公認会計士資格を持つCFOが伝える!ツールの選定や業務フロー設計のポイント【経理部Meetup#3レポート】

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尾身修一

マネーフォワードが主催するイベント「経理部Meetup」。経理業務における他社事例の共有などを通し、経理担当者同士の交流を目的に開催しているユーザー向けのイベントです。 第3回の今回は、ヒューマンライフコード株式会社の取締役副社長で、公認会計士の資格を持つ尾身修一さんに登壇いただきました。

ヒューマンライフコード株式会社では、将来的な上場を視野に入れて2020年からバックオフィスの体制の見直しを開始。その中で、2020年8月にマネーフォワードを導入しました。

そこで今回は、どのようにツールを選定したのか、その背景や日々の業務フローなどイベントでお話しいただいた内容を紹介。参加者からも積極的に質問が上がり盛り上がったイベントの様子をお伝えします! さらに、実際に当日使用した資料もダウンロードいただけます。

【プロフィール】 尾身 修一(おみ しゅういち)
尾身 修一プロフィール

ヒューマンライフコード株式会社 取締役副社長。コンサルタントとしてベンチャー企業の上場準備及び上場企業の経理財務部の支援業務に従事した後、東証一部上場企業の経理・財務・経営企画・人事・総務・法務・知財・広報を統括。世界で数少ない日本とベトナム両国の公認会計士資格保有者。

「全体最適を追求するバックオフィスを作る」こだわりは業務フロー設計とツール選択

オンライン開催

Zoomを使ってオンラインで開催。参加者からもチャットで質問や感想が集まりました

ヒューマンライフコード株式会社では、もともと現金の受け取りや支払いがされた時点で費用・収益を認識する「現金主義」で処理をしていたそう。一方で、会社が上場する場合は現金の出入りではなく取引が発生したタイミングで認識する「発生主義」での会計処理が求められます。まずは、発生主義への転換に着手し、並行して、社長に決裁権が集中していた業務フローの見直しも行いました。ただし、必ずしも全ての会社が発生主義を採用するのが良いとは限らず、業務フローも会社によって最適な考え方は異なると尾身さんは話します。

「発生主義は難易度が高く、対応するために相応のコストがかかります。また、株式上場を考えているわけではない場合は、税務申告を最優先すべきなので、税務会計の原則である現金主義を採用すべきです。決裁権限の分配の程度や業務フローも、それぞれの会社のフェーズや価値観、文化、社員の経験値などによって最適解は異なります。今日お話しする当社の事例は現時点の当社のやり方であり、今後変えることもありえます」(尾身さん)

経理業務を整備するにあたり、もっともこだわったのは『全体最適を追求する』ことだと言う尾身さん。

「一般的に、稟議や押印、支払い業務などの業務フローを組み立てる際、正確性や不正防止を重視したい経理の都合が優先されて、面倒くさい業務フローになってしまいがちです。しかし、過度に手間のかかるフローになってしまってはビジネスを委縮させてしまい、本末転倒です。当社のバックオフィスは、全体最適を追求するバックオフィスでありたい。正確性を確保し、不正を防止しつつ、全社的な作業負担を軽減させるためには、業務フローとツール選定へのこだわりが必要であると考えています」(尾身さん)

業務フローの設計では定義・解釈を明確に

業務フローでは、大きく「決裁の再定義」「口頭決裁を活用」「職務権限規程(※)と稟議規程の解釈」の3点にこだわりました。

(※)各種の業務における最終的な意思決定権がどの役職者にあるのかを定めた会社のルール

業務フローへのこだわり

『決裁の再定義』では、案件を実施する・ 実施しないという決定、その結果生ずる契約書への押印の可否の決定、請求書に対する支払いの可否の決定という典型的な意思決定について、それぞれ『決裁』という用語との関係性を明確にしました。また、少額の案件や緊急の案件、上司の指示案件などは口頭決裁でスピーディに進められるように、業務フローと申請書を設計。 そして、決裁権限表(職務権限規程の別表)と稟議がどういう関係にあるのかをわかりやすく説明しました。職務権限表は恒常的な権限移譲マップであり、稟議は一時的な権限移譲の依頼という解釈です。

これらにより、日々の業務を判断に迷うことなくスムーズに処理することができ、また、イレギュラーな処理が求められる事態に遭遇したとしても、妥当な判断を素早く下せるようになったと思います」(尾身さん)

使用ツールは「クラウド」に

一方、ツールは「クラウドツール」であることを大前提として選定。リモートワークが強く推奨されるようになった時代の要請へ応えるためというのはもちろんのこと、クラウドサービスによる業務の効率化でコスト削減と本業への集中を狙ったと言います。

ツールへのこだわり

「当社は現在社員11名・国内の常勤役員2名の少人数体制。経理もギリギリの人数で回しており、監査対応は最小限に抑えたいところです。クラウドなら、監査役や監査法人に閲覧権限を付与することにより、資料依頼対応の手間がかからないであろうと考えました」 (尾身さん)

明確な基準を設けて選定したクラウドツール

尾身さんが具体的にどのような視点でクラウドツールを比較し選定したのか、これまでの体験も含めて詳しくお話しくださいました。

実際にツール選定時には、以下の5点を基準として検討を行ったそう。

  • クラウド会計ソフトであること
  • 経費精算・支払依頼システムは、申請と承認のワークフローを構築することができて、会計ソフトと連携できること
  • 経費精算は、申請者の使い勝手が良いこと
  • 会計ソフトの仕訳から、請求書や領収書等のエビデンスにドリルダウンできること
  • 経理にとっても、監査役・監査法人にとっても会計ソフトの使い勝手がよいこと、料金が手頃であること
  • それぞれのポイントについて、尾身さんが実際に比較検討した4つのツールの違いやどのように採用するツールを絞り込んでいったのかを詳しく紹介いただきました。

    比較検討の結果、ヒューマンライフコードでは自社の業務フローに合わせるために、財務会計のマネーフォワード会計Plusを中心としつつ、一部で他社ツールやエクセルを組み合わせて運用しています。

    バックオフィスツール組み合わせ

    ツールの特徴については、選定のポイントに挙がった機能に関して、セミナーに参加していたマネーフォワードクラウド会計Plusのプロダクトオーナー・杉浦大貴から自身の体験をもとに作成した話が上がったり、参加者からも尾身さんや杉浦への質問が寄せられたりするなど、ユーザーと開発者のそろった場とあってイベントが盛り上がりました。

    業務フローをスムーズにするための施策

    ツールへのこだわりを紹介いただいた後には、尾身さんが業務フローを構築する際の核心と位置付けている「決裁」「稟議」 に関する考察を教えていただきました。

    業務フローあるある

    「業務フローでこれらの疑問や非効率が発生する原因は一つではありません。ただ、そもそも『決裁』とは何に対するものなのかが明確に定義されていないと、混乱を招きがちです。当社では、『決裁』とは案件を実行するかしないかの最終決定であると定義しました。その上で、契約書への押印や請求書の支払いは『決裁』の後の事務手続きであって、押印や支払いの承認は『決裁』とは別のものと位置付けています。決裁権者とこれらの事務手続きの承認者は必ずしも同じとはしていません」(尾身さん)

    経費精算の承認フロー

    続けて、案件実行の決裁権者と押印申請書、支払依頼書、経費精算書の承認者が異なる場合に気を付けなければならないことについて解説します。

    「決裁権を持つ者による承認決裁が下りていなければ、その後の押印申請や支払依頼、経費精算といった事務手続きを処理してはいけません。このルールを確実に守るためには、事務手続きの承認者が、決裁権者の承認決裁が下りていることを確認する必要があります。このとき、押印申請書、支払依頼書、経費精算書といった書面が回ってきたときに、『決裁』を容易に確認することができていれば事務手続きの承認者の負担が軽くなります。つまり、これらの書面と『決裁』とを紐づける仕組みを作ることができるかどうかで、工数は大きく変わってくるのです」(尾身さん)

    決裁と書面の紐付けについては 実際に悩んでいる経理担当者も多く、参加者から具体的な質問や意見が挙がるなど、活発に議論が広がりました。

    さらに尾身さんは、職務権限表を適切に作成するためには、会社の成長に応じて代表取締役の権限がどのように変化していくのかを理解することがヒントになると説明。

    「出資者が増えれば株主総会の決議が必要な事項が出てきますし、取締役が複数になれば取締役の協議で決めなければならない事項が出てきます。これらの大部分は会社法を根拠としているので、どの会社でもおよそ同じことを定めることになるでしょう。職務権限表には、これらの代表取締役の一存では決められない事項の一覧表という側面があります。

    一方で、職務権限表には、代表取締役から下位の役職者に移譲された権限の一覧表という側面もあります。社員が増えてくると、何でもかんでも代表取締役のお伺いを立てなくてはならないままでは業務が回らなくなるので、権限の一部を社員に移譲する必要があるわけです。会社によってトップの思想、社員の成熟度、ビジネスモデルなどの色々な要素で最適解は異なるため、定める事項は変わってくると思います。こうやって整理すると、職務権限表に何を記載すべきなのかが見えてくるのではないでしょうか 」(尾身さん)

    セミナーでは稟議規程の考察や口頭決裁をどう活用するかなどの踏み込んだ話もし、「参考になった」と声が上がりました。

    「全体最適を追求するバックオフィスで、みんなを楽に」今日から使える工夫も紹介!

    講義の終盤には、マネーフォワードで作業効率がアップするTipsをご紹介くださいました。

    経費精算・ICカードアプリ連携

    「経費精算の際に品名を記入する手間は、全社員に及ぶことなので軽視すべきではありません。この点に関して、マネーフォワードクラウド 経費では、Amazonや楽天などの個人アカウントを直接連携させて、購入履歴から一つ一つの購入品名を立替経費精算書に取り込むことができます。また、モバイルSuicaやモバイルPASMOの利用履歴も、同様に個人のアカウントから取り込めます。もちろん、ICカード型のSuica、PASMOを読み取って登録することも可能です。おかげで毎月の立替経費申請の作業時間は激減し、移動中や食事中に登録できるので隙間時間の活用にもつながりました」(尾身さん)

    他にもプロジェクト別損益の集計方法や、支払依頼に複数証憑を添付する方法も紹介。ちょっとした工夫の情報に、参加者からも「早速にでも活用できそうなことが多く、とても参考になりました!」との声が上がりました。

    さらに尾身さんは、参加者から事前に受けていた「自社で行う業務と、税理士などの社外に依頼する業務の住み分けのベストプラクティス(結果を得るのに最も効率のよい技法)、アンチパターンがあれば教えてほしい」という質問へも回答。

    「どれが住み分けの正解とは一概には言えませんが、それぞれの企業の環境によって、外部の委託先は選び方を変えるべきだとは思います。納品物や提供されたサービスの品質が最終的にどのレベルに到達していないといけないのかが分かる人が社内にいるかどうかがポイントです。品質を判定できる人が社内にいるのであればコスト優先で選んでも良いと思いますが、そうではないのであれば、報酬が多少高くても信頼が置けるところに依頼すべきでしょう。『当社は専門家に任せいているから安心』と思っていたら、実は低レベルの業者だったということは往々にしてあるものです」(尾身さん)

    終わりに、ここまでのまとめとして、改めて「全体最適を追求し、社員みんなを楽にしたい」と話す尾身さん。

    バックオフィスの負担削減

    「振り返ってみると、今回紹介した業務改善の取り組みは、端的には上記6つにまとめられると思います。業務フローに悩んでいる経理担当者は、このような観点から見直してみると良いかもしれません」(尾身さん)

    その後は、プロダクトオーナー・杉浦から今後の会計Plusのアップデート、開発予定について紹介。部門集計表の集計ロジックの手直しにより、動作がより高速化、今後は1仕訳ずつ見られる仕訳伝票ページが掲載される機能、さらに上場準備会社や上場会社 が使えるような債権請求システムを開発中であることなどをお伝えしました。時代を見据えた開発が着々と進み、より使いやすいツールになりそうだと参加者のみなさんの期待も高まった様子です。

    セミナーの様子

    最後はマネーフォワードの「M」マークで記念撮影

    セミナー終了後、参加者からは「尾身さんのお話しが分かりやすく、資料もまとまっていて、参加できてよかったです!」「尾身さんからシステムの利便性など語っていただきましたが、同じユーザーとして共感しました」など、喜びや満足の声が上がりました。

    応援メッセージ「積極的に情報交換をして他社の良いところを取り入れよう」

    会計ソフトを使おう

    最後に、尾身さんから経理担当者の皆さんへ、メッセージをいただきました。

    「経理は秘匿性の高い情報を扱うこと、また、労働集約的で目の前の作業をこなすのに精一杯になりがちであることから、他の職種と比べると他社との交流が取りづらいです。だからこそ、今回のような情報交換ができる場はすごく大切だと感じています。私も、今日ご紹介した当社の仕組みが絶対正しいと思っているわけではないですし、良いツールや使い方、運用方法があればぜひ知りたいので、皆さんと積極的に情報交換していきたいですね。もし今後の導入を検討していたり、使っていて気になることがあったりするのであれば、『経理部 Meetup』の機会にたくさん質問してみるのも良いと思いますよ」(尾身さん)

    (取材・文:田中さやか、編集:東京通信社)

    イベント資料ダウンロード

    本イベントで当日使用したスライド資料をダウンロードいただけます。
    なお、IPO企業も利用している内部統制を強化したクラウド会計ソフトの詳細はこちら

    ※掲載している情報は記事更新時点のものです。

    Bizpedia編集部

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