「給料が上がりません」。~前田先生に聴く・経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対するお悩み相談Vol.2~

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「頑張っているはずなのに、給料が上がらない」。

ごくごくリアルな経理担当者のお悩みにフォーカスを当てる、前田康二郎さん連載第2回。これまた赤裸々な、給料のお話です。

会社の状況、世の中の動き、景気……、いろいろな要素が絡んでくる話ですが、もちろんできることはあります。前田先生らしい、王道とも言える考え方で、このテーマに迫ります。

【連載一覧】
「わたし、このままでいいんでしょうか?」前田先生に聞く経理の現在地、そして将来のこと ~経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対する不安や悩みにお答えします~

この記事は、『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』(クロスメディア・パブリッシング社刊)をはじめ人気著書を多数持つ前田康二郎さんが、株式上場や中国での業務など数多くの現場を経験してきたからこそ書ける内容です。ぜひ最後までお楽しみください!




『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』クロスメディア・パブリッシング
前田康二郎 著

今回の相談内容:経理の仕事を頑張っているのに給料が全く上がりません。

将来を考えて今の職場や仕事に見切りをつけて転職やキャリアチェンジをしたほうがいいでしょうか?

 

なぜ経理が昇給しにくい職種なのかを分析してみる

まず、直感的に将来のことを決めてしまう前に、客観的に「経理」という仕事の特徴をきちんと理解し、そのうえでどうやって給料を上げてもらうかを考えたり、経理という仕事を続けるかどうか、そして今の会社で仕事を続けるか、転職をするかを決めたりしたほうがいいと思います。

経理の仕事というのは、一度業務を覚えてしまえば、それ以降は、「毎年新しい業務のやり方を大量に覚えなければいけない」という仕事ではありません。ここ数年はインボイス制度電子帳簿保存法など大きなトピックがありましたが、それが大きなトピックといえるくらいですから、一般的には他の職種に比べたら「無風」に近い職種環境ではないかと思います。

これが営業でしたらどうでしょうか。去年いくら実績を積んでも、1年過ぎると全てリセットされ、また0からのスタートになります。

財務諸表で例えるなら、経理は貸借対照表の固定資産科目のように、一度習得したスキル(簿記の知識、インボイス制度や電子帳簿保存法などへの対処方法など)は、翌年リセットされていきなり0になることはありません。多くの場合は一度学んだものはほぼ一生価値を持ちますので、自分の「資産」になるといえるのではないでしょうか。

一方、営業はいわば損益計算書のような仕事のスタイルです。前年度にいくら高い売上や利益を叩き出しても、翌年は全てリセットされます。だから営業にはモチベーション維持のためにインセンティブのような制度があり、そして営業成績が悪い場合でも会社には居られますが、心理的には居心地が悪いことでしょう。

「1年1年が勝負」の職種というのは、給料が跳ね上がる可能性もある半面、過酷な環境でもあるということです。

また、エンジニアやデザインなどのクリエイティブ系の職種の人たちはどうでしょうか。彼らの場合も、人によっては高額な報酬を頂いている方もいますが、クリエイティブ系の仕事は常に「最新・最先端の状態」をその人が保っていなければ、その存在価値は薄くなっていきます。

そのため、常に最新の情報を取り入れ、最新のやり方や手法を身につける努力を続けなければいけません。少し仕事を休めばその分、他の人たちがすぐさま追い越していってしまう世界ですので、毎日自分自身をアップデートし続けていける人だけが最後に生き残り、高額な給与を頂けるのだと思います。

一方、経理という仕事は、一度覚えた知識やスキルが「そんな知識やスキル、今の時代では古臭いですよ」と劣化するものが他の職種の人たちと比べても非常に少ない職種ともいえます。

こうして客観的に経理と営業、クリエイティブ系の仕事の特徴をそれぞれ比較してみると、経理の仕事は、一度覚えてさえしまえば一生「潰しがきく」とてもいい仕事だということがわかると思います。

ですが、だからこそ、給与が上がりづらいのだと私は思います。

社長から見て「新規性」や「具体的な数字の成果」を認識できるかが昇給のポイント

会社の給与を決めるのは誰でしょうか。社長です。

社長から見て、営業、経理、クリエイティブ系、それぞれの社員をいくら昇給させるか、あるいは各部門にどれだけ給与の予算を配分しようかと考えたときに、必ず「彼らは去年と比べて今年はどれくらい頑張ったかな」という視点が入ります。

そうすると、営業は「去年に比べて1000万円受注を増やした」など、客観的な数値の結果が出る職種ですから、それをもとに昇給するか否かが決まります。そしてクリエイティブ系の場合、「去年に比べて今年は社内システムを、AIを搭載した最新のシステムにアップデートしました」など、「新規性」を感じられる業務成果が多いので、そこに昇給の根拠づけがされます。

ところが経理の場合、社長から見ると、経理は営業のように売上を持っている部署ではありませんし、クリエイティブ系のように新規性も見つけにくい職種です。だから多くの社長の経理部門や経理社員に対する評価は「去年同様、今年も経理のみんなは頑張ってくれた」という評価です。

評価していないわけではなく、評価はしているのですが、それが「評価=昇給」につながらない、つながりづらい、というのが経理という仕事の特殊性だということです。

たとえば会社が上場を目指していて上場申請の仕事を今期から新たに行ったとか、マネージャーや部長などに昇進して、月次決算を締める作業などが新たに増えたなど、会社やその人にとって去年に比べて「新規性」のある仕事をした場合には、それに付随して経理でも昇給はあると思います。

なければその旨をアピールしたほうが良いでしょう。ただ、そうしたものが特にない年の場合、なかなか昇給につなげる根拠作りがしにくいのが経理の仕事の特徴ではないかと思います。

ここまでの話をまとめれば、経理という仕事は、仕事そのものは一度覚えてしまえば働きやすい反面、良くも悪くも周囲からわかりやすい実績が挙げにくい環境ともいえます。

「劇的な昇給もなければ劇的な降給もない」仕事、いくら仕事を頑張ったと思っても「去年と同じかちょっと色を付けた給与額でいいかな」と思われがちなので、受け身でいると、なかなか金額が上がるタイミングがありません。

だから積極的に「これは昇給させないといけないな」「昇給させないと他社に転職されてしまうな」と思ってもらう「成果シート」を自分で作成して、面談の際に上司に提示する、ということを私はお勧めします。

会社が指定した評価面談のシートがあれば、そこにその内容を書き込めばいいですが、もしなければ、私は自分で作ります。1枚の紙に、簡潔にこの1年間どのような新しいことに取り組み、そして結果を出したのかを箇条書きにして上司に提出し「昇給の根拠材料にしてください」とお願いすると思います。その際に、成果に関しては、数字を入れて表現するといいと思います。

たとえば、

  • 月次決算を10営業日から8営業日に短縮させました。
  • 滞留債権の発生が昨年は8件だったが今年は現場にも積極的に声掛けして督促をして2件に減らしました。来期は0件を目指します。

といったように、売上でなくても、「去年より改善した」「去年より良くなった」という客観的事実を、数字を交えて提示すると、評価をする側は、評価しやすくなります。

たとえば皆さんが社長になったと想像してみてください。社員たちがそれぞれ「私は頑張りました」とだけ言われても、公平、平等に評価することは至難の業ではないでしょうか。

やはり「頑張った結果、〇円節約できました」「頑張った結果、〇日早く作業が終われる仕組みを構築しました」というほうが、具体的な根拠材料があるので評価しやすいのです。

仮に他の社員から「私も頑張ったのに、どうしてAさんだけ昇給したんですか。ずるいです」と言われても「いや、Aさんは頑張った結果、具体的にこういう成果があったということを提示してくれたから評価しただけであって、ただ頑張ったというだけで評価をしているわけではないですよ。なぜなら全員が頑張ってくれているのだから」と説明ができます。

自分の頑張りを言語化・数値化してみよう

ご相談者様への回答としては、まず、頑張ったことを頑張ったで終わらせず、その内容を

    1. 1. 今年度頑張って新たに取り組んだこと(新規性)
    1. 2. 今年度頑張って結果が出たもの、改善できたものに関しては、数字を入れて言語化する(客観的事実)

のように分類して会社が指定した評価シートに書き込んだり、自分でシートを作成したりして上司や社長に提出し、昇給のお願いをしてみてください。そこまで社員がお願いしたものに対しては、上司も社長も、一旦は考えると思います。

そして、もしご相談者様がこのような文章自体を書ききれなかった場合、それはご相談者様の頑張る方向性を調整したほうがいいということです。

「昇給につながらない頑張り」ではなく「昇給につながる頑張り」とは何かを自分の業務の中で考えて、そこに自分の頑張りを集中させ、「新規性」、あるいは「数値化できる客観的結果」を出して報告をすれば、それは昇給の評価対象になると思います。

たとえば今、社長や上司、現場の人たちが経理関連で日常的に不便を感じていることや困っていることはないかなどを観察したり、実際にヒアリングしたりして、そこに自分の頑張りを投入するのもいいと思います。

もしクラウドの経費精算のソフトを導入して(新規性)、その結果、営業社員が10人いる会社でしたら、その人たちがどれくらい楽になったのかをヒアリングします。一人1か月につき1時間作業時間が短縮されたのなら、「営業社員10名×1時間×12か月=120時間の時間削減を達成しました」(客観的事実)と、ご相談者様の成果として上司や社長に報告をする、という形もいいと思います。

それであれば、社長の視点からすると、「120時間削減できたということは120時間分、さらに営業の仕事に充てられる時間が増えたということだから、経理も売上貢献の一部を担ってくれたんだな」と評価していただけるはずです。

そこまでやって会社が全く無反応、ということでしたら、次のステップを考えていいかもしれません。そして職種に関しては、経理以外の職種も金銭的には魅力的ですが、その半面、体力的、精神的なリスクもあります。

それはご自身の適性を考えてご判断いただければと思いますが、まずはせっかくその会社にご縁があって、経理業務に取り組まれているわけですから、ご自身の頑張りを数値化、言語化して上司や社長に昇給をお願いしてみていただき、その結果を待ってから次の判断をされてもいいと思います。

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