• 作成日 : 2025年10月9日

保証会社とは?種類から審査基準、メリット・デメリット、選び方まで徹底解説

賃貸物件を契約する際、利用を求められることが多い「保証会社」。これは、入居者が家賃を滞納した際に貸主へ立て替え払いを行うサービスで、個人の連帯保証人に代わる選択肢として普及しています。

この記事では、これから部屋を借りる入居者の方にも、物件を貸し出す事業者の方にも役立つよう、保証会社の仕組み、種類、メリット・デメリット、審査のポイントから事業者に向けた選び方まで、多角的に解説します。保証会社を正しく理解し、円滑な賃貸契約に繋げましょう。

目次

賃貸借契約で利用する「保証会社」とは?

賃貸の保証会社とは、入居者が何らかの理由で家賃を支払えなくなった際に、貸主に対して家賃を立て替え払いする会社のことです。

従来、賃貸借契約では親族などに「連帯保証人」を依頼するのが一般的でした。しかし、核家族化や人間関係の変化により、連帯保証人を頼める人が減ってきた社会的背景があります。

そこで登場したのが、専門の「家賃保証サービス」です。貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)にとっては、家賃滞納による回収不能リスクを大幅に低減できるだけでなく、督促業務の手間を削減できるという大きなメリットがあります。

一方、入居者にとっても、保証人を頼む手間や心理的負担なく部屋を借りられるため、双方にとってメリットのある仕組みとして広く普及しています。

保証会社はどこまで保証してくれる?主な保証内容

保証会社が保証する範囲は契約プランによって異なりますが、基本的には月々の家賃や管理費が対象となり、プランによっては原状回復費用や訴訟費用までカバーします。

保証会社と一口に言っても、その保証範囲(どこまで立て替えてくれるか)は様々です。契約前に入居者・事業者双方が内容をしっかり確認することがトラブル防止に繋がります。

基本保証の範囲

多くの基本的なプランで共通して保証される項目です。

  • 月額の固定賃料:家賃、共益費、管理費
  • その他の費用:駐車場代、町内会費、水道光熱費など

プランによって追加される保証範囲

より手厚いプランやオプションで保証されることが多い項目です。事業者の方は、どこまでのリスクをカバーしたいかに応じてプランを選ぶ必要があります。保証商品によっては、一部が限度額付きで対象となる場合もあります。

  • 契約更新料
  • 原状回復費用
  • 早期解約による違約金・損害金
  • 退去予告義務違反による違約金・損害金
  • 法的手続き費用(建物明渡しに関わる訴訟費用など)

保証会社にはどのような種類がある?

保証会社は、審査の際にどのような情報を参照するかによって、その特徴を理解することができます。主に以下の3つの情報源があり、どの情報を重視するかで各社の審査スタイルが決まります。

個人の信用情報(CIC・JICCなど)

クレジットカードやローンの利用履歴・延滞情報など、個人の支払い能力に関する客観的なデータです。主に「信販系」と呼ばれる保証会社がこの情報を参照します。

業界団体内の共有情報(LICC・CGOなど)

LICC(全国賃貸保証業協会)やCGO(全国保証機構)といった業界団体に加盟する会社間で共有される、過去の家賃滞納に関する情報です。

独自のデータベース

各保証会社が自社で蓄積してきた、過去の保証実績や滞納データです。

分類だけで判断する際の注意点

かつては、主に独自のデータベースだけを利用する会社を「独立系」と呼ぶなど、明確な分類が可能でした。

しかし現在では、「独立系」と呼ばれていた大手の保証会社(例:全保連、ジェイリースなど)も、LICCやJICCに加盟し、複数の情報を参照するのが一般的になっています。

このため、現在では単純な「〇〇系」という分類で判断するのは難しく、各社が具体的にどの情報源を参照するかを確認することが最も重要です。

主な賃貸保証会社一覧

賃貸借契約で利用されることの多い、代表的な保証会社をご紹介します。保証会社を判断する際は、どの団体の情報を利用して審査を行うかが重要なポイントになります。

会社名主な特徴審査時に参照する主な情報源
全保連株式会社全国の不動産会社で広く利用されている。
  • 独自のデータベース
  • JICC 加盟
ジェイリース株式会社東証プライム市場上場企業。
  • 独自のデータベース
  • LICC 加盟
  • JICC 加盟
日本セーフティー株式会社全國的に多くの不動産会社と提携。
  • 独自のデータベース
  • CGO加盟
株式会社Casa東証プライム市場上場企業。
  • 独自のデータベース
  • CGO加盟
  • JICC 加盟
株式会社アプラス新生銀行グループの信販会社。
  • CIC 加盟
株式会社オリコフォレントインシュア「オリコ」のグループ企業。
  • CIC 加盟

※各社の加盟状況は変更される可能性があるため、契約時には必ず最新の公式情報や同意書の内容を確認してください。

保証会社を利用するメリットは?【入居者・事業者別】

最大のメリットは、入居者にとっては「連帯保証人なしで部屋が借りやすくなること」、貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)にとっては「家賃滞納リスクを回避できること」です。

保証会社の利用は、賃貸借契約に関わる双方に安心と利便性をもたらします。

入居者側のメリット

  1. 連帯保証人が不要になる:親族や友人に保証人を依頼する手間や、心理的な負担がなくなります。頼れる人がいない場合でも、スムーズに部屋探しを進められます。
  2. 物件の選択肢が広がる:近年、「保証会社利用必須」の物件が大多数を占めています。保証会社を利用することで、選べる物件の幅が格段に広がります。
  3. 契約手続きがスムーズに進む:保証人の印鑑証明書など、書類の準備に時間がかかることがありません。保証会社の審査に通れば、迅速に契約手続きを進めることができます。

貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)側のメリット

  1. 家賃滞納リスクの低減:保証会社を利用することで、滞納による回収不能リスクを大幅に低減できます。ただし、保証には限度額や免責事項があるため、リスクを完全に回避できるわけではありません。
  2. 滞納時の督促業務の削減:家賃の督促や回収は、精神的にも時間的にも大きな負担です。これらの業務を保証会社が代行してくれるため、管理業務を大幅に効率化できます。
  3. 客観的な入居審査:保証会社の専門的な審査を経ることで、入居希望者の支払い能力を客観的に判断できます。これにより、安心して物件を貸し出すことが可能になります。
  4. 入居者の間口が広がる:連帯保証人を立てられないという理由で優良な入居希望者を逃すことがなくなります。幅広い層に物件をアピールできるため、空室対策としても有効です。

賃貸保証料の費用はいくら?料金体系と支払いタイミング

保証料はプランによって多様ですが、代表的な料金体系として「初回保証料+年間更新料」と「初回保証料+月額保証料」があります。保証会社を利用するための費用(保証委託料)の仕組みを正しく理解しておきましょう。

一般的な料金体系:「初回保証料+年間更新料」

多くの保証会社がこの料金体系を採用しています。

  • 初回保証料(契約時):
    • 相場:総賃料(家賃+管理費など)の50%~100%、または定額(20,000円~)
    • 支払時期: 賃貸借契約の初期費用と合わせて支払います。
  • 年間更新料(1年ごと):
    • 相場:1年ごとに10,000円~20,000円の定額、または総賃料の10%程度
    • 支払時期: 契約から1年後のタイミングで保証会社から請求があります。

その他の料金体系:「初回保証料+月額保証料」

少数ですが、初期費用を抑えられる月額制のプランもあります。

  • 初回保証料(契約時):
    • 相場:総賃料(家賃+管理費など)の50%~100%、または定額(20,000円~)
    • 支払時期:賃貸借契約の初期費用と合わせて支払います。
  • 月額保証料(月ごと)
    • 相場:総賃料の1%~3%程度を毎月の家賃と一緒に支払います。
    • 特徴:居住年数が長くなると、総支払額は「初回保証料+年間更新料」のプランより割高になる可能性があります。

保証会社のデメリットや注意点は?【入居者・事業者別】

入居者は「保証料」という費用負担があること、事業者は「保証範囲」を正確に把握する必要があることなどが主な注意点です。

便利な仕組みですが、利用する上で理解しておくべき点も存在します。

入居者側のデメリット・注意点

  • 保証料の支払いが必要:保証会社を利用するには、当然ながら費用がかかります。一般的に、以下の費用が必要です。
    • 初回保証料(契約時):家賃の50%〜100%、または定額(例:20,000円)
    • 年間更新料(1年ごと):10,000円〜20,000円、または家賃の10%程度
  • 立て替えであり、支払い義務はなくならない:保証会社が貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)に家賃を支払っても、それは一時的な「立て替え」です。入居者は後日、立て替えられた家賃を保証会社に返済する義務(求償権)を負います。滞納が解消されるわけではないことを肝に銘じましょう。
  • 信用情報に影響が出る可能性:保証会社(特に信用情報機関に加盟する会社)を利用中に家賃滞納などを起こすと、その情報が信用情報機関に登録されることがあります。延滞などの情報は、契約終了後も5年程度は保有される規定となっているため、その期間は新たなローンやクレジットカードの契約に影響を及ぼす可能性があります。
  • 保証会社は基本的に選べない:どの保証会社を利用するかは、物件の貸主や管理会社が指定しているため、入居者が自分で選ぶことはほとんどできません。

貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)側のデメリット・注意点

  • 保証範囲と免責事項の確認が必須:保証プランによって、保証される範囲は異なります。家賃だけでなく、共益費、駐車場代、更新料、原状回復費用、法的手続き費用までカバーされるのか、契約前に必ず確認が必要です。また、「事業者側からの報告が遅れた場合は保証対象外」といった免責事項も存在するため、細かな契約内容の把握が求められます。
  • 保証会社の倒産リスク:極めて稀なケースですが、保証会社が倒産するリスクもゼロではありません。経営の安定性や実績も、選定の際の重要な指標となります。

保証会社の審査では何を見られる?期間はどれくらい?

審査では主に「支払い能力」と「過去のトラブル履歴」がチェックされ、審査期間は早ければ即日、通常は2〜3日程度です。

保証会社は家賃を立て替えるリスクを負うため、契約者の返済能力を慎重に見極めます。

主な審査項目

審査のポイントは、前述した保証会社の系統によって異なりますが、共通して見られる項目は以下の通りです。

  • 属性情報(支払い能力の判断)
    • 収入:年収や月収。家賃が収入に見合っているかがチェックされます。一般的に「家賃は手取り月収の3分の1が目安」とされますが、これはあくまで慣習的な指標であり、地域や個人の生活スタイルによって調整が必要です。
    • 勤務先:会社の規模や事業内容。
    • 勤続年数:長いほど安定していると評価されます。
    • 雇用形態:正社員は有利ですが、契約社員や自営業でも安定収入があれば問題ないことが多いです。
  • 信用情報(過去のトラブル履歴の確認)
    • 家賃滞納歴:特に重視されます。
    • クレジットカード等の延滞歴:信販系では、個人の信用情報機関の記録が厳しくチェックされます。
  • 申込内容の確認
    • 申込書に虚偽の記載がないか。
    • 本人確認や在籍確認の電話にきちんと対応できるか。

審査期間の目安

審査期間は最短で即日、通常は2〜3日程度かかることが多いですが、一律の目安はありません。申込書類に不備があったり、在籍確認が取れなかったり、繁忙期であったりすると、1週間以上かかる場合もあります。

審査をスムーズに進めるためには、申込書を正確に、正直に記入し、収入証明などの必要書類を速やかに提出することが大切です。

【事業者向け】自社に合った保証会社の選び方は?

審査基準、保証範囲、業務効率化への貢献度、そして安定性の4つの軸で総合的に比較し、自社の物件や方針に最適なパートナーを選ぶことが重要です。

どの保証会社と提携するかは、賃貸経営の安定性や業務効率を大きく左右します。以下のステップで検討しましょう。

ステップ1:審査基準と承認率を確認する

自社が管理する物件の主な入居者層(例:学生、単身者、ファミリー、外国籍、高齢者)と、保証会社の審査基準がマッチしているかを確認します。審査が厳しすぎると入居希望者を逃し、緩すぎると滞納リスクが高まります。承認率のデータなどを参考に、バランスの取れた保証会社を選びましょう。

ステップ2:保証範囲(プラン)を比較検討する

どこまでの費用を保証してくれるかは、最も重要なポイントです。

  • 月々の家賃、共益費、管理費、駐車場代
  • 契約更新料
  • 退去時の原状回復費用
  • 早期解約による違約金・損害金
  • 退去予告義務違反による違約金・損害金
  • 法的手続き費用:建物明渡しに関わる訴訟費用など

複数のプランを比較し、自社のリスク管理方針に合った保証範囲を持つ会社を選びます。

ステップ3:業務効率化に繋がるかを検討する

保証会社の導入が、管理業務の負担軽減に繋がるかも見極めましょう。

  • 申込・審査のオンラインシステム:Web上で手続きが完結すれば、書類のやり取りが減り、審査もスピーディーになります。
  • 管理会社へのサポート体制:滞納発生時の報告フローや、担当者との連携のしやすさも重要です。手厚いサポート体制があれば、トラブル時も安心です。

ステップ4:安定性と信頼性を評価する

長期的なパートナーとして、会社の安定性は不可欠です。

  • 運営会社の規模と実績資本金や設立年、導入実績などを確認します。
  • 業界団体への加盟:代表的な業界団体として、全国賃貸保証業協会(LICC)や、全国保証機構(CGO)などがあります。こうした団体への加盟は、信頼性を測る上での一つの指標になります。

保証会社を正しく活用し、円滑な賃貸借関係を築こう

本記事では、賃貸借契約における保証会社の役割から、種類、メリット・デメリット、審査、そして事業者向けの選び方までを詳しく解説しました。

保証会社は、貸主(及び代理権を持つ不動産事業者)にとっては家賃滞納リスクをヘッジし、安定経営を実現するための強力な味方です。一方、入居者にとっては、連帯保証人を依頼する負担なく、希望の物件に入居するための不可欠なサービスとなっています。

入居者の方は保証料の負担と立て替え後の返済義務を、事業者の方は自社の物件に最適な保証範囲とサポート体制を持つ家賃保証サービスを選ぶことの重要性を理解することが、トラブルのない円滑な賃貸借関係を築くための第一歩です。この知識が、あなたの快適な新生活や安定した賃貸経営の一助となれば幸いです。


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