメスを入れ、働きがいのある産業へと転換していくことを目的としています。
法改正の主な内容①:働き方改革の推進(担い手の確保)
不当に短い工期での契約締結が明確に禁止されるほか、労務費を適切に反映した見積もりが求められるようになります。
「著しく短い工期」の禁止
今回の改正で最も重要なポイントの一つが、中央建設業審議会が定める工期の基準に照らして「著しく短い工期」での請負契約を締結することが、発注者・受注者双方に禁止される点です。
これまでも努力義務はありましたが、基準が曖昧でした。今後は国が具体的な基準(工期に関するガイドライン)を示し、違反した場合には国土交通大臣などから勧告や命令が出される可能性があります。これにより、無理なスケジュールによる長時間労働の抑制が期待されます。
見積書における労務費の明記
受注者(建設会社)が見積書を提出する際に、労務費(人件費)の内訳を明示するよう努めることが規定されました。これは、労務費を他の経費と明確に区別し、賃上げの原資が確保されるように、発注者と受注者の間で適切な価格交渉を促すための措置です。
法改正の主な内容②:生産性向上のための規制合理化
現場に配置する技術者の兼任要件が緩和されるほか、契約書などの書面交付におけるIT化(デジタル化)が推進されます。
監理技術者の配置要件の緩和
大規模な工事現場に配置が義務付けられている「監理技術者」について、これまでは一人の技術者が担当できる工事は原則一つに限られていました。今回の改正では、AIなどの新技術を活用して遠隔での管理が可能な場合など、一定の条件下で一人の監理技術者が複数の現場を兼任できるようになります。これにより、深刻な技術者不足に対応しやすくなります。
書類のデジタル化推進
これまで、建設工事の請負契約書や注文書・請書などは、原則として書面での交付が義務付けられていました。今回の改正では、相手方の承諾があれば、これらの書類を電子メールなどのデジタルな方法で交付することが全面的に認められます。これにより、契約業務の効率化やペーパーレス化が進むことが期待されます。
法改正の主な内容③:事業環境の整備と持続可能性の確保
資材価格が高騰した際に、請負代金を見直す「スライド条項」のルールが明確化されるほか、事業承継を円滑にするための規定が整備されます。
スライド条項のルールの明確化
工事の途中で、予期せず資材価格や労務費が大幅に変動した場合に、契約金額を見直すことができる「スライド条項」という仕組みがあります。今回の改正では、契約時にこのスライド条項の具体的な内容を書面に明記することが義務付けられました。これにより、インフレなどの経済情勢の変化に対して、発注者と受注者が公正な立場で協議しやすくなります。
事業承継の円滑化
建設業界では経営者の高齢化も課題となっています。後継者不足に悩む企業が、M&A(合併・買収)によって事業を第三者に引き継ぐケースを想定し、建設業許可の承継に関する手続きが簡素化されるなど、事業承継を円滑にするための規定が整備されます。
建設業界の未来に向けた重要な一歩
改正建設業法は2024年6月12日に公布されており、2025年12月12日に「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」の改正規定について、完全施工されました。
今回の法改正は、建設業界の働き方を改善し、産業の持続可能性を高めるための多くの重要な変更点を含んでいます。特に「著しく短い工期の禁止」や「労務費の明示」は、これまで発注者側が有利になりがちだった力関係を、より対等なパートナーシップへと転換していく上で大きな意味を持ちます。
工事を発注する事業者様も、これらの新ルールを正しく理解し、建設会社と公正な関係を築くことが、結果として質の高い工事の実現につながるといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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