- 作成日 : 2025年8月8日
カフェ(喫茶店)の廃業率はなぜ高い?5つの原因と対策を徹底解説
カフェ(喫茶店)経営は夢や憧れから始める方も多いですが、開業後の廃業率が高く、1年以内に約3割、3年以内に約6割が閉店すると言われています。
この記事では、カフェの廃業率の最新データやその原因、廃業の兆候、そして廃業を回避し、経営を成功させるための具体的な施策をわかりやすく説明します。
目次
カフェの廃業率、1年・3年・5年でどう変わる?
カフェは人気の高い業態ですが、開業から1年で約30%、3年以内に約60%、5年(6年未満)では約80%以上が閉店しています。これは飲食業全体に共通する傾向ですが、カフェは特に高い廃業率を示しており、開業後の数年間は事業を軌道に乗せるための重要な期間となります。
以下は、「閉店した飲食店業態別の営業年数割合」に基づく、カフェ、ラーメン、そば・うどん、焼肉、イタリア料理の、各期間における開業からの累積廃業率です。
【人気5業態の累積廃業率】
累積廃業率 | カフェ | ラーメン | そば・うどん | 焼肉 | イタリア料理 |
---|---|---|---|---|---|
~1年 | 29.3% | 30.0% | 28.0% | 20.1% | 20.0% |
~3年 | 61.8% | 62.7% | 60.0% | 51.9% | 47.4% |
~6年 | 84.3% | 83.7% | 79.0% | 73.8% | 70.9% |
~11年 | 94.8% | 94.0% | 90.0% | 87.3% | 88.5% |
11年以上営業 | 5.2% | 6.0% | 10.0% | 12.7% | 11.5% |
※開業からその期間までに閉店した店舗の累積割合を示します。「11年超営業継続率」は、開業から11年を超えても営業を続けている店舗の割合です。
参考:閉店しやすい飲食業態トップ5に「テイクアウト」がランクイン。生き残りの厳しい業態を調査|飲食店ドットコム
開業から11年以上営業を続けているカフェは、わずか5.2%で、飲食業の中でも長期経営が最も難しい業態の一つです。これに対し、焼肉店やイタリア料理店では10%以上が10年を超えて営業しており、業態によって経営の安定性に差があることがわかります。
2024年度のカフェ(喫茶店)の倒産・廃業は過去最多ペース
帝国データバンクのレポートによると、2024年度「喫茶店(カフェ)」の倒産・廃業が過去最多ペースで進行しています。2024年度(2024年4月~25年3月)までに66件の倒産が発生し、2023年度の年間件数(68件)に迫る勢いです。
飲食店全体でも、2024年の倒産件数は894件と過去最多となり、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年の780件を上回っています 。
コーヒーの需要は回復中
ただし足元では、カフェの需要は徐々に回復しています。1世帯あたりのコーヒー購入は月平均1.8杯とコロナ前の水準に戻っています。(2人以上世帯におけるコーヒー豆への年間支出金額)
倒産した喫茶店の8割以上が資本金1000万円未満
倒産したカフェ(喫茶店)の8割以上が資本金1000万円未満の中小零細店です。カフェの需要はコロナ禍前の水準まで回復しているにもかかわらず、倒産が相次ぐ背景には複数の要因が絡み合っています。
倒産増加の背景には、物価の高騰、光熱費の上昇、人手不足といった課題が経営を直撃していることがあります 。
主な要因は以下のとおりです。
- 原材料費の上昇
特にアラビカ種のコーヒー豆は、2020年度以降の世界的な供給不安や気候変動の影響により、2024~2025年にかけて価格が約50〜60%上昇し、小麦や乳製品も値上がり。 - 運営コストの増加
電気・ガス代、人件費、テナント料などが軒並み上昇。 - 競争の激化
安価なコンビニコーヒーや、大手チェーンとの競合で、個人店は差別化が困難。難しくなっています。 - 価格転嫁の難しさ
客離れの懸念から物価高でも値上げできず、利益の確保が困難。
このような背景から、2023年度には喫茶店の約4割が赤字、7割近くが業績悪化に陥っています。
厳しい状況下でも成功しているケース
全体としては厳しい状況ですが、安定して営業を続けている店舗もあります。
- 「こだわりの1杯」の追求: 高級コーヒーやスペシャルティコーヒーで他店との差別化を図り、質の高い体験を提供。
- ブランドと空間づくり: 独自のコンセプトやサービスで顧客のロイヤリティを高める。
- オンライン販売の活用: 店舗での売上だけでなく、コーヒー豆やオリジナルグッズのオンライン販売など、新たな収益源を確保。
これらの事例から、単にコーヒーを提供するだけでなく、顧客に「選ばれる理由」を明確に打ち出すことの重要性を示しています。
参考:「喫茶店」の倒産動向(2024年度)|帝国データバンク、「飲食店」の倒産動向調査(2024年)|帝国データバンク
カフェの廃業率が高い5つの原因
カフェは、居抜き物件を活用したり小規模で始めたりする場合、他の飲食業態に比べて開業コストを抑えることもできます。しかし、設備や内装にこだわれば投資額は大きくなるため、一概に参入しやすいとは言えないのが実情です。
その一方で、価格競争が激しく、差別化が難しいため、安定した収益の確保が困難になっています。
カフェの廃業背景には、多くの店舗が「資金」「計画」「集客」「人材」「競争」という5つの壁にぶつかる傾向があります。
資金管理の甘さとどんぶり勘定
運転資金の不足は、廃業の大きな原因です。特に開業初期は赤字が予想されるため、半年分の月間固定費を目安とした運転資金の確保が必要です。内装や設備に予算をかけすぎてしまい、日々の運転資金がショートするケースもあります 。
「どんぶり勘定」による原価管理の失敗も、利益を圧迫します 。
例えば、お酒の提供でドリンクを目分量で提供していた結果、予定より原価がかかりすぎてしまい、利益が出ないまま経営が難しくなるということもあります。
運転資金が底をつくと、サービスの質も低くなり、結果的に顧客満足度の低下や客離れ、さらなる売上減少という負の連鎖を引き起こします。
資金計画の際は、「いくら必要か」だけでなく、「何に、いつ、いくら使うか」という具体的な現金の流れの予測と管理が重要です。
事前調査不足とコンセプトのずれ
出店地域の事前調査が不十分な場合、ターゲット層とメニュー価格帯が合わず、集客に失敗することがあります。
例えば、駅近で女性OL向けのオーガニックカフェを出店したものの、周辺は学生が多く、価格帯が合わずに来店が伸びなかったということもあります。地域の属性と商品戦略のずれは、売上不振の大きな原因になります。
また、コンセプトが曖昧なまま開業すると、他店との差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれやすくなります。さらに、内装や素材に過度にこだわった結果、価格が高くなりすぎ、実際の顧客ニーズと合わなくなることもあります。
「こだわり」は強みになりますが、市場のニーズと合致していなければ、自己満足で終わってしまう可能性があります。開業前には、商圏や顧客層を数値と現地観察で把握し、価格・メニュー・雰囲気の整合性を確認することが重要です。
集客とリピーター作りの課題
新規顧客の獲得がうまくいかないと、売上は早い段階で頭打ちになります。開業直後の注目が落ち着いたあと、集客の仕組みがなければ客足は一気に減少します。
お店の宣伝が不十分だと、お店の存在が知られず来店につながりません。リピーターだけに頼る経営も安定せず、顧客ニーズに対応できないと、売れ筋メニューの注文が減り、客足が遠のきます 。これは、お店を利用してくれるお客様のニーズと合わなくなっている証拠です 。
スタッフの確保と効率化のバランス
飲食店は人手に大きく依存する業態であり、人手不足はそのままサービス品質の低下に直結します。スタッフが足りないと清掃や接客が行き届かず、オーダーミスや提供の遅れが増え、顧客満足度が下がります。
さらに、負担が偏ると従業員の士気も下がり、経営者が現場に入りすぎることで、売上管理や戦略立案といった本来の業務に手が回らなくなることもあります。
人件費削減や効率化だけでなく、人材の確保と教育、働きやすさの改善が経営の安定に不可欠です。従業員満足は、顧客満足と強く結びついています。
競争の激化と価格変動の影響
カフェ業界は新規参入が多く、競合が増えやすい市場です。大手チェーンの出店や、コンビニ・自動販売機による低価格・高利便性のコーヒー提供は、個人経営のカフェにとって大きな脅威となっています。
また、近年の物価上昇や光熱費の高騰、特にコーヒー豆の価格高騰は、中小カフェの利益を圧迫しました。2024年には喫茶店の約4割が赤字となり、外部環境の変化への対応力が問われています。
価格競争ではなく、「選ばれる理由」をつくれるかが、生き残りの分かれ目です。
カフェの廃業の兆候やサイン
カフェの経営悪化のサインは突然現れるものではなく、必ず何らかの兆しがあります。早期に兆候を察知し、対策を講じることが廃業を避ける大切な一歩です。
来店客数の減少と売上の変化
来客ゼロの日が出始めたら、明確な警告サインです。以前はよく出ていたメニューの注文が減る、人気商品が動かなくなるといった変化も、顧客ニーズとのズレや「飽きられた」可能性を示します。
また、同業他店と比べて客足が明らかに少ないと感じる場合も、早期に原因を見極めて対応する必要があります。売上や客数の低下は、経営悪化につながりやすいです。
資金繰りの悪化と経費の圧迫
家賃や仕入れの支払いが遅れる、人件費削減に踏み切らざるを得ないなど、資金繰りに行き詰まりが見え始めたら危険信号です。原価管理が甘く、料理の分量が安定せずロスが増えている状態も、利益を圧迫する要因になります。
売上不振から経費を削り、サービスや店舗環境の質が低下し、それがさらに客離れを招くという負のサイクルが始まります。こうした連鎖は早期に一つを断ち切ることで止めることができます。
店舗管理の乱れとスタッフの士気低下
店内の清掃が行き届かない、備品が破損したまま放置されている、食器の状態が悪いなどは、店舗管理の緩みを示す典型的な兆候です。
従業員の退職が相次ぎ、残ったスタッフのモチベーションが下がっている、サービスの質が落ちていると感じたら要注意。オーダーミス、提供遅延、価格表示のミスなどが頻発するのも、管理体制の崩れが表れています。
経営者は日々の業務に追われ、こうした兆候に気づきにくくなりがちです。だからこそ、定期的に客観的な視点で店舗を見直す習慣が必要です。顧客アンケートや覆面調査の導入も、有効なチェック手段です。
カフェの廃業を防ぐ経営改善の方法
カフェ廃業の兆しに気づいたら、早めの対応が重要です。経営計画の見直しやコスト管理など、具体的な施策を実行するなど、廃業を防ぐ施策を紹介します。
経営計画の策定と見直し
曖昧なコンセプトや不十分な事業計画は失敗の原因です。店舗の軸となるコンセプトとターゲットを明確にし 、それに沿った店づくりを進めます 。
例えば、スターバックスの「Third Place」やコメダ珈琲の「街のリビングルーム」のように、顧客に提供する「体験」を明確にすることが成功につながります 。
市場調査を徹底し、出店地域の需要や競合店の分析を行います 。運転資金を含む事業資金計画をしっかり立て、赤字が続いた場合の撤退基準も具体的に決めておきます 。
コスト削減と利益率の改善
運転資金の過剰な消耗を防止するために、支出の見直しを行います。原料費、人件費、家賃、光熱費、通信費などの見直しに加え、以下の取り組みをします。
- 仕入れルートの見直しと在庫管理の徹底
- 原価率の高いメニューの見直し・削除
- 利益率の高い商品の開発と販売強化
- ピーク時間に合わせた人員シフト調整
また、経営は「守り」と「攻め」の両面からのアプローチが必要です。コスト削減や資金管理といった「守り」の施策は、経営の安定性を高める上で不可欠です。
一方で、テイクアウト・デリバリーへのシフトやメニュー開発といった「攻め」の施策は、売上拡大と競争力強化につながります。
どちらか一方に偏るのではなく、常に両方の視点を持って経営戦略を立てることが、持続可能なカフェ経営の鍵となります。
テイクアウト・デリバリーへの対応
来店客の減少が続く際は、テイクアウトやデリバリーへのシフトも有効な手段です。既存メニューを弁当にして店頭販売したり、法人にデリバリーを開始したりしてもよいでしょう。
ある喫茶店では、緊急事態宣言下で売上が激減した際、ランチメニューを弁当にして店頭販売したことで、徐々に売上が伸びました 。これらの取り組みは、新たな収益源を確保し、売上を維持・向上させることを可能にします 。
顧客満足度向上とリピーター育成
接客や店内の清掃、メニューの改善など、お客様が直接関わる部分を日々こまめにチェックし、顧客の声を経営に反映させます。ネット上などに悪い評価を上げられるリスクを減らすためにも、お客様の声に耳を傾けることは大切です 。
ポイントカードやスタンプカード、クーポン配布はリピーター促進に効果的です 。デジタルポイントカードは、顧客がカードの持ち忘れを心配する必要がなく、店舗側もカード発行コストを削減できます 。無料Wi-Fiの提供や子供連れ専用エリアの確保など、居心地の良い空間づくりもリピート率向上につながります 。
SNS活用と顧客データ分析
SNSは、今や集客に欠かせないツールです。InstagramやTikTokなどで、店内の雰囲気や映えるメニューを発信することで、来店のきっかけを生み出せます。実際、TikTokで経営難を告白したことがきっかけで来店が急増した、とされるカフェの事例もあります。
一方で、集客後の改善にはデータ分析が不可欠です。来店時間帯・客層・注文傾向などの情報を活用すれば、仕入れや人員配置、メニュー構成の最適化が可能になります。例えば、POSレジなどのレシートデータを元に改善を図り、来店数が増加したという報告もあります。
SNSとデータ分析は単独ではなく連携して活用すべきです。SNSで得た顧客を分析し、改善につなげ、その結果をまた発信に活かす。このデジタル連動のサイクルこそが、今のカフェ経営における成長の鍵です。特に若年層の来店を狙うなら、SNSとデジタル活用は欠かせません。
カフェの廃業を防ぐには早期の対応がカギ
カフェ(喫茶店)の廃業には、資金不足やターゲット設定の甘さ、人手不足、競争の激化など、複数の要因が絡んでいます。しかし、兆候を見逃さず早めに手を打てば、経営を立て直すことは可能です。
明確なコンセプト設定、デジタル活用、コストの見直し、そして顧客満足の強化がカギとなります。感覚に頼らず、数字と事実をもとに経営判断を重ねることで、カフェ経営を長く続ける道が見えてきます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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