BPOで経理のスキルアップ~これから求められる人材

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経理をBPOしたら経理のスキルが低下する懸念はあるか

経理業務をBPOした場合、経理部門のメンバーの立場で考えると、「外部に経理業務を出すことで自分たちの経理レベルが下がるのではないか」と懸念される方もいると思います。

実際、BPOの相談や提案は経理部門からあがってくるのではなく、経営陣や経営企画など経理部門以外から打診があります。背景にはそのような経理部門の懸念もあると考えられます。

それでは、実際に経理をBPOした会社の経理部門のメンバーの方々のスキルは下がっているのでしょうか?

現場を見ている側からすると決してそのようなことはありません。逆に業務の範囲が広がって、レベルアップしているメンバーが多いというのが実感です。BPOを通じてどのようなスキルアップが期待できるのか、BPOが活用される時代において経理部門で求められる人材について見ていきたいと思います。

業務の標準化によって得られる効能

経理のBPOが導入される場合、今までであれば社内のメンバー間で“あうんの呼吸”でできていた業務が、外部とのやりとりが生じることで一定のルールを設定する必要が生じてきます。

そのため一般的にBPOを導入する際は、まず業務のルールを決めることや、書類のひな型を統一するといった標準化を図ることが多いです。

業務が標準化されてBPOが軌道に乗ってくると、既存の経理メンバーは今まで時間をとられていた単純業務から解放されることになり、よりレベルの高い業務に時間を費やすことが可能になります。そうなると確実に高いスキルを求められるようになるので、自ずとスキルアップが図れるのです。

それでは、具体的にどのようなスキルが求められてくるのでしょうか。

業務カイゼン力が求められる

世界における日本の時間当たり生産性の低さはかねてから指摘されており、働き方改革の中で生産性の向上は喫緊の課題です。経理部門だからといって生産性を無視することは出来ない時代となっており、経理業務をいかに効率的にしていくかということは、企業規模にかかわらず求められるタスクの一つです。

具体的に、生産性向上のために経理のメンバーには次のようなスキルが求められてきます。

■システムをいかに効率的に使いこなすか

せっかく導入しているシステムでも使い方を間違えると非常にムダな作業をしているケースがあります。マスタの設定を最適にすることで、会社が求める必要な数値が集計されますので、ゴールをイメージしてマスタ設定する能力が求められます。

■RPAの活用を提案する

作業効率を上げるために、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用している企業も増えてきています。経理業務の中でも単純作業などは業務を整理してRPAツールを使って処理することで、人の作業を大幅に減らすことが可能です。そのためのアイデアや、業務の流れをRPAが活用できるように変更するための知恵が求められます。

■複数人で対応する仕組み作り

経理業務の属人化を避けるために、同じ業務を複数人で実施できるように部内のマネジメントを適切に実施することも重要な課題です。複数人で対応することで、急な休みへの対応も可能となりますし、他のメンバーと同じ作業をすることでお互いに作業効率をあげるために建設的な意見を出し合うといった副次的な効果も出てきます。

■決算早期化にはスピードだけではなく正確性も求められる

上場している会社であれば市場からの求めで、あるいは未上場の会社であったとしても経営陣からの求めで要求されることに、決算業務の早期化があります。決算の早期化は、年度末の決算に限らず、月次決算のレベルでも求められることが多いです。

経理業務の場合、時間がないからといって雑に仕上げることは許容されず、正確性を保ちながら早く仕上げることが必要なので、いかに正確に行うかという視点も必要です。

ですから転記作業を減らすことでミスを減らしたり、Excelファイルを使って業務を行っているとしてもなるべくファイルの数を減らし、できるだけ二重入力をなくすといった工夫も早期化と正確性の両方の実現に寄与することになります。

このように今の経理部門のメンバーには、業務カイゼンというスキルが求められています。そして経理業務をBPOする場合でも、カイゼンの提案ができるメンバーであれば、業務の効率化を通じてBPO自体を成功に導くことができるので、部内はもちろん社内での存在価値は高まります。

チェックと最終判断によるスキル向上

経理業務をBPOした場合、作業はBPOベンダーが行ってくれますが、内容の確認をするのは発注側の企業になります。

例えば月次決算であれば、BPOベンダーが入力を完了した試算表をチェックして問題がないかどうかを確認する必要があります。貸借対照表の残高の内容は妥当か、損益計算書には適切な数字が計上されているかといったことを検証する必要があります。

BPOがスタートしたのちには、会社によっては管理職以上の方が行っているようなチェック業務を、今まで作業が中心だったメンバーが関与することもあります。そうなると、今までよりも広い視野で貸借対照表や損益計算書を見る必要が出てきます。

例えば、今までは売掛金の残高が販売管理の台帳と合っているかどうかしかチェックしていなかった担当者が、残高に滞留しているものがないのかどうかを確認したり、早期に回収するために営業部門に滞留状況を速やかに伝えるといったことに時間をかけるようになった好事例を多く見てきました。

さらに、BPOを導入し、経理のコア業務に経理メンバーが関与できるようになると、より高いレベルの最終判断を行うことでスキルアップが図られることもあります。

具体的には、決算時において減損の判定や税効果の回収可能性といった、今までであれば上司が行っていたような判断業務の一次担当を実際に行うチャンスも生じてきます。

これまで単純業務をしていたメンバーからするとややハードルがあがるように感じるかもしれませんが、それらの業務も知識を吸収さえしてしまえば実施は可能なので、外部に委託することでコア業務に関与する機会に恵まれるのです。

経営参謀としての役割から真の経営者へ

経理部門のコア業務に注力できる体制が整うと、経営陣から企業戦略に役立つ情報の提供や戦略実行に関しての提案を経理部門のメンバーに求められるケースが増えます。

つまり、経営参謀としての役割が期待されるのです。

今までであれば数値を作ることだけが仕事であった経理部門が、BPO導入後に作成する時間から解放されることで、できあがった数字を判断し、活用することが求められるのです。

経営陣と近い距離で仕事をすることで、成長する機会が得られることはもちろん、様々なケースに対応することでスキルアップも自然と図られることになります。

そして、何よりも参謀としての役割から経営陣の一員になることも十分にあり得ます。最近では、上場企業の社長に経理部門出身の方が就任しているケースも増えており、経理の経験が経営に役に立っていることを物語っています。

BPOを通じてコア業務に集中することでスキルアップを実現し、企業経営への一歩を踏み出しましょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:中尾 篤史(公認会計士/税理士)

CSアカウンティング株式会社 代表取締役社長
日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員
著書に『経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、
『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、
『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、
『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、
『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、
『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、
『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、
『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。



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