基調講演「変革者たちに聞く、管理部門が進める業務改革とは?」/MF Expense expo2019 イベントレポート vol.8

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2019年9月13日、『MF Expense expo2019』が開催されました。

マネーフォワードが提供する経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」チームが主催するイベントで、前年に引き続き2回目となります。

今年のテーマは「Change Readiness 経理はニッポンの伸びしろだ」。経費精算や経理業務をテーマに、計13人の登壇者による9講演が行われ、最新のノウハウや事例、ツールが紹介されました。

本記事では、その基調講演の内容を紹介します。マネーフォワード取締役・瀧 俊雄をナビゲーター役に、会社の管理部門に「変革」をもたらしたお三方が登壇。いかにして管理部門を改革し、それによりどんな実りが会社にもたらされたのか、詳しく話していただきました。

なぜ変革が必要だったか?

登壇していただいたのは、下記3名の方々です。
・株式会社丸千代山岡家・田中陽里氏
・キャディ株式会社・柿澤 仁 氏
・日本ケロッグ合同会社・門野映子氏
みなさん共に、事業環境の変化で管理部門・バックオフィスに大きな変革を迫られた、その渦中にいた方々です。まずは会社の業務内容と、どんな変革をもたらしたのかを簡単に紹介してもらいました。

田中氏:「丸千代山岡家は東日本のロードサイドを中心にラーメン店を約150店舗手掛け、その約80%のお店が24時間・365日営業を採っています。私はそのバックオフィスのシステム作りを担当し、業務改革を進めています。その一つとして行ったのが、店舗スタッフの経費精算業務の一新です。

弊社では各店舗でラーメンを手作りしているので、お店ごとにスーパーで買った食材の仕入れや、お店間での移動費、町内会費などの現金の支出が発生します。その精算をこれまでは店舗スタッフがシステムに入力し、領収書やレシートを月末に本部へ送るという作業をしていました。ただ、こうした事務作業は忙しい店舗業務をこなしながらだとどうしても、入力ミスがあったりやレシートが届かないこともしばしば。本部の経理スタッフも、その処理のために月末は徹夜するほどの忙しさでした。

そこで導入したのが『マネーフォワード クラウド経費』です。これを各店舗に置かれた複合コピー機にAPIで接続し、レシートや領収書をスキャンするだけでデータが自動で取り込まれるようにしました。これにより、店舗スタッフの経費精算にかかる手間が大幅に削減され、経理担当の月末業務の負担も軽くなりました」。

柿澤氏:「私たちキャディは金属加工メーカーと部品工場の間で行われる受発注を最適化するためのプラットフォームを提供しているベンチャー企業です。私はそこで経理、労務、総務、法務のコーポレート部門を立ち上げ、運営しています。とにかくいま会社がものすごいペースで成長していて、従業員も半年で20名から80名に。今後もより大きな成長を目指していることもあり、日々コーポレート部門の効率化・システム化を進めています。

その一環として行ったのが、SaaSを利用した労務管理ツールの導入による、雇用契約の電子化です。毎月10名もの新社員が入ってくるので、契約書のやりとりだけでかなりの労力だったのです。しかし、労務管理ツールの雇用契約という機能を使うことで、今まで契約締結まで1~2週間かかっていたのが、1~2日に縮まりました。紙を郵送し合う手間もなくなりました。

こんなふうに、日頃から『この作業は本当に必要なのか?』というのを常に問い直し、『やめられること』を探すようにしています」。

門野氏:「日本ケロッグはコーンフレークなどのシリアルと、プリングルスなどのスナックを主に扱う食品メーカーです。私はそこで人事、総務、ITを担当しています。2011年以降、シリアル市場は競合他社さんの台頭で、市場環境が激変しました。弊社の業務スキームも大きく変わりました。にもかかわらず、社員の働き方や仕事のプロセスは以前のままで…。

そこで2016年に働き方改革プロジェクトを立ち上げ、フルフレックス制の導入、リモートワークの完全自由化、経費精算業務に『マネーフォワード クラウド経費』を導入、会議の効率化のために紙の資料を極力なくす等々、様々な変革を進めてきました。我々が提供するサービスの本質は何かというのに一度立ち返った上で、本当にこのプロセスは必要なのか、これは何のためにやっているのかというのを見直すようにしています」。

会社や社員の抵抗をどう乗り越えたか

続いて、上記のような変革を、どのように導入したのかの話題になりました。会社や社員の抵抗にはどう対処したのか、ツールに適応できない社員をどうケアしたのか…。

田中氏:「経費精算システムの導入に関しては、決してバックオフィスだけの効率化ではなく、人手不足が叫ばれる中で会社全体としてメリットがあるという方向で会社に話しました。それにより、会社全体のアンテナに引っかかってくれたのかなと。それと、今回の導入で経理部のトータルの仕事量は少し増える形になるので、経理部には『この部分の業務を効率化するので、新しいシステムの導入を受け入れてもらえませんか』と交渉しました」。

柿澤氏:「バックオフィスで起きている問題は、元をたどるとフロント側で発生した事象が起因しているケースが多く、現場で疑問や問題が起きた時に「バックオフィスに相談しよう」という発想をもってもらえるようにあらかじめインプットしておくことが大事だなと感じました。また、たとえば経費精算をする際に勘定科目の入力項目を「バス代」などの現場メンバーがわかりやすい表記にして、裏側で科目を紐づけるなど現場が悩まなくて良いような対応をしていくことが大事だと思いました。」。

門野氏:「社員にとっては、今までの慣れたことから、急に違うことをやらなくてはいけないという面で大変さがあるだろうと思い、そこはできるだけケアするよう心がけました。

しかし当プロジェクトの先には、社員が早く帰れるようになるとか、仕事の本質的な部分に時間を割けるようになるなど、会社としてのメリットがあるという強い信念があったので、反発や抵抗の声があってもあまり気にせず、耳を傾けないようにし、やるべきことを推し進めていきました」。

管理部門の変革がもたらした「実り」

そして社内変革の結果、実際に何がもたらされたのか。気になるポイントを3人に聞いてみました。

田中氏:「現場のスタッフは、経費精算のような業務が苦手な方が多い傾向があるかもしれません。レシートの内容をシステムに入力するという、店舗スタッフにとってただの義務に思えてしまう面倒な業務が、レシートをスキャンするだけでOKになったことで、結果的にスタッフが2人いなくてはいけない時間を1人に減らすことができたり、店舗業務や接客業務により時間を使えるようになりました。そこが一番大きな部分です」。

柿澤氏:「今まで自分で手を動かしたり考えたりしていた時間を使い、より本質的なことに時間が使えるようになりました。例えば、意識的に他部署に行き、具体的にどんな業務をやっているのかとか、どんな問題が起こっているのかというのを聞き出す時間を設けられるようになりました。それにより業務内容に対する解像度のようなものが高くなりました。

例えば、管理部門で起こっている問題は現場のあの部分に起因しているんじゃないかとか、今後こんな問題が起きそうだぞというのがどんどん見えるようになりました。要は『事業目線』を持てるようになったというのを、すごく感じています」。

門野氏:「経費精算一つをとっても、それまではエクセルに入力して印刷して上司のいる支店に送り、それを上司が何日後かに承認し本社にまた送るという形で、支払いまでにすごくタイムラグがありました。申請者もそのためだけに出社したり、経理スタッフも苦労してエクセルの操作を行っていました。でも経費精算システムの導入で、そうして時間の大部分を、別のところに充てられるようになって。

私が部下にいつも話しているのが、バックオフィスというのは社員の時間を奪うことも、逆に時間をお返しすることもできる、ということです。今まで非効率的なプロセスで社員の時間を大きく奪っていた経費精算や勤怠管理の業務も、効率的なプロセスにしたりシステムを入れたりすることで、社員が本質的な仕事に向かう時間を増やしてあげられる。付加価値を生まない仕事を減らしたことで、それが実現できるようになりました」。

10年後、管理部門はどうなっているか

最後に、ナビゲーターの瀧氏から「10年後はどうなっていますか?」という質問が投げかけられました。

田中氏:「少なくともルーティンワークがどんどん減っていくことは間違いないでしょう。その時にどんな仕事が残るのか。おそらく、例外が発生した時にそれを救ってあげられる人しか残らないんじゃないかなと思っています」。

柿澤氏:「単に自社のバックオフィスを効率化するというのにとどまらず、10年後の製造業全体のバックオフィスを我々発信で効率化するというのを、ビジネスとしてどんどんやっていきたい。弊社で進めるバックオフィスの変革が、製造業であたりまえになるようにしていかなくてはいけないという、使命のような想いがあります」。

門野氏:「AIや機械化が当たり前になることで、仕訳ができるとか正確に事務手続きができるといったところにバックオフィサーとしての価値はなくなるでしょう。そうなった時にどんな人材に価値が出るかというと、やっぱりビジネスそのものに寄与できる人なのかなと。

たとえば人事であれば、人事の領域の専門家としてどうビジネス的に付加価値を出せるかを経営陣にアドバイスする。ファイナンスであれば数字の専門家として、数字を報告するだけでなく、そこから何が見えるのか、どんなことが起こりうるのかを助言する。そんなふうにビジネスの根幹に入っていくようなバックオフィス人材が求められていくと思います」。

まとめ

業態も事業ステージも異なる3社によって進められた管理部門の変革。しかしそこには「『やめること』を決めることが大切」「管理部門を変革することで、より本質的な仕事に注力できる」「今後は経営の根幹に関われるバックオフィサーが求められる」といった共通の見解も多くありました。

「管理部門から会社を変える」。そのきっかけを当記事からつかんでいただけたら幸いです。

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