大富豪の家計も、会社の経営もお金の見える化で大きく変わる。世界のVIPから指名される執事のワークスタイル

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日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長として、世界のトップ1%のVIPに信頼され、仕事を任されている新井直之さん。近著『世界のVIPが指名する執事の手帳・ノート術』では、マネーフォワード クラウドの活用について紹介されていました。
そんな新井さんのインタビューを前編、中編、後編と3回にわたってお届けします。後編では、大富豪のお金との付き合い方や、それをサポートする見える化・自動化の重要さについて語ってくださいました。

取材ご協力:
新井 直之(あらい なおゆき)
執事/日本バトラー&コンシェルジュ社長
フォーブス誌世界大富豪ランキングトップ10に入る大富豪、日本国内外の超富裕層を顧客に持つ同社の代表を務める傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上、ホスピタリティに関する講演、研修、コンサルティング、アドバイザリー業務を行っている。
ドラマ版・映画版・舞台版『謎解きはディナーのあとで』、映画版『黒執事』では執事監修、主演の櫻井翔さん、北川景子さん、水嶋ヒロさん、DAIGOさんらの所作指導を担当。
著書に『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』(幻冬舎)、『世界のVIPが指名する執事の手帳・ノート術』(文響社)、『執事が目にした!大富豪がお金を生み出す時間術』(青春出版社)などがある。

 

大富豪は「巨万の富は、小さな富でできている」と考える

私たち執事がお仕えするお客様は、保有資産50億円以上、年収5億円を超える富裕層の中でもトップクラスの方々です。なかには数兆円の資産を持ち、世界の長者番付に名を連ねる外国の大富豪もいらっしゃいます。
経営されている会社の資産、代々引き継がれてきた一族の資産などの管理に関しては、資産管理会社に委託されていることが多い一方で、プライベートの資産についてはお客様ご本人が、「マネーフォワード」のようなソフトを使い、管理されているケースも少なくなりません。
その場合、私たち執事がお客様に代わってデータの入力などを頼まれ、週に1度、月に1度といったペースで現状をご報告していきます。

実際、「マネーフォワード」を使っているお客様は複数いらっしゃいます。やはり日々の支出額、クレジットカードの負債と銀行預金、株、ビットコインなどの変動する投資資産がリアルタイムで把握できる点を評価されている印象です。

ある大富豪は「巨万の富は、小さな富でできている」と言い、日頃から贅沢と倹約のメリハリをお求めになられます。ですから、自分の総資産と内訳がすぐに把握できることを重要視されています。
そのうえで執事にも日常的な固定費の支出からは無駄を省くよう指示を出し、小さな富を大切にしながら、贅沢をされるときは投資によって「お金が稼いできてくれたお金」を使われるのです。

ちなみに、私も個人的に「マネーフォワード」を5年近く利用していますが、資産が見える化、グラフ化されることで、自分の成長を楽しんでいるような感覚を得ています。資産額こそ違えど、大富豪の方々も同じような感覚をお持ちのように思います。

支出が見えていないことから生じたある大富豪の誤解

一方、支出が見えていないというのは恐ろしいことで、お客様の中には個人的に使っている額を把握されていない方もいらっしゃいます。
先日もこんなことがありました。
 
ご子息が受験を控えていたため、お客様から「家庭教師、英語や音楽の専門家、受験指導を行うコンサルタントを雇うのにどのくらいのコストがかかるか調べてくれ」という指示がありました。
調査してみると、1カ月にかかるコストが60万円ほど。年間で720万円でした。この額を報告すると、お客様は「高いな……」と考え込まれました。
そのとき私は、「しかしながら、週に一度行かれている銀座のクラブからの請求は1回30万円ほどです。年間の支出として約1500万円。そう考えますと、ご子息のお受験にかかるコストは半額です。しかも、受験は1年で終わります」とお伝えしました。

お客様は苦笑しながら、「たしかにそうだな」と。不思議なもので、人は過去から続いている、習慣化された支出額に対してはさほど気にしません。ところが、新たに計上された支出については、非常に気にするのです。
クラブでの飲食代とご子息の教育費はまさに、そんなケースでした。
そんなとき比較対象を用意し、お客様がより良い判断するための材料を提供するのも執事の仕事です。その点、クラウド型の会計システムはリアルタイムで数字をお見せすることができ、非常に役立っています。

また、別のお客様のところでは、電気代、水道代と比較として、お子様の教育費への支出が決して高くないことをご納得いただいたこともあります。
大富豪の邸宅というのは、私たちが暮らす一戸建てやマンション、アパートとは比較にならないほどの電気代、水道代がかかっています。

私も執事を始めるまでは具体的な額を知りませんでしたが、今では月に40万円、50万円といった電気代、水道代の請求を見ても驚かなくなりました。
空調を例にすると、大富豪の邸宅では一部屋を涼しくしたり、暖かくしたりするのではなく、室内すべてを快適な温度にする全館空調が一般的です。当然、大きい家になればなるほど電気代がかかります。
また、プールや庭園の滝の循環濾過などの水物は水道代+電気代がかかります。ですから、月に100万円以上の光熱費を計上している邸宅はめずらしくありません。
年間にすると1000万円以上の支出ですが、大富豪の方々は通常の支出として捉えられているのです。

ところが、お子様のお受験に向けた特別な教育費など、新たに発生する支出については、「ん?」と引っかかり、気にされます。そこで、家計を見える化した資料をお出しすると、「子供にかけようとしている教育費は、電気水道代よりも安いのか」と納得していただけるのです。

マネーフォワードでラテマネーを見える化する

もちろん、支出の見える化は私たち個人の家計にも役立ちます。
例えば、ラテマネー(アメリカの資産アドバイザー、デヴィッド・バック氏が著書「自動的に大金持ちになる方法」で使った言葉で、「毎日何気なく使ってしまう少額のお金」のこと)を見える化するだけでも、先ほど紹介した「巨万の富は、小さな富でできている」の考えを実践することができます。

私もやってしまいがちですが、ふらっとコンビニに入ってコーヒーを買うついでにチョコや気になる新商品をレジに運んでしまう。数百円の買い物でも1週間なら数千円、1年にすると10万円近い支出になります。
1回に支払う額は少なくとも、トータルにすると大きな額になるにもかかわらず、意識しないと「払った感覚」が薄いのがラテマネーの怖いところです。

しかし、こうした無意識の支出も「マネーフォワード」などを使うことで、見える化、グラフ化され、意味のある買い物だったのかどうかを判断できるようになります。
また、こうしたクラウド型の会計システムには前年比較の機能も付いています。私は自宅や事務所の電気代が高いな……と気づき、省エネ対応のエアコンに買い替えたところ、電気代が4割減になりました。
 
習慣化されていて漠然と使っているお金ほど、把握にしにくいものです。まずはその見えない支出を見える化することが、個人にとっても大切なことなのではないでしょうか。

見える化で経費精算の信憑性が向上する

最後に会社の経理に携わる1人として、Bizpediaをご覧の経理担当者の方にクラウド型の経費精算システムのメリットとしてお伝えしたいのは、見える化で経費精算が信憑性を持ってできるという点です。
経費の不正申告はどの会社でも大きな問題になっています。領収書の日付をごまかす、数字の「1」を「4」に書き換えるなど、手書きゆえの不正申告は今も昔も変わっていないはずです。
また、管理職、役員クラスからの何に使ったかよくわからない経費の申告もあります。たしかに領収証は出ているけれど、実態は違うのではないか……。経理担当者なら一度は、そんな疑念を感じたことがあるのではないでしょうか。

もちろん、当事者を信用するのは大切なことですが、税務署に追求されるような事態になったとき、会社は大きなダメージを受けることになります。
こうした不正も、「経費精算にはクラウド型の経費精算システムと連動したクレジットカードを使ってもらう」といったルールを作ることでなくなっていきます。できるだけ人の手をいれないこと。これがミスや不正を減らすために最も効果的な方法ではないでしょうか。

新たにクラウド型の経費精算システムを導入すると、現場で忙しくしている営業部門などから反発を受けることもあるでしょう。その際は、仕組みづくりの先行投資だと割り切って丁寧に教えていくことです。
そして、お互いの顔が見える関係に持っていきましょう。経理担当者は裏方で、直接会わないままでも仕事ができます。しかし、顔を見せながら親身に教えることで、相手に「あ、経費精算やらないとな」「不正をすると迷惑がかかるな」という心理が働くようになります。

使い方をなかなか覚えてくれない人、締切が過ぎても経費精算を行ってくれない人。経理担当者からすると、一見、困った人たちですが、だからこそ親身になって対応しましょう。それが仲間を増やすことにつながっていきます。

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