電子帳簿保存法やインボイス制度の本格スタートをきっかけに、バックオフィス業務の効率化を図ることを志向している企業が増加していると感じます。
その手段の一つとして、クラウド型の経費精算システムを導入している企業については、以前もコラムで伝えたことがあります。
今回は、不正防止の観点という視点でのクラウド型経費精算システム活用例について、お話をしたいと思います。
経費精算システムの導入のメリットは様々ありますが不正防止の観点も
クラウド型の経費精算システムを導入する場合のメリットとして、次のような点が多く挙げられます。
■経費精算業務にかかる業務時間が圧縮される
■リモートでの申請や承認が可能なので、在宅勤務との親和性が高い
■電子帳簿保存法に対応したシステムの場合、ペーパーレス化が加速する
上記のようなメリットを享受することでも導入の効果は高いといえますが、実は不正防止という観点からも効果が発揮されるのです。
経費精算による不正は数多く発生
企業規模の大小を問わず、経費精算における不正はなかなかゼロにはならないと感じます。
経費精算での経費には、大きくは出張等の旅費交通費にかかるものと、それ以外の経費にかかるものとの2つに大きくは分かれます。
前者の経費精算での不正としては次のようなものが考えられます。
・カラ出張による出張旅費の水増し請求
・カラ出張による出張日当の水増し請求
・不適切なルートによる旅費交通費の水増し請求
等々他にも不正の手口はあり、上記は旅費交通費に関する不正の手段の一例です。
一般的に、出張精算等をするにあたっては、申請内容を上司が確認して、その後経理部門で最終確認をするという流れが多いです。
経理部門での確認といっても、出張に行ったかどうかを個別に確認するというのは現実的ではありません。経理部門では、領収書がある場合は領収書との照合や、申請部門の上司の承認が得られているのかといったことが確認事項となっているのが現実的な対応です。
そのため申請部門の上司のチェックというのは重要となりますが、詳細に申請内容を確認せずに承認してしまっているという実態もあるようです。
例えば出張に関していえば、実際に出張に行ったかどうかは申請者の予定表などで確認をするという手段が必要になりますが、部下が多い場合、逐一予定表などを確認せずに承認してしまうというケースも見受けられます。
また、領収書を必ずつけるというルールになっていれば領収書との照合で不正の防止を図ることは可能です。しかし、少額の領収書の入手を免除している会社もあり、このような場合は実際に出張に行ったのかどうかを証憑と確認することは難しいです。
また、本来であれば最短や最安のルートで移動できるところを別のルートで申請するという不正もあり得ます。
さらに、最近は在宅勤務が増えて勤務の実態がなかなか見えにくくなったこともあり、在宅勤務者が出社した場合の実費精算や、外出をした際の旅費交通費などを把握することが難しくなったという声もよく聞きます。
ICカード連携するシステムの活用
このような背景の中で、経費精算システムの機能を活用することで、カラ出張による不正や不適切なルートによる申請といった不正を防止することも可能となります。
具体的には、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードと経費精算システムが連携できる場合は、ICカードからデータを読み取ることで、実際に乗車した事実が申請に反映されることになり、乗車の事実確認(予定表等との照合)はいらなくなります。
経費精算システムによっては、ICカードから読み取った場合に特別なアイコンが表示されるものもあります。そのアイコンが表示された行程は、少なくとも実際に乗車したという事実はあるので架空の移動かどうかの確認は不要となりなす。
また、行程が適切かどうかという観点を見る場合に、最短や最安の場合は、特別なアイコンが表示されるという仕様の経費精算システムもあります。
そうなると、承認者はそれらのアイコンがついていない行程についてのみ念入りに確認をすれば良いことになりますので、手間も減りますし、申請者もできるだけ最短や最安のルールで実際に乗車するようになるでしょう。
経費精算システムは不正防止の観点からも有益な手段となりますので、導入にあたっては、このような観点も加えていただくことにより、更なる効果が発揮されることと思います。
カードは会社専用が良いか個人用の活用が良いか
ICカードとの連携をする場合に、個人用で使っているICカードと、会社専用のICカードを使うのとどちらが効率的かという課題があります。
会社専用のものを用意して使った方が、公私の区分がされて良いという風に映るかもしれません。しかし、実務上は乗車の都度、個人用と会社用を区別するというのは申請者にとっては負担になりますし、誤って利用してしまうこともあり得ます。
そのため、個人用のカードのうち会社利用分だけを経費精算システムに取り込む、という方が実務的には運用しやすいと考えます。
個人分を取り込まないようにする手間などはかかりますが、会社全体で考えた場合、経費精算による不正が減少するというメリットを享受するために活用を検討されてはいかがでしょうか。
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