
4月某日。マネーフォワードのBizpedia編集部に、元国税職員で芸人のさんきゅう倉田さんが“税金のボードゲーム”を作ったという情報が入ってきました。
そのボードゲームの名は「税金とり」。
「なにその怖い名前」とビビりながらもさんきゅう倉田さんに問い合わせると、なんと「税金とり」を持ってマネフォオフィスに来てくれることに。さんきゅう倉田さんとマネフォ社員5名が出来立てホヤホヤの「税金とり」で遊んでみました。
目次
なんで「税金とり」を作ったの?
血も涙もない名前
――「税金とり」はどんなゲームなんですか?
さんきゅう倉田:初めに各プレイヤーが「政治家」「社員」「ニート」「国」などの職業になりきり、自分のお金を増やしていくゲームです。子ども向けに作ったボードゲームなので、遊びながら社会で税金がどう回っているか学べます。
――なぜこのようなボードゲームを作ろうと?
さんきゅう倉田:僕は普段劇場で漫才をやっているんですけど、お客さんは女子高生や女子大生が多いんですね。そこで漫才をやって気付いたんですが、確定申告をネタにしてもお客さんに意味が伝わらないんですよ。だから全然ウケなくて。それで、子どもの頃からみんなに税知識を持ってもらいたいなと思ったんです。
元国税職員のさんきゅう倉田さん
まずは「税金教室」という子ども向けのワークショップを始めました。でも学校でワークショップを開きたくてもコネがないと難しいんですよね。しかも僕一人の力ではなかなか全国に広がっていきません。
それで、「小さい僕」をいっぱい作ってそれを学校に送ればいいなと思い、「税金とり」を作りました。これを全国の小学校、中学校、高校に無料で配布して、遊びながら税金のことを学んでくれたらいいなと。
ちなみに一般販売もしています。2個セットで4,200円ですが、そのうち1個を学校に送り、残りの1個をお手元に配送します。
ルール説明と各プレイヤーの役職決め
マネフォ社員わくわく
「税金とり」のルール説明
さんきゅう倉田:それではみなさん、今日はよろしくお願いします。
マネフォ社員一同:よろしくお願いします!
さんきゅう倉田:早速ストーリーを読み上げますね。
「大人になったらどんな仕事をしようかなぁ」
国や会社、社員など、さまざまな職業になってお金を稼ごう。お金を稼いだら、必ず税金を払うのがこの国のルールだ。税率は10%。つまり、100万円稼いだら、その中から税金10万円を国に納めて、90万円がもらえるよ。
・カードは「国の予算カード」と「役職カード(職業や雇用形態など)」の2種類
・役職カードは「国」「会社」「社員」の3枚を必ず使い、残りは人数分を自由に使う
・はじめに各人300万円ずつもらう
(1)それぞれ役職カードを選ぶ
(2)「国」になった人は国の予算カードを引く。他の人に見せてはいけない
(3)国の左隣の人から時計回りにゲームスタート
(4)自分の番が回ってきたら役職カードに書かれた「能力」の指示に従う。誰かからお金をもらった人は10%を国に納める
(5)国の番になったとき、国は予算カードの金額を超えるようみんなから寄附金を集める。予算金額を伝えてはいけない
(6)最終的に国に予算を超える金額が集まれば、一番お金を稼いだ人と国の勝ち。もし国が破綻したら一番お金が少ない人の勝ちとなる
各プレイヤーの自己紹介と役職決め
さんきゅう倉田:それではそれぞれ役職カードを選んで、せーので見せあいましょう。
一同:せーの!おぉ~!
役職:個人事業者
「元国税職員のさんきゅう倉田です。好きな言葉は『増税』です。芸人をやってます。よろしくお願いします」
役職:社員
「ふるさと納税、iDeCo、NISAといった“お得”につながる制度は勉強しましたが、直球で税知識と言われると……。今日は知識を深めます!」
役職:投資家
「今年初めて確定申告をして税金についていろいろ調べましたが、もうあまり覚えていません……」
役職:ニート
「税知識はお客様からのお問い合わせの対応ができる程度で、ときどき税理士先生に教えてもらって勉強しています」
役職:国
「実は昨年、FP3級を取ったんですけど税金の名前ぐらいしか覚えてなくて。さらに今年は初めて確定申告もしましたが、e-taxでとりあえずボタンを押し続けたら終わった、みたいな。税知識はあまり自信がありません……」
国が勝つか、ニートが勝つか…ゲーム開始!
国が勝つか、ニートが勝つか…
どの予算を引くかな
さんきゅう倉田(個人事業者):それでは国以外のプレイヤーは300万円ずつ山から持って行ってください。国のプレイヤーは誰にも見られないように予算カードを1枚引いてください。
やる気(国):(カードを引いて内容を見て)……なるほど。
惣郷(ニート):人生ゲームを思い出す。
さんきゅう倉田(個人事業者):国のターンは最後ですが、それまでに予算を超える税金が集まらなかったら国は破綻します。破綻しないよう国は寄附を募れますが、みなさんが寄附するかは自由です。
やる気(国):やばいwwちょっとみなさん国のために寄附お願いしますよwwこれって「いくら寄附が必要です」ってみんなに言ってもいいんですか?
さんきゅう倉田(個人事業者):金額は言っちゃダメです。予算に達していてもお金が欲しかったら「寄附して」って言っていいですよ。
やる気(国):みんなの良心にかかってるw
さんきゅう倉田(個人事業者):国が破綻しないかぎり3ターンやっていきます。国に予算が集まれば、国と一番お金を持っている人の勝ち。予算を下回れば国は破綻し、一番お金が少ない人とニートが勝ちになります。
惣郷(ニート):おっ……!(笑)
さんきゅう倉田(個人事業者):ニートは失うものがないので。
一同:(笑)
さんきゅう倉田(個人事業者):では国の左隣の人から時計回りに始めましょう。
「社員」のたかみが一瞬で富裕層に
【役職】
社員
【能力1】ボーナス
サイコロをふり、出た目×100万円を山からもらえる
【能力2】労働
会社・個人事業者が事業を行うとき、報酬をもらえる
サラリーマンの年収の限界を超えられるか!?
たかみ(社員):じゃあ私から。社員の1つ目の能力は「ボーナス」です。「サイコロをふり、出た目×100万円を山からもらえる」。
(サイコロをふり、出た目は6)
一同:おぉ~~!強運!
たかみ(社員):すみません600万円もらいます。もう1つ「労働」っていう能力があります。
さんきゅう倉田(個人事業者):それは会社か個人事業者のターンで彼らから報酬がもらえる能力です。
やる気(国):そしたら僕はたかみさんに入った600万円のうち10%の60万円を税金としてもらえるんですよね?
たかみ(社員):(やる気に60万円を差し出し)お納めください。
康(会社):国、いいですね。
やる気(国):みんな稼げ!頑張れ~!w
「個人事業者」のさんきゅう倉田は堅調
【役職】
個人事業者
【能力1】事業
社員・アルバイトのうち一人に好きな金額を報酬として払う。サイコロをふり1・2・3は報酬×2、4・5・6は×3を山からもらえる
【能力2】労働
会社・個人事業者が事業を行うとき、報酬をもらえる
税金が心底好きそう
さんきゅう倉田(個人事業者):次は僕です。1つ目の能力は「事業」。「社員、アルバイトのうち、一人に好きな金額を払う」。社員かアルバイトはいますか?
たかみ(社員):はい!社員です!
さんきゅう倉田(個人事業者):「サイコロをふり、1・2・3は報酬×2、4・5・6は×3を山からもらえる」。じゃあまずは100万円を社員に払います。
(サイコロをふり、出た目は1)
さんきゅう倉田(個人事業者):1が出たので100万円×2を僕はもらえます。
一同:おぉ~!
たかみ&さんきゅう倉田:税金を10%納めます。
「投資家」のぐっちょんはギャンブル的展開
【役職】
投資家
【能力1】株
会社に好きな金額を投資し、サイコロをふって投資した金額×出た目を山からもらえる。1が出たら資産をすべて失う
【能力2】NISA
1ターン目は税金を払わなくてよい
趣味はスマブラ
ぐっちょん(投資家):僕は投資家ですね。1つ目の能力は「株」。「会社に好きな金額を投資し、サイコロをふって投資した金額×出た目を山からもらえる。1が出たら資産をすべて失う」。
なるほど、どうしよう(笑)。
一同:えぇ~~!www
惣郷(ニート):ギャンブルだな。
ぐっちょん(投資家):じゃあ100万円を会社に投資します。
康(会社):ありがとうございます。
ぐっちょん(投資家):サイコロふります。
(出た目は3)
一同:おぉ~セーフ。
ぐっちょん(投資家):100万円投資したから300万円もらえるんですね。
やる気(国):で、僕は30万円もらえるのか。
ぐっちょん(投資家):いや、待ってください。もう一つの能力が「NISA」で、1ターン目は税金を払わなくてよいって書いてますね。
たかみ(社員):非課税だ(笑)。
さんきゅう倉田(個人事業者):そうです。ちなみに会社の2つ目の能力を読んでもらってもいいですか。
康(会社):はい。私が会社です。「投資家から投資を受けられる。投資でもらったお金は税金を納めなくてよい」。
やる気(国):じゃあ、さっき投資した100万円も非課税なんですね……。
ぐっちょん(投資家):すみませんなんか(笑)。
働いたら負けでは?「ニート」の惣郷が社会復帰へ
【役職】
ニート
【能力1】がんばる
サイコロをふり1が出ればアルバイトになる。すでにアルバイトがいる場合、アルバイトはニートになる
【能力2】自宅警備
ゲーム中、寝ていなければならない
脱ニートなるか?
康(会社):惣郷さん、ニートっぽい雰囲気出てる!(笑)
惣郷(ニート):読みます。ニートの1つ目の能力は「がんばる」(笑)。「1が出ればアルバイトになる。すでにアルバイトがいる場合、アルバイトはニートになる」って書いてますね。
康(会社):アルバイトさんいないですね。
さんきゅう倉田(個人事業者):2つ目の能力は?
惣郷(ニート):2つ目の能力は「自宅警備」。ゲーム中は寝ていなければならない!?
康(会社):これ……w
一同:がんばれ!1出せ!
(サイコロをふり、出た目は1)
惣郷(ニート):おぉ!1が出た!アルバイトになった!w
一同:おめでとう~!w
惣郷(アルバイト):ありがとうございます。
嬉しそう
ぐっちょん(投資家):ニート的には嬉しくないんじゃないですか(笑)。
惣郷(アルバイト):確かにねw働いたら負けだからね。
「会社」の康は支払いをケチって誤算!?
【役職】
会社
【能力1】事業
社員・個人事業者・アルバイトのうち一人に好きな金額を報酬として払う。サイコロをふり出た目×報酬を山からもらえる
【能力2】資金調達
投資家から投資を受けられる。投資でもらったお金は、税金を納めなくてよい
会社の能力優遇されてない?
康(会社):さっき投資家のぐっちょんのターンで「資金調達」の能力は使ったから……もう1つの能力は「事業」。「社員・個人事業者・アルバイトのうち一人に好きな金額を報酬として払う。サイコロをふり、出た目×報酬を山からもらえる」。
もしかして全員いる?
さんきゅう倉田(個人事業者):全員います。僕はパン屋やってます!
一同:パン屋だったんだw
康(会社):じゃあ個人事業者のさんきゅうさんに報酬50万円をあげます。
さんきゅう倉田(個人事業者):少ないですね。
康(会社):え!wうそ!w
(サイコロをふり、出た目は3)
康(会社):出た目×報酬をもらえるから、150万円もらえる。あぁ、報酬100万円出しとけばよかった……。
やる気(国):僕は税金15万円もらえるんですか?
さんきゅう倉田(個人事業者):「税金とり」では一桁万円は切り捨てなので、10万円です。本当の税金の切り捨てルールに似てますね。
一同:へぇ~!
「国」のやる気は必死に説得「経済回んないすよ!」
【役職】
国
【能力1】破綻
ターンの最後に寄附をつのることができる。予算より国の資産が少なければ国は破綻する
【能力2】税金
他のプレイヤーがお金を稼ぐと、税金としてその金額の10%がもらえる
なんか腹立つな
やる気(国):最後は僕ですね。国の1つ目の能力は「破綻」。「ターンの最後に寄附を募ることができる予算より国の資産が少なければ破綻する」。
僕の今の手持ちは100万円ってことですね。じゃあ、ちょっとみなさん寄附を。
康(会社):え……。
惣郷(アルバイト):ん~……。
さんきゅう倉田(個人事業者):430万円
たかみ(社員) :930万円
ぐっちょん(投資家) :600万円
惣郷(アルバイト) :300万円
康(会社) :490万円
やる気(国) :100万円
一同:たかみさんめっちゃお金持ってるw
やる気(国):説得していいですか!?wみなさん、自分たちが住んでる国が破綻しかけてますよ?
たかみ(社員):(500万円を差し出し)こちらお納めください。
一同:おぉ~!
さすがセレブ
さんきゅう倉田(個人事業者):僕は所持金少なめだから国が潰れた方がいいかな。
惣郷(アルバイト):国が潰れたら、ニートだけじゃなくアルバイトも勝ちになります?
さんきゅう倉田(個人事業者):なりません。
惣郷(アルバイト):あぁ~。じゃあもう勝ち目はないかな。
康(会社):うちの会社経営、結構厳しいんで……。いやぁ~きりきり舞いなんで……。
やる気(国):いやいや結構やばいですよ。財政。
たかみ(社員):ぐっちょん、さっき投資で稼いでたよね?それ出せば税金集まるよ!
ぐっちょん(投資家):ん~。(10万円を見せながら)じゃあこれ?
たかみ(社員):ケチだなぁ。
ぐっちょん(投資家):じゃあ50万円寄附しますw
それでもケチ
さんきゅう倉田(個人事業者):じゃあ僕も100万円寄附しますよ。
惣郷(アルバイト):えぇ!?みんな結構いきますねぇ。
やる気(国):みんなもっと寄附してくれないと、これじゃあ経済回んないすよ。
康(会社):じゃあ50万円だけ……。
惣郷(アルバイト):じゃあアルバイトも40万円。
お母さん見てますか?
康(会社):えぇ!?バイトも出すの!?
たかみ(社員):えぇ~!すごい!
さんきゅう倉田(個人事業者):さっきまでニートだったのに。
康(会社):初任給を親にプレゼントするみたいだね。
さんきゅう倉田(個人事業者):330万円
たかみ(社員) :430万円
ぐっちょん(投資家) :550万円
惣郷(アルバイト) :260万円
康(会社) :440万円
やる気(国) :840万円
やっぱりなんか腹立つ
やる気(国):840万円になりましたけど、もうちょっと欲しいっすね。
さんきゅう倉田(個人事業者):ほんとかな?
やる気(国):いやほんとですよ!
信用ならん
さんきゅう倉田(個人事業者):じゃあ僕もう100万円出します。
たかみ(社員):でも、これでもし国が勝っても、さんきゅうさん勝てなくなりますよ?
さんきゅう倉田(個人事業者):予算が集まればあと2ターンできるので、最終的に勝てば大丈夫です。
たかみ(社員):じゃあ……もう少し続けたいから私も100万円寄附する。
やる気(国):他の人はどうします?
ぐっちょん(投資家):1,040万円集まったからもう大丈夫じゃないですか?(笑)
やる気(国):もういないですか? じゃあ1,040万円で終わりですね。予算カードを開きます……。
やる気(国):なんと「オリンピック誘致1,000万円」でした!
一同:おおお!セーフ!
たかみ(社員):結構ギリギリだったんだ!
康(会社):アルバイトの40万円が効いた!?(笑)
数々のドラマを経て…最終的に勝ったのは?
その後2ターンを回す中で、たくさんのドラマがありました。
脱ニートに成功した惣郷がアルバイトで稼ぎまくり、いつの間にか高収入アルバイターになり……。
さっきまでニートだったのに
投資家のぐっちょんが康の会社に投資しまくったあげく、まさかの破産。ゲームオーバーになり……。
見た目によらずギャンブラー
最強のサイコロ運と資金調達に成功した康の会社がキャッシュを積み上げまくり、いくら寄附しても痛くも痒くもないほどの超金持ち企業に成長し……。
めちゃ貯め込んでる
全3ターンを終え、最終的には康(会社)と、予算を超える税収を集め続けたやる気(国)の勝ちとなりました。
2人とも超嬉しそう
「税金とり」を大人がやった感想
写真を見れば推して知るべしではありますが、「税金とり」をやってみたマネフォ社員に感想を聞いてみました。
「楽しかったですね。投資家や会社はお金を回すチャンスがあるのを実感できました」
「お金を払うって身銭を切ってることに注目しがちだけど、それ以上のリターンもあるんだなってわかりましたね」
「社員はリスクが少なかったけど、そのかわりあまりお金を動かせなくて、会社や投資家がうらやましかったなぁ」
「国をやってみて、何にいくらかかるから寄附してって論理的に説明できないと、そりゃみんな寄附してくれないよなって思いました。自分たちが国に税金を納める上でも何の政策に使われるかわからないと納得して払えないじゃないですか。税金納めてほしい!ってお願いする国の気持ちに少しなりました(笑)」
大人でも大いにはしゃげることがわかった「税金とり」。気になる方はさんきゅう倉田さんのTwitterをチェックしてみてください。
さんきゅう倉田さんのTwitterはこちら(@thankyoukurata)から。
さんきゅう倉田さんがBizpediaで執筆した記事はこちらからご覧ください。
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