今回は業種業界ごとの入金消込シリーズの3回目ですが、建設業について取り上げてみたいと思います。
建設業以外の業界でも、やや足の長い仕事で最終入金まで複数回にわたって入金がある業界であれば、近しい課題をお持ちかと思いますので実務における参考にしていただければ幸いです。
建設業は入金までの期間が長い
建設業の入金に関する特徴の一つとして、入金までの期間が長いことがあげられます。
それは工事期間が長い傾向にあるためです。工事期間が長い場合は、工事の完了後に最終入金がされるので当然入金までの期間が長いということになります。
工期が長いプロジェクトでは、工事着手時に着手金を受け取り、途中の段階で中間金を受け取ることが一般的です。
金額が高額になるため、最終入金まで一切入金がないとリスクが高まり、資金負担も生じることから、分散して入金してもらうようにしているのです。
通常中間金の請求タイミングは、契約時点で「〇〇年〇〇月」に請求するとなっていたり、「工事が〇〇パーセント完了時」に請求するとなっていたり、時期や工事の進捗状況で請求するタイミングを決めています。
当然、中間金の請求を忘れないということも入金消込以前に重要な仕事となります。
建設業は勘定科目もやや特徴的な業界
工事着手時、中間時、工事完了時に請求を行う場合、それぞれの段階で一般的には次のような仕訳処理が行われます。
なお、工事の売上は工事進行基準ではなく、工事完成基準を前提とした仕訳で考えてみます。
(工事着手時)
現金預金 | 〇〇〇円 | 未成工事受入金 | 〇〇〇円 |
(中間時)
現金預金 | 〇〇〇円 | 未成工事受入金 | 〇〇〇円 |
建設業では着手時や中間時の入金に関しては「未成工事受入金」という勘定科目を使います。一般的な会社の場合は「前受金」という勘定科目を使っていて、その科目に相当します。
(工事完成時)
完成工事未収入金 | 〇〇〇円 | 完成工事高 | 〇〇〇円 |
未成工事受入金 | 〇〇〇円 |
すでに入金のある未成工事受入金と完成工事高との差額として「完成工事未収入金」が計上されます。
今回は債権に関する勘定科目だけでしたが、債務や支出に関する勘定科目も建設業特有のものがありますので注意が必要です。
「金額の変更」や「振込以外の入金」も多いのが辛い
未成工事受入金として一部入金がされる、3回程度に分割されるだけであれば、それほど複雑にはならないと感じるかもしれませんが、実務上はもう少し複雑になります。
一つは、債権の回収が預金取引ではなく受取手形や電子記録債権で回収されることがある点です。
受取手形の場合は、手形の保管や取り立てといった管理も必要になりますし、資金繰り上も実際に資金化するまで長期にわたることになります。
他にも、工事代金が途中で変わるということもあります。工事内容が変わる場合もあれば、追加工事を行うことになって金額が変わることもあります。
金額が変更になるということは、当然請求する金額も当初の契約から変更になりますし、入金消込の金額も当初の契約から変更になりますので、その点を適切に把握しておく必要があります。
また、工事内容の変更によっては工期が変わるので、中間金や最終代金の請求のタイミングが変更になることもあります。
さらに、入金消込に関しては、同じ取引先から複数の工事を受注しているケースもあります。
このような場合は、工事案件ごとにオーダー番号等で管理をしているのが一般的で、オーダー番号に紐付けて入金消込をする必要があります。
同じ取引先から複数の工事分の代金が入金されたとしても、取引先コードだけで入金消込をするのではなく、オーダー番号単位で消込をしておかないとどの工事分について未収なのかがわからなくなってしまいますので、その点も注意が必要です。
もっとも、同じ取引先から複数の工事の発注を受けていないような規模で経営している場合は、そのような管理までしなくても問題はありません。
システムで対応できるところはシステム対応してみる
建設業の入金消込含めて債権管理の特徴は、上記に記載した通りです。
エクセル等で債権管理をしている会社も多いですが、システムを導入して管理を見直すのも一つかもしれません。
特徴のある業種なので、どのようなシステムを採用するのかは悩ましいところです。
債権管理だけを考える前提で、なおかつ入金管理に関してオーダー番号に基づく管理が必要ない、手形での回収がないといった一般の会社とあまり変わらないのであれば、前受金の管理ができるシステムを導入することで未成工事受入金の管理が一定程度できるようになります。
現状業務効率が悪いと感じている方からすると、入金管理の効率化は期待できます。
手形管理や、建設業としてのオーダー管理、原価管理も必要ということであれば、建設業会計システムの導入とともに、付随する債権管理システムを導入することで入金管理を含めた作業の効率化を検討してみても良いかもしれません。
業界特有の処理を含むイレギュラーな入金消込業務のすべての問題を一気に解決することは難しいかもしれませんが、システムを活用して解決可能な部分から段階的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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