法人が休業届を出すメリットとデメリット

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会社 休業

法人がやむを得ない事情で事業をやめる場合には、「廃業」と、「休業」状態にする方法があります。ここでは、休業する際のメリットとデメリットを比較し、休業届の提出方法など、休業の手続きを詳しく説明します。

休業のメリット

・会社解散よりも、清算決算や解散登記などの手間や費用がかからない。
・市区町村および税務署に休業の旨を記載した異動届出書を提出するだけなので、営業再開も簡単。

休業のデメリット

・法人は存続しているので、売り上げはなくとも毎年税務申告が必要(2期連続で税務申告を行わなければ青色申告の承認が取り消しとなります)。
・法人地方税の均等割の課される可能性がある(自治体によって扱いが違うことがあります)。
・事業をしていなくても役員変更の登記手続きが必要(怠ると過料が請求されます)。
・最後の登記から12年間登記せずにおくと、法務大臣によって休眠会社との公告がされ、この公告から2カ月以内に届出をしない場合はみなし解散とされる。

廃業の方法

法人の廃業は、以下のような流れで行われます。

法律上の手続き

1.廃業日を決める
2.解散登記
3.清算手続きを行う(財産の売却、現金化、債務返済など)
4.清算結了登記

税務上の手続き

税務署と市区町村に異動届出書を提出して廃業を申し出ます。また、解散事業年度の確定申告書を提出します。

社会保険関係の手続き

社会保険関係は、解散登記終了後、健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届を年金事務所に送付して資格喪失手続きをします。
参照:適用事業所に該当しなくなったときの詳細説明(PDF)|日本年金機構

廃業の費用

登録免許税は、解散登記3万円、清算人選任登記9,000円、清算結了登記2,000円となります。手続きを司法書士に依頼した場合は、5万円前後の報酬が発生します。
参照:廃業に伴う費用の発生(2003年版中小企業白書より)|中小企業庁

休業の方法

法人を休業するには、自治体や税務署に会社を休業する旨記載した休業届(異動届出書)を提出するだけです。休業届を提出しても登記はそのままなので、法人自体は存続しつつ営業を行っていない状態です。社会保険関係は、自治体への休業届提出だけでは手続きがなされず、廃業と同様に年金事務所に健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届を提出します。

休業届とは

税務署に提出する休業届という名前の書類はないため、異動届出書に休業する旨を記載して提出することにより手続きできます。食品衛生法関係では廃業(休業)届という様式がありますが、そのほかには休業届と呼ばれる様式はありません。

休業中も税務申告は必要

休業届を提出しても法人は存続しているので、税務申告の義務が生じます。法人税については所得がないため納付もありませんが、地方法人税の均等割は納税の必要がでてきます。しかし、会社が休業状態であれば自治体によっては均等割の納税を免除されるケースもありますので、個別にご確認ください。青色申告をしている場合は、所得が発生していなくても2期連続で税務申告を行わないでいると、青色申告承認を取り消されてしまいます。

役員変更登記手続きが発生

法人が存続するので、役員の任期満了に伴う役員変更の登記手続きが必要になります。役員変更の登記は会社法で定められていますので、手続きを怠ると100万円以下の過料が発生します(会社法976条)。

休眠会社のみなし解散とは

休眠会社とは

最後の登記から12年経過している会社を休眠会社といい、最後の登記から5年経過している一般社団法人または一般財団法人を休眠一般法人といいます。株式会社は10年に一度役員変更の登記をすることが会社法で定められていますので、これを怠っている会社は実態がないものとされ、休眠会社とされます。

みなし解散とは

法務局では、数年に一度「休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施」が行われます(2014年11月に、12年ぶりに行われています)。法務大臣による官報公告が行われ、対象となる休眠会社には登記所から法務大臣による公告が行われた旨の通知を行い、2カ月以内に、「まだ事業を廃止していない」旨の届け出または登記の申請をしない限り、解散したものとみなされて登記官が解散の登記をします。

みなし解散後に会社を継続したい場合

みなし解散された株式会社、一般社団法人や一般財団法人は、みなし解散後3年以内に限り、株主総会、または社員総会か評議員会の特別決議によって株式会社、一般社団法人や一般財団法人を継続できます。

まとめ

法人の廃業は解散手続きに時間とコストがかかりますが、休業は休業届(異動届出書)の提出だけですむ一方、営業が停止していても会社が存続しているので、登記や税務に関する手続きは、営業中同様に怠らないようにする必要があります。廃業と休業、どちらの手続きをとるのかは、今後法人をどうしたいかをよく検討したうえで慎重に選択すべきでしょう。

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