建設業の経理の課題・悩み

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経理業務の世界のなかでも独特な処理が多く、頭を悩ませることが多いのが建設業です。建設業の会計のための専門資格があるくらいです。

今回は、そんな建設業の経理を行う上で注意すべきポイントをまとめました。

建設業の経理とは?

そもそも建設業と一口にいってもその業態はさまざまです。建設業法では土木工事・建築一式工事など29種類が定義されており、それほどに建設業の業態は幅広いということになります。

なかでも中小企業に多いのが、内装仕上工事など比較的短期間で終わるような工事を行う会社です。今回の記事もそうした中小企業の経理を想定しています。

しかし、規模にかかわらず建設業を通して経理のルールというものは一定であり、そのベースを理解しておくことが建設業の経理において重要になります。

売上の計上のタイミングをいつにするべきか

建設業の経理を行ううえで最も重要な点といってもよいのが、売上の計上タイミングをいつにするかということです。

小売業などであれば相手に商品を渡したときに売上を計上します。このように売上の計上タイミングはモノを相手に引き渡したとき、サービスであれば相手にサービスの提供が完了したときとなります。この考え方を「実現主義」といいます。

この考え方は建設業においても変わることはありません。しかし、建設業のなかには工事が数か月にわたって行われることも珍しくありません。ビルや家を建てるときでも1か月で工事が終わることは通常ありません。

そこで重要になってくるのが、いつ相手に建物など建築の成果物を引き渡したかということです。

言い換えると、成果物について相手が自由に使えるようになったタイミングで売上計上となります。完成するだけでは足りず、相手に引き渡しが完了したタイミングで初めて売上が計上できます。

特に数か月の長期に渡る工事では、着手金や中間金というように何度かお金のやり取りが発生することがあります。しかし、まだこれらのお金を受領した段階では成果物の引き渡しが完了しておらず、お金が入ってきたからといって間違っても売上に計上してはいけません。

原則に従って、あくまでモノを相手に引き渡したタイミングでの計上となります。この場合、着手金や中間金などは「未成工事受入金」などの勘定科目で処理し、引き渡しが完了したタイミングで売上に振り替えることになります。

ただし、以下のいずれかの要件を満たす場合には、モノの完成を待たずに工事の進行とともに売上を認識していく会計処理が必要です。

    1. 工事を進めるにつれて顧客が便益を享受する
    2. 工事を進めるにつれて新たな資産や価値が生み出される
    3. 工事を進めるにつれて他に転用できないような資産が生み出され、かつ完了した部分について顧客が権利を取得する

ただし、内装工事のように完成して初めて顧客がその成果物を活用できるような場合には、完成をもって売上計上というように認識しておけばよいでしょう。

原価計算をどのように行うべきか

原価とは売上を上げるために直接的にかかったコストです。原価は売上に紐づいているため、売上を計上するタイミングで原価を計上しなければいけません。

特に建設業では、入金と売上の計上タイミングにずれが生じます。同様に、材料仕入れの支払いや外注業者への支払いなどのタイミングと、それらを用いて建設した成果物の納期がずれることが多々あります。

この場合、仕入れ先や外注業者へ支払ったとしても、原価の計上は対象となる成果物の納期に一致させる必要があります。

そのためには、仕入れや外注業者がどの工事に関する原価なのかをしっかりと管理し、それを経理処理の際にも反映させなければいけません。

原価については請求書を受け取ったときや支払ったときではなく、その対象となる成果物の引き渡しが完了したときに原価として計上する、ということをしっかりと認識しておきましょう。

この場合、先に支払った分については「未成工事支出金」といった勘定科目でひとまず資産計上しておくことになります。

現場ごとに経費を分ける方法

これまで経理の原則的なルールを解説してきましたが、現場における経費分類のオペレーションも非常に重要です。

現場ごとに経費を細かく把握することで、どの工事でいくら収益が上がっているのかを管理でき、どんぶり勘定での経営を避けることができます。特に建設業のように現場ごとに収支管理をする事業においては、日々の経費の管理も重要です。

現場ごとの経費精算については、レシートの画像などをクラウド経費精算システムに読み込ませて、その場でどの現場の分なのかを各従業員に記録してもらうことで、正確な現場数値の管理や効率的な経費精算が実現できます。

建設業のようにその場その場でのコストの管理が必要な業種については、小口現金などの形よりも経費精算システムを活用した管理がおすすめです。

また、各従業員ごとにビジネスカードを活用してもらうことで経費精算の手間を省くことも可能です。

まとめ

このように、建設業の経理業務においては、売上や原価の計上タイミングや現場ごとの経費精算の管理が重要になります。

効率よく経理業務を回していけるように、現場ごとの売上やコスト管理を工夫するとともに、経費精算のソフトをうまく活用しましょう。

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