【後編】判断に迷う仕訳を起こせる会計術著者・山岡信一郎先生直伝!新人経理の仕事をバージョンアップするための5カ条プラス1

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経理の仕事は、表立って活躍したり評価されたりする機会に乏しいため、自分の実力を客観的に測ることが難しい職種のひとつ。とはいえ、どこの会社も優秀な経理担当者を喉から手が出るほど求めているもの。実力さえ身につけば、社内外でのステップアップも夢ではありません。

今回、『判断に迷う仕訳を起こせる会計術』などの著者で知られ、経理実務にも精通している会計士の山岡信一郎先生に、経理が持つべき視点や、業務の捉え方についてインタビュー。「新人経理の仕事をバージョンアップするための5カ条プラス1」として、前・後編にわたりお届けしています。聞き手は前編に続き、マネーフォワードの中堅経理(取材当時)として活躍し、山岡先生の著書の大ファンである杉浦が担当します。

1〜3カ条はこちらをチェック:【前編】カリスマ著者・山岡信一郎先生直伝!新人経理の仕事をバージョンアップするための5カ条プラス1

4.現場を見て、社員の活動を捉える

杉浦:山岡先生は「経理はパソコンに向かうだけではなく現場を見ることが大切だ」という考えをお持ちですが(前編記事)、現場では何を観察して、どのような情報を集めることが望ましいでしょうか?

山岡:まずは、現場でどんな活動が行われているのかを、興味を持って見にいくことから始めるのがいいでしょう。たとえば営業であれば、どのような活動をしてクライアントから受注しているのか、などです。一見関係ないように見えますが、社員の活動を知ることで、経費がかかっている理由を把握できるようになります。

杉浦:社員が動いているからこそ、会社のお金も動くんですよね。

山岡:結局は人間なんです。つまり「売上」という勘定科目を見たときに社員の皆さんの活動が見えるかどうか。どのような活動が売上につながっているのか、という点をイメージできることが大切です。私自身もこのことを経理の方から教えてもらいました。簿記を学んだだけではそんなことまで分からないですよね。

杉浦:確かにそうですね。

山岡:監査においても、そうした見方は重要なんです。現場を知っていれば、イメージと違う数字が出てきたときに「おかしいな」と気づいて調べられますが、単純にデータを分析して利益率がどれくらいか、なんて調べても事実は見えてきませんよね。監査も数字を見ているようで、最後は人間を見ています。

杉浦:経理はルールに則って正確に数字を処理するだけの仕事と思われがちですが、実態はそうではないですよね。

山岡:言われたことをこなすだけ、考えることが嫌いな人は経理には向かないです。「なぜ?」と思える人でないと、仕事の面白さを感じられず疲れてしまうと思います。

杉浦:考えるクセをつけるためには、何からはじめるといいでしょうか?

山岡:まずは、身近な業務に対して疑問を持つことからはじめてみるといいと思います。たとえば、先月分の請求書が届いて仕訳を起こすときに、言われた通りに処理するのではなく、現在の日付で仕訳を切っていいのか、先月分として切った方がいいのか、自分の中で問いを立てるイメージです。「このタイミングでこの手続きをおこなっているのはなぜなのか」と疑問を持ち、その根拠を明確に説明できるかを考えてみることから始めてほしいです。

杉浦:その積み重ねは、必ず実力に結びつきますよね。

山岡:経理の仕事を深く理解すれば、より正しい情報を集約できます。そして、その情報に基づいて経営陣は正しい意思決定ができます。これは、経理としてとても高いパフォーマンスであると言えます。

5. 経理の価値を知る経営者のもとで働く

杉浦:経理という仕事の人気がない理由として、「プラス評価が少ない」ことが挙げられます。
正しい情報を処理した、正しい仕訳ができたとしても「できて当たり前」と思われる部門です。基本的にマイナス評価しかありません。

山岡:そのプレッシャーを経営者が理解していればいいのですが、間違ったときには怒られ、「よくやった」と言われる機会が乏しいとなると、モチベーションも下がりますよね。そこを経営層がきちんと理解している企業に勤めたいものです。もし正当な評価をされていないとなれば、転職も視野に入れてはいかがでしょうか。常に「なぜこうなるのか?」を考え、自分なりに調べながら経理の仕事をしていると、会社のルールだけに縛られずに、より高次で汎用性のある経理の知識が備わります。そうすると、どこの企業に行っても適応できるものです。

杉浦:確かに、経理の仕事は会社独自のやり方や考え方に染まってしまうと、他の会社では通用しないことも少なくなさそうです。

山岡:海外の経営者は経理や会計を理解している方が多いと聞きます。むしろ理解していないと会社なんて経営できないくらいの考え方ですから、その点では日本は遅れていると思います。会計や税務の難しさを理解している経営者が少なすぎることは、問題ではあります。

杉浦:優秀な経理担当者は経営者が守らないと、どんどん流出してしまいますよね。管理部門を大事にできないと、会社が傾くと言っても過言ではなさそうです。

山岡:経理の価値が分かっている会社は、優秀な経理担当者を手放さないものです。

プラス1. 優秀な経理の共通点

杉浦:ヘッドハンティングされるような優秀な経理には、どのような共通点があるでしょうか?

山岡:やはり、仕事をするときに考えるクセがついている人ですね。たとえば、「なぜこの会計処理をするのか」という根拠の部分を明確に説明できる人、とも言い換えられます。特に、若い経理担当者は根拠を聞くと「今までこうやっていたから」「ネットに書いてあったから」と答えるケースが見受けられます。でも、正しい根拠を探ろうと思ったら、法律や会計基準に行きつくはずです。原典にあたるクセがあるかどうかが、経理としてのスキルの差につながっていくと思います。

杉浦:私も開示を担当したときに、監査法人に対して根拠をしっかりと話せなくて、たくさん突っ込まれたことがあります。相手も自分も納得するためにはどうすれば……と考えた結果、やはり原典にあたりましたね。

山岡:ネットにも書籍にも間違いが書かれているケースも考えられます。それよりも原典にあたり、ロジカルに考えて処理する訓練ができれば、経理のスキルも絶対に伸びますね。

杉浦:確かに債務台帳の作成一つ取っても単に突き合わせをするだけでなく「どういう取引先が多いのか」「支払サイトから外れた取引先はいないか」まで考える癖がついているか。そうしないと、会社の数字が正しく読めなくなってしまう。手間はかかりますが、簡略化だけ目指してしまうと、ミスも起きがちなのかなと思いますね。

山岡:その意識は素晴らしいと思います。HOW(実務の進め方)は考えるけど、WHY(なぜその実務が必要なのか)は考えない。これでは、経理としての成長が頭打ちになってしまいます。なぜやる必要があるのかを考えながら業務に進めることで、ひいては自分自身の実力につながってくるはずです。

杉浦:山岡先生との対談を通して、私自身モチベーションを高めることができました。きっと新人経理の皆さんもやる気が出るだろうと思います。本日はありがとうございました!

インタビューの最後に、杉浦さん持参の著書にサインをいただきました!

<前・後編のまとめ>
1.ルーティンワークから一歩踏み込むと、経理の面白さが見えてくる
2.「数字の背景にある意図」を知る
3.経理を極めて「経営」を体感する
4.現場を見て、社員の活動を捉える
5.経理の価値を知る経営者のもとで働く
プラス1. 優秀な経理の共通点とは?

現場を知り、考え、数字の背景を捉えること━━。新人経理に大切なことはもちろん、あらためて、企業における経理が持つ役割の重要性についても再認識する機会となったのではないでしょうか。

<前編はこちら:【前編】カリスマ著者・山岡信一郎先生直伝!新人経理の仕事をバージョンアップするための5カ条プラス1

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:末吉 陽子 (すえよし ようこ)

1985年生まれ。日本大学藝術学部卒業後、広告制作会社に就職。営業・制作ディレクターを経て、2012年にフリーランスの編集者・ライターとして独立。インタビューをメインにビジネスからカルチャーまで幅広いジャンルの媒体に寄稿している。



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