マネーフォワード経理部が推す「成長をドライブさせた最強の4冊」

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簿記の知識はバッチリでも、実務でつまずく駆け出しの新人経理は少なくありません。現場では、知識だけで対応できないことばかり。とはいえ、上司や先輩が教育に充てられる時間にも限りがあります。

経理の仕事に行き詰まったとき、もっと深く理解したいときに役立つのが、先人たちのノウハウが詰まった書籍です。マネーフォワードで経理業務に携わる杉浦大貴も「仕事の壁にぶつかったとき、本から学んだことが礎になり乗り越えられました」と語る一人。

社内の経理業務IT化の推進や外部イベントへ積極的に登壇する杉浦。今回は、そんな彼がこれまでのキャリアで参考にしてきた書籍の中から、特にオススメしたいと語る名著をご紹介します。

はじめに 杉浦のキャリア:大学では経営学を専攻。経理の道を究めるべく転職でマネーフォワードへ

実家が自営業だったこともあり、経営や会計が身近だったことから、大学では経営学を専攻していました。学生時代は体系的に学べたことで、経営学や会計への興味がより深まり、関連書籍は1年間で100冊ほど読んだと思います。 会計のゼミに所属して簿記2級も 取得しました。

大学卒業後、SI(システムインテグレーション)事業を手掛ける一部上場企業に新卒で入社して、経理部に所属。3年ほど勤務した頃には経理の仕事が好きになり、ひとつの会社の経理担当者という枠組みを超えて、経理の知識を武器にもっと世の中に役に立つ仕事をしたいと思うようになりました。経理や会計の仕組みをアップデートしている会社がないかと探していたところ、クラウドで便利な仕組みを開発しているマネーフォワードを知り、2018年7月に転職しました。

現在は財務をメインに担当。通常の経理業務に加えて、経営数値の分析や新たなITツール導入の検討なども任されています。マネーフォワードでの経理の仕事は毎月動きがあってエキサイティングです。それはベンチャーならではだと思いますが、いろいろな人と話をして、取引内容をヒアリングしながら会計基準や様々な法令、商慣習に照らし合わせ、経理処理を決める という業務が求められます。(2019年5月時点)

「必要な情報を集める」「運用が回るワークシートを制作する」などといったように、ルーティン以外の仕事がとても多いです。私は同じことを繰り返す業務よりも新しいことにチャレンジしたい性格なので、とてもやりがいを感じています。

「成長をドライブさせた最強の4冊」一覧

今回ご紹介する、「成長をドライブさせた最強の4冊」一覧

 

<オススメ書籍.その1>『財務3表・実戦ドリル』國貞 克則著

社会人1年目、経理のキャリアがスタートして最初に読んだ1冊です。簿記の勉強はしたものの、実際に帳簿を作成する過程では科目がどう動いているのかが想像できず、モヤモヤすることがありました。

簿記ではどうしても「個々の項目に対してどんな仕訳を切るか」という話に終始してしまいがちです。しかしながら「仕訳を切った結果どうなるのか」といったように先を見据えていないと、ただ数字をExcelに入力しているだけになってしまいます。

自分が何をしているのか、なぜこの仕訳を切っているのか、そもそも仕訳を切るとはどういうことなのか――。これらの疑問を解消したいと思い手に取った一冊が『財務3表・実戦ドリル』です。会社の設立から経理実務に関する流れが18 問ほど収録されており、ドリル形式で問題を解いていくという内容で、これまで読んだ簿記の勉強本とは一線を画すものでした。

簿記の勉強をする場合はやはり貸方借方が大事になり、その仕訳だけに終始してしまいがちになります。一方でこのドリルでは、例えば製品の売上がPL、BS、CF にどのように影響するのか、などといった部分も見えてきます。

ひとつの仕訳にどんな意味があるのか、帳簿のどこに影響するのかを学べたことで、自分が切っている仕訳が企業活動にどのように影響するのかをこのドリルを通して深く理解できました。

<オススメ書籍.その2>『「おかしな数字」をパッと見抜く会計術』山岡 信一郎著

実務の流れがある程度分かってきた社会人2年目の頃。経理としてステップアップする上では「数字を読むことは欠かせない」とひしひしと感じるようになっていました。とはいえ、仕事を通して上司や先輩から教えてもらう機会はほとんどありませんでした。

そこで読んだのがこの本です。帳簿をつけるに当たり、数字は綺麗に出てくるわけではなく、絶対に変な数字が混ざるものです。それはミスなのか、不正なのか、はたまた異常事態が発生しているのか。いずれにしても「何かおかしい」と見抜けなくてはなりません。

この本では経理の心構えから始まって、各科目の説明に入っていくのですが「数字を読むとはどういうことか」「どうやって数字を確認するべきなのか」が詳しく書かれているんです。最終的には監査対応にも応用が利くので、とても濃い内容です。

例えば、不正が起こるメカニズムや、不正に関する分析方法などについても詳しく書いてあります。「この数字が正しい」と胸を張って言えるようになったことで、経理としての能力を飛躍的に伸ばすことができたと思っています。赤線をたくさん引いて、かなり読み込んでいる一冊ですね。

<オススメ書籍.その3>『経理高速化のための7つのITツール活用戦略』古旗 淳一著

社会人3年目、経理の仕事にも慣れてきた頃には「強みが欲しい 」と思うようになりました。経理として基本的なスキルは身についてきた自負はありましたが、果たして他の人と比べて勝てる部分があるのだろうか。自分に自信を持てずにいました。

そこで読んだのが『経理高速化のための7つのITツール活用戦略』でした。経理業務に特化したITツールの使い方の本は何冊もありますが、テクニック集のような本が多いのです。でもこの本は経理全体を視野に入れて、ITをどのように活用すれば業務改善につながるのか、体系的に書かれているところが特徴的です。

私自身、非効率な作業に耐えられない性格なので、常日頃からITツールをフル活用して業務を効率化したいと考えていました。ちなみに、個人的に業務効率化につながる「Excel VBA」の資格は取っていましたが、経理部というチームの実務にナレッジを落とし込めていない状態でした。

自分だけが理解できるツールやテクニックを業務に盛り込んでも意味がないと実感。共同作業をする人や、今後業務を引き継いだ人が使いやすいように整えるにはどうすればいいのだろうと悩んでいました。

そんな悩みは、この本を読んだことで解消されました。というのも、経理業務に必要となるベーシックなITスキルに関する情報が丁寧に書かれた一冊だったからです。

例えば、使用する関数もかなり絞り込んでいて、どのように生かせば引き継いだ人が運用を楽にキャッチアップできるかまで言及されています。また、単なるExcelの使い方に終始せずに、Excelの見やすさ、取り出しやすさなど、実践で役立つ内容が書かれています。関数をどう作って、最終的にどのように美しいシートに整えれば他の人も分かりやすいのかを理解できました。

自分自身の理解が深まったことで、経理のメンバーに納得してもらえる業務改善をアウトプットできるようになりました。結果、業務の効率化に関する相談が自分のところに寄せられる機会が増えました。

経理はプロジェクト案件が少ないので、改善業務は評価されやすく、経理担当者としての付加価値を認めてもらいやすいと思います。それにより求めていた「経理としての強み 」を得ることができたと感じています。何より頼りにされることは働くモチベーションにもつながりました。

<オススメ書籍.その4>『判断に迷う仕訳を起こせる会計術』山岡 信一郎著

最後は社会人4年目、マネーフォワードに転職してから読んだ本をご紹介します。『判断に迷う仕訳を起こせる会計術』では、新たな取引や例外処理に当たる際に、判断根拠をしっかり見出す方法が説かれています。

この本に書かれていることは、マネーフォワードでの仕事で特に役に立ちました。というのも、前職は取引内容 がほぼ固定されていたのですが、成長著しいマネーフォワードでは新規取引が続々と発生します。常に新たな仕訳判断が問われる環境においては、暗記では対応できず判断軸や視点が必要です。

この本では、「勘定科目は何が正しいか」、「仕訳をいつ起こすか」、「どのように修正・調整するのか」、「経済的実態を表しているのか」、「見積りは正しいか」といった5つの視点から、仕訳を起こす際の事例も豊富に掲載されており、実務者にとって基礎となる思考方法を習得できます。

この5つの視点を知っているかどうかで、業務の着眼点が大きく変わります。知らなければ取引の表面的な部分だけヒアリングして聞いて終わりになりがちですが、知っていれば取引発生日はいつ?契約書はどうなっている?事業部側の管理者は?経理が認識できるタイミングはいつ? など、何を誰に聞いたらいいのかが明確になります。経理としてのステップアップに間違いなくプラスになる一冊です。

今回、杉浦がピックアップした4冊には、経理の実務を支える土台になる知識やノウハウが詰まっています。「何に役立つのかと聞かれたらすべてに役立ちます。いずれも当たり前を教えてくれた本です。」経理として壁にぶつかっている人や、部下や後輩の育成に携わっている人、業務の効率化に取り組んでいる人はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

★次回、『「おかしな数字」をパッと見抜く会計術』の著者、山岡 信一郎さんのインタビュー記事をお届けします!

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