ここが辛いよ入金管理 〈Vol.4〉:入金時の手数料負担が作業的にもコスト的にも負担なのです・・・

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ここが辛いよ入金消込の4回目となりました。今回は、おそらく多くの会社で共通の悩みとしてある、入金時に振込手数料相当を引かれた場合の処理について考えてみたいと思います。

買主が振込手数料を負担してくれていないのです・・・

代金決済時の振込手数料について、民法上は買主が負担するのが原則となっていますが、商慣行によっては、買手が振込手数料相当額を請求額から差し引いて支払うということが行われています。

この問題は、インボイス制度導入時に脚光を浴びました。

なぜならば、差し引かれた振込手数料相当について、売手が代金決済上の役務提供を受けたと考え、手数料として仕入税額控除を受けようとすると、適格請求書の保存が必要になってしまうからです。

手数料相当を控除されることも釈然としていないでしょうし、そのうえ、相手から適格請求書をもらうとなると事務負担が増えることになりますし、ましてや適格請求書がもらえないとなると踏んだり蹴ったりですよね。

税込100万円で商品を販売した際に、手数料相当として税込550円を控除された場合は次のような仕訳がされます。

  • 会計処理(代金決済上の役務提供を受けたと考えるパターン)
    • ①商品販売時

      売掛金)1,000,000円  (売上)1,000,000円

    • ②代金決済時

      (預金) 999,450円  (売掛金)1,000,000円
      支払手数料)550円

    (支払手数料)550円についての消費税コードは、適格請求書を入手することを前提として「課税仕入」のコードを付すこととなります。

    実務上は、このタイプの取引に関して適格請求書を入手することはやや困難というのが実感です。

    手数料相当を売上値引と考える方が処理は楽

    そこで、振込手数料相当について値引処理をされたと考える方法もあります。

    この場合の仕訳は次のようにされます。

  • 会計処理(売上値引と考えるパターン)
    • ①商品販売時

      (売掛金)1,000,000円  (売上)1,000,000円

    • ②代金決済時

      (預金)999,450円  (売掛金)1,000,000円
      (売上値引) 550円

    (売上値引)550円の消費税コードは値引処理と考える関係上、「売上返還」のコードを付すことになります。

    売上返還の場合は、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、1万円未満の売上返還については適格返還請求書の交付義務が免除されることになっています。

    そのため、帳簿処理のみで実質的に消費税のインボイス対応ができるようになるので、売上値引のパターンで処理をしている会社の方が圧倒的に多い印象があります。

    なお、②の(売上値引)の勘定科目は「売上返還」の消費税コードを付したとしても(支払手数料)として処理することは可能となっています。

    実際の入金消込の際に不一致額が生じた場合の処理は

    インボイス制度導入で脚光を浴びた際に、処理の煩雑さ等から買手に代金決済時の振込手数料を負担いただくように交渉した企業も多く、一定程度は手数料負担をしてもらえるようになった企業もあります。

    それでも、まだ売手が手数料相当を負担しているケースも残っています。このような場合には、実際の売掛債権の入金時に請求額と入金額とが一致しません。

    そのため、入金消込時に不一致額を電卓等で計算して、差額を手数料という認識で入金消込作業をしている会社もあります。

    入金額と請求額が一致しない件数が多く、なおかつこれらの作業を手作業で行っていると作業工数はそれなりになります。毎月これらの業務が発生すると考えると、年間の作業時間も相当なものとなるでしょう。

    前回お話ししたように、月末月初の忙しい時期に、そのような作業に多くの時間が取られると虚しい気持ちになってしまうかもしれませんね。

    学習機能付きの入金消込システムを利用して効率化を図りましょう

    クラウド型の入金消込システムは、そのような手数料相当が控除された場合の入金消込作業時間を圧縮してくれるツールといえます。

    手数料相当を差し引いて入金がある取引先については、事前に当方負担であることを設定しておきます。実際の入金額と請求額との差額が、設定した手数料相当の金額と一致する場合、自動消込として差額については手数料として処理をしてくれます。

    新規の取引先がある場合、実務上はまず手数料は買手負担にしていただくことを依頼します。それでも売手が負担をすることになった場合は、振込手数料相当を差し引かれて入金があることを想定してシステム上設定しておくことで、そのあとの入金処理は、自動的に手数料を勘案して入金消込が完了することになるのです。

    クラウド型の入金消込システムでは学習機能が実装されているものも多くあります。振込に際して手数料を差し引いてきた取引先については、発生した場合にその内容を学習させておくことで、次回以降は手数料を加味した金額で入金消込を実施してくれて、結果として適切に消込がなされるようになるのです。

    なお、手数料として認識した金額についての消費税コードは、勘定科目は支払手数料として帳簿上計上するとしても、売上値引として考えるのであれば、消費税コードは「売上返還」コードが付すように設定しておく必要があります。その点は忘れないように対応しましょう。

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