「システムを導入したけど、結局課題は残るよね…」そんな経理の実状を“本気”で変えたいサービス開発者のはなし(前編)

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経理業務は、会社の大切なお金を扱う重要な仕事。1円のミスや漏れも許されない作業を厳しいスケジュールで行わなければならず、気苦労が絶えない仕事でもあります。

このような経理の方々のお気持ちや実状を深く理解し、より良いプロダクトを提供するべく“本気”で奮闘しているメンバーが、マネーフォワードにいます。その筆頭が、各プロダクトの開発の責任者である、「プロダクトマネージャー」です。

今回はマネーフォワード クラウド債権管理のプロダクトマネージャー(以下PdM)石塚阿左子さんにお話を伺いました。

経理システムは、一度導入すれば長く使っていただくもの。ならば、どんな人が・どんな思いで作っているのか、みなさんに知っていただくのも、ひとつの有益な情報提供だと考えました。

過去20年以上にわたりさまざまな企業の経理担当者と向き合ってきた石塚阿左子さんが語る、マネーフォワードのプロダクトに込めた「価値」とは? 経理の方々への共感と、伝えたい熱い想い、そして未来を見据えた開発方針について、前後編の2回に分けてお届けします。

石塚阿左子さんプロフィール
マネーフォワード クラウド債権管理 プロダクトマネージャー新卒から中堅〜大企業様向けに会計システムの導入支援やアドオン開発の設計、会計パッケージ製品の企画に従事。出産を機にプリセールス・アカウントマネージャーに軸足を移す。

2018年にマネーフォワードに入社後はクラウド経費のカスタマーサクセスとして導入支援やプリセールスに携わる。その後、「マネーフォワード クラウド債務支払」のPdMを経て、現在は「マネーフォワード クラウド債権管理」のPdMとして、製品企画に従事。

 

「経理業務の効率化により整理された数字を次の経営のアクションに活かし、企業がメリットを享受できるようにサポートをする」− 石塚阿左子さんの仕事

――マネーフォワード社での現在の仕事について教えてください。

債権管理に関わるプロダクトを管理するPdMです。具体的には、「クラウド債権管理」のPdMをしながら、「クラウド請求書Plus」や「クラウドインボイス」のPdMと連携し、領域全体を見ながらプロダクトの企画を推進しています。

もう少し言えば……、経理ご担当者のみなさんは、常に「会社のために何ができるか?」を考えているのだと思います。その業務を効率化することはもちろん、経理の方がまとめた情報を次の経営アクションにつなげ、企業がメリットを享受できるようなサポートをすること、大事な部分にピュアに向き合ってもらえるようにするのが私の仕事です。そのために日々、経理業務のさまざまなニーズと向き合っています。

――以前から経理業務に関わるお仕事をされてきたのですか?

はい、新卒の時に、会計システムの会社に入社しました。コンサルティングから開発までをおこなっている会社です。私は会計パッケージのお客様の課題のヒアリングから要件定義、必要ならアドオン開発、そして安定運用までを一気通貫で見る立場でした。

特に、プリセールスとして、ご提案フェーズでお客様の課題を聞いて、それに対する提案をするという仕事が長かったと思います。ただ、単純な「課題と提案」というよりも、「本来どうあるべきか」をお客様と一緒に考えていました。お客様自身が、何が本当の課題なのかわかっていないようなことがあったりもしましたしね。

その後、転職先にマネーフォワード社を選び、入社後はカスタマーサクセス、つまりマネーフォワードのプロダクトを使っていただいて、その実務の成功をサポートする立場として経理作業の現場を見て、そして今に至っています。

すべては「経理の現場」から

――プロダクト全体を見るという仕事に重要なのは、やはり経理の方々のニーズをつかむことだと思います。石塚さんはどうやって経理担当者のみなさんの気持ちを理解していったのでしょうか?

理解の方法はいろいろあると思いますが、やはり経理の課題を実際に目で見て、自分事として体験する機会をいただいてきたことが大きいのだと思います。

例えば、現状や課題をヒアリングする際、お客様がOKしてくだされば、デスクで実際に作業しているところを横に立って見せてもらっていました。日々使用しているパソコン画面や帳簿、ファイルなどを開いて、どのように処理しているかを確認させてもらうのです。

ある会社の経理さんは、帳簿に手書きで線を引いて、「この内容はここにメモしています」と色んな箇所に取引先との個別の契約条件や支払い条件など、システムの定型フォーマットには収まらない情報をメモしていました。さらにその作業を社内の数人で手間と時間をかけておこなっていました。よくある景色だと思いますが、なんというか……、とても繊細な作業ですよね。

入金消込も、本当に大変な作業だと思います。

請求期日を過ぎたら通帳の明細をコピーして数人に配布し、消込担当を分担して同じExcelで「これは入金されました」と書いて、消していく……。本来はAさんが消込担当である入金先をBさんが間違えて消してしまったり。AさんとBさんの間で食い違いが起こり、そのリカバリーで時間を取られ作業が進まないという、手作業で起こりがちな問題です。

そのほかの作業も、経理担当者の業務は細かな手作業が多いだけでなく、正確性も求められます。時間に追われてストレスを感じている人・ミスや漏れが発生しうる状況に気苦労を感じている人が多いのでしょう。「非常に大変な作業をしているけれど、手作業だからミスが起きてしまうこともあるだろう」と感じました。

例を挙げればきりがありませんが、このような場面を何度となく見るうちに、じわじわと経理担当者の気持ちを理解していったのだと思います。余談ですが、前職時代、お客様の業務フローを書いていた時に、その作業が夢に出てきたことがあります。翌日は山登りに行く予定だったのですが、夢の中で山登りの業務フローを書いていたんです。それぐらい頭が経理の仕事でいっぱいだったんですね(笑)。

それとやはり、経理担当者の方々との対話も重要だったと思います。特に、何気ない会話から見えてきた本音、みたいなものです。

経理担当者から届く相談の多くは「自動化によって効率化したい」という声から始まります。しかし不思議なことに、改めて業務効率化のメリットをご説明しても、経理担当者の方々には「響いて」いないように見えることがある。

そこで、経理担当者の方々の思いを丁寧に掘り下げていくと、実は効率化より「数字を正確に管理したい」という強い思いが根底に隠れていたりします。こちらから「手作業だとミスや漏れもあり得ますよね」と課題を指摘すると「実はそうなんです」と少しきまり悪そうにしながら、困りごとを打ち明けてくれます。正確性への不安は、外部の人には言いづらい問題だったのだと、そのときに改めて感じました。

つまり、経理担当者の仕事は「数字を正しく合わせること」が正義。そして私が担当してきた現場においては、業務効率化より「数字を正確に管理したい」という気持ちが強く、切迫感を感じるような会話が多かった。……そんな経験が、今の私の仕事につながっていると思います。

「営業担当者が現場で生み出した売上を、漏れなく・正しく・1円残らず回収する経理担当者」をサポートしたい

――今の担当は、マネーフォワード クラウド債権管理という、請求書に対する入金を管理するプロダクトですね。これまでの経験は、どう反映されていますか?

今申し上げた通り、経理担当者の考えは「効率化して自分たちが楽になりたい」だけとは限りません。経理向けシステムというと、経理担当者の業務効率化が目的と短絡的に考えがちです。しかし、本当に大切なことは日常的に経理担当者が向き合っている、経営者や業務の現場の営業担当者まで、メリットを届けることだと考えています。

経理に限らず、バックオフィスに携わるのは「会社のために何ができるか」というテーマに日々向き合っている方々です。私が担当している債権回収の分野で言えば、経理担当者にとっては、営業担当者が現場で汗水垂らして生み出した売上に対し、1円残らず回収することが重要です。

この「営業活動によって発生した売上や債権に対して、漏れなく正しく請求・回収することができるか」という点が、債権回収に関わるシステムを提案する、私の基本的な姿勢になりました。

経理担当者への想いからあるべき姿を目指す。目先の効率化に留まらない価値を届けたい!

――さまざまな声と直接向き合ってきたからこそ、システム化で実現し得る経理担当者の本当の願いに気づけたのですね。マネーフォワードのプロダクトを通じて、経理担当者にどんな価値を提供したいと考えていますか?

経理担当者の願いを叶えるためには、経理業務の効率化にとどまらない、それ以上の価値や意味を提供していくことが大切です。

まず、経理業務を自動化することでミスをなくし、正確な管理を実現すること。これは経理担当者の根本的な願いです。さらに、この自動化がもたらすメリットを経理担当者だけでなく、社員全員が享受できる環境を整えることも重要です。そして最終的には、効率的に整理された正確な数字を次の経営のアクションに活かせるように、つまり経営全体に価値を提供していけることを目指しています。

例えば、債権の情報の管理、入金消込、領収証作成などの業務は社内のほんの数人しかおこなっていないケースが多いと思います。実際のところ、その数人さえ頑張れば問題ないので、効率化の観点だけであれば、システム導入は必要ないと判断されることもあります。

しかし、システム化のメリットは経理作業が楽になるだけではありません。債権回収という経理の目的を果たす手助けになることを理解してもらい、効率化以上の本当の価値を届けたいのです。

私は、経理の方たちがいかに神経をすり減らして業務にあたっているかを知っているし、実際に見てきました。そのような環境だからこそ、「楽になった」だけではなく、安心して業務を進められ、かつ会社のために「漏れがない状態」で、経理の仕事に自信を持って取り組んでいただけることを目指しています。


石塚阿左子さんのインタビューは後半へと続きます。後編では、債権領域の「3つのスキマ」について深掘りし、具体的にどのようにして本当の価値提供を実現していくのかについてお伝えします。

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