経理担当者の願いを叶えるために。債権領域の「3つのスキマ」の埋め方とシステムを通して目指す世界(後編)

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前編では、経理の現場の声に真摯に向き合う、マネーフォワード クラウド債権管理のプロダクトマネージャー(以下PdM)石塚阿左子さんの熱い想いをお伝えしました。

「システムを導入したけど、結局課題は残るよね…」そんな経理の実状を“本気”で変えたいサービス開発者のはなし(前編)

20年以上、さまざまな企業の経理担当者と対話を重ねてきた石塚さん。現場の声を深く理解し、マネーフォワードのプロダクトを通じて経理の皆さんの願いを形にするため、日々そのエネルギーを注ぎ込んでいます。

その経験から見えてきたのは、多くの企業における経理業務の実情です。債権管理において、漏れなく確実に請求・回収するためには、さまざまな課題を解決しなくてはなりません。課題は大きくわけて以下の3つがあり、石塚さんはこれを債権領域における「スキマ」と呼んでいます。

  • システムは導入しているのに、請求書の発行や入金消込など手作業が残ったままの「システム化のスキマ」
  • 販売システムと会計システムが連携されていなかったり、連携されていても相互訴求性がなかったりする「システム間のスキマ」
  • 経理・営業間、営業・取引先間で、請求書発行状況確認や入金状況確認をおこなう「コミュニケーションのスキマ」

後編では、経理業務のなかでも特に債権領域に潜むこれら「3つのスキマ」について深掘りしつつ、マネーフォワードではこのようなスキマを埋めるためにどのようなシステムを提供しているのか?システムづくりを通じて目指す本当の「価値」とは?をお伝えしながら現場の課題解決に真摯に向き合う、石塚さんの想いをお届けします。

石塚阿左子さんプロフィール
マネーフォワード クラウド債権管理 プロダクトマネージャー新卒から中堅〜大企業様向けに会計システムの導入支援やアドオン開発の設計、会計パッケージ製品の企画に従事。出産を機にプリセールス・アカウントマネージャーに軸足を移す。2018年にマネーフォワードに入社後はクラウド経費のカスタマーサクセスとして導入支援やプリセールスに携わる。その後、「マネーフォワード クラウド債務支払」のPdMを経て、現在は「マネーフォワード クラウド債権管理」のPdMとして、製品企画に従事。

 

確実な請求と漏れのない回収のために、埋めるべき債権領域の「3つのスキマ」とは?

――石塚さんが見てきた経理の現場で、経理担当者の皆さんが困っている領域にはどのようなものがありましたか?

いろいろあります。本当に。

目立つのは「入金消込」の作業でしょうか。システムを導入したのにもかかわらず、請求データと入金データを突き合わせて一致した内容を帳簿に反映していくような、細かい手作業をおこなっているケースが意外と多いです。

また、不十分なシステム連携による困りごともよく聞きました。販売システムと会計システムが連携できているように見えても関連付けが十分でない場合などに、照合作業を手作業でおこなうケースです。

ほかにも、経理担当者から営業担当者への入金確認も困りごとのひとつだと思います。取引先の未入金が判明すると、経理担当者は「取引先からの入金がまだなのですが、取引先に確認してもらえますか?」と営業担当者に連絡しなければなりません。

入金状況を一件ずつ手作業で確認し、入金遅延が判明するたびに営業担当者への確認依頼を繰り返す作業は、経理担当者にとって大きな負担です。細かい、骨が折れる作業であることに加え、取引先への入金確認というデリケートな依頼が伴い精神的な負担も大きいでしょう。

このような経理担当者の困りごとは、債権領域にある「3つのスキマ」が要因で発生すると考えています。

――債権領域の「3つのスキマ」とはどんなものでしょうか。

私たちが「3つのスキマ」と呼んでいるのは、システム化のスキマ・システム間のスキマ・コミュニケーションのスキマの3つです。

まず、1つ目のスキマである「システム化のスキマ」は、債権管理業務においてシステム化できていない部分を指します。

実は、経理業務のなかで最も手作業の残っている領域が債権管理なんです。非常に重要な領域であるにもかかわらず、作業をおこなっている担当者が数名に集中していると周囲から課題感が見えにくく、「今すぐ対応しなければ」という切迫感も生まれません。結果として、システム化が後手に回ってしまい、結局いつまでも手作業やミスのリスクが残り続けてしまう……というケースを多く見てきたのです。特に与信管理については、重要性は認識されつつも形骸化してしまっている企業が少なくありませんでした。

2つ目のスキマは「システム間のスキマ」です。これは、複数のシステムの間で情報の連携が上手くいっていない状況のことです。

例えば、販売システムでは100件の取引として管理されているものが、会計システムでは1つの仕訳にまとめられているようなケースです。一見、システム同士が連携できているように見えていても、情報粒度が異なり関連付けも不十分だと、もし金額の不一致があった場合にその原因調査には非常に手間がかかります。

販売システムで確定した売上高を仕訳に集計して会計システムに連携したにもかかわらず、締め後に販売システムから追加や変更など入れられてしまうと、その分の不整合が発生します。このようなことが起きないように、現場レベルで運用ルールの徹底が必要ですが、実際は頻繁にそのようなことが起きるのが悩みという声をよくお聞きします。そして、その不整合が発見されるのは大体繁忙期の月次決算中のことなので、時間がないなかで差異の調査と修正に多くの時間を取られてしまう……これが現場の実情です。

3つ目の「コミュニケーションのスキマ」は、人と人との間で生じる課題です。

営業担当者と取引先、営業担当者と経理担当者とのコミュニケーションなどは、手間がかかるだけでなく、お互いに心理的な負担を感じてしまう繊細な領域でもあります。

典型的なのは、先ほど少しお話しした入金の督促に関する一連のやりとりです。支払期日を過ぎているのに入金がないため、経理から営業担当者へ、営業担当者から取引先に問い合わせる。このコミュニケーションは、かかわる全員に大きなストレスがかかります。

加えて、コミュニケーションのスキマはビジネスのスピードにも大きく影響します。例えば、メールや電話でのやり取りにはタイムラグが生じますし、システムを介したコミュニケーションでは、対象とした請求書の認識違いなどが起きることも少なくありません。

これら「3つのスキマ」が、経理担当者の業務に困りごとを発生させていると考えています。

「経理のあるべき姿に届いていないところ」にスキマがある

――具体的なスキマの例を教えてください。

思いつくものとして、販売システムの例があります。通常の取引であればシステムで処理できるのですが、そこから漏れてしまう例外的な取引が意外と多いんです。漏れてしまった取引は、Excelでの手作業で管理されていることが多いですね。

例えば、グループ各社のシステム利用料をまとめ払いして立替精算するケースや、業務指導派遣の支払など、グループ会社間での特殊な取引があります。また、海外との外貨取引、普段は現金決済だけど時々請求書での取引が必要になる小売店のケースなど、システムの標準的な処理では対応できないものが該当しますね。

このように手作業でおこなわれる処理は、入力ミスのリスクが高く、確認作業に時間がかかります。さらに、担当者間での情報共有も煩雑になってしまうため、多くの経理担当者が頭を悩ませている領域だと思います。

加えて、債権管理の領域においては、経理担当者ご自身が3つのスキマに気づくかどうか、というポイントもあります。

小さな企業の場合は、経理担当者が債権管理の作業をおこなっているので、各スキマや手作業が残っている部分を把握しやすい状況です。しかし、事業部ごとに損益管理をおこなっているような大企業では、全体を取りまとめる経理担当者がこれらのスキマに気づける可能性は低いかもしれません。

企業によって状況はさまざまで、必ずしも経理担当者だけが債権管理をおこなっているとは限らないです。そのため、企業の状況に応じてスキマを埋める必要があります。

現場の経理担当者から聞いた、「スキマ」が引き起こす困りごととは?

――スキマ、とおっしゃるその意味が見えてきました。また、それによって生まれる経理のみなさんの気苦労というか……。

はい、システム化のスキマの例でいえば、与信管理が適切におこなえていないケースは多いですね。経理担当者に与信管理について質問すると「本当はしないといけないんですよね」とバツの悪い顔でお話ししてくださったことがあり、印象に残っています。やらないといけないことはわかっていてもそこまで手が回らず、上がってくる申請の妥当性チェックが適切におこなえていないことへの罪悪感みたいなものがあることがうかがえました。ここがシステム化できていれば、与信管理が適切におこなえていないという困りごとには繋がらないと考えています。

また、システム間のスキマの例では、古いシステムを継ぎ足し継ぎ足しで使っており、中身をわかる人が既に退職してしまっているというケースもよくあります。

そうなると、経理担当者がシステムの詳細確認や改善をお願いしてもわかる人がいないため、本来システムで処理できるはずの業務も手作業で対応せざるを得ない、とか。システム間の連携もSaaSサービス上でできていれば、連携仕様の改善を特定の人に頼る必要はなく、物事が前進しないことのストレスを感じることもなかったでしょう。

現場で経理担当者の方々と向き合ってきて、本当にさまざまな困りごとや気苦労を目の当たりにしてきました。これらの課題を丁寧に見てきた結果、問題が潜んでいる場所に「スキマ」があると考えたのです。そこで、それぞれのスキマを埋めていくことに注力することにしました。

3つのスキマを埋めることで業務の漏れをゼロに。システム導入により正確性を高める

――では、そのスキマ、どう埋めていきますか?

私たちが目指しているのは、システム化のスキマ・システム間のスキマ・コミュニケーションのスキマを確実に埋めていき、経理業務で発生する漏れをなくすことです。

まず、システム化のスキマの埋め方ですと、手作業がある部分を把握しシステムで自動化して情報を一元管理することで請求漏れ・回収漏れを防ぎスキマを埋めることができます。従来は、例えば「販売管理システムを強化し、債権の一元管理を実現する」「統合型ERPを導入し、基幹システム全体で情報連携する」などの方法がありますが、どちらも何千万、何億という莫大な資金が必要です。

これに対し、弊社のようなコンポーネント型ERPクラウドサービスであれば、手の届きやすい価格で、スキマを埋めるために必要なモジュールをピンポイントで導入するという選択も可能になります。
これにより、従来は販売管理システムでの対応を諦められてきたような営業外収益や例外的な販売パターンなども柔軟に管理できます。また、限られた人員でアナログ管理されている請求書発行・入金消込の課題も解消できるんです。

次に、システム間のスキマの埋め方です。

システム間のスキマを埋めるには、各システムの役割に応じた粒度で情報管理しつつ、互いの整合性を担保する必要があります。具体的には、販売管理システムの取引データと会計仕訳の間でユニークな番号を付与して関連付けをする方法が一般的ですが、最近では連携先のシステムがクラウドサービスなので、連携先システムのURL自体を連携してしまい、それをクリックすれば直接画面上で関連データを確認できる、という方法を取られるケースも出てきています。より良い連携仕様に変更・改善していく上でも、SaaSサービスからAPIが提供されていれば、仕様変更も比較的属人的な開発にならずに進められます。

そして、最後のコミュニケーションのスキマについては、クラウドサービスを使うことで解決ができます。

クラウドサービスを使うことで関係者全員が同じ情報を見ることができ、それぞれがリアルタイムで知りたい情報を確認できる環境が構築できるんです。請求状況や回収状況を社員が正確に把握でき、必要なタイミングで適切なアクションを取れる。そうすることで、これまでのような確認の手間や行き違い、タイムラグといった課題を解消できます。また、SaaSサービスであれば外部のコミュニケーションツールとの連携も比較的容易なため、日常的によく利用するツールを介して情報連携を行うことも可能になります。

3つのスキマを埋めるには、まず何から始めるべきか?

――3つのスキマを埋めるためには、やるべきことがたくさんありますね。一度にこれらをすべて解決するのは難しいと思うのですが、何から始めていくとよいでしょうか?

まずは、手作業になっている部分、つまり「システム化のスキマ」を把握し埋めることが初手かなと思います。

このようなスキマを埋めるためにマネーフォワードが目指しているのは、ひとつひとつの困りごとに対して手当ができるシステムです。

必要な機能を必要なタイミングで組み込んでいける……「柔軟なコンポーネント」といえばわかりやすいでしょうか。システム化したい部分に過不足なくぴったりとはめ込み、課題解決をサポートできるサービスを提供していきたいと考えています。

経理の方々が、安心して経理業務を担える世界を目指したい(まとめ)

――今後どのようなプロダクトを作っていきたいか、教えていただけますか?

私たちが目指しているのは、確実な請求・回収をおこない、経営の健全性をささえるシステムづくりです。現在「マネーフォワード クラウド請求書Plus」「マネーフォワード クラウドインボイス(送付)」「マネーフォワード クラウド債権管理」「マネーフォワード 掛け払い」というサービス群があります。これらを効果的に組み合わせて、取引発生から請求・回収・与信管理まで、一気通貫でカバーできるサービスを作っていく予定です。

債権領域では、これら一連の業務フローの行程で求められる要件がたくさんあります。例えば、取引発生の時点では外貨での売上計上や複雑な約定への対応が必要ですし、取消仕訳等への対応も求められます。請求の段階でも、約定に基づく請求書の発行、取引先の検収状況に応じた金額調整など、細かな要件が次々と出てくるんです。

経理業務を幅広くカバーしながら、さらに各機能を深く掘り下げていく……多様な要件に対応できるよう「広さ」と「深さ」の両方で開発を進めていきたいですね。

――最後に、システムづくりを進めていくにあたっての石塚さんの想いをお聞かせください。

言葉にすると優等生みたいな回答になってしまいますが、とにかく「経理さんに安心してほしい」という想いが強くあります。

前職の頃から、経理の方々が業務への不安やプレッシャーを抱え、心をすり減らしている姿を多く見てきました。だからこそ、私たちは本気で「経理さんの負担を軽減し、安心して業務に取り組める環境」の実現を目指します。


マネーフォワードのPdMは、このような想いを形にするべくサービスづくりに取り組んでいます。「会社のために何ができるか」を真剣に考え続けている、経理担当者の願いを叶えるために。マネーフォワードは、これからも皆さんの困りごとや想いに真摯に向き合っていきます。

「システムを導入したけど、結局課題は残るよね…」そんな経理の実状を“本気”で変えたいサービス開発者のはなし(前編)

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