• 更新日 : 2020年6月10日

過小資本税制とは

過小資本税制とは、内国法人に対して海外の親会社などから資本提供を行う際、出資と貸付の比率が一定を超えた場合はその支払利子の損金算入を認めないという制度である。
これは会社の資本金に対して借入を過剰にすることで税負担を軽減しようとする会社に対し、租税回避を防止するための政策である。

過小資本税制導入の背景

通常、内国法人などが国外支配株主(資金供与者などを含む)から資金提供を受ける方法としては、出資を受ける方法と借入を行う方法の2種類がある。
この2つの方法を国内法人の税負担という観点から比較した場合、出資に対する配当は損金算入が認められないのに対し、借入によって発生する支払利子は課税所得計算上、損金算入が認められる。このため、国外支配株主は出資ではなく貸付という手法を選択することにより、日本における租税負担を大幅に軽減できる。
このような租税回避行為を防止するため導入されたのが租税特別措置法第66条の5第1項「国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例」によって定められる過少資本税制である。
これによれば、
・国外支配株主等の内国法人等に対する資本持分のうちに、その国外支配株主等に対する平均負債残高が占める割合
自己資本のうちに、その内国法人等の総利付負債の平均負債残高が占める割合
の両方が3倍を超える場合、原則として国外支配株主等の資本持分の3倍を超過する金額への支払利子に対して、一定の算式で計算した金額を損金不算入とするルールが定められている。

過小資本税制の趣旨

外国法人が日本に子会社を設立する場合の資金の出し方の方法としては、大きく分けて出資と貸付の二方法に分類される。貸付の場合には、子会社にて一定の支払利息が生じることとなり子会社の課税所得を圧縮することが可能になる。また出資に比べて資金の回収が容易なことも貸付のメリットの一つとして挙げられ、外国法人の資金の出し方としては貸付を選択することが多い。一方で、第三者間の金銭貸借の場合には、一般的に借手の担保能力や信用によって貸付限度額が定まる。よって、ある会社の資本金などに比較して借入金が過剰に大きい場合、親会社など以外の第三者からこのような借入についての経済合理性に疑問が生じる。
このことから、借手の負債・資本比率を尺度として、この比率を大幅に上回る借入金に対する支払利子の損金算入に歯止めをかけようというのが過小資本税制の趣旨である。なお、海外に所在する親会社・関係者に対する支払利子の損金算入に一定の制限を貸すことは国際的にもよくにみられる制度である(Thin Capitalization Rule)。


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