なぜ世界で日本だけがマイナスを△と書くのか? 受け身の経理から攻めの「インテリジェンス経理」への変身を

経理担当者 スキル

会社のなかで経理担当とは、「守り」の仕事でしょうか?もちろん法律に則り正しく経理業務を遂行することは大切ですが、ITによりさまざまな業務が効率化されるなか、経理に求められるものも変化しているようです。会計士として幅広くご活躍中の、田中靖浩さんに語っていただきます。

なぜ日本ではマイナスを△記号で書くのか?

つい私たちは馴染みのある習慣について「みんなもそうしている」と思いがちです。経理でいえば、その代表が「マイナスを△マークで書く」習慣です。

このルールをグローバルだなんて思ったら大きなまちがい。私が知る限りこのような習慣は日本にしかありません。完全なローカル・ルールです。

ずっと昔、外国人から質問を受けたとき、そのことに気が付きました。「why?」と質問されてもまったく答えられなかった私。被せるように「△と▲のちがいはなんだ?」と訊かれても絶句するだけでした。

そこで調べてみたところ、どうやらこの「△」は大正時代、税務署の指導によってはじまったらしいということが分かりました。なぜ税務署がこのような指導をしたかといえば、それは「数字の偽造防止」だったようです。たしかに「−」は、あとから別の数字に書き換えられる可能性があります。これに対して△にその可能性がありません。▲に至ってはぜったい無理です。

この経理ウンチクは「へえ〜」と聞き流してもらうとして、今回の本題はそこではありません。わが国の場合、経理部の皆さんは「ルール」、特に経理実務全般について税金のルール・指導に極めて敏感です。税務署が「△を使いなさい」といえば、そのようにしなければなりません。

経理が一斉に動くというのは、国全体の統制がとれて良いことではあります。

しかしその「受け身体質」は、ともすると会社の弱点になりかねません。これだけ環境が目まぐるしく変化しているというのに「受け身体質」のままでは必ず対応の遅れが出ます。規制は必ずといっていいほど最低限かつ遅れて出てくるからです。

経理マンに求められる「新たな資質」

もちろん経理部にとって「法律やルールを守る」という態度を捨ててはなりません。守るべきところはキチンと守る。それはそれとして、近年の経理部には「自ら能動的に、積極的に考える姿勢」が期待されています。それはIOT(Internet of Things)やAI(人口知能)の登場と無縁ではありません。ハードウェア・ソフトウェアがかなり力を付けている昨今、これから会社の経理実務どころか、国全体の納税や財務報告の仕組みが大きく変わることが予想されます。

そろそろ私たちは従来の「受け身で守りの経理」とは別に、新時代の経理に求められる「新しい資質」について考えたほうがいいと思うのです。

そのような「新しいヒント」を見つけるコツは「外側」をたずねてみることです。いつもと同じ場所、同じ業界、同じ職場で手がかりが見つかることはほとんどありません。いつもの「常識」から自由になるためには、住み慣れた世界を離れてみるに限ります。今回は「軍事」の世界において「情報」がどんな意味と内容で使われているかをご紹介しましょう。そこに経理マン「新たな資質」の重要ヒントが見つかるかもしれません。

情報はインフォメーションとインテリジェンスに分かれる

軍事の世界において、私たちが一口に「情報」と呼んでいるものは「インフォメーション」と「インテリジェンス」の2つに分かれます。

インフォメーションとは加工されていない生データであり、写真・テキスト・音声データなどがこれに当たります。このインフォメーションを収集・加工・分析・評価して、そこから出てきたアウトプットが「インテリジェンス」です。ここでインテリジェンスは「判断・行動に直結する情報」であるのが特徴です。

わかりやすくいえば、生データのインフォメーションを収集し、加工することによってインテリジェンスになるわけです。アメリカの軍事でいえば、このインフォメーションからインテリジェンスを作成する一連の作業を担当している組織がCIA(Central Intelligence Agancy)です。ここでCIAの「I」がインフォメーションではなくインテリジェンスであることに注目してください。CIAは指揮官に対し、「判断・行動に意識決定に直結するインテリジェンス」を提供する組織なのです。

この区分に従って、昨今の「経理部」が置かれている状況を考えてみましょう。

これまで経理部の任務といえば、「決算書や税務申告書」をつくることでした。取引伝票などを整理整頓しつつ、試算表から決算書・税務申告書までをつくる──いわばこれが経理部の伝統的インテリジェンス・プロセスだったといえるでしょう。従来、決算書と税務申告書は「判断と行動に直結する」かはともかく、価値のあるアウトプットでした。これは相当に知識と実務経験のある経理マンしか生み出せない情報であったため、経理マンは食いっぱぐれないなどといわれたものです。

しかしIT環境の発展はこのインテリジェンス・プロセスを一気に短縮・簡便化してしまいました。いまや決算書や税務申告書は「早く・安く」出るのが当たりまえになっています。

いまや決算書や税務申告書はインフォメーションのひとつになってしまったと解釈した方がいいかもしれません。だとすれば「ひとつ上」を目指すカギは「インテリジェンス」をつくれる経理になれるかどうかです。

管理会計重視のインテリジェンス経理を目指す

経理 インテリジェンス決算書や税務申告書に現れるものは過去の結果です。それをインフォメーションとして、それをどのように加工・分析・評価して「経営者の判断と行動に直結する情報」まで高めていくことができるか? そこがこれからの経理マンにとってカギになりそうです。

決算書や税務申告書はあくまで外部向けに作成され、報告されるものです。そこでの処理はすべて法律や税務署の指導に従って行われます。これらの「外部向け」の情報はそのままのかたちで「経営判断」に役立つでしょうか? 決してそうではないはずです。だとすれば「外部向け」の情報を「内部向け」に加工するプロセスが必要になります。

このような内部向け情報の作成は「管理会計」と呼ばれます。企業会計は外部報告を対象とする財務会計と、内部向け情報提供を対象とする管理会計に分かれますが、現在の経理部はこのうちの「守りの財務会計」にかなりの時間を割いています。これからは徹底的な効率化を進めつつ財務会計に掛ける時間と労力を縮小し、浮いた分を管理会計に回すべきでしょう。それがインテリジェンス経理への道です。残念ながら財務会計の仕事を続けていると「受け身気質」が強くなりすぎて「積極的な攻めの気持ち」を失いがちです。

サッカーであれば守り重視で勝てるかもしれませんが、これからの経理はそれではダメです。

ぜひとも攻撃重視の「インテリジェンス経理」を目指そうじゃありませんか!

執筆:田中 靖浩(たなか やすひろ)

田中公認会計士事務所所長、東京都立産業技術大学院大学客員教授。1963年生まれ、三重県四日市市出身、早稲田大学商学部卒業。外資系コンサルティング会社などを経て独立。経営・会計の基本から最新動向を真面目にポップに、ときには笑いを交え変幻自在に解説する。経営コンサルティング、会計セミナーはじめ、書籍執筆、新聞・雑誌連載、ラジオ・テレビ出演など多数。http://www.yasuhiro-tanaka.com/



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