• 作成日 : 2025年10月9日

共益費とは?管理費との違いや内訳、家賃と分けるメリット・注意点など徹底解説

賃貸物件を探していると必ず目にする「共益費」。家賃とは別に記載されているこの費用について、「具体的に何に使われているの?」「管理費とは違うの?」と疑問に思ったことはありませんか。

この記事では、共益費の基本的な意味から、管理費との違い、具体的な内訳と相場、さらに家賃と分けて表示される理由やメリット・注意点まで、入居者と不動産事業者の双方にとって役立つ情報を解説します。

目次

共益費とは具体的にどのような費用?

共益費とは、入居者全員が共同で利用する部分の維持・管理に使われる費用のことです。具体的には、廊下の電気代やエレベーターのメンテナンス費用、清掃費などが含まれます。

共益費の定義と目的

共益費は、賃貸物件の入居者が快適で安全な生活を送るために必要な「共用部分」を維持管理するための費用として、物件の所有者や管理会社が徴収するお金です。

建物の資産価値を保ち、入居者全体の利益を守ることを目的としています。家賃が居室部分(専有部分)の利用対価であるのに対し、共益費はそれ以外の共用部分に対する費用という位置づけになります。

共益費の具体的な用途一覧

共益費が実際に何に使われているのか、具体的な項目を見ていきましょう。これらの費用は、入居者が日々安心して暮らすために欠かせないものです。

  • 共用部分の光熱費:
    • 廊下、エントランス、階段などの照明にかかる電気代
    • オートロックや防犯カメラなど、セキュリティ設備の電気代
    • 共用水道(清掃や植栽の水やりなど)の水道代
  • 建物の維持管理・メンテナンス費:
    • エレベーターの定期点検、保守費用
    • 消防設備の点検、維持費用
    • 給水タンクや貯水槽の清掃、水質検査費用
    • 建物の定期的な巡回や点検
  • 清掃・衛生管理費:
    • エントランス、廊下、階段などの日常的な清掃費用
    • ゴミ置き場の清掃、管理費用
    • 植栽の手入れ(剪定、除草など)にかかる費用
  • その他:
    • 管理人の人件費(管理費に含まれる場合も多い)
    • 小規模な修繕費用(電球交換など)

共益費と管理費の違いは?

結論から言うと、法律上の明確な区別はなく、不動産業界の慣習として使い分けられているのが実情です。

不動産広告のルールを定めている「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」では、「共益費」と「管理費」は、項目としては別々に設けられています。しかし、その定義はどちらも「借家人の共通の利益を図るために要する費用」といった趣旨で記載されており、内容面で明確な線引きはされていません。

そのため、実務上は同じ意味で使われたり、以下のような慣習的な傾向で使い分けられたりすることが一般的です。

出典:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則|不動産公正取引協議会連合

法律上の定義と一般的な使われ方の傾向

不動産広告のルールを定めている「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」においても、共益費と管理費は明確に区別されていません。「借家人の共通の利益を図るために要する費用」として、同じ性質のものとして扱われています。

ただし、不動産業界の慣習として、以下のような使い分けがされる傾向があります。

項目共益費管理費
主な用途共用部分の電気代、水道代、清掃費など、日常的な維持管理に関する費用管理人の人件費、管理会社への委託費用など、より広範な管理・運営に関する費用

あくまで慣習的な傾向であり、物件によって呼称は異なります。しかし、契約内容によっては注意が必要です。 例えば、更新料や短期解約違約金の算定基礎が「賃料のみ」か「賃料等(賃料+共益費)」かによって、支払う金額が変わる場合があります。契約書の具体的な条項を確認することが重要です。

物件選びでは総額で比較することが重要

物件を探す際は、「共益費」や「管理費」という名前に惑わされず、「家賃+共益費(または管理費)」の合計金額で毎月の支払い額を比較することが最も重要です。 例えば、以下の2つの物件があった場合、月々の負担は同じになります。

  • 物件A:家賃 80,000円 / 共益費 5,000円 → 月額合計 85,000円
  • 物件B:家賃 85,000円 / 共益費なし → 月額合計 85,000円

家賃が安く見えても共益費が高いケースもあるため、必ず総額で判断するようにしましょう。

共益費の内訳と相場はどのくらい?

共益費の相場は、一般的に家賃の5%〜10%程度が目安とされています。都市部では割合が高くなるなど、地域や建物の設備・グレードによって金額は大きく変動します。

一般的な共益費の内訳

共益費の内訳は、先述した「具体的な用途」で挙げた項目で構成されますが、その割合は物件の特性によって異なります。

例えば、エレベーターやオートロックがないアパートであれば、その分の点検・維持費用がかからないため共益費・管理費は安くなる傾向にあります。逆に、コンシェルジュサービスや豪華な共用施設があるタワーマンションなどでは、人件費や維持費がかさむため高額になります。

共益費の相場に影響を与える要因

共益費の金額は、主に以下のような要因によって決まります。

  • 建物の構造と規模:
    • 木造アパート、鉄骨・RC(鉄筋コンクリート)造マンション
    • 低層物件、高層物件・大規模物件
    • 一般的に、規模が大きく構造がしっかりしている建物ほど、維持管理コストがかかるため共益費は高くなります。
  • 共用設備の充実度:
    • エレベーター、オートロック、宅配ボックス、防犯カメラの有無
    • インターネット無料設備
    • ゴミ置き場の仕様(24時間ゴミ出し可能など)
    • 豪華なエントランスやラウンジ、フィットネスジムなどの有無
    • 設備が充実しているほど、点検・清掃・電気代などのコストが増加します。
  • 管理形態:
    • 管理人の勤務形態(常駐、日勤、巡回)
    • 管理会社のサービスの質・量
    • 手厚い管理サービスが提供されている物件は、人件費が共益費に反映されます。

共益費に消費税はかかる?

課税・非課税の判定は、①物件の用途(住居用/事業用)に加え、②共益費が家賃の対価に含まれる性質か、それとも独立した役務・実費の回収かという実態で決まります。名目だけではなく、契約書の内訳と対価性で判断します。

住居用物件の場合:原則非課税

個人が生活のために借りる住宅の家賃は非課税。住宅の維持管理に係る共用部費用(いわゆる共益費)を家賃の対価に含めて一括収受している限り、その部分も非課税として取り扱われます。

ただし、駐車場料金は原則課税(住居の貸付と不可分一体といえる特殊な形態を除く)。同一契約書内で「内訳として駐車場○○円を含む」と書いてあっても、その部分は賃料とは別名目で収受した金銭と扱われ、課税になります。

また、短期貸し(貸付期間1か月未満)に該当する場合は、住居の貸付の非課税から外れ、家賃相当と付随費用を含めて課税になります。

事業用物件の場合:課税対象

法人オフィス・店舗など事業用の家賃・共益費は課税が原則。支払った消費税は、要件を満たせば仕入税額控除の対象となり得ます。

用途家賃・共益費備考
住居用原則非課税駐車場代を別契約・別料金で収受する場合や、1ヶ月未満の短期貸しなどは課税対象となり得る
事業用課税支払った消費税は仕入税額控除の対象となり得る

家賃と共益費が分かれている物件の注意点

いくつか注意すべき点もあります。契約前によく確認し、後々のトラブルを防ぎましょう。

更新料の計算に含まれるか確認する

契約内容によっては、更新料の算出基準に共益費が含まれるケースも稀にあります。賃貸借契約書に「更新料は賃料等(賃料及び共益費)の〇ヶ月分とする」といった記載がないか、必ず確認しましょう。契約書の内容が絶対的なルールとなりますので、署名・捺印する前に隅々まで目を通すことが重要です。

共益費の値上げリスクを理解する

一般的に、家賃の改定には借地借家法に基づき正当な事由が必要で、簡単には値上げできません。しかし、共益費は、その性質上、物価や光熱費といった維持管理コストの変動の影響を受けます。そのため、賃貸借契約書には「維持管理費の増減により共益費が不相当となったときは、協議の上で改定できる」といった条項が設けられているのが一般的です。

これをもって「家賃より改定されやすい」とは一概に言えませんが、契約内容によっては将来的に金額が変動する可能性がある点は理解しておくとよいでしょう。

「共益費なし」の物件が本当にお得とは限らない

「共益費0円」や「共益費込み」と表示されている物件は、一見お得に感じるかもしれません。しかし、これは共用部分の維持管理費用が発生していないわけではなく、家賃の中にその費用が含まれていると考えるのが自然です。 「共益費なし」という言葉だけで判断せず、必ず月々の支払総額と初期費用の総額で比較検討することが賢明です。

【入居者・事業者別】家賃と共益費を分けて表示するメリットは?

家賃と共益費を分けて表示する最大の理由は、入居者にとっては初期費用を抑えられ、事業者にとっては物件を魅力的に見せられるという双方のメリットがあるからです。

【入居者向け】初期費用を抑えられるメリット

敷金・礼金などの初期費用は「家賃の〇ヶ月分」を基準に計算されることがあります。ただし、どの費用を何を基準に算定するかは費用ごとに異なるため注意が必要です。たとえば仲介手数料の上限は、「借賃(家賃)」が基礎で、共益費・管理費は原則含めません(もっとも、家賃に「共益費込み」で一体額として設定している場合、その一体額が「借賃」と評価され得ます)。

一方、更新料や短期解約違約金などは契約条項によって「賃料のみ」を基準とする場合もあれば「賃料等(賃料+共益費/管理費)」を基準とする場合もあります。したがって、「共益費は含まれない」とは一概に言えず、契約書の文言(用語の定義を含む)の確認が必要です。

【例】家賃10万円、共益費5千円、敷金・礼金がそれぞれ家賃1ヶ月分の場合

  • 家賃と共益費が別の場合:
    • 敷金:100,000円
    • 礼金:100,000円
    • 初期費用の基準額合計:200,000円
  • 共益費が家賃に含まれている(家賃10万5千円)場合:
    • 敷金:105,000円
    • 礼金:105,000円
    • 初期費用の基準額合計:210,000円

このように、家賃と共益費が分かれている方が、入居時の初期費用や将来の更新料を安く抑えられるというメリットがあります。

【事業者向け】物件を魅力的に見せるメリット

不動産事業者(貸主や管理会社)にとっては、物件検索サイトなどでの「見え方」が重要になります。多くの入居希望者は、家賃の上限を決めて物件を検索します。

例えば、月々の支払総額が10万円の物件を募集する場合、

  • A:家賃10万円、共益費0円
  • B:家賃9万5千円、共益費5千円

と設定したとします。家賃上限「9万8千円」で検索しているユーザーには、Aの物件は表示されませんが、Bの物件は表示されます。このように、家賃を低く設定することで、より多くの人の目に触れる機会を増やし、物件の競争力を高めるという広告戦略上のメリットがあるのです。

ただし、現在では多くのサイトに「管理費・共益費込み」で検索する機能が搭載されており、ユーザーがその設定を使えば検索結果は変わります。

【事業者向け】共益費の具体的な金額設定方法

不動産事業者が共益費の金額を決める際には、主に2つのアプローチがあります。実際にはこれらを組み合わせて、最終的な金額を決定することが一般的です。

1. 実費積算方式(コストからの算出)

年間の維持管理費用の予測額を算出し、それを戸数で割って設定する方法です。根拠が明確で、赤字リスクを抑えられる合理的な決め方です。

ステップ1:年間の総コストを洗い出す

物件の維持管理にかかる費用項目をすべてリストアップし、年額を算出します。

  • 共用部の電気・水道料金
  • 日常清掃・定期清掃の委託費用
  • エレベーターの保守点検費用
  • 消防設備の保守点検費用
  • 給水・排水設備の清掃・点検費用
  • インターネット設備利用料
  • 共用部の清掃や設備保守の外部委託費用など(※)
    ※ここでいう委託費用は、あくまで共用部分の運営や維持に直結する実費を指します。入居者募集や家賃集金といった賃貸経営そのものに関する管理会社への委託料は、原則として貸主が負担する費用です。

ステップ 2:1戸あたりの月額費用を算出する

以下の式で、1戸あたりの共益費を計算します。

1戸あたりの月額共益費 = 年間総コスト ÷ (総戸数 × 12ヶ月)
  • メリット:費用の根拠が明確なため、入居者への説明がしやすい。賃貸経営上の収支計画が立てやすい。
  • デメリット:全てのコストを正確に予測するのが難しい。空室期間は貸主の負担となる。

2. 近隣相場比較方式(マーケットからの算出)

周辺エリアにある競合物件の共益費を調査し、それを基準に設定する方法です。市場の価格から大きく外れることを防ぎ、競争力を維持するために重要です。

ステップ1:競合物件を調査する

自物件と似た条件(エリア、築年数、間取り、設備グレードなど)の物件が、家賃と共益費をそれぞれいくらで募集しているかをリサーチします。

ステップ2:自物件の価値を調整する

調査した相場を基準に、自物件の強み(駅近、新築、最新設備など)や弱み(駅から遠い、古いなど)を考慮して、金額を調整します。

  • メリット:設定が比較的容易。市場価格に沿っているため、入居希望者に受け入れられやすい。
  • デメリット:実際のコストと価格が乖離し、赤字になるリスクがある。近隣に適切な比較対象がない場合は設定が難しい。

共益費に関するよくあるQ&A

Q. 共益費の値下げは可能ですか?

A. 交渉自体は可能ですが、共益費は全戸で按分する性質上、特定の部屋だけを個別に減額することは公平性の観点から合意を得にくいことがあります。

Q. いつ共益費を支払いますか?

A. 通常、毎月の家賃と合わせて指定の期日までに支払います。例えば、口座振替の場合、家賃と共益費の合計額が引き落とされます。

Q. 共益費の支払いを拒否したらどうなりますか?

A. 共益費も家賃と同様に支払い義務があります。支払いを拒否すると債務不履行となり、督促や遅延損害金の請求、最悪の場合は契約解除となる可能性があります。

Q. 1階に住んでいてもエレベーター代は支払うのですか?

A. はい、支払う必要があります。共益費は、エレベーター、廊下、エントランスなど、入居者全員が利用する可能性のある共用部分全体の維持管理費です。個人の利用頻度によって金額が変わることはありません。

Q. 共益費に駐車場料金は含まれますか?

A. 共益費に駐車場料金は含まれず、別契約・別料金となるのが通例です。 また、住居用の家賃・共益費が非課税の場合でも、駐車場は原則として消費税の課税対象となりますので注意が必要です。

Q. フリーレント期間中、共益費の支払いは必要ですか?

A. 「家賃」のみが無料となる契約が多く見られますが、事業者の方針や契約によっては共益費も免除されるケースもあります。最終的には契約書の記載によりますので、必ず事前に確認してください。

Q. 共益費に水道代は含まれますか?

A. 共用部の清掃などで使う「共用水道代」は含まれますが、ご自身が部屋で使う「個人の水道代」は別途請求されるのが一般的です。ただし、物件によっては水道代が共益費込み(定額)の場合もあります。

Q. 共益費と管理費の両方を請求されることはありますか?

A. 表示ルール上は別の概念のため、両方が記載・請求される可能性はあります。例えば「管理費」を建物全体の運営管理費、「共益費」を共用部の光熱費や清掃費といった実費部分として、項目を分けているケースなどです。両方が記載されている場合は、それぞれの内訳を不動産事業者に確認しましょう。

共益費の理解を深め、最適な選択をするために

この記事では、共益費とは何かという基本から、具体的な設定方法、消費税の扱い、よくある質問まで、多角的に解説しました。

共益費は、建物の資産価値と入居者の快適な生活環境を維持するために不可欠な費用です。

入居者にとっては金額に見合った管理品質かを見極めることが、不動産事業者にとってはコストと市場のバランスを考えた適正な価格設定を行うことが、良好な賃貸関係と物件価値の維持に繋がります。共益費という費用をそれぞれの立場で正しく理解し、最適な判断に繋げてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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