- 作成日 : 2025年9月25日
ケーキ屋経営は厳しい?リアルな年収と成功するためのポイント
華やかなイメージのあるケーキ屋ですが、その裏側にある年収や経営の実態については、あまり知られていないかもしれません。パティシエとしての給料、独立開業したオーナーの年収は、その立場や働き方、経営手腕によって大きく変わります。
この記事では、ケーキ屋で働く人々の平均年収から、オーナー経営者の年収が決まる仕組み、そして厳しい業界で利益を出し続けるための経営戦略まで、データを基に網羅的に解説します。
目次
ケーキ屋の年収は立場によって大きく異なる
ケーキ屋の年収と一言でいっても、会社やお店に雇用されているパティシエや販売スタッフと、自らお店を経営するオーナーとでは、収入の構造も金額もまったく異なります。まずは、この基本的な違いを理解することが、ケーキ屋の年収を知る上での出発点となります。
雇われパティシエの給料は経験や役職で決まる
従業員として働くパティシエや販売スタッフの収入は、会社から支払われる「給料」です。その金額は、本人の経験年数や技術力、シェフ・パティシエ(製造責任者)や店長といった役職によって変動します。一般的には、キャリアを積むごとに昇給していく安定した収入モデルといえるでしょう。
オーナーの年収は「売上-経費」で決まる
一方、独立開業したオーナーの年収は、お店の「利益」そのものです。年間の総売上から、材料費、人件費、家賃などのすべての経費を差し引いた額が、オーナーの手取りとなります。経営がうまくいけば従業員時代よりもはるかに高い年収を得られる可能性がある一方で、売上が伸びなければ収入が不安定になるリスクも伴います。
【職種別】ケーキ屋で働く人の平均年収と給料
ここでは、厚生労働省の統計データや求人情報などを基に、ケーキ屋で働く人々の平均的な年収を見ていきましょう。見習いからベテラン、そして経営者まで、それぞれの立場で見える景色は異なります。
パティシエ(見習い・中堅)の年収
専門学校を卒業したばかりの見習いパティシエの場合、年収は250万円~350万円程度が相場とされています。経験を積み、一人で一通りの洋菓子を製造できる中堅クラスになると、年収は300万円~450万円程度まで上昇します。この段階では、技術力や後輩の指導能力なども評価の対象となります。
参照:パティシエになるには|Indeed Japan 株式会社
シェフ・パティシエ(製造責任者)の年収
シェフ・パティシエは、製造部門のトップとして、商品開発や品質管理、原価計算、スタッフの育成など、幅広い業務を担います。その責任の重さに比例して給料も高くなり、年収は450万円~600万円以上が目安です。有名ホテルや人気洋菓子店の場合、さらに高い年収を得ることもあります。
ケーキ屋のオーナーの年収
個人経営のケーキ屋オーナーの年収は、お店の規模や立地、経営状況によって大きく変動するため、一概に示すのは困難です。一般的な目安としては、300万円~700万円程度といわれていますが、これはあくまで平均的な数字です。
お店が軌道に乗り、地域で人気店となれば年収1,000万円以上を得ることも夢ではありません。反対に、売上が安定しないうちは、従業員の給料を優先し、自身の収入は後回しになるケースも少なくありません。
ケーキ屋オーナーの年収はどう決まる?売上と経費の構造
ケーキ屋オーナーの年収(利益)を左右するのは、売上と経費のバランスです。どのような要素が売上と経費に影響を与えるのか、その構造を理解することは、経営戦略を立てる上で欠かせません。ここでは、具体的な数字を交えながら解説します。
年収を左右する経費の内訳
ケーキ屋の経営でかかる主な経費は、原材料費、人件費、地代家賃の3つです。一般的に、理想的な経費の割合は、原材料費が売上の30~40%、人件費が20~30%、地代家賃が10%以内といわれています。これらの経費を差し引いた残りが、光熱費や広告宣伝費などを支払った後の利益、つまりオーナーの年収の原資となります。
- 原材料費: 小麦粉や砂糖、バター、フルーツなど。季節や世界情勢による価格変動の影響を受けやすい経費です。
- 人件費: パティシエや販売スタッフの給料。オーナー自身の給料もここに含めて考える場合があります。
- 地代家賃: 店舗の賃料。売上規模に対して家賃が高すぎると、経営を圧迫する大きな要因になります。
売上規模別のオーナー年収シミュレーション
お店の月間売上が300万円の場合を例に、オーナーの年収をシミュレーションしてみましょう。
項目 | 金額(月間) | 対売上比率 |
---|---|---|
売上高 | 3,000,000円 | 100% |
原材料費 | 900,000円 | 30% |
人件費 | 750,000円 | 25% |
地代家賃 | 300,000円 | 10% |
その他経費 | 300,000円 | 10% |
営業利益 | 750,000円 | 25% |
この場合、月間の営業利益は75万円となり、年間の営業利益(オーナー年収の目安)は900万円と計算できます。もちろん、これはあくまで一例であり、この利益から借入金の返済などが必要になる場合もあります。
ケーキ屋の経営が「厳しい」といわれる理由
「ケーキ屋の経営は厳しい」とよくいわれますが、それにはいくつかの構造的な理由があります。華やかな世界の裏にある課題を理解しておくことは、リスク管理の観点からも大切です。
原材料費や光熱費の高騰
近年、小麦粉やバター、砂糖といった主要な原材料の価格や、電気・ガス代といった光熱費が高騰し続けています。
これらのコスト上昇は、ケーキ屋の利益を直接的に圧迫します。しかし、コスト上昇分をそのまま販売価格に転嫁するのは難しく、多くの経営者が利益と価格のバランスに頭を悩ませています。
労働集約型のビジネスモデル
ケーキ作りは、高度な技術を要する手作業の工程が多く、機械化による効率化には限界があります。質の高い商品を提供するためには、熟練したパティシエの確保が不可欠であり、人件費が経営の大きな負担となります。長時間労働になりがちな点も、人材確保や定着における課題の一つです。
季節変動と食品ロス
ケーキの需要は、クリスマスや誕生日、母の日などのイベント時期に集中し、それ以外の時期は売上が落ち込む傾向があります。この需要の波に合わせて製造量を調整するのは難しく、売れ残りによる食品ロスが発生しやすいビジネスモデルです。食品ロスは、仕入れた原材料を捨てることと同義であり、直接的な利益の損失につながります。
厳しい中でも利益を出すケーキ屋の経営戦略
経営環境が厳しい一方で、工夫次第でしっかりと利益を出し、高い年収を実現しているケーキ屋も数多く存在します。成功しているお店は、生ケーキの販売だけでなく、さまざまな戦略を組み合わせることで収益構造を強化しています。
焼き菓子など高利益率商品の強化
クッキーやフィナンシェ、パウンドケーキといった焼き菓子は、生ケーキに比べて日持ちがするため、食品ロスのリスクが低いという利点があります。また、一般的に生ケーキよりも利益率が高い傾向にあります。これらの焼き菓子を詰め合わせたギフトセットなどを開発し、売上のもう一つの柱として育てることは、経営の安定に大きく貢献します。
ギフト・イベント需要の取り込み
クリスマスやバレンタインといった大きなイベントはもちろん、誕生日や記念日、手土産といった日常的なギフト需要を確実に取り込むことが重要です。顧客の要望に応じたデコレーションケーキの予約を受け付けたり、季節ごとのギフト商品を企画したりすることで、安定した売上を確保します。
オンライン販売や菓子教室の展開
店舗での販売だけでなく、オンラインショップを開設して全国に商品を届けることで、商圏を大きく広げることができます。とくに、冷凍技術の進化により、美味しい状態のままケーキを配送することも可能になってきました。
また、オーナー自身の技術や知識を活かして、店舗の空き時間で菓子教室を開くことも、新たな収益源となり、お店のファン作りにもつながる有効な戦略です。
目指すケーキ屋の年収を実現するための事業計画
ケーキ屋の経営で目標の年収を達成するためには、夢や情熱だけでなく、現実的な数字に基づいた事業計画が欠かせません。本記事で解説した年収の構造や経営のポイントは、その計画を立てる上での基礎となります。
自分が目指すのは、どのような立場で、いくらの年収を得ることなのか。そのためには、どれくらいの売上が必要で、経費をどのように管理していくべきか。これらの問いに対する答えを、具体的な事業計画に落とし込むことが求められます。業界の厳しさを理解した上で、自店の強みを活かした戦略を練り、着実に実行していくことが、目標達成への道筋となるでしょう。
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