• 作成日 : 2025年10月6日

持株会の株を証券口座に移管するメリットとは?注意点や手続き方法を解説

退職や転職をきっかけに「持株会の株を証券口座に移す必要がある」と知り、どのように手続きすべきか迷う方は少なくありません。

  • 証券口座に移管するとどんなメリットがあるのか
  • 売却や配当金の受け取りはどう変わるのか
  • 注意すべき点や手続きの流れは?

このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、持株会の基本的な仕組みから、証券口座へ移管する理由やメリット、注意点、具体的な移管手続きの流れまでをわかりやすく解説します。

さらに、退職や株価動向など売却を検討すべきタイミングについても紹介しているため、持株会を活用している方や移管を検討している方でも安心して理解を深められます。

資産形成やリスク管理につながる内容なので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも「持株会」とは|基本的な仕組み

持株会とは、従業員が給与や賞与から一定額を天引きし、自社株を積立購入する制度です。購入された株式は持株会名義で管理され、配当金は会員に割り当てられるか、再投資に充てられます。

多くの企業では奨励金が支給されており、一般的には拠出額の5〜10%程度が上乗せされるため、従業員は実際の拠出額よりも多くの株式を購入できます。拠出は1,000円程度の少額から可能であり、資産形成のハードルが低い点も特徴です。

また、退職や退会の際には、証券口座を開設して株式を個人口座へ移管する必要があります。単元株未満の株式については、現金精算や追加購入による単元株化が求められる場合があります。

株式投資との違い

持株会は、会社が代行して株式を購入・管理するため、参加にあたり証券口座の開設は不要です。一般的な株式投資は100株単位での購入が基本ですが、持株会では1株未満から積立が可能です。

さらに、株式投資では購入や売却のタイミングを自由に選べる一方で、持株会では購入や売却の時期に制約があります。株主優待は個人名義の株主に付与されますが、持株会を通じた保有では受けられません。

税務処理については持株会が代行してくれるため、手間は少ないものの自由度は低くなります。

持株会のメリット

持株会には次のようなメリットがあります。制度を活用することで、従業員は無理なく資産形成を進められます。

メリット内容
奨励金がある拠出額以上の株式を購入できるため、従業員にとって有利
給与天引きでの拠出無理なく資産形成が可能
少額から参加可能投資初心者でも始めやすい制度
ドルコスト平均法の効果株価変動リスクを平準化できる
配当金の再投資複利効果を得られる
会社による管理代行税務処理や株式管理の手間が少ない
モチベーション・帰属意識の向上自分の業績や会社の成果が株価に反映されるため、働く意欲につながる

持株会のデメリット

一方で、持株会には注意すべきデメリットも存在します。資産形成の手段として利用する際には、リスクを十分に理解しておくことが重要です。

デメリット内容
売却・退会手続きの手間証券口座の開設や移管が必要
株価下落リスク資産価値の減少と給与・賞与減少が同時に起こる可能性
分散投資ができない自社株への投資が集中し、リスクが高まる
株主優待が受けられない個人株主と比べてメリットが少ない場合がある
売却のタイムラグ会社を経由するため、現金化まで時間がかかる
単元未満株の制約個人口座に移せず、現金精算が必要になるケースもある
インサイダー規制の影響決算期前などには売却制限がある
企業業績悪化の影響社員の資産や生活に直接的なリスクが及ぶ

持株会の株式を証券口座へ移管する理由

持株会に参加している従業員は、退職や転職のタイミングで持株会を退会しなければなりません。その際には、必ず株式を個人の証券口座へ移管する手続きが必要になります。

移管後は、そのまま株式を保有し続けることも、任意のタイミングで売却することも可能です。証券口座に移すことで、株主優待や配当金の直接受け取りといった株主としての権利を享受できるようになります。

さらに、資産を自分の口座で一元的に管理できるため、売却タイミングを自分の判断で決められる点も大きな利点です。結果として、流動性や利便性が高まり、より柔軟な資産運用につながります。

持株会の株式を証券口座へ移管するメリット

持株会の株式を証券口座へ移管するメリットは、主に次の4つです。ここからは、持株会の株式を証券口座へ移管することで得られる具体的なメリットについて解説します。

自由なタイミングで売買できる

持株会では、株式の買付けは給与からの天引きで毎月自動的に行われ、売却も会社を通して決まったタイミングでしか行えません。一方で、証券口座に移管すれば、市場で自由に売買できるようになります。

利益を確定したいときや損切りをしたいときに、自分の判断で取引を行えるため、資産運用の自由度が大きく高まります。

株主優待を受けられるようになる

持株会に株式を預けている場合、株主優待を受けられないケースがあります。

しかし、証券口座に移管して自分名義で株式を保有すれば、企業が実施している株主優待の対象となります。株数や保有期間に応じた特典を受けられるため、投資の楽しみが広がる点は大きな魅力です。

配当金を直接受け取れる

持株会で株式を保有している間は、配当金が持株会の口座にまとめて入金されます。

証券口座に移管すれば、自分の口座へ直接配当金を受け取れるようになります。その資金を再投資に回すことも、生活費に充てることも自由に選択可能です。

さらに「株式数比例配分方式」を選択すれば、他の株式からの配当と合わせて同じ口座で管理でき、利便性が高まります。

資産管理を一本化しやすい

持株会の口座と証券口座がわかれていると、全体の資産状況を把握しにくくなります。

証券口座へ移管することで、他の株式や投資信託とまとめて管理できるようになり、資産全体を一覧で確認しやすくなります。ポートフォリオの見直しや運用計画の立案が効率的に行える点もメリットです。

持株会の株式を証券口座へ移管する際の注意点

持株会で積み立ててきた株式を証券口座へ移管する場合には、次のような注意点があります。移管後にトラブルや想定外の不便が生じないよう、事前に確認しておくことが大切です。ここでは、代表的な注意点を解説します。

100株未満だと売却できないことがある

株式市場には「単元株制度」があり、通常は100株単位での売買が基本となります。そのため、移管した株式が100株未満の場合は、通常の市場で売却できません。この場合は「端株(はかぶ)」として証券会社に売却や買取請求を依頼する必要があります。

ただし、端株の取り扱いは証券会社によって異なり、対応できない場合もあります。移管前に証券会社へ確認しておくと安心です。

インサイダー取引規制に注意する

上場企業の社員は、業務上の立場から自社の未公開情報を知り得る可能性があるため、インサイダー取引規制の対象になりやすいです。特に決算発表前や重要情報の開示前に株式を売買すると、違法行為とみなされるリスクがあります。

また、会社ごとに独自の「売買禁止期間」が設けられているケースもあるため、必ず自社の規定を確認しましょう。売却の際は、社内ルールや禁止期間を守ることが不可欠です。

売却益には約20%の税金がかかる

株式を売却して利益が出た場合、約20%(所得税15%+住民税5%)の譲渡所得税がかかります。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、証券会社が自動で税金を差し引くため、確定申告の必要はありません。

一方で、損失が出た場合には確定申告を行うことで損益通算や繰越控除を利用できます。税務処理をシンプルにしたい場合は、特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと便利です。

手数料や口座の種類も確認しておく

証券口座へ株式を移管する際には、手数料がかかることがあります。証券会社ごとに取り扱い内容や必要書類が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

また、NISA口座などの非課税制度を活用すれば、売却益や配当にかかる税負担を軽減できる可能性があります。移管を検討する際には、利用予定の証券会社の手数料、必要書類、利用可能な口座の種類について問い合わせておきましょう。

持株会の株式を証券口座に移管する手続き【3STEP】

持株会の株式を証券口座に移管するには、次の手続きが必要になります。以下では、具体的な3つのステップを解説します。

1. 個人の証券口座を開設する

持株会を退会して株を売却または保有するには、個人名義の証券口座が必要です。

勤務先によっては、特定の証券会社で口座開設を求められる場合があります。口座には「特定口座(源泉徴収あり/なし)」と「一般口座」があり、選択によって税務処理の手間が大きく変わります。

開設には10日前後から数週間かかるケースがあるため、退職や株式売却を予定している場合は早めに準備することが大切です。

2. 持株会から証券口座へ振替申請を行う

証券口座を開設した後は、持株会への振替手続き申請が必要です。

振替には2週間から1ヶ月程度かかる場合があるため、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。株式は100株単位(単元株)での移管が基本ですが、100株未満の端株は現金精算されるか、追加購入によって単元株化して移管するケースもあります。

さらに、移管には手数料が発生する場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

3. 振替完了後に売却・保有を選択する

振替が完了すると、個人の証券口座で自由に株を売却または保有が可能です。

売却益には約20%の課税がかかり、選んだ口座区分によっては確定申告が必要になることがあります。また、インサイダー取引規制に注意し、決算発表前後などは売却が制限される可能性がある点には注意が必要です。

保有を続ける場合は、配当や株主優待(企業によって異なる)を個人として受け取れます。

持株会をやめる・売却するベストなタイミング

持株会をやめる、または株式を売却するベストなタイミングは次のとおりです。状況に応じて判断することで、資産管理やリスク回避に役立ちます。ここでは代表的な3つのケースを紹介します。

退職・転職のとき

退職時には持株会を自動的に退会することになるため、株式を証券口座へ移管するか売却する必要があります。

多くの場合、勤務先が指定する証券会社で口座開設を求められるケースがあり、退職手続きの一環として進められることが一般的です。移管後はそのまま株式を保有し続けるか、売却するかを選択できるため、スムーズに対応できるタイミングといえます。

株価が平均取得額を上回ったとき

自分が保有する株式の平均取得単価(保有中の株式を購入した価格の平均)を株価が上回ったときは、利益を確保しやすいタイミングです。特に株価下落前に売却すれば損失を最小限に抑えることができます。

ただし、売却には移管や承認といった手続きが必要になるため、株価上昇時に即対応できるように事前準備を整えておくことが大切です。

家計や資産の分散が必要なとき

給与と資産の両方を勤務先企業に依存している状態は、リスクが集中しやすく危険です。業績悪化によって給与減少と株価下落が同時に起こる可能性もあります。

特に「預貯金と自社株のみ」という資産構成では偏りが大きいため、売却して投資信託や他の金融商品に分散することがおすすめです。早めにリスク分散を図ることで、家計の安定につながります。

持株会と証券口座移管を賢く活用して資産形成を行おう

持株会は、奨励金や給与天引きによる積立などを通じて、従業員が無理なく資産形成を進められる有利な制度です。

一方で、退職や転職の際には必ず退会手続きと証券口座への移管が必要になり、単元株制度やインサイダー取引規制、売却益にかかる税金など注意すべき点も存在します。

証券口座に移管することで、株主優待や配当金を直接受け取れるほか、自由な売買や資産の一元管理が可能となり、資産運用の自由度が大きく高まります。

退職・株価の上昇・資産分散といったタイミングを捉え、計画的に売却や保有を判断することで、将来に向けた安定した資産形成につなげましょう。


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