電子帳簿化のコストは?デメリットはある? ~最前線の現場に立つスペシャリスト・袖山税理士にギモンをぶつけてきた(後編)

読了まで約 5

前編に引き続き、電子帳簿保存法の運用における国内屈指のスペシャリスト・袖山喜久造税理士にインタビュー。経理業務の効率を大きく高められる“電子帳簿化”ですが、いざ導入するとなるとコストやデメリットの部分も気になります。後編ではその辺りを中心に最新事情を交えながら語ってもらいました。

前編はこちら:電子帳簿保存法、いま導入すべき大きな理由は? ~最前線の現場に立つスペシャリスト・袖山税理士にギモンをぶつけてきた(前編)

取材ご協力:
袖山 喜久造(そでやま きくぞう)
SKJ総合税理士事務所 税理士。中央大学商学部卒業後、長年に亘って国税庁や東京国税局調査部において大企業の法人税調査事務等に従事。平成24年に退職し、税理士事務所を設立。税務コンサルティングや税務調査対応を行うとともに、電子帳簿保存法に精通した国内屈指のスペシャリストとして、経理書類や証票のペーパーレス化、電子化を普及・促進する。

 

運用側にも従業員側にも知識のハードルは高くない

―電子帳簿化を進めるにあたり、経理担当者にどれくらい専門知識が必要かというのが気になるところです。

書類を電子化して領収書等の原本を破棄するためには、はじめに国に申請を行う必要があります。申請書類には、導入する新しい業務フローがどんなものかを書き込みます。

とはいえ資本金1億円未満の会社の場合、原則として申請書の審査担当が国税局ではなく税務署になります。その場合、大規模企業が提出するような膨大な添付書類は必要とはなりません。申請する業務フロー等により入力ルールが電子帳簿保存法にきちんと対応した経費精算システム*を使うものであれば、よほどの問題がない限り却下はされないでしょう。

*「JIIMA認証」を受けているソフトは現在19製品あり(2018年5月時点)、ウェブサイトで公表されています。「マネーフォワード クラウド経費」は、経費精算システムでJIIMA認証を受けた1番目の製品です。

また実際に運用するにあたっても、数十名~数百名規模の会社であれば、それほど多くの業務フローは必要ありません。基本的にはフローを1パターン作って「今後はこれでやってください」と従業員に伝達するだけなので、運用部分のハードルもそれほど高くないと思います。

―では、従業員側の知識やITリテラシーについてはいかがでしょう。

従業員には「領収書をもらったら3日以内に撮影してマネーフォワード クラウド経費に保存してください」とか「3日を過ぎた場合は領収書の原本も添えて提出してください」などと決められたフローを遂行してもらうだけなので、電子帳簿保存法をきちんと理解してもらわなくても問題ありません。

ITリテラシーに関しても、特別な知識は不要で誰でも使えるようなソフトを通しての経費精算になるでしょうから、最低限のスマホ操作やパソコン操作ができれば問題ありません。

導入コストは会社規模ややり方によって大きく変わる

―電子帳簿化に際してのコストはどのくらいかかりますか?

会社の規模や従業員数によってだいぶ違いますし、データの保存をオンプレミス(自社運用)のサーバーを使うかやクラウドにするかによっても変わります。もちろん導入するソフトの料金によっても違ってきます。

かなりざっくりではありますが、従業員200人の会社で、経費精算するのが100人くらいだとしたら、電子帳簿保存法に対応したソフトの使用に年間200万円ほどかかるイメージでしょうか。もちろん、電子保存化して原本を破棄するのであれば、これまで紙で保存していた分の場所や労力といったコストを逆にカットできます。

電子化の恩恵を早く享受するに越したことはない

―では、電子帳簿化のデメリットとは?

申請する手間はかかりますが、最初にそれをクリアすれば後はメリットばかりついてきます。税務調査が入った時に、領収書の原本がないと不利になるということも基本的にありません。ですので、デメリットは特に思い浮かびませんね。もちろん費用はかかりますが、それを上回るメリットが望めます。

あえていえば、保存するのがデータなので、万が一のことがあれば一瞬にして消えてしまうリスクがあります。国税関係書類は基本的に7年間、最長で11年間保存しなくてはいけません。だから11年後になくなってしまうかもしれない会社にデータを預けるということでは困るわけです。また外資系のクラウド事業者の場合、「万が一の際はデータの責任は負いかねるので、バックアップは自身で取っておいてください」という事業者は多くありますので注意が必要です。

そのための措置として、国内の優秀な、事業が安定した事業者にデータを預けるというのが一つのポイントになってくるでしょう。

―電子化の導入は、早ければ早いほどいいのでしょうか?

導入コストに関して言えば、普及後に進めたほうが一般的に考えてタイムスタンプ費用などはおそらく安くなるでしょう。しかし電子化を導入することでもたらされる経費精算の時間短縮、経費の適正化、生産性の向上といったさまざまな恩恵を考えると、早く始めて利益を享受するのが得策だと思います。早ければ早いほど競争力の強化や他社との差別化にもつながるでしょう。

せっかくこういう仕組みがあるのに、使わない手はないのではないでしょうか。いい方向に変わることはあっても、使って悪くなるということは基本的にありません。紙で仕事をして現状維持なのか、電子化して成長につなげるかの2択と考えると、やはり早く導入するに越したことはないでしょう。

袖山先生に電子帳簿保存法の導入の際に知っておきたいポイントをお聞きし、1つの冊子にまとめました。ダウンロードはこちらから!

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。