- 作成日 : 2025年12月10日
なぜ飲食店は儲からないと言われるのか?失敗の原因と個人経営で利益を出すための秘訣
「飲食店は儲からない」という言葉を耳にすることがありますが、その背景には高いコスト構造や厳しい競争といった明確な理由が存在します。しかし、適切な知識と戦略があれば、個人経営であっても十分に利益を出し、成功することは可能です。
この記事では、なぜ「儲からない」と言われがちなのか、失敗しやすい飲食店の共通点、そして「忙しいのに儲からない」状態から脱却し、利益を生み出すための具体的な対策まで、分かりやすく解説します。
目次
なぜ「飲食店は儲からない」と言われるのか?
主に、高いコスト構造(特にFLコスト)、激しい競争、そして景気やトレンドに左右されやすいといったビジネス特性が理由として挙げられます。
飲食店経営は、多くの魅力がある一方で、構造的に利益を出しにくい側面も持っています。
高いFLコスト(食材費・人件費)
飲食店経営における2大コストである、食材費(Food Cost)と人件費(Labor Cost)、通称「FLコスト」が売上に対して高い割合を占めることが一般的です。FL比率(売上高に占めるFLコストの割合)は50%〜60%が目安とされますが、近年の原材料費高騰や人手不足による人件費上昇で、この比率を適正に保つことが難しくなっています。
家賃などの固定費負担
特に一等地の店舗では、家賃や共益費といった固定費が経営を圧迫する大きな要因となります。売上が変動しても固定費は変わらないため、集客が不安定だと赤字に陥りやすくなります。
激しい競争環境
飲食業界は、比較的参入障壁が低いとされるため、常に多くの競合店が存在します。大手チェーン店から個人経営の店まで、お客様の選択肢が多い中で、自店を選んでもらい続けるためには、常に差別化を図る努力が必要です。
景気やトレンドの影響を受けやすい
外食は、景気や消費者の嗜好、食のトレンドなどに売上が大きく左右されます。予期せぬ外部要因(感染症の流行など)によって、急激に来客数が減少するリスクも常に伴います。
儲からない飲食店の共通点は何か?
事業計画の甘さ、コンセプトの曖昧さ、コスト意識の欠如、そして集客努力の不足などが、失敗しやすい飲食店の共通点として挙げられます。
「飲食店開業はやめたほうがいい」「やめとけ」といった声が聞かれる背景には、残念ながら短期間で廃業に至るケースが多いという現実があります。その原因を探ると、いくつかの共通した問題点が見えてきます。
甘い事業計画と資金繰り
開業前の市場調査や売上予測が甘く、運転資金がすぐにショートしてしまうケースです。「これくらい売れるだろう」という希望的観測に基づいた計画は非常に危険です。
コンセプトの曖昧さと差別化不足
「誰に」「何を」提供したいのかというコンセプトが曖昧で、他店との違いを打ち出せていないお店です。結果として価格競争に巻き込まれやすくなります。
どんぶり勘定とコスト管理の甘さ
メニューごとの正確な原価計算を行わず、売上はあっても利益が出ていない状態に気づかないケースです。食材ロスや人件費の無駄遣いにもつながります。
集客・販促活動の不足
美味しい料理を提供していても、お店の存在を知ってもらえなければお客様は来ません。SNSでの情報発信や、地域へのアピールといった地道な集客努力を怠っていると、売上は伸び悩むことが多いです。
衛生管理や接客レベルの問題
食中毒などの衛生問題や、スタッフの接客態度が悪く顧客満足度が低いお店は、リピーターを獲得できず、徐々に客足が遠のいていきます。
個人経営で特に陥りやすい罠は何か?
オーナー自身の長時間労働、資金調達の難しさ、マーケティングや経営ノウハウの不足などが、個人店が儲からない状況に陥りやすい要因としてよく挙げられます。
個人経営の飲食店には、大手チェーンにはない魅力や強みがある一方で、リソースの制約からくる特有の難しさも存在します。
オーナー依存と長時間労働
仕入れから調理、接客、経理まで、オーナーが多くの業務を抱え込み、休みなく働いているケースは少なくありません。体調を崩したり、燃え尽きてしまったりするリスクがあります。
資金繰りの厳しさ
自己資金や小規模な融資で開業することが多く、予期せぬ出費(設備の故障など)や売上不振に対する経営的な体力が弱い傾向があります。追加の資金調達も容易ではありません。
集客・マーケティング力の不足
大手のように広告宣伝費をかけられないため、効果的な集客方法を知らない、あるいは実行する時間がない、といった課題を抱えがちです。
価格決定の難しさ
「お客様に申し訳ない」という気持ちから、適正な利益を確保できる価格設定をためらってしまい、結果的に儲からない構造に陥ることがあります。
「忙しいのに儲からない」原因は何か?
売上は立っているものの、コストがかかりすぎて利益が出ていない、すなわち「利益率が低い」状態であることが主な原因です。
お客様で賑わっていて忙しく働いているのに、なぜか手元にお金が残らない、という飲食店は少なくありません。その根本的な原因は、売上高ばかりに目を向け、利益構造を正しく把握・管理できていないことにあります。
原価計算の甘さ
感覚的に食材を仕入れ、レシピごとの正確な原価を計算していないため、実は赤字メニューを提供してしまっている可能性があります。
過剰な人件費
お客様の数に対してスタッフを配置しすぎている、あるいは作業効率が悪く、本来よりも多くの人手が必要になっている状態です。
食材ロスや無駄な経費
在庫管理がずさんで食材を廃棄してしまったり、水道光熱費や消耗品費などの管理が甘かったりすることも、利益を圧迫します。
安すぎる価格設定
競合を意識するあまり、あるいは「安い方がお客様が喜ぶ」という思い込みから、本来取るべき価格よりも安く設定してしまい、薄利多売の状態に陥っています。
「客がいないのに潰れない」飲食店の理由
一見客足が遠いように見えても経営が続いている飲食店には、外部からは見えにくい収入源や、特殊な経営形態が存在する可能性が考えられます。
「あのお店、いつも空いているのになぜ潰れないんだろう?」と不思議に思うことがあります。その理由は様々ですが、以下のような可能性が推測されます。
- 不動産オーナー:建物自体が自己所有で家賃がかからない、あるいは他のテナントからの家賃収入がある。
- 別事業での収入:本業が別にあって、飲食店は副業や趣味的に運営している。
- 特定の固定客:一般客は少なくても、予約客や特定の団体、常連客だけで経営が成り立っている。
- デリバリーや仕出しに特化:店内飲食は少なくても、デリバリーやケータリング、弁当販売などが収益の柱となっている。
- 経営者の資産:オーナーに十分な資産があり、赤字を補填しながら運営している。
- 特殊な立地や契約:例えば公共施設内など、家賃が極端に安い、あるいは補助金が出ている。
もちろん、単純に経営努力によって見えないところで利益を出している可能性もあります。
儲かる飲食店にするための対策は何か?
徹底したコスト管理、提供価値の向上による客単価アップ、販路の拡大、そしてIT・デジタルツールの活用などが有効な対策となります。
「儲からない」状態から脱却し、利益を出せる体質に変えるためには、多角的なアプローチが必要です。
① FLコストの徹底管理
- 原価計算の実施と見直し:全メニューの正確な原価を把握し、利益率を意識したメニュー構成や価格設定を行います。仕入れ先の見直しや歩留まり改善も重要です。
- 適正な人員配置と生産性向上:シフト管理の最適化、オペレーションの効率化、マニュアル整備、多能工化などを進め、無駄な人件費を削減します。
② 付加価値の向上と客単価アップ
- 看板メニューの強化・独自性の追求:他店にはない魅力的なメニューを開発し、専門性を高めます。
- 体験価値の提供:居心地の良い空間づくり、質の高い接客、イベント開催など、食事+αの価値を提供します。
- メニューブックの工夫:おすすめメニューやセットメニューを魅力的に見せ、追加注文を促します。
③ 販路の拡大と売上機会の創出
- テイクアウト・デリバリーの導入/強化:店内飲食以外の収益源を確保します。
- SNS・Webマーケティング:お店の魅力を積極的に発信し、新規顧客を獲得します。
- 顧客管理とリピート促進:ポイントカードやメルマガ、LINE公式アカウントなどを活用し、リピーターとの関係を強化します。
④ IT・デジタルツール(DX)の活用
- 予約・顧客管理システム:予約受付の自動化や、顧客データの分析に活用します。
- オーダーシステム:ハンディ端末やテーブルオーダーシステムで、注文業務を効率化し、人手不足に対応します。
- POSレジ:売上分析や在庫管理を効率化し、経営判断に役立てます。
飲食店経営で利益を出すために
本記事では、「飲食店は儲からない」と言われる理由から、その状況を打破し、利益を出すための具体的な対策までを解説しました。
確かに飲食店経営は簡単な道のりではありませんが、「儲からない」と諦める必要はありません。その原因を正しく分析し、コスト管理の徹底、付加価値の向上、そして時代に合わせた変化を取り入れることで、個人経営であっても十分に成功する道は開けます。まずは自店の現状を見つめ直し、改善できる点から着手してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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