- 作成日 : 2025年9月25日
飲食店開業に必要な情報提供はどこで受けられる?資金調達から事業計画、許可・資格の準備まで完全解説
飲食店の開業準備では、最初の一歩をどう踏み出すかが重要です。成功するためには、信頼できる情報を効率的に集めることが欠かせません。
この記事では、飲食店の開業準備を始めたい方のために、開業までのステップ、資金調達の具体的な方法、必須となる許可や資格、そして融資担当者を納得させる事業計画書の書き方まで解説します。漠然とした不安を解消し、具体的な行動計画を立てるための一助となれば幸いです。
目次
飲食店開業に向けた情報収集は、まず何から始めればよいか?
まずは開業までの全体像を示すロードマップを把握し、公的機関や専門家といった信頼できる情報提供元を知ることから始めるのがおすすめです。
全体像を把握しないまま情報を集めると、重要な準備の見落としや優先順位の誤りが生じやすくなります。あらかじめ開業までの流れを整理しておけば、その後の準備を効率的に進められます。
開業までの基本的なロードマップ
飲食店を開業するまでの道のりは、一般的に半年から1年程度の期間を要します。大まかな流れは以下の通りです。
- STEP1:コンセプト設計・事業計画の策定(開業12ヶ月〜10ヶ月前)
- どのようなお店にしたいか(業態、ターゲット顧客、メニュー、価格帯)を具体化します。
- コンセプトに基づき、事業計画書を作成し始めます。
- STEP2:資金調達の計画・実行(開業10ヶ月〜6ヶ月前)
- 自己資金で不足する分をどう補うか計画します。
- 日本政策金融公庫などの金融機関へ融資の相談を開始します。
- STEP3:物件探し・契約(開業8ヶ月〜5ヶ月前)
- コンセプトに合った立地・物件を探し、契約します。
- 不動産業者だけでなく、設計施工会社やコンサルタントからの情報も有効です。
- STEP4:店舗設計・内外装工事(開業6ヶ月〜2ヶ月前)
- 設計施工会社と打ち合わせを重ね、内装・外装・厨房の工事を進めます。
- STEP5:許認可の申請・資格取得(開業4ヶ月〜2ヶ月前)
- 「飲食店営業許可」の申請準備や「食品衛生責任者」の資格取得などを進めます。
- STEP6:各種契約・仕入れ・人材確保(開業3ヶ月〜1ヶ月前)
- 厨房機器の選定、食材の仕入れ先開拓、スタッフの採用・教育を行います。
- STEP7:販促活動・オープン準備(開業1ヶ月前〜)
- SNSでの告知やプレオープンなどを行い、グランドオープンに備えます。
飲食飲食店開業に必要な情報はどこから得られるのか?
開業準備においては、それぞれの分野のプロフェッショナルから情報提供を受けることが成功の鍵となります。ここではどこでどんな情報が得られるのか解説していきます。
商工会議所や自治体の創業支援窓口といった公的機関
経営相談全般から事業計画のブラッシュアップ、補助金・助成金の紹介まで幅広く対応してくれます。無料で相談できることが多く、地域の情報に強い点が大きなメリットといえるでしょう。ただし、担当者によって専門性が異なる場合がある点には留意が必要です。
日本政策金融公庫や地域の信用金庫などの金融機関
資金調達に直結する相談のプロフェッショナルです。融資相談はもちろん、事業計画書の書き方についても具体的なアドバイスがもらえます。一方で、相談内容は融資を受けることが前提となる点も理解しておきましょう。
税理士、行政書士、飲食店専門のコンサルタントといった専門家
特定の分野で非常に頼りになります。税務や面倒な許認可申請、より専門的な経営ノウハウなど、深い知識に基づいたサポートを受けられます。手続きの代行を依頼できるメリットもありますが、相談や依頼には費用が発生します。
厨房機器メーカー、内装会社、食材卸などの民間企業
設備選定や店舗設計、メニュー開発に関する実践的なノウハウや、業界の最新トレンドといった情報を得ることができます。ただし、自社製品やサービスの利用を前提とした情報提供になる可能性も考慮しておくとよいでしょう。
開業に必要な資金はいくらで、どうやって調達するのか?
飲食店の開業資金は、店舗の規模や立地、業態によって大きく異なりますが、一般的に1,000万円前後が一つの目安です。調達方法は主に「自己資金」「日本政策金融公庫などからの融資」「補助金・助成金」の3つを組み合わせるのが一般的です。
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業費用の平均値は985万円となっており、そのうち自己資金の割合は約2割〜3割程度が平均的です。計画的に資金を準備し、融資をうまく活用することが重要になります。
開業資金の主な内訳
開業資金は大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。
日本政策金融公庫の融資制度を活用する
飲食店開業を目指す方の多くが利用するのが、政府系金融機関である日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
- 特徴:
- 民間金融機関に比べて金利が低い傾向にある
- 無担保・無保証人で利用できる場合がある
- 創業前の段階から相談に乗ってもらえる
- 申し込みの流れ:
- 事業計画書を作成
- 公庫の窓口やオンラインで相談・申込
- 担当者との面談
- 審査
- 融資実行
返済不要の補助金・助成金を探す方法
国や自治体が提供する返済不要の補助金・助成金も積極的に活用しましょう。ただし、多くは後払い(事業実施後に支払われる)である点に注意が必要です。
- 代表的な補助金:
- 小規模事業者持続化補助金:販路開拓(チラシ作成、ウェブサイト構築など)にかかる費用の一部を補助してくれます。
- 事業再構築補助金:新分野展開や業態転換など、思い切った事業再構築を支援します。
- 情報の探し方:
- J-Net21(ジェイネット21):中小企業基盤整備機構が運営するサイトで、全国の補助金・助成金情報を検索できます。
- 各自治体のウェブサイト:自治体独自の創業者向け支援制度がある場合も多いため、必ず確認しましょう。
飲食店を開くために必須の許可や資格は何か?
すべての飲食店で必須なのは「食品衛生責任者」の資格と、管轄の保健所から交付される「飲食店営業許可」です。「食品衛生責任者」は調理師や栄養士などの有資格者が在籍する場合には、そちらが代替となるケースもあります。
また、店舗の収容人数によっては「防火管理者」の資格も必要となります。これらは食品衛生法や消防法に基づき、公衆衛生の確保と火災予防の観点から、資格者の設置や営業許可の取得が法的に義務付けられているためです。無許可営業や資格者の未設置は罰則の対象となります。
STEP1:食品衛生責任者の資格を取得する
各店舗に1名、食品衛生責任者を置くことが義務付けられています。
- 対象者:栄養士、調理師などの資格を持っていない場合、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会を受講することで取得できます。
- 取得方法:1日の講習会(約6時間)を受講します。
- 注意点:営業許可を申請する際に、資格を証明する手帳などが必要になりますので、早めに取得しておきましょう。
- 情報提供元:各都道府県の「食品衛生協会」のウェブサイトで日程などを確認できます。
STEP2:飲食店営業許可を申請する
店舗を管轄する保健所へ申請し、施設の検査に合格することで許可がおります。
- 申請の流れ:
- 事前相談:店舗の工事図面を持参し、施設の基準を満たしているか保健所に相談します。
※内装工事を着工する前に必ず行ってください。 - 書類提出:申請書、店舗の図面、食品衛生責任者の資格証明などを提出します。
- 施設検査:保健所の担当者が店舗を訪れ、シンクの数や手洗い場の設置場所などが基準通りかを確認します。
- 許可証の交付:検査に合格後、数日から2週間程度で許可証が交付されます。
- 事前相談:店舗の工事図面を持参し、施設の基準を満たしているか保健所に相談します。
その他の必要な届け出
お店のコンセプトや条件によって、以下の届け出も必要になる場合があります。
- 防火管理者選任届は、飲食店など不特定多数が出入りする施設で、建物全体の収容人員が30人以上の場合に必要です。この人数には従業員も含まれ、延べ床面積や建物全体の規模によって要件が変わる場合があります。また、テナント単位ではなく建物全体の収容人員が基準となるケースもあるため、事前の確認が必要です。
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書は、深夜0時以降に、お酒をメインとして提供する営業形態の場合に必要です。これは管轄の警察署へ届け出ます。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)は、個人事業主として事業を始める際に、税務署へ「事業を開始しました」と申告するための書類です。管轄の税務署に提出してください。
成功する事業計画書はどのように書けばよいか?
成功する事業計画書とは、飲食店のコンセプトが明確で、売上や利益の予測に客観的な根拠があり、融資担当者や出資者を納得させられる具体性と情熱が盛り込まれている文書のことです。
事業計画書は、単に融資を受けるための書類ではなく、自身の事業アイデアを整理し、経営の羅針盤とするための重要なツールだからです。計画の精度が高ければ高いほど、開業後の成功確率も高まります。
事業計画書に盛り込むべき必須項目
フォーマットは様々ですが、一般的に以下の項目は必ず盛り込みましょう。
- 創業の動機:なぜこの事業を始めたいのか、自身の経験や想いを具体的に記述します。
- 経営者の経歴:飲食業界での経験やスキルなど、事業を成功させられる根拠を示します。
- 店舗コンセプト:5W2H(Who, What, When, Where, Why, How, How much)を意識し、どのような顧客に、どのような価値を提供するのかを明確にします。
- 市場環境・競合分析:商圏の人口や特性、競合店の強み・弱みを分析し、自店の勝機を説明します。
- 商品・サービス内容:看板メニューやサービスの独自性、こだわりなどを具体的にアピールします。
- 販売戦略・集客方法:SNSの活用法、オープン時のキャンペーンなど、具体的な集客プランを立てます。
- 資金計画:開業に必要な資金の内訳と、その調達方法を明記します。
- 収支計画(損益計画):開業後の売上、経費、利益の予測を立てます。最低でも1年分、できれば3年分を作成するのが望ましいです。
なお、マネーフォワード クラウド会社設立では、飲食店向け事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。
説得力を高める売上計画の立て方
売上計画は希望的観測ではなく、根拠に基づいた数字で示すことが極めて重要です。
- 計算式:売上予測=(平日客単価×満席数×回転数×平日営業日数)+(休日客単価×満席数×回転数×休日営業日数)
- ポイント:
- 客単価:競合店の価格帯やメニュー構成から現実的な数値を設定します。
- 回転数:ランチとディナーで分け、周辺の人通りや店舗の立地条件から予測します。最初は低め(1〜1.5回転など)に見積もるのが堅実です。
テンプレートや相談先を活用する
ゼロから作成するのが難しい場合は、公的機関が提供するテンプレートや相談窓口を活用しましょう。
- 情報提供元:
- 日本政策金融公庫:ウェブサイトで業種別の事業計画書(創業計画書)のテンプレートと記入例を公開しています。専門家による無料の個別相談も実施しています。
- 商工会議所・よろず支援拠点:全国の商工会議所やよろず支援拠点では、中小企業診断士などの専門家が事業計画書の作成を無料でサポートしてくれます。
確かな情報収集で、飲食店開業の第一歩を踏み出そう
本記事では、飲食店開業を目指す方が直面する様々な課題に対し、どこで、どのような情報提供を受けられるかを解説しました。成功する飲食店経営の基盤は、開業前の入念な準備と情報収集にかかっています。資金調達、許可申請、事業計画の策定など、各ステップには専門的な知識が求められる場面が多々あります。
一人で抱え込まず、公的機関や金融機関、各種専門家のサポートを積極的に活用することが、夢を実現させるための最も確実な道といえるでしょう。この記事が、開業に向けた確かな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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