• 作成日 : 2026年1月5日

建設業許可の本店移転手続きはどうする?他県への移転、必要書類、期限まで解説

建設業許可を持つ事業者が本店(主たる営業所)を移転した場合、法律で定められた期限内に、必ず「変更届出書」または「許可換え新規申請」の手続きを行わなければなりません。この手続きを怠ると、許可の更新ができなくなるなどの重大な不利益を被る可能性があります。

この記事では、建設業許可における本店移転の手続きについて、移転先が同一都道府県内か他県かによる違い、必要な書類や費用、そして期限を過ぎた場合のリスクまで、分かりやすく解説します。

そもそも建設業許可で「本店移転」の手続きはなぜ必要か?

許可行政庁が、許可要件(営業所の実態、専任技術者の常勤性など)を正確に把握・管理し続けるためです。建設業許可は、許可申請書に記載された「営業所」の実態に基づいて付与されています。本店(主たる営業所)の所在地は、許可の根幹をなす情報の一つです。

そのため、建設業法第11条では、許可申請書の記載事項(商号、所在地、役員、専任技術者など)に変更があった場合、必ず変更届を提出することを義務付けています。本店が移転すれば、その新しい場所でも営業所としての要件を適切に満たしているかを、行政庁が再確認する必要があるのです。

本店移転(住所変更)の届出期限と手続きの種類は?

移転先が「同一都道府県内」か「他県(他の都道府県)」かによって、手続きの種類、期限、窓口が大きく異なります。

つまり、許可行政庁(許可を与えた知事や国土交通大臣)が変わるかどうかが最大の分岐点です。「他県」への移転は、単なる住所変更ではなく、許可の取り直しに近い手続きが必要となるため、特に注意が必要です。

① 同一都道府県内での移転の場合

移転後、30日以内に「変更届出書」を提出する必要があります。これは、建設業法第11条第1項および同施行規則第9条で、営業所の所在地の変更(住所変更)は30日以内と定められているためです。

手続きの名称は「変更届出書(営業所の所在地の変更)」となり、窓口は引き続き同じ都道府県庁(例:東京都庁)などです。許可番号(知事許可 第〇〇号など)は変わりません。

② 他県へ移転する場合(許可行政庁が変わる)

「変更届」ではなく「許可換え新規申請」という、ほぼ新規申請に近い手続きが必要になります。例えば、「東京都知事許可」を持つ事業者が本店を「神奈川県」に移転した場合、東京都知事の許可は効力を失い、新たに神奈川県知事の許可を取得し直さなければなりません。

この手続きには、新規申請と同様の審査期間(約30日~)がかかります。許可換え新規申請中も、従前の許可自体は新しい許可が下りるまで有効です。ただし、主たる営業所を先に他県へ移してしまうと、新しい所在地では許可がない状態となり、その場所で許可が必要な工事は行えません。移転後に申請すると、審査期間中は許可がない状態(空白期間)が発生するリスクがあるため、移転前から綿密に準備を進める必要があります。許可番号も新しいものに変わります。

届出に必要な書類は何か?

「変更届出書(様式第二十二号の二)」に加え、移転の事実を証明する「登記事項証明書」や、新しい営業所の実態を示す「確認資料」などが必要です。

出典:建設業許可申請の手引き|国土交通省建設業許可変更等届出の手引き|東京都

共通して必要な書類(変更届出書)

「変更届出書(様式第二十二号の二)」が基本の様式となります。様式は各行政庁(国土交通省や都道府県)のウェブサイトからダウンロードできます。記載例も、東京都や神奈川県などが発行する「建設業許可の手引き」に掲載されているため、参考にすると良いでしょう。

法人の場合に必要な書類

移転後の情報が反映された「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」が必要です。法務局での登記変更手続きを先に済ませ、移転日が記載された最新の謄本を取得する必要があります。

営業所の確認資料

新しい営業所の実態を確認するための書類(写真、地図、賃貸借契約書など)も必要です。

営業所としての独立性(居住部分と明確に区分されているかなど)が厳しく審査されます。必要な写真は、建物の外観、ビル名や表札、郵便受け、営業所内部の様子など、行政庁(例:東京都)の手引きで細かく指定されています。不備を防ぐためにも、手引きをよく確認して撮影する必要があります。

届出の費用はどれくらいかかるか?

同一都道府県内での「変更届」であれば行政手数料は無料(0円)ですが、「許可換え新規(他県への移転)」の場合は新規申請と同額の法定費用がかかります。

手続きの種類法定費用(行政手数料)
同一都道府県内への移転(変更届)無料
他県への移転(許可換え新規)90,000円(知事許可の場合)

150,000円(大臣許可の場合)

上記は行政庁に納める法定費用です。この他に、登記事項証明書などの取得実費や、手続きを行政書士に依頼する場合の代行報酬(数万円程度)が別途かかります。

変更届の期限を過ぎた(忘れた)場合どうなるか?

5年ごとの「許可更新」が受理されない可能性が極めて高く、悪質な場合は罰則の対象にもなります。建設業法では、変更届の提出を怠った場合、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(第50条)。

しかし、それ以上に実務的なダメージが大きいのが、5年ごとの許可更新ができなくなることです。更新申請は、それまでの変更届がすべて適正に提出されていることが大前提となります。期限を過ぎてしまっても、放置が一番のリスクです。「変更届を忘れた」と気づいた時点で、速やかに提出する必要がありますが、その際、行政庁から「遅延理由書(始末書)」の提出を求められることが一般的です(自治体によって対応は異なります)。

特に本店移転は、毎年の「決算変更届」と異なり発生頻度が低いため、失念しやすい手続きとして注意が必要です。

登記上の住所と営業所の住所が違う場合はどうなるか?

登記上の本店所在地と、建設業の「主たる営業所」の所在地は、異なっていても法的に問題ありません。

建設業許可は、登記上の住所(例えば自宅やバーチャルオフィス)ではなく、実際に建設業の営業活動(契約締結、見積もり、電話対応など)を行う「営業所」の実態に基づいて審査・許可されます。

手続きが必要なケース・不要なケース

  • 必要なケース:
    建設業許可を受けている「主たる営業所」(例:Aビル3階)が移転した場合。
  • 不要なケース:
    登記上の本店(例:自宅)を移転したが、建設業許可を受けている「主たる営業所」(例:Aビル3階)の場所は変わらない場合(法務局での本店移転登記は必須)。

許可申請書に記載されている「営業所の住所」が変更になるかどうかが、届出の要否を判断する基準となります。

本店移転は計画的な手続きが不可欠

本記事では、建設業許可における本店移転(住所変更)の手続きについて、30日以内の変更届(同一県内)と許可換え新規(他県)という2つのパターンを中心に解説しました。

特に他県への移転は、許可番号も変わり、手続きも新規申請と同様になるため、十分な準備期間が必要です。期限を過ぎてしまうと、5年後の許可更新ができなくなるという重大なリスクを負うことになります。法令を遵守し、変更が発生した際は速やかに正しい手続きを行うことが、企業の信頼性を守る上で不可欠です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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