「請求書や領収書がなくなる?帳簿の電子化、消費税インボイス制度の先にあるもの」MF Expense expo 2019 イベントレポート vol.4

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2019年9月13日、『MF Expense expo 2019』が開催されました。
マネーフォワードが提供する経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」チームが主催するイベントで、前年に引き続き2回目となります。
今年のテーマは「Change Readiness 経理はニッポンの伸びしろだ」。経費精算や経理業務をテーマに、計13人の登壇者による9講演が行われ、最新のノウハウや事例、ツールが紹介されました。

本記事では、電子帳簿保存法の運用における国内屈指のスペシャリスト・袖山喜久造税理士による講演の内容をお伝えします。紙の書類のデータ化など、経理業務の効率化や適正化を実現する「電子帳簿保存法」。導入するための流れとポイント、そして2023年10月から始まるインボイス制度により経理業務は今後どうなるのかが語られました。

電子帳簿保存法により経理書類のデータ保存が可能に

まず紹介されたのが、「電子帳簿保存法」の概要です。

袖山氏:「電子帳簿保存法とは、紙の帳簿や書類をデータで保存するための要件・手続きについて規定した法律です。紙でのやりとりだけでなく、電子取引におけるデータ保存の仕方についても規定されています。

もともと法人税法では、帳簿や決算や取引関係書類は紙で保存することが義務付けられています。たとえ会計システムなどで作成されたものであっても、紙に出力して法定期間保存することが定められています。それが、電子帳簿保存法の要件を満たしたシステムを利用し、事前に申請書を所轄税務署に提出し承認されることで、データでの保存が可能になります。

また紙で受領した領収書請求書などの取引関係書類についても本来は紙での保存が求められますが、こちらも申請を行うことで、スキャニングデータでの保存が可能になります。

紙書類のやりとりではなく、データで取引情報をやりとりするEDI(電子データ交換)やインターネットサイト上での取引情報授受といった電子取引に関しては、申請や承認を受ける必要はなく単にデータの保存が義務付けられています」。

経費精算の電子化で重要になってくるポイント

その後、経費精算の電子化を進めるにあたってのポイントが解説されました。まず大切になるのが「どんなシステムを使うか」だといいます。

袖山氏:「電子帳簿保存法のスキャナ保存の申請を行う上でシステムに関して一つの大きな指針となるのが『JIIMA認証』です。これは公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が市販のソフトをチェックし、電子帳簿保存法の法的要件を満たしていると判断した製品を認証する制度です。認証製品のリストは国税庁や税務当局に参考とされるので、マネーフォワード クラウド経費をはじめJIIMA認証を受けている製品であれば、電子帳簿保存法の要件を満たしたソフトとして、申請書の作成自体が簡素化されています。

スキャナ保存の導入で重要となるのが、領収書や請求書を入力する際に適正事務処理要件という以下の3つの要件を満たすことです。

1つめが、相互けんせい体制がとられていること。要は領収書等を電子化する際に、不正や間違いを防ぐために1人ではなく2人以上が入力に関わりましょうということです。

2つめが、定期検査をすること。領収書等が正しく入力できているかどうかを、最低1年に1回検査することが求められます。検査はサンプル検査で問題ありません。

そして3つめが、不備が発覚した際の再発防止ができる体制。何か不備が見つかった際に、原因究明や改善策の検討、場合によっては規程の見直しを行う体制ができている必要があります。

以上の3つを『適正事務処理要件』と呼び、スキャナ保存の申請の際にはこの入力体制を満たしていることを示す必要があります。とはいえ、見ていただいてわかるとおり、そんなに難しいことは含まれていません。この承認フローを満たすことでスマホを使った経費精算や、原紙保存の大幅な削減など、申請者にも、承認する上長にも、処理する経理担当者にも嬉しい経費精算フローが実現するのですから、申請する価値は大いにあるのではないでしょうか」。

さらに経費精算の電子化には、利便性や効率化を超えたメリットがあるといいます。

袖山氏:「実際に電子帳簿保存法を導入した企業からよく聞くのが『内部チェックが容易かつ的確にできるようになり、経費に関する不正が大きく減った』という声です。そうした内部統制の強化が、電子化の最大の目的といえます。そうした体制ができれば、会社のガバナンス強化につながり、営業の数字も自然と上がってくるものだと思います」。

2023年本格導入の消費税のインボイス制度。そのカギとなるのは?

続いては、消費税増税と並行して昨今話題に挙がる「インボイス制度」について、その概要とポイントが紹介されました。

袖山氏:「2023年に本格導入されるインボイス制度。そもそも消費税法では、事業者は商品やサービスの販売に際して受け取った消費税額から、仕入れや経費などに際して支払った消費税額を差し引いた金額を納付する決まりになっています。仕入れや経費などにかかった税額を控除することを、仕入税額控除といいます。

しかし現状では、売上げが1000万円に満たない事業者など、受け取った消費税額を国に納付しなくてもいい『免税業者』が存在します。大まかにいうと、この免税業者や個人などに支払った消費税相当額は仕入税額控除できないようになんとかしましょう、というのがインボイス制度です。

インボイス制度導入後に事業者が仕入税額控除を受けるには、まず支払先が適格請求書発行事業者である必要があります。適格請求書発行事業者とは、税務署に適格請求書等発行事業者(消費税の課税業者)であることを申請し、登録番号が発行された事業者のことです。

適格請求書等発行事業者との取引では、規定に準じた請求書や領収書などの「適格請求書」を、発行者と受領者の双方で保存することが義務付けられています。適格請求書には、氏名や登録番号、取引内容、税率ごとに合計した対価の額および適用税率などを記載する必要があります」。

このような制度が導入されることで、納税者の事務負担が大きく増すことが懸念されます。そこでカギとなるのが、請求書や領収書の電子化です。

袖山氏:「仕入税額控除を行うには、適格請求書の保存が必ず必要です。そして現行の消費税法では、請求書・領収書は紙での保存が原則となっています。ところがインボイス制度導入後は、書類のやりとりや保存は紙でもデータでもOKとなります。データ保存の際に求められるのは、基本的に電子帳簿保存法の要件に従って保存することになります」。

インボイス制度の電子化の波は今後どんどん進む

そして最後に、インボイス制度の“近未来予想図”が示されました。今後数年で、仕組みやツールが大きく進化する可能性があるといいます。

袖山氏:「インボイス制度では、事業者は支払い先が本当に適格請求書発行事業者であるかを確認する必要がありますが、取引1件1件ごとに国税庁のウェブサイトの登録簿と照らし合わせるというのは相当な負担です。そこで期待されるのがAPI連携です。国税庁が登録情報をAPI連携するような措置をとり、事業者が会計システムなどから国税庁のサイトにAPIで速やかに確認できるようにする。難しい話ではないので、数年で実現するでしょう」。

さらに袖山氏からは、法人格を証明する電子証明書や、電子決済で発生するトランザクションデータを活かした領収書のいらない世界など、実現が想定されるインボイス制度の新しい形が紹介された後、このようにまとめられました。

袖山氏:「財務省主税局が望んでいるのは、適切に消費税が納付されることです。それには納税者の事務負担の軽減や、税務調査の効率化も重要になってくるだけに、それを実現する電子化は今度どんどん進められていくでしょう」。

まとめ

不正が減って経費が適正化されるという大きな“見返り”が見込める電子帳簿保存法。あらゆる事業者に大きく関わってくるインボイス制度。どちらも結果的に事業の成果を少なからず、場合によっては大きく左右するものだけに、早くから研究し対策を講じるに越したことはありません。今からであれば、できることはたくさんあるはずです。

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