- 作成日 : 2025年6月24日
造園施工管理技士1級は難しい?合格率や勉強法、仕事内容を解説
1級造園施工管理技士は「難しい」と言われます。造園業界において価値の高い国家資格ですが、取得難易度が高いことも広く知られています。具体的に何が難しく、どう対策すれば良いのでしょうか?
この記事では、造園施工管理技士1級の難しさの背景にある試験の難易度や合格率、勉強法や仕事内容、造園技能士など関連資格まで解説します。
目次
造園施工管理技士1級は難しい?
1級造園施工管理技士は、造園工事の施工管理に関する高度な知識と技術を持つ国家資格であり、その取得は簡単ではありません。「難しい」という声が多く聞かれる背景には、試験範囲の広さ、実務経験を要する第二次検定の存在、そして合格率の低さがあります。
合格率は近年40%前後で推移しています。合格基準点は通常、正答率60%以上とされていますから、特に働きながら学習時間を確保してこの基準をクリアするのは、決して簡単ではないでしょう。
試験の難しさの要因としては、まず出題範囲の広さが挙げられます。造園学、土木工学、園芸学、都市工学、林学といった専門知識から、施工管理法、関連法規まで、多岐にわたる分野の理解が求められます。さらに、第二次検定では、これらの知識を実際の現場経験と結びつけて記述する能力、つまり実践的な応用力が問われます。
近年の合格率推移(第一次検定・第二次検定)
1級造園施工管理技士試験の近年の合格率の推移を見てみましょう。試験は第一次検定(旧 学科試験)と第二次検定(旧 実地試験)の二段階で行われます。
第一次検定の合格率は概ね35%~45%程度、第二次検定は40%前後で推移していることがわかります。2024年度の第一次検定は45.4%とやや高めでしたが、受験資格の緩和や試験制度の見直し(令和3年度以降)の影響も考えられます。
しかし、依然として第二次検定は40%前後であり、実務能力と応用力が厳しく問われる難しい試験であることに変わりはありません。知識だけでなく、応用力と実務経験が合格には欠かせません。
1級造園施工管理技術検定 合格率推移
年度 | 検定区分 | 受検者数 | 合格者数 | 合格率 (%) |
---|---|---|---|---|
2019年度 | 第一次検定 | 3,404人 | 1,260人 | 37.0% |
第二次検定 | 1,880人 | 744人 | 39.6% | |
2020年度 | 第一次検定 | 2,974人 | 1,178人 | 39.6% |
第二次検定 | 1,695人 | 695人 | 41.0% | |
2021年度 | 第一次検定 | 3,008人 | 1,080人 | 35.9% |
第二次検定 | 1,477人 | 591人 | 40.0% | |
2022年度 | 第一次検定 | 3,091人 | 1,360人 | 44.0% |
第二次検定 | 1,471人 | 677人 | 46.0% | |
2023年度 | 第一次検定 | 2,754人 | 970人 | 35.2% |
第二次検定 | 1,453人 | 629人 | 43.3% | |
2024年度 | 第一次検定 | 3,451人 | 1,566人 | 45.4% |
第二次検定 | 1,696人 | 678人 | 40.0% |
造園施工管理技士1級とは?
造園施工管理技士1級は難しいと言われますが、造園工事の施工管理に関する高度な知識と技術を証明する国家資格です。国土交通省が管轄し、建設業法に基づいて実施されています。
主な役割は、公園、緑地、庭園、街路樹、屋上緑化など、あらゆる造園工事の現場において、施工計画の作成から工程・品質・安全・原価管理まで、プロジェクト全体を統括することです。
特に重要なのが、監理技術者としての役割です。建設業法では、特定建設業者が元請けとして行う一定規模以上の大規模工事(下請契約の総額が基準額以上)では、現場に監理技術者の配置が義務付けられています。
1級造園施工管理技士は試験合格後、講習を受講することで監理技術者になることができます。社会的に重要な大規模造園プロジェクトを責任者として指揮・監督する権限と責務を担います。
造園施工管理技士1級と2級の違い
造園施工管理技士2級との主な違いは、担当できる工事の規模と、配置技術者としての役割です。2級造園施工管理技士は、一般建設業の営業所で専任技術者、または建設工事現場で主任技術者になることができますが、担当できる工事規模には制限があります(特定建設業の監理技術者にはなれません)。
一方、1級は、特定建設業の営業所での専任技術者や、工事規模に関わらず主任技術者・監理技術者となることが可能です。
つまり、1級取得者は、より大規模で複雑なプロジェクトを管理する権限と責任を持つことができます。試験の難易度も、1級の方が広範な知識と高度な応用力が求められるため、一般的に高くなります。
造園施工管理技士1級の仕事内容
1級造園施工管理技士の仕事は、造園工事のプロジェクトマネージャーとして、造園工事の計画から完成までを管理・監督します。
工程管理
工程管理は、工事全体のスケジュールを作成し、計画通りに進捗するよう管理する業務です。具体的には、着工から竣工までの各作業ステップ(測量、掘削、植栽、施設設置、仕上げなど)の所要時間を算出し、効率的な作業順序を計画します。
天候や予期せぬ事態による遅延も考慮し、協力会社や職人と連携して計画を調整し、納期遵守を目指します。
品質管理
品質管理は、設計図書や仕様書に基づき、造園構造物や植栽が要求される品質基準を満たしているかを確認・保証する業務です。使用する材料(樹木、石材、土壌、資材など)の品質検査、施工方法の妥当性の確認、各工程での仕上がりチェック(寸法、強度、美観など)を行います。
安全管理
安全管理は、工事現場の労働災害や公衆災害を防止するため、作業開始前の安全ミーティング(KY活動)、危険予知活動の実施、安全通路の確保、仮設物(足場、囲いなど)の安全点検、保護具(ヘルメット、安全帯など)の着用徹底、重機作業時の誘導・監視などを行います。
現場のリスクアセスメントを実施し、潜在的な危険箇所を特定・改善します。関連法規(労働安全衛生法など)を遵守し、作業員全員の安全意識を高め、無事故での工事完了を目指します。
原価管理
原価管理は、定められた予算内で工事を完成させるために、費用を管理・コントロールする業務です。工事開始前に詳細な実行予算を作成し、材料費、労務費、外注費、機械経費、現場管理費などを把握します。
工事の進捗に合わせて、実際にかかった費用と予算を比較・分析し、コスト超過の要因を早期に発見し対策します。
発注者や関係機関との調整
発注者や関係機関との調整は、工事を円滑に進めるために不可欠な業務です。発注者(施主)とは、設計内容の確認、仕様の変更、進捗状況の報告、追加工事の協議などを定期的に行い、良好な関係を築きます。
造園施工管理技士1級を取得するメリット
1級造園施工管理技士の資格取得は、難易度が高い分、多くのメリットをもたらします。個人のキャリアだけでなく、所属する企業にとっても価値のある資格です。
キャリアアップと収入向上
1級造園施工管理技士資格は、個人のキャリアと収入を大きく向上させます。現場代理人や工事課長といった管理職への昇進につながりやすくなるほか、多くの企業で資格手当が支給され、昇給・賞与査定でも有利になります。専門人材として転職市場での評価も高まります。
また、特定建設業者が元請けとなる大規模工事(下請契約の総額が5,000万円以上、建築一式工事の場合は8,000万円以上)で配置が義務付けられる「監理技術者」になることができるため、担当できる工事の規模が格段に広がります。
これにより、公園整備、街路樹整備、大型商業施設のランドスケープ、国や自治体が発注する大規模な公共造園工事など、これまで担当できなかった重要なプロジェクトに携わる機会が得られ、技術者としての経験値とスキルを大幅に向上させることができます。
社会的信用の向上や独立への道も
国家資格である1級造園施工管理技士は、高度な知識と管理能力を公的に証明するものです。これにより、発注者、取引先、金融機関など外部からの信頼性が高まり、円滑な業務遂行や交渉につながります。社内でも同僚や部下からの信頼を得て、リーダーシップを発揮しやすくなるでしょう。
さらに、独立・開業を目指す際には、建設業許可(特に特定建設業)に必要な「専任技術者」の要件を満たすため、非常に有利です。資格は融資審査や公共工事入札でも評価され、顧客からの信頼を得やすくなるため、事業を軌道に乗せる上で大きなアドバンテージとなります。
経営事項審査での加点
公共工事の受注に不可欠な経営事項審査において、1級資格者の在籍は企業の「技術力」評価の重要な加点項目となります。この点数が高いほど、入札競争で有利になるため、所属企業の受注機会の拡大に貢献します。
造園施工管理技士1級の資格取得や試験概要
1級造園施工管理技士の資格は、第一次検定(学科)と第二次検定(実地)の両方に合格することで取得できます。
受験資格
受験資格は、最終学歴と実務経験年数の組み合わせで詳細に定められています。
受検資格は2024年度から制度改正が行われました。経過措置として、2023年度までの旧受験資格は2028年度まで適用されます。
旧受験資格の主なパターンは以下の通りです。
- 大学の指定学科※ 卒業者:3年以上の実務経験
- 大学の指定学科※ 以外卒業者:4年6ヶ月以上の実務経験
- 短期大学・高等専門学校(5年制)の指定学科※ 卒業者:5年以上の実務経験
- 短期大学・高等専門学校(5年制)の指定学科※ 以外卒業者:7年6ヶ月以上の実務経験
- 高等学校・中等教育学校の指定学科※ 卒業者:10年以上の実務経験
- 高等学校・中等教育学校の指定学科※ 以外卒業者:11年6ヶ月以上の実務経験
- 2級造園施工管理技士 合格者:合格後5年以上の実務経験(学歴により短縮あり)
- その他:専任の主任技術者経験1年以上の場合など、学歴に応じた短縮措置あり
※指定学科:土木工学、都市工学、建築学、園芸学、林学、農業土木など(詳細は要確認)
注意点:上記は代表例です。必ず試験実施機関(一般財団法人 全国建設研修センター)の最新情報で、ご自身の経歴がどの区分に該当するか正確に確認してください。
2024年度からの新受検資格は以下の通りです。
第一次検定
- 年度末時点での年齢が19歳以上であること
第二次検定
- 1級一次検定合格後の実務経験5年以上
- 1級一次検定合格後の特定実務経験(※)1年以上を含む実務経験3年以上
- 1級一次検定合格後の監理技術者補佐としての実務経験1年以上
- 2級二次検定合格後の実務経験5年以上(1級第一次検定合格者に限る)
- 2級二次検定合格後の特定実務経験(※)1年以上を含む実務経験3年以上(1級第一次検定合格者に限る)
新受験資格では、1次検定が学歴や実務経験に関係なく19歳以上であれば受験できるようになった点が大きな違いです。
※ 特定実務経験とは、請負金額が4,500万円以上の建設工事において、監理技術者・主任技術者の指導の下、または自ら監理技術者・主任技術者として請負工事の施工管理を行った経験を言います。
第一次検定(学科試験)
第一次検定は、マークシート方式の学科試験です。内容は以下の通りです。
- 出題科目:
- 知識問題:造園工学、材料、設計・計画、植栽、施工管理法、法規
- 応用能力問題:施工管理法
- 合格基準(目安):
- 総得点:60%以上
- 応用能力問題:60%以上
※合格基準は年度により変動する可能性があります。
- 特徴:幅広い知識が問われ、バランスの良い学習が必要です。特に応用能力問題では知識の活用力が試されます。
第二次検定(実地試験)
第二次検定は、記述式試験で、第一次検定合格者のみが受験できます。内容は以下の通りです。
- 主な出題内容:
- 施工管理に関する知識や応用能力を問う問題
- 評価ポイント:実践的な判断力、課題解決能力、文章構成力が総合的に評価されます。
- 特徴:合否への影響が大きい重要科目であり、十分な準備と対策が求められます。
推奨される勉強時間
推奨勉強時間は個人の経験や知識によりますが、一般的に300~600時間程度が目安です。第一次検定対策は半年前、できれば1年前から計画的に開始するのが理想です。
第二次検定対策は第一次検定後から本格化することが多いですが、働きながらの場合は、通勤時間や休日を活用し、継続的に学習時間を確保する工夫が必要です。
試験の時期と申込方法
試験は通常年1回実施され、申し込みから合格発表までの流れは以下の通りです。
- 受験申込期間:5月上旬~中旬頃(第一次・第二次同時期が多い)
- 第一次検定 試験日:9月上旬頃
- 第一次検定 合格発表:10月頃
- 第二次検定 試験日:12月上旬頃
- 第二次検定 合格発表:翌年3月上旬頃
- 申込方法:試験実施機関(一般財団法人 全国建設研修センター)のウェブサイト等で確認し、オンラインまたは郵送で申し込みます。受験手数料の支払い、必要書類(申込書、実務経験証明書、卒業証明書等)の提出が必要です。
- 注意点:日程は年度により変更される可能性があるため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。書類準備は早めに行いましょう。
造園分野に関連した資格
1級造園施工管理技士以外にも、造園・建設分野には様々な関連資格があります。
2級造園施工管理技士
1級と同様に施工管理を行う国家資格ですが、管理できる工事規模に制限があり、主に中小規模工事の主任技術者として活躍します。1級より試験範囲が狭く難易度はやや低いため、実務経験が浅い場合や1級へのステップアップとして取得されます。
試験は第一次検定(学科)と第二次検定(実地)があります。
- 難易度:中程度(1級より易しい)
- 取得方法:年1回の国家試験(第一次・第二次)に合格する。受験資格(学歴に応じた実務経験)が必要。
造園技能士(1級・2級・3級)
造園技能士は、植栽や石組み、剪定といった実際の造園作業スキルを証明する国家資格(技能検定)です。施工管理技士が「管理」能力を問われるのに対し、技能士は「実作業」のスキルレベルを測ります。等級が上がるほど高度な技能が求められます。現場での実践的なスキルを証明したい場合に有効な資格です。
- 難易度:1級は高、2級は中、3級は初級
- 取得方法:年1回(または2回)実施される技能検定(学科試験と実技試験)に合格する。等級に応じた実務経験が必要。
樹木医
樹木医は、樹木の生理・生態に基づき、樹木の診断・治療・保護育成を行う専門家(民間資格ですが社会的認知度は高い)。巨木や街路樹などの保全に貢献します。
資格取得には、専門的な講習の受講と試験合格、そして実務経験が必要です。
- 難易度:高
- 取得方法:樹木医研修の受講資格(実務経験等)を満たし、研修を受講後、資格審査(筆記・面接)に合格する。
造園分野の資格の選び方
どの資格を目指すかは、自身のキャリアプランや現在の業務内容によって異なります。
- 大規模工事の管理・マネジメントを目指すなら、1級造園施工管理技士が必須です。
- 中小規模の管理や1級へのステップアップなら、2級造園施工管理技士が良いでしょう。
- 現場での実践的な作業スキルを高めたい、証明したい場合は、造園技能士が適しています。
- 計画・設計・コンサルティング分野での高度な専門性を追求するなら、技術士を目指す道があります。
- 樹木の健康管理に特化したい場合は、樹木医が専門資格となります。
複数の資格を組み合わせることで、より専門性を高め、活躍の場を広げることも可能です。例えば、1級造園施工管理技士と造園技能士1級を併せ持つことで、管理能力と実作業能力の両方を証明できます。自身の目標に合わせて、戦略的に資格取得計画を立てることが重要です。
1級造園施工管理技士の難関を突破しキャリアを拓くために
1級造園施工管理技士は、試験範囲の広さと経験記述が求められる第二次検定により、「難しい」とされる難関資格です。しかし、その難易度を乗り越えて取得すれば、キャリアアップ、収入向上、監理技術者としての活躍、企業の評価向上など、計り知れないメリットがあります。
合格のためには、幅広い知識習得と、過去問の分析が重要です。インプットとアウトプット(演習)をバランス良く行っていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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