- 作成日 : 2025年10月22日
FST工法とは?外壁タイルの剥落を防ぐ仕組みや単価、安心できる施工手順を解説するには?
FST工法は、特殊なドリルで微細な穴を開け、専用の樹脂を注入することで外壁タイルの浮きや剥落を内部から接着・補強する、信頼性の高い外壁改修技術です。 この工法は、タイルを剥がさずに施工できるため、騒音や粉塵の発生を最小限に抑えつつ、建物の安全性と資産価値を長期的に維持することを可能にします。
この記事では、中小企業の経営者や飲食店を運営されている方にも分かりやすく、FST工法の具体的なメリットや費用の目安、他の工法との違いについて、順を追って詳しく解説していきます。
目次
FST工法とは、どのような技術か?
外壁タイルの浮きや剥落を、タイルを張り替えることなく内部から補強・接着する画期的な注入工法です。 開発元である株式会社FSテクニカルが提唱するこの技術は、FST工法は各多層空隙位置停止対応アンカーピンニング部分(全面)エポキシ樹脂注入工法の一種で、各多層空隙位置停止対応を特徴とします。
従来のタイル補修では、浮いているタイルを一度剥がして張り替える「張替え工法」が主流でした。しかしこの方法では、騒音や粉塵が発生し、居住者や近隣への負担が大きいという課題がありました。FST工法は、こうした問題を解決するために開発された技術です。
具体的には、湿式2軸低騒音ドリルでタイルの目地に穴を開け、エポキシ樹脂を充填します。最後にピンで固定を行うことで、タイルの浮きを解消し、将来的な剥落を未然に防ぎます。
穴を開ける際も、湿式の低騒音、低振動の躯体への影響が少ない特殊なドリルを使用するため、建物へのダメージを最小限に抑えることができるのが大きな特徴といえるでしょう。
FST工法の主なメリットとデメリットは何か?
最大のメリットは安全性と経済性、そして環境への配慮ですが、一方で、高度な技術であるため施工できる業者がFST工業会の会員などに限られる点がデメリットといえます。 建物の維持管理において、どのような工法を選択するかは非常に重要です。ここでは、FST工法が持つ利点と、事前に理解しておくべき点を解説します。
高い安全性と耐久性
FST工法は、目視ではほとんど分からないほど小さな穴から樹脂を注入するため、補修後も建物の美観を損ないません。注入された樹脂は、タイルの裏側で強固な接着層を形成し、地震の揺れや風雨など、外部からのさまざまな影響に対して高い耐久性を発揮します。
これにより、予期せぬタイルの剥落事故のリスクを低減させ、建物の利用者はもちろん、周辺を通行する人々の安全を守ることにつながります。
経済性(コストパフォーマンス)
タイルを一枚一枚剥がして張り替える工法と比較して、FST工法は既存のタイルを活かすため、廃材の発生が少ない傾向にあります。これにより、廃材の処理費用や新しいタイルの材料費を削減でき、結果的に工事全体のコストを抑えることが可能です。
また、工期も比較的短く済むため、仮設足場の設置期間短縮など、関連する費用の削減も期待できます。長期的な視点で見ても、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持するための非常にコストパフォーマンスに優れた投資といえるでしょう。
居住者や周辺環境への配慮
FST工法で用いる機材は、電動式の小型ドリルや注入ガンが中心です。大規模な打撃音や振動、粉塵の発生が少ないため、マンションの居住者や店舗の利用者、近隣への影響を最小限に抑えながら工事を進めることができます。
営業を続けながら改修工事を行いたい飲食店経営者の方などにとっても、大きなメリットといえます。
デメリット:施工業者が限定される
FST工法は、専門的な知識と高度な技術を要する特殊な工法です。そのため、施工品質を担保するために、技術研修を受け、正式に認定された業者でなければ施工することができません。
これらの業者は主に「FST工業会」に所属しており、施工を検討する際は、まず工業会のウェブサイトなどで対応可能な業者を探す必要があります。これは品質の均一性を保つための仕組みですが、依頼者側から見ると、業者選定の選択肢が限られるという側面もあります。
FST工法の施工単価や費用はどのくらいか?
FST工法の単価は、注入する樹脂の種類や施工範囲、建物の状態によって変動しますが、一般的には1平方メートルあたり数千円からが目安となります。 ただし、これはあくまで注入作業そのものに対する目安であり、最終的な工事費用はさまざまな要因によって決まります。FST工法の金額は実際には「1箇所あたりの単価」で算定します。そこに足場や併設補修工事の金額などが加算され、総額が決まります。
費用に影響を与える主な要因には、以下のようなものが挙げられます。
- 下地の状態: タイルの浮きが広範囲にわたるか、部分的なのか。
- タイルの種類やサイズ: 特殊なタイルや大判タイルの場合は、作業の難易度が変わることがあります。
- 足場の有無: 高所での作業には仮設足場の設置が必須となり、その費用が別途発生します。
- その他補修の有無: タイルのひび割れ(クラック)補修や、シーリングの打ち替えなど、他の工事も同時に行うか。
正確な費用を知るためには、必ず複数の専門業者に現地調査を依頼し、見積もりを取ることが不可欠です。その際には、単価の内訳や工事の範囲を明確に確認し、不明な点は納得がいくまで質問するようにしましょう。複数の見積もりを比較検討することで、適正な価格で信頼できる業者を選ぶことができます。
FST工法の具体的な施工手順はどうなっているか?
打診調査によってタイルの浮き範囲を特定することから始まり、穿孔(せんこう)、清掃、樹脂注入、そして仕上げのマーキングピン挿入という流れで進められます。 FST工業会が定める施工要領に基づき、各工程が丁寧に行われます。
- STEP1:事前調査・マーキング(打診調査)
まず、テストハンマーなどを用いて外壁タイルを一枚ずつ丁寧に叩き、音の違いで浮いている箇所を特定します。浮きが確認されたタイルには、目印となるテープなどでマーキングを行い、施工範囲を正確に把握します。 - STEP2:穿孔(穴あけ)
マーキングした箇所のタイル目地に、躯体を傷つけにくい特殊な低振動ドリルを使用し、微細な穴を開けます。この穿孔技術が、建物へのダメージを最小限に抑えるFST工法の核となる部分です。/li> - STEP3:清掃
開けた穴の内部に残ったコンクリートの粉塵などを、専用の器具で丁寧に清掃・除去します。この工程を確実に行うことで、樹脂と躯体、タイルの三者が強力に一体化します。 - STEP4:エポキシ樹脂の注入とピンの挿入
専用の注入ガンを使い、穴の奥からゆっくりとエポキシ樹脂を注入していきます。タイルの裏側の空隙に樹脂を隅々まで充填させることで、確実な接着を実現します。その後ピンを挿入し、確実に固定しながら、穴を目立たせなくします。<
他の工法(ニュークイック工法など)との違いは何か?
FST工法は「極めて細い穿孔径」と「躯体への低負荷」という点で他の多くのタイル後注入工法と一線を画しますが、ニュークイック工法などもそれぞれに優れた特徴があります。 外壁タイルの補修には、FST工法以外にも様々な「アンカーピニング注入工法」が存在します。
例えば、関連キーワードにもある「ニュークイック工法」も、アンカーピンと樹脂注入を組み合わせた代表的な工法の一つです。両者の大きな違いは、主に穿孔径と使用するドリルの種類にあります。
項目 | FST工法 | 一般的なアンカーピニング工法(例) |
---|---|---|
穿孔径 | φ3〜5mm(極細) | 5.0mm〜6.5mm程度 |
ドリル | 躯体を傷つけにくい特殊ドリル | 躯体を傷つけにくい特殊ドリル |
特徴 | 建物への負荷が最小限、補修跡が目立たない | 幅広い業者が対応可能、実績が豊富 |
FST工法は、特に建物の構造体への影響を最小限にしたい場合や、補修跡の美観を重視する場合に非常に有効な選択肢といえます。一方で、他の工法もそれぞれに改良が重ねられており、実績も豊富です。建物の状態や予算、求める性能に応じて、最適な工法を専門家と相談しながら選ぶことが重要です。
FST工法の詳細な資料(カタログなど)はどこで入手できるか?
FST工法の公式なカタログや技術資料は、開発元である株式会社FSテクニカルや、技術の普及と品質管理を担うFST工業会に所属する施工代理店のウェブサイトから入手可能です。 これらの公式サイトでは、工法の詳細な解説や施工事例、技術的なデータなどが公開されています。
より詳しい情報を求める場合や、施工を検討している場合は、これらの公式サイトを通じて直接問い合わせるのが最も確実な方法です。
- 株式会社FSテクニカル: FST工法の開発元であり、技術に関する最も正確な情報を提供しています。
- FST工業会: 全国の正規施工代理店が加盟する団体です。お住まいの地域に対応可能な信頼できる業者を探すことができます。
これらの組織に連絡することで、技術的な質問への回答や、正式なカタログの送付、見積もりの依頼などが可能です。
建物の資産価値を守るために、FST工法の理解を深めましょう
この記事では、外壁タイルの剥落防止に有効なFST工法について、その仕組みからメリット、費用、施工手順までを解説しました。FST工法は、安全性・経済性・環境配慮の三拍子が揃った、非常に優れた外壁タイル補修技術です。建物の長寿命化と安全性の確保は、経営者にとって重要な責務といえるでしょう。外壁タイルの浮きや劣化が気になり始めたら、専門家への相談とともに、FST工法という選択肢をぜひ検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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