• 作成日 : 2025年9月24日

不動産賃貸の独立系保証会社とは?審査基準と選び方、メリット・デメリットなど解説

賃貸物件を借りる際、近年では家賃保証会社への加入を条件とするケースが一般的になっています。その中でも独立系保証会社は、審査の柔軟性や対応の幅広さが特徴的です。不動産管理会社や仲介業者にとっても、独立系保証会社は入居率向上と機会損失削減の重要なパートナーとなっています。

本記事では、入居希望者と不動産事業者の両方の視点から、独立系保証会社の仕組みや特徴、他の保証会社との違いを詳しく解説します。

不動産の独立系保証会社とは

独立系保証会社は、金融機関や信販会社などの大手企業グループに属さず、独自の経営基盤を持つ家賃保証会社を指します。賃貸借契約において、借主が家賃を滞納した場合に、保証会社が貸主に対して家賃を立て替え払い(代位弁済)する仕組みで、現在の民間賃貸市場では欠かせない存在となっています。

信販系・LICC系との違い

家賃保証会社は大きく「信販系」「LICC系」「独立系」といった類型で語られることが多いです。

  • 信販系保証会社
    クレジットカード会社や信販会社が運営し、個人信用情報機関(CIC・JICCなど)の情報を利用した審査を行うのが一般的です。審査基準は比較的厳格とされます。
  • LICC加盟会社(全国賃貸保証業協会加盟)
    全国賃貸保証業協会(LICC)に加盟している保証会社で、加盟各社が家賃滞納に関する情報を共有する仕組みを持っています。大手の保証会社の多くがこの枠組みに参加しており、業界全体の情報連携を強めています。
  • 独立系保証会社
    信販系やLICC加盟会社に属さず、独自の審査基準やサービス体系を持つ保証会社を指します。必ずしも全社が「審査が緩い」というわけではありませんが、信用情報機関に依存しない判断を行うケースがあるため、一般に「比較的柔軟」とみなされることが多いです。

賃貸市場における独立系保証会社の役割

賃貸物件における保証会社の利用は一般化しており、国土交通省の令和3年度実態調査によれば、2021年度時点で民間賃貸における家賃債務保証会社の利用率は約80%です。

前述したように保証会社には信販系、LICC系、独立系といった種類があり、 それぞれ異なる審査基準や特徴を持っています。 独立系保証会社は、その柔軟な審査基準により、 多様な入居希望者のニーズに対応する役割を担っているのです。

独立系保証会社の主な特徴

独立系保証会社は、金融系や信販系とは異なる運営形態を持つため、サービス内容や料金体系に独自性が見られる場合があります。これらの特徴は必ずしも全社共通ではありませんが、入居者や不動産事業者にとってメリットとなるケースがあります。ここでは、代表的に見られる特徴を2つに分けて解説します。

多様な保証プランを用意している場合がある

独立系保証会社の中には、入居者の初期費用を抑えるためなど、多様な料金プランを用意しているところがあります。

例えば、一般的な家賃の50%等を初回に支払うプランの他に、月々の家賃に少額を上乗せして支払う月額プランや、保証範囲を限定することで料金を抑えたプランなどが存在します。

ただし、月額プランは長期的に見ると割高になる、料金が安いプランは保証範囲が狭い、といった注意点もあるため、契約前に必ず約款や条件をよく確認することが重要です。

地域密着や付帯サービスに力を入れている

全国展開の大手だけでなく、特定のエリアに特化して、地域の不動産会社と密な関係を築いている会社も多く見られます。こうした会社は、その地域の特性を深く理解している場合があります。

また、家賃保証に加えて、24時間対応の緊急駆けつけサポートや、鍵の紛失対応、その他生活トラブルの相談窓口など、入居者向けの付加価値の高いサービスを提供していることも特徴の一つです。これらのサービスは、入居者の安心感につながります。

不動産賃貸で独立系保証会社を使うメリット・デメリット

独立系保証会社の利用には、様々なメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。両面を理解した上で、適切な選択をすることが重要です。

メリット

審査基準が柔軟な傾向にある

独立系保証会社の中には、信販系に比べて画一的な基準に依存せず、入居希望者の個別事情を考慮する傾向が見られる場合があります。通過率について統一的な統計は存在せず、会社や物件、時期によって大きく異なりますが、自営業者や転職直後の方など、従来不利になりがちな層にも門戸を開くケースが見られます。

連帯保証人が不要な場合がある

独立系保証会社では、連帯保証人を立てられない方でも契約可能なプランが用意されていることがあります。核家族化や高齢化が進む現代において、適切な連帯保証人を見つけることが難しい状況に対応しやすくなっています。

物件選択の幅が広がる可能性がある

大手独立系保証会社の中には、全国数万の不動産会社と提携しているケースもあります。そのため、大手不動産会社では扱っていない物件などが選択肢に入る可能性があります。

柔軟な支払い条件の交渉が可能な場合がある

独立系保証会社の中には、初回保証料の分割払いや、保証料の減額交渉に応じてくれる会社も存在します。特に不動産会社との関係が深い場合、個別の事情を考慮したプランを提案してもらえる可能性もあります。

再審査のチャンスがある

一度審査に落ちても、追加情報の提出などの条件変更により、再審査を受けられる場合があります。

デメリット

保証料が割高な場合がある

独立系保証会社は、信販系やLICC系と比較すると、保証料が高めに設定される傾向が見られます。一般的な目安として、初回保証料は家賃の30〜100%、更新料は年1〜2万円程度ですが、会社やプランによって大きく異なります。

審査基準が不透明な場合がある

独立系保証会社は独自の審査基準を設けているため、なぜ審査に通ったのか、あるいは落ちたのかが分かりにくいことがあります。同じような条件でも会社によって結果が異なることもあり、予測が困難な場合があります。

会社の信頼性にばらつきがある

独立系保証会社は規模や経営基盤が様々で、中には財務状況が不安定な会社も存在します。万が一、保証会社が倒産した場合、新たな保証会社との契約が必要になり、追加費用が発生する可能性があります。会社の設立年数や資本金などを確認し、信頼性を判断する視点が重要です。

サービスの質にばらつきがある

会社の規模が様々なため、カスタマーサポートの質や対応スピードにばらつきが見られることがあります。小規模な会社では、土日祝日の対応ができない、緊急時のサポートが不十分などの問題が生じる可能性も考えられます。

物件によっては選択できない場合がある

管理会社や大手不動産会社の物件では、信販系保証会社の利用が必須となっているケースも多く、独立系保証会社を希望しても選択できない場合があります。

不動産賃貸で独立系保証会社の利用が考えられるケース

独立系保証会社は、その審査基準の特性から、特定の状況にある方にとっては選択肢の一つとなりえます。ここでは、一般的にどのようなケースで利用が検討されるかを解説します。

定期的な収入証明が難しい方

自営業者やフリーランス、転職直後の方など、会社員としての勤続年数や給与明細で安定収入を証明することが難しい場合があります。

独立系保証会社では、確定申告書や事業の売上実績、預貯金額など、多様な資料を基に支払い能力を総合的に判断する傾向があります。そのため、安定した事業状況や支払い能力を客観的に示すことができれば、審査の対象となる可能性があります。

外国籍の方や高齢の方

外国籍の方は言語の問題、高齢の方は年金収入のみであることなどを理由に、一般的な審査では不利になることがあります。

独立系保証会社の中には、多言語対応のサポート体制を整えていたり、高齢者や年金受給者向けの保証プランを用意していたりする会社もあります。在留資格や年金収入などを個別に評価することで、審査の門戸を広げているケースが見られます。

過去の金融取引で不安がある方

過去に自己破産や債務整理などの経験がある場合、個人信用情報機関の履歴が審査に影響することがあります。

独立系保証会社の一部は、信販系ほど信用情報機関の情報に依存せず、現在の収入状況や生活の安定性を重視する傾向があります。そのため、過去の履歴よりも現在の支払い能力を評価される可能性があります。

ただし、過去の家賃滞納歴については独自のデータベースで情報を共有している可能性があるため、正直に申告することが重要です。

不動産契約における独立系保証会社の選び方

独立系保証会社を選ぶ際は、いくつかのポイントを理解しておくことが大切です。以下のポイントを参考に、自身に最適な保証会社を選択してください。

保証料と更新料の確認

保証会社を選ぶ際は、初回保証料だけでなく、更新料や月額保証料も含めた総額を確認することが重要です。初回保証料が安くても、毎月の保証料が高額な場合、長期的には負担が大きくなります。一般的に、初回保証料は家賃の30~100%、更新料は1年ごとに1~2万円が相場ですが、会社により大きく異なります。複数社の料金体系を比較し、居住予定期間を考慮して最適な会社を選びましょう。

対応エリアとサービス内容

独立系保証会社は地域密着型が多いため、対応エリアの確認が必須です。全国展開している会社もあれば、特定の都道府県のみで営業している会社もあります。また、24時間対応の緊急サポートや、入居者向けの優待サービスなど、付帯サービスの充実度も重要な判断基準となります。トラブル時の対応体制や、外国語対応の可否なども事前に確認しておくと安心です。

不動産会社との提携状況

希望する物件を扱う不動産会社が、どの保証会社と提携しているかを確認することも大切です。不動産会社によっては、特定の保証会社のみ利用可能な場合があります。不動産会社に事前に問い合わせ、利用可能な保証会社を確認し、その中から最適な会社を選択しましょう。複数の保証会社から選べる場合は、それぞれの特徴を比較検討することをお勧めします。

不動産事業者が独立系保証会社を選ぶポイント

不動産管理会社が独立系保証会社を選定する際は、入居者向けとは異なる視点での評価が必要です。

代位弁済のスピードと確実性

家賃滞納が発生した際の、立替払い(代位弁済)のスピードと確実性は、保証会社の最も重要な評価ポイントです。代位弁済の実行率や送金までにかかる日数は会社ごとに異なり、統一された業界基準はありません。 そのため、「受付から〇営業日以内に送金」など、契約約款や送金スケジュールに明記されている具体的な条件を確認することが不可欠です。これがオーナーへの送金遅延リスクを管理し、信頼を維持する上で重要になります。

システム連携による業務効率化

日々の業務効率を大きく左右するのが、システム連携の有無です。自社で利用している賃貸管理システムとAPI連携が可能な保証会社を選ぶと、申込から審査、契約までの手間を大幅に削減できます。特に、オンラインでの申込完結や電子契約への対応は、繁忙期の業務負荷を軽減し、ペーパーレス化にも繋がるため、重要な選定基準の一つです。

営業活動への支援体制

保証会社によっては、単なる保証業務にとどまらず、営業活動を支援する付加価値を提供している場合があります。例えば、入居希望者へ提示できる審査シミュレーターや、不動産会社のスタッフ向け研修プログラムなどです。こうした支援体制が整っている保証会社は、成約率の向上やスタッフのスキルアップに貢献してくれる、心強いビジネスパートナーとなりえます。

主要な独立系保証会社一覧

ここでは、全国で事業を展開している主要な独立系保証会社をいくつか紹介します。以下は各社の公式サイトなどで2025年8月時点で公表されている情報に基づきます。最新の情報や詳細な条件は、必ず各社の公式サイトでご確認ください。

日本セーフティー株式会社(CGO加盟)

大阪に本社を置き、全国に拠点を展開しています。24時間対応の緊急サポートや多言語での対応が特徴です。管理会社向けの一括審査システムも提供しています。

参考:日本セーフティー

株式会社Casa(CGO加盟)

東京に本社を置く東証プライム上場企業です。IT技術を活用した迅速な審査システムを特徴としています。家賃だけでなく、養育費に関する保証サービスも提供しています。

参考:Casa

フォーシーズ株式会社(CGO加盟)

東京や大阪などに本社を置き、首都圏を中心に事業を展開する保証会社です。特に外国人向けのサポートに力を入れています。専門の審査部門を設置し、多言語での対応を行っている点が特徴です。

参考:フォーシーズ

日本賃貸保証株式会社(JID)

千葉県に本社を置いています。関東圏を中心に地域に密着したサービスを提供しているのが特徴です。個人の方向けの多様なプランのほか、学生向けのプランなども用意しています。

参考:日本賃貸保証

独立系保証会社を賢く活用するために

独立系保証会社は、柔軟な審査基準と多様なサービスで、幅広い層の賃貸需要に応えています。入居希望者の方は、保証料の総額、対応エリア、サービス内容、会社の信頼性などを総合的に判断することが大切です。

また、不動産事業者の方にとっては、独立系保証会社の活用は空室対策と入居率向上の重要な戦略となります。審査の柔軟性により、従来は取りこぼしていた顧客層を獲得でき、事業の安定性向上に貢献するでしょう。

賃貸契約は長期にわたる重要な契約です。保証会社選びに迷った際は、不動産会社や専門家に相談し、自身の状況に最も適した選択をすることをおすすめします。


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