• 作成日 : 2025年10月9日

登記簿謄本とは?種類や取得方法、見方など基本を徹底解説

不動産の売買や相続、会社の情報を確認する際に耳にする「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」。これは、不動産や会社の権利関係を公に証明するための非常に重要な書類です。

この記事では、登記簿謄本とは何かという基本的な知識から、よく似た「登記事項証明書」との違い、具体的な種類、必要となる場面、そして法務局やオンラインでの取得方法と費用、さらには記載内容の見方まで、詳しく解説します。

登記簿謄本とは?

登記簿謄本とは、本来、法務局(登記所)が備える紙の「登記簿」に記録された内容をそのまま全部写して証明した書類を指す呼称です(部分のみを写すものは「登記簿抄本」)。登記制度は、不動産(土地・建物)や会社(法人)に関する権利関係を公に記録・公開し、取引の安全と円滑化を図るための仕組みであり、その内容を第三者に示す役割を担うのがこれらの証明書です。

現在は登記記録がコンピュータ管理に移行しており、登記所が発行する正式名称は「登記事項証明書」です。実務では歴史的呼称として「登記簿謄本(抄本)」という言い方が残るため、案内類で併記されることがありますが、公的な証明書の名称は登記事項証明書と覚えておくと確実です。

登記簿謄本と登記事項証明書は何が違う?

両者の違いは作成方法/媒体の違いに由来します。

  • 登記簿謄本:紙の登記簿に記載された内容を複写(謄写)して証明したもの(歴史的呼称)。
  • 登記事項証明書:コンピュータ化された登記情報を印字して証明したもの(現行の正式名称)。

実務上、窓口で「登記簿謄本をください」と請求しても、交付される書面は「登記事項証明書」です。なお、登記事項証明書には目的に応じて、全部事項/現在事項/一部事項/閉鎖事項などの種類があり、必要な情報範囲に応じて使い分けます。

登記簿謄本(登記事項証明書)にはどのような種類がある?

登記事項証明書は、対象が「不動産」か「法人(会社)」かによって大きく分かれ、さらに記載される情報の範囲によって「全部事項証明書」や「現在事項証明書」など複数の種類があります。

用途によって必要となる情報が異なるため、過去の情報を含むすべての記録が必要か、現在の有効な情報だけでよいかなど、目的に応じて最適な証明書を選べるようになっています。

登記事項証明書は、まず大きく2つに分類されます。

  1. 不動産登記:土地や建物に関する権利関係を記録したもの。
  2. 商業・法人登記:会社や組合などの法人に関する情報を記録したもの。

そして、それぞれの中に情報の網羅性に応じた種類が存在します。

1. 不動産登記の登記事項証明書

種類内容主な用途
全部事項証明書対象不動産について、閉鎖登記記録を除く「現に存する」登記記録の全部(表題部・権利部〔甲区/乙区〕・抹消の記録を含む)を証明。不動産売買、住宅ローン、相続登記など、現在から過去の経緯(抹消履歴を含む)まで幅広く確認したい場合。最も一般的に利用される。
現在事項証明書現在有効な登記事項のみを証明(過去の所有者や抹消済みの権利は記載されない)。直近の権利関係だけを手早く確認したい場合(例:現所有者・現存する抵当権の有無の即時確認)。
一部事項証明書全部事項のうち、請求で特定した一部の登記事項のみを証明(例:所有権に関する事項のみ/特定の共有者に関する部分のみなど)。マンション等で共有者が多数のとき自分の持分のみを証明したい場合や、必要な項目だけを限定して証明したい場合。
閉鎖事項証明書合筆・分筆、滅失、地目変更の経過、表題部変更などにより閉鎖された登記記録を証明。過去に存在した不動産の履歴や、地番更正・合筆前の経過などを調査したい場合。

2. 商業・法人登記の登記事項証明書

種類内容主な用途
履歴事項全部証明書/一部証明書現在有効な登記事項に加え、基準日(請求日の3年前の年の1月1日)から請求日までの変更履歴を証明。一部は、請求で特定した登記事項(例:役員に関する事項のみ)に限定可能。融資、許認可申請、新規取引の与信など、直近の変更経緯まで含めて確認したい場面で最も一般的。
現在事項全部証明書/一部証明書現在有効な登記事項のみを証明(過去の変更・抹消は記載なし)。一部は特定の登記事項のみを対象化可能。現時点の役員・資本金・本店等の確認を迅速に行いたい場合。
代表者事項証明書代表権のある者(例:代表取締役)の資格に関する事項のみを証明。契約・訴訟等で代表者資格の立証が必要な場合。
閉鎖事項証明書閉鎖された登記記録(例:解散、合併、管轄外への本店移転に伴う閉鎖等)を証明。過去に存在した会社や旧本店管轄の記録を調査・確認したい場合。

登記簿謄本(登記事項証明書)はどのような場面で必要になる?

登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の売買・担保設定・相続など権利変動が伴う場面や、会社の新規取引・金融取引・許認可申請など法人の実在性・最新情報の確認が必要な場面で提出を求められる、公的な証明書です。

第三者に対して客観的な権利関係や法人情報を提示できるため、重要な契約・申請の前提資料として用いられます。法令上の有効期限はありませんが、実務上は発行後3か月以内のものを求められることが多い点に注意してください。

具体的には、以下のような場面で登記事項証明書(登記簿謄本)が必要となります。

  • 不動産に関する手続き
    • 不動産売買契約:対象不動産の所有者が誰で、抵当権などが付いていないかを確認する。
    • 住宅ローンの申し込み・抵当権設定:金融機関が担保となる不動産の情報を確認する。
    • 相続登記:不動産を相続する際に、被相続人(亡くなった方)の所有者情報を確認する。
    • 財産分与:離婚に伴い、不動産の所有権を移転する際の情報を確認する。
    • リフォームローン:自宅を担保にローンを組む際の情報を確認する。
  • 法人に関する手続き
    • 法人口座の開設:金融機関が法人の実在性を確認する。
    • 融資の申し込み:法人の基本情報や代表者の資格を証明する。
    • 事務所の賃貸借契約:契約者が法人として実在することを証明する。
    • 許認可の申請:行政機関へ建設業や古物商などの許可を申請する。
    • 新規の取引先との契約:取引相手の信用情報を確認する(与信調査)。

登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する方法と費用

取得方法は、主に「法務局の窓口」「郵送」「オンライン」の3つがあります。登記情報交換システムにより、原則として全国どこの不動産・会社のものでも最寄りの法務局で取得可能です。

ただし、案件の性質や取扱い上の制約によって、その不動産や会社を管轄する法務局でしか取得できない場合があります。請求方法によって手間と費用が異なるため、状況に応じて選択できます。

それぞれの取得方法について、手順と費用を解説します。

STEP1. 事前準備(不動産の場合)

不動産の登記事項証明書を取得するには、対象物件を特定するための「地番(ちばん)」または「家屋番号(かおくばんごう)」が必要です。これらは普段使っている住所(住居表示)とは異なる場合が多いため、注意が必要です。

【地番・家屋番号の調べ方】
  • 権利証(登記識別情報通知)
  • 固定資産税の納税通知書
  • 法務局に電話して問い合わせるか、備え付けのブルーマップ(住宅地図)で確認する

    STEP2. 取得方法を選択する

    それぞれの取得方法の手数料とメリット・デメリットを確認しましょう。

    取得方法手数料受け取りメリットデメリット
    窓口請求600円その場で交付窓口で疑問点を確認しながら請求できる平日の開庁時間(8:30–17:15)に来庁が必要
    郵送請求600円郵送来庁不要返信まで数日、返信用封筒・切手等の準備が必要
    オンライン請求(窓口送付)490円指定窓口で交付最安・申請は自宅から可能初回登録やPC設定が必要/窓口での受取は必要
    オンライン請求(郵送送付)520円郵送申請は自宅から・窓口に行かず完結可到着まで数日要す
    【料金・手続きに関する補足】
    • 手数料の確認:上記の手数料は、法務局が公開している2025年4月の情報を参考に記載しています。手数料は法令の改正により変更される可能性があります。実際に請求される際は、必ず法務省や最寄りの法務局の公式ウェブサイトにて最新の情報をご確認ください。
    • 支払い方法:手数料は、窓口・郵送での請求ともに収入印紙で納付するのが原則です。オンライン請求の場合は、インターネットバンキングやATMでの電子納付も可能です。
    • オンライン請求システム:オンライン請求は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(通称:登記ねっと)を利用して行います。

    出典:各種証明書等の手数料が 変わります|法務省民事局

    【証明書が不要で内容確認のみの場合】

    「公的な証明書は不要で、登記内容を今すぐ確認したい」という場合には、「登記情報提供サービス」が安価で便利です。

    • サービス内容:インターネット上で登記情報のPDFを閲覧するサービス
    • 料金の目安:1件あたり331円(不動産登記情報)
    • 注意点: 閲覧できるPDFに法的な証明力はありません。あくまで個人での内容確認や社内資料としての利用に留めましょう。

    【登記簿謄本の見方】どこに何が書かれてる?

    不動産の登記事項証明書は、主に不動産の物理的な状況を示す「表題部」、所有権に関する事項が記載された「権利部(甲区)」、所有権以外の権利が記載された「権利部(乙区)」の3つのパートで構成されています。

    不動産に関する情報を「物理的な現況」と「権利関係」に大別し、さらに権利関係を「所有権」と「それ以外」に分けることで、誰が見ても分かりやすく、権利関係を正確に把握できるように合理的に構成されています。

    土地の全部事項証明書を例に、各セクションの見るべきポイントを解説します。

    1. 表題部(ひょうだいぶ)

    土地か建物かを問わず、その不動産がどこにあって、どのようなものか(物理的状況)わかるものです。不動産を特定するための基本的な情報が記載されています。

    • 所在:市、区、町、村、字までが記載されます。
    • 地番:土地を特定するための番号です。(住所とは異なります)
    • 地目(ちもく):土地の用途を示します。「宅地」「畑」「山林」「公衆用道路」など、不動産登記規則で定められた23種類(2025年8月現在)があります。
    • 地積(ちせき):土地の面積です。単位は平方メートル(㎡)で記載されます。
    • 原因及びその日付:この土地の登記記録が作成された理由(例:区画整理)と年月日が記載されます。

    2. 権利部(甲区)(けんりぶ・こうく)

    この不動産の所有権に関する情報が、登記された順番に記録されています。甲区に記載された所有権に関する記録のうち、最も新しい「所有権移転」や「所有権保存」の記録が、現在の所有者を示します。

    • 順位番号:権利が登記された順番です。番号が新しいほど、新しい情報です。
    • 登記の目的:「所有権保存」「所有権移転」「差押」など、どのような登記が行われたかがわかります。
    • 受付年月日・受付番号:登記が法務局に受け付けられた受付日と番号です。
    • 権利者その他の事項:
      • 原因: 所有権が移転した理由(「売買」「相続」「贈与」など)と日付。
      • 所有者: 現在の所有者の住所と氏名。

    3. 権利部(乙区)(けんりぶ・おつく)

    所有権以外の権利、代表的なものとしては抵当権(住宅ローンなどの担保)に関する情報が記載されます。

    • 順位番号: 権利が登記された順番です。
    • 登記の目的:「抵当権設定」「根抵当権設定」などが記載されます。
    • 受付年月日・受付番号:登記の受付日と番号です。
    • 権利者その他の事項
      • 原因: 抵当権が設定された理由と日付。
      • 債権額:担保されている債権の金額。ただし、繰り返し利用できるローンなどで設定される「根抵当権」の場合は、実際の借入額とは異なる「極度額」(融資の上限枠)が記載される。
      • 利息・損害金:金利や延滞した場合の利率。
      • 債務者:ローンを借りている人の住所・氏名。
      • 抵当権者:お金を貸した金融機関の情報。

    もし乙区に何も記載がなければ、その不動産には登記されている担保権(抵当権など)がないことを意味します。住宅ローンを完済して抵当権抹消の手続きをすると、新たな登記として「抵当権抹消」が記録され、該当する抵当権の記録には抹消されたことを示す下線が引かれます。

    4. 共同担保目録(きょうどうたんぽもくろく)

    住宅ローンを組む際、土地と建物をセットで担保に入れることが一般的です。このように、複数の不動産をまとめて担保にしている場合に、その一覧が記載されるのが共同担保目録です。

    登記簿謄本の見方や取得方法については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

    登記簿謄本の理解を深め、円滑な手続きへ

    この記事では、登記簿謄本とは何か、その基本的な役割から種類、取得方法、そして具体的な見方までを解説しました。登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産取引や会社の信用証明に欠かせない、権利関係の羅針盤ともいえる公的書類です。

    特に不動産登記においては、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の基本構造を理解することで、不動産の経歴や権利関係の概要を掴むことができます。これにより、安全な取引への備えや、専門家へ相談する際の助けとなるでしょう。必要な場面で慌てないよう、この記事で紹介した知識を参考に、スムーズな情報収集と手続きを進めてください。


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