
「デジタルインボイス」とは一体何なのでしょうか。デジタルインボイスは、紙の請求書を電子データに置き換えるだけ、ではありません。
デジタルインボイスの目的や意義についても理解することで、経理業務を取り巻く世界的な動きや国内の変化にもついていきやすいでしょう。
この記事では、デジタルインボイスの基礎知識から、導入の背景、デジタルインボイスの世界標準である「Peppol」について、導入の効果を中心に解説します。経理業務に大きな影響を与えるデジタルインボイスについて、まずは基本を押さえておきましょう。
目次
デジタルインボイスとは何か?
「デジタルインボイス」という言葉を耳にすることが増えました。日本語にするならば、
- デジタル=電子
- インボイス=適格請求書
つまり、電子上の請求データのことを指します。
ここで気をつけたいのは、デジタルインボイスとは紙の請求書をPDFなどで電子化したデータのことではない、ということです。デジタルインボイスは「システムでの自動処理を前提とした構造化されたデータ」であり、これまでの紙の請求書とは異なる概念であるということを理解しておきましょう。
なぜ今デジタルインボイスなのか?注目される背景
なぜ今デジタルインボイスが注目されているのでしょうか?その背景をわかりやすくご紹介します。
日本における、インボイス制度導入と電子帳簿保存法
デジタルインボイスが注目される理由の一つは、「インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)※」の導入です。
日本では2023年10月1日から導入されましたが、2023年1月時点でOECD加盟国でインボイス制度がなかったのは日本を除き、消費税が存在しないアメリカのみ。インボイス制度は日本だけの制度ではなく、諸外国では既に施行されている制度なのです。
※インボイス制度とは:事業者が複数税率に対応した仕入税額控除の方式で適切に税を納めるために、インボイス制度(正式名称は「適格請求書等保存方式」)が導入されました。これにより、買い手は仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)等の保存が必要となり、売り手は事前に適格請求書発行事業者への登録が必要となりました。
▼インボイス制度についての詳しい解説はこちら:
「インボイス制度」の概要とマネーフォワード クラウドでの対応方法
インボイス制度のほか、経理業務に大きな影響のあった法改正として「電子帳簿保存法」が2024年1月に施行されました。
▼電子帳簿保存法改正についての詳しい解説はこちら:
電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
この2つの法改正に準拠する上で、デジタルインボイスの導入は非常に有用なのです。仕入税額控除に必須となる「適格請求書」をデジタル化する仕組みとして、また電子帳簿保存法に対応する仕組みとして、デジタルインボイスへの対応は経理のDXを次のステージへ導くカギといえます。
諸外国で進む、デジタルインボイスの普及と義務化
デジタルインボイスについて、現状日本では義務化がされておらず、各企業からの関心度も高まりつつある段階といった状況です。しかし、世界的にはインボイスの授受を含め、バックオフィス業務をデジタル完結させることがトレンドとなってきています。
2024年12月に公開されたEIPA(デジタルインボイス推進協議会)の調査によると、現在80カ国以上が デジタルインボイス発行やデジタルレポーティングの義務化を実施または計画していると言われています。

出典:諸外国におけるデジタルインボイス(e-invoice)制度調査報告書
各国においてデジタルインボイスの普及と義務化が進んでおり、利用、計画が進んでいる国も多く、デジタルインボイスを用いた請求業務に移行しているのが世界的なトレンドとなっています。
デジタルインボイスを導入するためのグローバルな標準仕様「Peppol(ペポル)」
では、どうすればデジタルインボイスへ対応することが可能となるのでしょうか。その具体的な方法が、「Peppol(ペポル)」と呼ばれる規格に準拠して標準化した請求データの送受信です。
Peppol(ペポル)とは
Peppolはインターネット上でデジタルドキュメントをやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様です。
この標準仕様を用いることで、異なる国やシステム間でもスムーズにデジタルドキュメントを交換できるようになります。企業や政府機関がインターネットを通じてデジタルドキュメントをやり取りする際に、共通のルールやフォーマットを使用することができます。
もともとは欧州で発祥したものですが、近年ではシンガポールやオーストラリア、ニュージーランドなど30か国以上で採用の動きが広がっています。これにより、Peppolをベースとしたグローバルなデジタル経済圏の構築が進んでいます。
日本におけるPeppolと「JP PINT」
現在、日本でもPeppolの導入が進んでいるのをご存じでしょうか?
デジタル庁の主導により、国内におけるデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」を策定しました。
また、国内でデジタルインボイスが普及するためには、各事業者が対応サービスを使用していることに加え、ベンダー同士を繋ぐパイプ役、「アクセスポイントプロバイダー」となる事業者が不可欠です。当社はデジタル庁からアクセスポイントプロバイダーの認定を受けています。
Peppolは異なるシステム間の「通訳者」
ここからPeppolの具体的な仕組みについて解説していきますが、少し難しく感じられる方もいるかもしれません。
例えるならPeppolは異なる言語の「通訳者」のような働きをします。異なる請求書システムや会計ソフトを使っている企業同士が、同じデータのフォーマットで請求データの送受信ができるようになります。
Peppolは「4コーナーモデル」を採用
Pepppolは「4コーナーモデル」という仕組みを採用しています。このモデルでは、送信者であるコーナー1と受信者であるコーナー4がそれぞれのアクセスポイントであるコーナー2とコーナー3を通じてPeppolネットワークに接続します。
これにより、契約しているベンダーのサービスに関係なく、Peppolに対応した製品を使用している全てのユーザーとデジタルインボイスのやり取りが可能になります。
どのサービス提供事業者のシステムを使っていても、基幹システムを使っていてもPeppol対応をしているシステムであれば、Peppolを通じて他のユーザーと簡単にデジタルインボイスを交換できるのです。
イメージとして、真ん中のアクセスポイントはPeppolネットワークへのゲートウェイのような役割を果たします。
ユーザーがデジタルインボイスを送信すると、そのインボイスはまずアクセスポイントに送られ、そこからPeppolネットワークを通じて受信者のアクセスポイントに届けられます。
受信者のアクセスポイントはそのインボイスを受け取り、最終的に受信者のシステムに届きます。これにより、異なるシステム間でもスムーズにデジタルインボイスをやり取りできるのです。
マネーフォワードはデジタル庁より認定されたサービスプロバイダー
デジタルインボイスのアクセスポイント、「パイプ役」の事業者として、マネーフォワードはデジタル庁よりサービスプロバイダーとして認定されています。日本では、2024年9月頭現在で国内事業者に絞ると10社がサービスプロバイダーとして認定されています。
デジタルインボイスの送受信に必要なアクセスポイントをマネーフォワードから皆様へ提供することが可能となっています。
まとめ
今回は、
- 「デジタルインボイス」とは何か
- いまデジタルインボイスが注目される背景
- 世界で・日本でデジタルインボイスの対応を可能にする「Peppol」の仕組み
についてご紹介しました。
デジタルインボイスとは何か、どんな仕組みなのか、国内外の対応状況はどのようになっているか、簡単に説明できるぐらいの知識は得ていただけたのではないかと思います。では、デジタルインボイス導入によって具体的に経理業務フローはどのように変わるのでしょうか?次の記事で詳しく解説します。
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