内部統制・コンプライアンスの重要性

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1. 内部統制とコンプライアンスの基本

経理部門で働いていると、「内部統制」という言葉を耳にすることは多いでしょう。

内部統制とは、簡単に説明すると、組織が目的に沿って適正に業務を行うための体制や、そのために構築されたシステムを指します。

上場企業には、経理業務を含む「財務報告に係る内部統制」(以下、内部統制とします)を整備し、内部統制報告書を提出することが義務付けられています。

現行の基準(令和5年12月現在)に沿うと、内部統制は4つの目的を達成するために、6つの要素を組み合わせて構成されます。

目的

業務の有効性・効率性
事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること。

財務報告の信頼性
財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保すること。

法令遵守
事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進すること。

資産の保全
資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ること。

内部統制の目的はそれぞれに独立しているものの、相互に関連しているとされています。

そして、内部統制の目的を達成するため、経営者は、内部統制の基本的要素が組み込まれたプロセスを整備し、そのプロセスを適切に運用していく必要があるとされています。

それぞれの目的を達成するには、全ての基本的要素が有効に機能していることが求められ、それぞれの基本的要素は、内部統制の目的の全てに必要になるという関係にあります。

内部統制の基本的要素

統制環境

統制環境とは、端的にいえば組織風土です。企業の価値観や倫理観、経営者のリーダーシップ、従業員の意識などを指します。具体例としては、企業の経営方針や経営戦略、取締役会や監査役会の機能などが挙げられます。

リスクの特定および評価

企業が直面するリスクを特定し、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析および評価し、適切に対応するプロセスをいいます。識別されたリスクについては、回避、低減、移転、受容など、適切な対応を選択することとされています。

統制活動

リスクを軽減するために実施する活動を指します。例えば、承認プロセス、権限の分離、監査などの活動が含まれます。

情報と伝達

企業の内部および外部に対して、正確で適切な情報を適時に伝達するための仕組みを指します。

モニタリング

内部統制が有効に機能しているかを継続的に監視し、必要に応じて改善を行うための仕組みを指します。

ITへの対応

ITへの対応は、IT環境への対応とITの利用および統制からなります。組織の業務内容がITに大きく依存している場合や、組織の情報システムがITを高度に取り入れている場合等には、内部統制の目的を達成するために不可欠の要素として、内部統制の有効性に係る判断の規準になります。

以上のように、内部統制は、企業の経営目標を達成するために欠かせない仕組みです。内部統制を適切に整備し、運用することで、不正や不祥事の防止や、業務の効率性向上、財務報告の信頼性向上、法定順守の徹底などのメリットがあります。

内部統制と同じく、「コンプライアンス」という言葉も聞く機会が多いと思います。

コンプライアンスとは、法令や社会規範を遵守することです。企業の経営活動においては、さまざまな法律や規制が適用されるので、それらを遵守することは当然の義務ですが、明確なルールがない事項であっても、企業は社会の一員として、社会規範に沿って活動することが求められます。

コンプライアンスの重要性は高まっており、企業不祥事が社会的に大きな問題となると市場で信用を失い、事業活動に大きなダメージを受ける可能性があります。

コンプライアンスの具体的な内容は、企業の規模や業種、事業内容などによって異なります。一般的には、以下の事項が含まれます。

 

    • ・労働関係法規の遵守

 

    • ・消費者保護法規の遵守

 

    • ・環境関連法規の遵守

 

    ・人権尊重や差別禁止などの社会規範遵守

コンプライアンスを適切に実施するためには、自社の事業活動に適用される法令や規制を把握し、対策を実施することが必要です。

コンプライアンスのために整備した体制は、法令等の改正や社会環境の変化に沿って、定期的に見直し、改善することが求められます。

2. 経理担当者が知っておくべき法規制

経理業務を行うにあたっては、法人税等の各種税法や会社法、労働関係法令などの知識が求められるでしょう。

企業活動が各種の法令や規制に違反していないか、仕訳の計上や証憑のチェック、給与計算などの業務を通じて確認することが重要です。

3. 内部統制の実践方法

経理担当者が内部統制を実践する方法としては、経理規定や権限規定などの各種規定を確認し、企業の活動が整備した基準に沿って行われているかを、日々の取引を通じて確認することが必要です。

4. コンプライアンス違反のリスクと対策

コンプライアンスへの違反は、内容によっては企業の根幹を揺るがす事態になり得ます。

対策としては、規程やマニュアルの整備、コンプライアンス教育の実施、社内通報制度の設置、内部監査の実施などが挙げられます。

企業規模に沿って、現実的に機能する有効な対策を実施するとよいでしょう。

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