多くの企業の経理を見てきたBPO組織が実践している「経理の実務Tips」集Vol.5 月次決算チェックの勘所

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毎回ご好評をいただいている「経理のプロによる実務Tips」第4回をお届けします。
テーマは、月次決算」。多くの企業で早期化が進行中だと思いますが、やはり「精度」があってこそ。その実践的なポイントをスッキリとまとめていただきました。監修いただいたのは、会計・経理のBPO(* )サービスを25年以上行っている、CSアカウンティング株式会社 代表取締役の中尾篤史さん。多くの会社の経理の現場を見てきた、「経理業務のプロ中のプロ」です。

* BPO……ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略称。業務の一部または業務プロセスの全体を外部委託するアウトソーシング形態を指します。

近年、多くの企業がクラウド会計システムを導入し、月次決算の早期化を実現しています。しかし、スピードアップしただけでは不十分です。

大切なのは、スピーディーに作成した月次決算の「精度」を高めることです。今回は、月次決算を効率的にチェックし、信頼性の高い経理体制を構築するためのポイントを解説します。

なぜ月次決算のチェックが必要なのか?

月次決算の数字は、経営者が次の一手を打つための重要な判断材料です。もしその数字が間違っていたら、誤った経営判断につながりかねません。後から数字の誤りが発覚した場合、金額によっては経営者に大きな迷惑をかけることになります。

また、経理部門内の業務効率という観点でも、月次決算時のチェックがおろそかだと、決算時に膨大な修正作業が発生する可能性があります。

日々の積み重ねはもちろん大切ですが、その日々の作業が正しく行われているかを適切にチェックすることが、実は非常に重要なのです。

外部監査や税務調査で指摘事項が多く出ると、経理部門の信頼性が失墜する原因にもなりかねません。そうならないためにも、正確なチェック体制を構築しておくことが不可欠です。

月次決算チェックの具体的なポイント

1. 貸借対照表(B/S)の残高妥当性チェック

B/Sは企業の財政状態を示す重要な資料です。月次決算では、各勘定科目の残高が妥当であるかを証憑も含めてチェックしましょう。

クラウド会計システムに証憑添付機能があれば、都度依頼する手間が省け、スムーズなチェックが可能です。

  • ✔M&Aでも通用する信頼性:最近は、中小企業でもM&Aの売手となるケースが増えています。もし将来的に会社を売却することになった場合、買手側はデューデリジェンス(買収監査)を行います。その際、不明な残高が放置されていると、貸借対照表の内容が不透明になり、相手に与える印象が悪くなります。資産性がないものが計上されていたり、経理のレベルが低いと判断されたりすると、買収価格の減額要因にもなりかねません。日々の月次決算チェックが、会社の将来価値を守ることにつながるのです。

2. 損益計算書(P/L)の異常値チェック

P/Lは企業の経営成績を示します。前月や前年との比較で、異常な変動がないかをチェックします。

  • ✔異常な増減:売上や特定の経費が急増・急減している場合は、必ず原因を突き止めましょう。
  • ✔金額の多寡:金額が大きい取引は、内容を確認します。
  • 特別損益項目:頻繁に発生しない特別損益項目については、発生原因を深掘りしてチェックします。特に、会計上は特別損失として計上されても、税務上は損金とならないケースがあるため、税務上の影響についても事前に確認しておくことが重要です。

3. 消費税チェックの仕組み化

消費税の納税額は、日々の仕訳の積み重ねで決まります。ミスのない仕訳をいかに効率的に作成するかが鍵となります。

  • ✔マスタ設定の活用:「経理の実務Tips」集Vol.2でご紹介したように、勘定科目や補助科目のマスタ設定を工夫することで、ルーティンな取引の仕訳ミスを大幅に減らせます。例えば、特定の勘定科目を選択した際に消費税コードが自動で設定されるようにするなど、システムの機能を最大限に活用しましょう。
  • ✔特殊取引への集中:マスタ設定で対応できない特殊な取引(例:固定資産や有価証券の売却、海外取引など)に、チェックの労力を集中させます。居住用賃貸建物やリバースチャージなど、個別の判断が必要な項目は特に注意して確認しましょう。正しい判断力を養うことが、経理のプロとして求められます。

4. 法人税の申告調整を見据えたチェック

決算時の税務調整は、膨大な手間と時間がかかります。月次時点で調整が必要になりそうな項目をチェックしておくことで、決算時の手戻りを最小限に抑えられます。

  • ✔税務調整が必要な科目:
  • 固定資産:消耗品として処理すべきか、固定資産として計上すべきか。
  • 交際費: 飲食代、広告宣伝費など、税務上の交際費に該当するかどうか。
  • 寄附金:グループ内取引など、寄附金と判断される可能性があるか。
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