時代がペーパーレスを求めているがどこから始めるか・・・
ここ数年電子帳簿保存法の改正が頻繁に行われています。特に電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関しては、企業に与えたインパクトは大きなものといえます。
当初は一定以上の規模の組織であれば、検索要件等を整えて電子取引を保存する必要があり、多くの企業等で宥恕措置が終了する2023年12月末に向けて、どのような方法で保存するべきかの検討がなされていました。
ただ、令和5年度の税制改正で原則的には電子取引は検索要件等を備えて保存するべきとなってはいるものの、緩和措置が恒久的に認められるようになりました。
具体的には、システム等の対応ができなかった事業者は、出力した書面での保存に加え、税務調査等でデータのダウンロード等の求めに応じることができるように整備している場合、電子データの検索機能を確保することが不要になりました。
そのため、一部の企業では電子取引の保存に関して、前進が見られなくなった面も否めません。それでも、社会全体としては、紙のやり取りが減る傾向になっています。
例えば、インボイス制度が導入されるのに伴い、発行する請求書をペーパーレス化する動きは、ペーパーレスが加速していることを象徴する一つといえるでしょう。
そこで、企業によっては、これを機会にペーパーレス化を進めようという機運は高まってきています。しかし、電子取引の保存で足踏みをしている企業の場合などは、どこから手を付けてペーパーレスを推進しようかと悩んでいるケースもあります。
スキャナ保存制度を活用したペーパーレス化
ペーパーレスをどこから始めるか悩んでいる場合に、紙で入手した証憑のペーパーレス化をクラウド型の経費精算システムを導入して解決する方法は、多くの企業が採用している方法の一つです。
従業員の経費精算のなかでも飲食店での領収書やタクシーの領収書等は、紙で入手することが多いと思います。大量に入手した紙の領収書等を廃棄したいですよね。
そこで、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を活用して、紙の領収書等を廃棄してペーパーレス化を図ることを志向します。
スキャナ保存制度とは、国税関係書類をスキャナやスマホで読み取ってデータ化して保存することで、紙の原本の保存が不要となる制度です。
スキャナ保存制度に関しても令和5年度の税制改正で一部緩和措置が採用されるようになり、より使い勝手がよくなりました。
具体的には、
- ◆ スキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存を必要とする要件が廃止となりました。
- ◆ スキャナ保存時に記録事項の入力を行う者、または、その者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにしておくことを求める要件が廃止となりました。
- ◆ スキャナで読み取った際に、帳簿と相互にその関連性を確認できるようにしておく必要がある国税関係書類が、「重要書類(契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されることとなりました。
また、スキャナ保存制度導入に関して、令和5年度以前の税制改正で事前の承認申請が不要になっています。その点は、スキャナ保存制度を導入しようと考えている会社にとって非常にハードルが下がった点でもあります。
使い勝手のよい経費精算システムをうまく利用
使い勝手の良くなったスキャナ保存制度を使い倒すには、使いやすい経費精算システムの導入もあわせて必要となります。
最近の経費精算システムでは、
- ◆ スマホで読み取りをすると金額等の情報をデータ化してくれる
- ◆ タイムスタンプが付与される
- ◆ 電子帳簿保存法に対応した保存ができる
- ◆ 交通系のICカードと連携ができる
- ◆ システム上で申請・承認が完了する
- ◆ クラウド型でオフィス以外の場所から容易にアクセスが可能
- ◆ 異常値が入力されている場合にアラートのマーク等が付される
- ◆ ワークフローの機能も付いている
- ◆ 会計システムへ取り込みが容易にできる
といった様々な機能が実装されているものがあります。
自社のニーズに合った経費精算システムを選んで導入することで、ペーパーレスの実現はもちろん経費精算業務の効率化が図られることが多いです。
従業員経費以外の取引先への支払いにも活用
経費精算システムを導入すると、まずは従業員の経費精算に利用することになるでしょう。
従業員が入手した領収書等をスキャンやスマホで撮影してシステム上でアップして、あとは上長等の承認が済めば、所定の期日に精算代金が従業員の預金口座等に入金されます。
経費精算システムを導入した場合は、従業員の経費精算だけで終わらせることなく、業者等の取引先への支払いに使っている会社も多いというのが実感です。
発注システム等を以前から利用している会社の場合は、あえて利用することはないですが、今まで購買関係のシステムを利用しないで支払い処理をしていた会社の場合などは、経費精算システムを導入したタイミングで取引先への支払いにも利用しているケースがあります。
業務の流れとしては、取引先から入手した請求書を経費精算システムにアップして、そのあとはシステム上で承認・決裁がされていきます。
従業員の経費精算だけでは導入効果が低いと思っている企業では、ぜひ検討してはいかがでしょうか。
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