海外出張でも「出国税1000円」 会社の経費で落ちる?

読了まで約 4

27年ぶりの新税です。日本を出国する人に1,000円を徴収する国際観光旅客税法、いわゆる「出国税」が11日の参院本会議で可決、成立しました。2019年1月7日から導入されます。

課税対象は訪日外国人だけでなく、出国する日本人も含まれます。海外への旅行客はもちろん、海外出張など仕事での渡航者も課税されるため、Twitterでは「出張時は会社持ちになるのかなぁ」など、金銭面や業務面での負担が増えないか、先行きを不安視する声が上がっています。

そもそも「出国税」とは?

そもそも出国税とはどのような税金なのでしょうか?

2019年度以降、通年約400億円の税収が見込まれている出国税は、観光振興策の財源に充てる狙いで創設されました。船舶または航空会社がチケット代金に上乗せするなどの方法で、日本から出国する旅客から「出国1回につき1,000円」を徴収し、国に納付するものです。

出国税(国際観光旅客税)の概要
納税義務者
船舶または航空機により出国する旅客
非課税等
・船舶または航空機の乗員
・強制退去者等
・公用船または公用機(政府専用機等)により出国する者
・乗継旅客(入国後24時間以内に出国する者)
・外国間を航行中に、天候等の理由により本邦に緊急着陸等した者
・本邦から出国したが、天候等の理由により本邦に帰ってきた者
・2歳未満の者
※本邦に派遣された外交官等の一定の出国については、本税を課さないこととする。
税率
出国1回につき1,000円
徴収・納付
①国際旅客運送事業を営む者による特別徴収
国際旅客運送事業を営む者の運送による出国の場合、国際旅客運送事業を営む者は、旅客から徴収し、翌々月末までに国に納付(※国内事業者については税務署、国外事業者については税関に納付)

②旅客による納付
プライベートジェット等による出国の場合、旅客は、航空機等に搭乗等する時までに国(税関)に納付

適用時期
2019年1月7日以後の出国に適用

参考|国際観光旅客税について(国税庁)

しかし、SNSでは1,000円という税額設定の妥当性を問う声が多く、議論を呼んでいます。同時に、冒頭に紹介したような海外出張に関する疑問や不安の声も上がっています。出国税は会社負担になるのかという疑問のほかにも、「出国税は経費になる租税公課なの?」「年末調整が面倒になりそう」など、働く人のコメントも。

海外出張時の「出国税」は会社が負担してくれるけど…

出国税の導入で、海外出張の多いビジネスパーソンや企業にはどのような影響が出るのでしょうか。税理士の高橋和也氏に聞きました。

――海外出張時の「出国税」は、会社が負担するのでしょうか。

高橋和也氏(以下、高橋氏):役員や従業員の海外出張にともない支払われる国際観光旅客税、いわゆる「出国税」は、会社の経費として、会社の負担にすることができます。

ただし、その海外出張が会社の業務上必要なものでない場合には、会社が負担した「出国税」は出張した役員や従業員に対する給与として扱われ、その役員や従業員に対して所得税が課税されることになります。

―その海外出張が「業務上不要」だとみなされないために、従業員はどう対策すればいいのでしょうか。

高橋氏:海外出張にともなう「出国税」を、給与ではなく一般の経費(旅費交通費や租税公課など)として会社に認めてもらうには、従業員はその海外出張が業務上必要であったことを会社に証明する必要があります。

海外出張に行く際は、「いつどこを視察したか」「いつ誰と商談を行ったか」などを詳細に記載した、業務出張報告書を作成するようにしましょう。

「出国税」導入後でも1,000円徴収されない条件は?

法人ではなく個人事業主の場合は、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。

――個人事業主でも経費扱いできるのでしょうか?

高橋氏:個人事業主の海外出張にともない支払われる「出国税」は、その海外出張が事業を行う上で必要な場合には、事業所得の計算上の経費とすることができます。

もし、その海外出張の中で、事業において不要な日を過ごした場合は要注意です。たとえば3泊4日の出張のうち、1日は観光をしていた場合は、その1日は事業上必要だったとは言えません。その場合は「出国税」を期間按分して、事業を行う上で必要な割合の部分のみ経費にすることになります。

――そのほか、留意すべきポイントを教えてください。

高橋氏:「出国税」は、2019年1月7日以後の出国に対して課税されます。

しかし、導入日以後の出国であっても、2019年1月7日より前に契約した運送契約には「出国税」は課税されません。つまり、2019年1月7日より前に航空券などを購入していた場合には、「出国税」の導入日を過ぎてからの出国でも1,000円を徴収されないのです。

ただし、旅行会社のツアーなどに申し込んだ場合、旅行契約の契約日と運送契約の締結日は異なる場合があるのでご注意ください。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。