- 作成日 : 2025年9月24日
不動産屋の開業・独立に必要な資格一覧|必須からおすすめまで紹介
不動産屋を開業し、独立する際に本当に必要な資格とは何でしょう?この記事では、不動産業の事業別の必須要件を分かりやすく整理しました。その上で、専門家としての価値を飛躍的に高める、厳選したおすすめ資格を詳しく解説します。資格取得後の資金計画から経営のコツまで、独立への不安を自信に変えるためのポイントもご紹介します。
目次
不動産屋の開業・独立に必要な免許と資格
不動産業と一言でいっても、その事業内容は多岐にわたります。「どんな事業をしたいか」によって、独立開業に必須となる免許や資格が異なりますので、まずはその違いを理解しましょう。
免許・資格が不要な不動産事業(賃貸業)
自分がオーナーとして所有する物件を第三者に貸し出す、いわゆる大家さんとしての不動産賃貸業には、特別な免許や資格は必要ありません。これは、自社物件の管理や家賃回収などを行う場合も同様で、宅地建物取引業には該当しないためです。
免許・資格が必要な不動産事業(仲介業・代理業)
他人の物件を、売主と買主(または貸主と借主)の間に入って紹介する不動産仲介業や、代理で契約を行う不動産代理業は、宅地建物取引業にあたります。
この事業を行うには、後述する「宅地建物取引業免許」と、その取得の前提となる「宅地建物取引士(宅建士)」の資格が必要です。
条件次第で資格が必要になる事業(賃貸管理業)
賃貸物件のオーナーから委託を受けて管理を行う「賃貸管理業」は、それ自体は宅建業ではありません。しかし、2021年に施行された「賃貸住宅管理業法」により、管理戸数が200戸以上になる場合は、国土交通省への登録と、事務所ごとに業務管理者を設置することが義務付けられました。
この業務管理者の要件を満たすための代表的な国家資格が「賃貸不動産経営管理士」です。一定の実務経験を持つ宅建士なども業務管理者になれる経過措置がありますが、今後、賃貸管理を事業の柱として大きく展開していくのであれば、体系的な知識を証明できる本資格の取得が極めて重要になります。
なお、オーナーの代わりに入居者を募集して広告を出し、仲介手数料を受け取る、オーナーの代理人として借主と賃貸借契約を締結する場合などは、宅建業にあたりますので、宅建業免許が必要となります。
出典:賃貸住宅管理業登録の方法|賃貸住宅管理業法ポータルサイト(国土交通省)
不動産仲介業の開業・独立に必須の資格と免許
不動産仲介業で独立開業を目指す上で、避けては通れないのが資格と免許の取得です。これらを混同しがちですが、個人の能力を証明するものが資格(宅建士など)、事業を行うための許可が免許(宅建業免許)と覚えておきましょう。
まず、法律で定められた必須の資格が「宅地建物取引士(宅建士)」です。そして、その資格を持つ人が中心となって、都道府県知事または国土交通大臣から「宅地建物取引業免許」を受けることで、初めて事業を開始できます。
宅建士が必須な理由
宅地建物取引業法では、不動産会社は事務所ごとに専任の宅建士を設置することが義務付けられています(宅地建物取引業法 第31条の3)。
そして、設置すべき具体的な人数については「事務所において業務に従事する者の数に対する割合が五分の一以上」であることが、宅地建物取引業法施行規則 第15条の5の2で定められています。
創業者自身が宅建士であれば、コストを抑えつつ、重要事項の説明や契約書への記名といった事業の核となる独占業務を自ら担えるため、事実上、独立のための必須資格と言えるでしょう。
宅建士資格を取得するまでの流れ
宅建士になるには、まず年に一度実施される宅地建物取引士資格試験に合格する必要があります。合格率は例年15%~17%程度の難関試験です。合格後、実務経験が2年に満たない場合は「登録実務講習」を修了し、その後、都道府県知事への登録申請を経て「宅地建物取引士証」の交付を受け、ようやく宅建士として業務を行えるようになります。
不動産屋の開業・独立を有利にするおすすめ関連資格
宅建士はあくまでスタートラインです。独立後に他社と差別化し、専門性を高めて収益を伸ばすためには、プラスアルファの資格が強力な武器となります。ここでは、独立後の成功を有利に進めるためのおすすめ関連資格を、その役割とともに紹介します。
不動産鑑定士
不動産の経済価値を評価する国家資格です。相続案件での資産評価や、企業が持つ不動産の価値算定など、高度な専門性が求められる場面で活躍します。宅建士とのダブルライセンスにより、不動産の評価から売却までを一貫して手掛けられるようになり、高単価な案件の受注に繋がります。
マンション管理士
マンション管理の専門家として、管理組合の運営や大規模修繕に関する助言を行います。国家資格であり、コンサルタントとして独立する道もあります。特に管理組合との信頼関係を築くことで、そのマンション内の専有部の売買仲介などに繋がる可能性も生まれます。
管理業務主任者
マンション管理会社は、事務所ごとに一定数の管理業務主任者を設置する義務があります。独立してマンション管理業を手掛ける場合、法律で定められた人数を事務所に設置する必要があるため、事業に不可欠な国家資格です。創業者自身が有していれば、事業の核を担うことができます。
賃貸不動産経営管理士
賃貸住宅管理業法により、一定規模以上の管理業者に設置が義務付けられた国家資格です。賃貸管理業に特化して独立する場合、今や必須の知識と資格と言えます。入居者対応から建物の維持管理まで、専門家としてオーナーからの信頼を獲得し、管理戸数の拡大を目指す上で強力な武器となります。
土地家屋調査士
不動産の「表示に関する登記」の専門家であり、土地の測量も行う国家資格です。売買の前提となる土地の境界確定や建物の新築・増築時の登記など、不動産取引と密接に関わります。宅建士と併せ持つことで、取引から登記申請までをワンストップで担える専門家として、極めて高い付加価値を提供できます。
司法書士
不動産売買における所有権移転登記は司法書士の独占業務であり、不動産取引の最終段階で必ず関わります。ダブルライセンスの難易度は非常に高いですが、実現できれば取引の全てを一人で完結できる、比類なき専門家としての地位を確立できます。
不動産コンサルティングマスター
不動産コンサルティングマスターは、不動産の有効活用や投資など、高度なコンサルティング能力を証明します。仲介手数料だけでなく、高単価なコンサルティング業務を事業の柱にしたい場合に、自身の専門性を客観的に示し、顧客からの信頼を得る上で大きなアドバンテージとなります。
ファイナンシャル・プランナー(FP)
ファイナンシャル・プランナー(FP)は、暮らしとお金に関する専門家です。不動産購入という大きなライフイベントにおいて、お客様の家計やライフプランに基づいた資金計画を提案できるため、単なる物件紹介に留まらない深い信頼関係を築くことができます。
住宅ローンアドバイザー
住宅ローンは複雑で、多くのお客様が悩むポイントです。住宅ローンアドバイザーは、各金融機関の商品の特徴を理解し、お客様一人ひとりに最適なローンの組み合わせを提案する専門家です。この資格を持つことで、資金計画の相談に具体的かつ的確に応えられるようになります。
相続診断士
相続は、不動産が動く大きなきっかけの一つです。相続診断士の資格を持つことで、相続発生前の対策から、発生後の遺産分割、不動産の売却や活用まで、顧客の悩みに寄り添う専門家として活躍できます。弁護士や税理士とも連携しやすく、相続案件という巨大市場での専門性を確立できます。
建築士
建物の設計・工事監理を行う国家資格です。特に中古物件の売買仲介やリノベーション提案において、建物の状態を専門家の目で判断し、的確なアドバイスができるため、お客様に絶大な安心感と信頼を与えます。物件の付加価値を高める提案で、他社との圧倒的な差別化が可能です。
社会保険労務士
一人社長から事業を拡大し、初めて従業員を雇用する際に直面するのが、複雑な労働・社会保険の手続きや労務管理です。社会保険労務士は、これらの人事・労務に関する専門家です。資格を持つことで、自社の就業規則作成や助成金申請を的確に行えるほか、将来的に人事コンサルティングなど、新たな事業の柱を築ける可能性も秘めています。
インテリアコーディネーターやカラーコーディネーター
中古物件の仲介やリノベーション提案において、お客様は「この家でどんな暮らしができるか」を想像したがっています。インテリアコーディネーターやカラーコーディネーターの知識は、内装や照明、色彩計画を通じて、その暮らしを具体的に提案する力になります。物件の魅力を最大限に引き出し、お客様の心を掴むための付加価値となる資格です。
特定の分野で強みを持つその他の資格
「競売不動産取扱主任者」は競売市場、「防災士」は安全・安心を重視する顧客層、「中小企業診断士」は事業用不動産を探す経営者に対して、それぞれ独自の専門性でアプローチできます。自身の興味に合わせて、これらの資格で専門性を際立たせるのも有効です。
資格取得から不動産業での独立開業までの道のり
夢に見た独立開業も、資格取得はあくまでスタート地点です。会社員時代には見えなかった経営の現実に直面します。ここでは、独立後に直面する資金や収入のリアルについて、事前に知っておくべき点を解説します。
開業資金の目安と内訳
独立には、まとまった開業資金が必要です。まず、宅建業の免許を受けるには、法務局へ1,000万円の営業保証金を供託するか、保証協会に加入する必要があります。多くは後者を選択し、その場合、弁済業務保証金分担金(60万円)や入会金・年会費などが必要となり、加入する協会や地域にもよりますが、一般的に合計で100万円~170万円程度が目安となります。
その他、事務所の契約費用、PCやデスクといった備品代、法人設立費用などを合わせると、最低でも200万円~300万円以上の初期費用を見込む必要があります。
運転資金の重要性と確保
初期費用とは別に、事業が軌道に乗るまでの運転資金の確保が、独立成功の生命線です。特に不動産売買の仲介では、契約から入金まで数ヶ月かかることも珍しくありません。
その間の家賃や広告費などを賄うため、一般的に月間固定費の3ヶ月~6ヶ月分の運転資金を用意しておくことが推奨されます。
資格以外に必要となる経営の力
優れた資格や専門知識を持っていても、それだけでは事業は成功しません。お客様を見つける営業力・集客力、お金の流れを管理する経理・財務知識、そして事業の方向性を決める経営計画といった、経営者としてのスキルが不可欠です。
不動産屋として独立開業するとは、専門家であると同時に、一人の経営者になることだと心得ましょう。
資格を活かして開業した不動産屋を成長させる方法
取得した資格を最大限に活かし、開業後の厳しい競争を勝ち抜いて事業を成長させるためには、戦略的な視点が不可欠です。ここでは、独立後に成功確率を高めるための具体的な方法を3つ紹介します。
得意な分野で一番の専門家になる
「タワーマンション専門」「相続対策専門」のように、特定の分野に特化することが重要です。ターゲットを絞ることで専門性が際立ち、難しい案件や高単価な依頼が集まりやすくなります。
小さな市場でも「この分野なら、あの人しかいない」という独立した専門家としての地位を確立することが、開業後の価格競争から脱却する鍵です。
ITツールで仕事の効率を上げる
一人または少人数で事業を運営する上で、ITの活用はおすすめです。顧客管理(CRM)や会計ソフト、電子契約システムなどを導入し、事務作業は徹底的に自動化・効率化しましょう。
これにより、お客様への提案や関係構築といった自分にしかできない付加価値の高い業務に集中する時間を創出でき、収益性を最大化できます。
専門家との繋がりから仕事を得る
広告に頼らず優良な顧客を獲得する最善の方法は、信頼できる専門家からの紹介です。弁護士、税理士、司法書士といった関連士業と日頃から連携し、互いに顧客を紹介し合えるネットワークを構築しましょう。
自身の専門性を高め、他士業にとって「頼れる不動産のプロ」となることが、安定した紹介の連鎖を生み出します。
自分に合った資格で、理想の独立開業を実現しよう
不動産独立の成功は、自分に合った資格を見つけることから始まります。この記事で紹介した不動産関連の資格は、どれもあなたの専門性を高める強力な武器になります。ご自身のキャリアプランに最適な資格はどれか、じっくり考えてみましょう。そして、その資格を活かす経営の力を磨くことが、理想の独立を実現する道です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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