田村夕美子の『経理塾』第1回:経理のコミュニケーション術を再考する

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経理としてスキルアップし、社内での評価をあげるためにはどうすれば良いのか?いちばん大切なのは「本質に対し向き合いながら、自身に備わっている“個”の潜在能力を引き出し、具体的に行動してみること」というのは、経理向けの研修やセミナーを行っている田村夕美子さん。Bizpedia読者に向けた田村夕美子さんの経理塾、第1回です!

経理に必須の鉄板スキル「コミュニケーション術」。明日も今日と同じスタイルで良いのか?

こんにちは。田村夕美子です。企業の経理管理職として勤務する傍ら、執筆や研修・セミナー講師として活動しています。改善化や効率化といった経理業務そのものよりも、従事者である経理パーソンの“個の潜在能力”に焦点を当てたメッセージをお届けしております。前向きな経理パーソンの方々のために、この『経理塾』にて少しでもお役に立てるとうれしく思います。

さて、初回テーマは“コミュニケーション”です。かなりベタで恐縮ですが、皆さんがこれまで捉えていたものとは少し異なるかもしれません。読み進めていただき、わずかでも取り入れてみてはいかがでしょうか。

CASE1:経理パーソンの悩みどころ。ヒエラルキーが壁となるコミュニケーション不全

(今回の塾生→老舗サービス業 経理チーフAさん 女性40代)

“他部署の方に連絡する際は、気を遣っています。コミュニケーションは重視しているつもりですよ。相手の立場になっての物言いは基本でしょう。
営業部の直接部門のマネージャーなど、上層部の方と接する際は、特に気を遣います。間接部門の私たちにアレコレ言われるのは、面白くないでしょうから。ミスを指摘したり、提出の締切日を過ぎた資料の催促をしたり等々あるでしょうが、相手の方が多忙なら共感し、経費精算書処理などヘルプできるところは、積極的にあたるようにスタッフにも伝えています・・・”

経理パーソンに求められる「コミュニケーション力」とは何なのか?

スタッフクラスの経理パーソンは、他部署から送信されてくる仕訳データや経費精算データなどのチェック仕事をする中で、相手の部署側のマネージャーにもミスを指摘する等、物言いをする場面があるでしょう。その際、決まって登場するスキルが本テーマの“コミュニケーション力”ではないでしょうか。

Aさんも日頃から、部下の方々に対し、コミュニケーションを重視させ、尽力している様子が伝わってきます。特に目上の方と接する際、相手の方を尊重しながら、多忙な時期はヘルプにも積極的に当たるように指示している様子は、彼女自身が持ち合わせている優しさも表れているように思えます。

ただ、ここで私が疑問視するところは、Aさんが部下の方々にも推奨しているコミュニケーション術で実際に効果が現れているか否かといった点です。ここはシビアですが、ビジネスの世界。もし、相変わらずミスや提出締切日の遅滞が生じているのであれば諸々の解決策を探る必要があるでしょうが、コミュニケーション術にメスを入れることも外せないでしょう。

コミュニケーションはビジネスツールの一つ。

コミュニケーション術とは何か?ですが、正解などありません。ただ、私が勧めたいのは、ビジネスツールの一つとして捉えることです。職務を遂行するための道具として、活用するスタンスで当たってはいかがでしょう。

例えば、今回の塾生であるAさんはチーフとしてスタッフらを束ねる位置です。彼女の部下の方々が担う経費精算処理や仕訳データ入力等は、定型業務と括られていますが、正しく処理をすることで公正な実績計上ができる他、分析処理などをすれば、各部署に対し、プレゼンする場面もあるでしょう。また、株主等への財務諸表開示や納税に繋がる職務なので、自社内のみならず、ステークホルダーや国、行政といった広い方面に対しても貢献していると言っても過言ではありません。

もし、コミュニケーションを重視しながら当たっても、相変わらず、各部署から送られてくるデータ内容のミスや遅滞が減らないのであれば、Aさん率いる経理チーム全体にもしわ寄せがいくわけで、看過できないはずです。

つまり、相手方に対して、経理の使命を理解してもらい遂行できるためには、どのようなコミュニケーション術が効果的なのか、しっかり見直し、実践する必要があるのです。

その人自身よりも、その人の環境・使命にフォーカスする。

ただ、“経理の使命”を声高に伝えようとしても、相手には届きません。いくらビジネスツールとして捉えても、相手を理解、尊重するところは外せないでしょう。特に目上の方に接する際は、気を遣うものです。私も取材をしながら見聞きするのですが、企業内のマネージャークラスの中には、「経理スタッフに物言いをされるのは、戸惑う」といった本音を漏らす方がいたり、経理部長クラスがスタッフらの要望を代弁しないと、他部署の上層部の人は聞く耳を持たないなど、実情が見え隠れしています。

私がお勧めしたいのは、もし読者の方の中に、「社内に苦手な人がいて、コミュニケーションが取りづらい」、「仕事が進まない」と感じている方がいるのなら、その“人”自身ではなく、その人が位置する“環境”そして“使命”に視点をずらして当たってみることなのです。

ここで、最近あなたが経理として必要なことをお願いした中で、相手が不機嫌になった、あまり聞いてくれなかったなど、良好ではないシーンを思い出してみてください。
……恐らく、相手の表情、声、態度など思い出したのではないでしょうか?しかし、それよりも、その人がどの部署に所在し、どのような役割を担っているのか、を思い出してみるのです。
もし不明であれば、あなたが籍を置いている経理部内で扱っているデータを紐解いてください。単に勘定科目や数字といった定番どころではなく、その人が属する部署が、どんな顧客、あるいは見込み客、取引先と折衝し、そしてどのような活動をしているのか、重点的に見直してみるのです。わずかでも、その人の役割や何を達成しようとしているのかといった“使命”が見えてくるのではないでしょうか。

企業は、価値観や考え方、思考が異なる人間同士で形成された集合体です。社員同士がしっかりと向き合って、すべて理解し合うことなど、そもそも不可能なのです。時に苦手なタイプとも接するシーンもあるでしょう。そのときに都度、その人自身を見つめていたら、ストレスばかり増え肝心な経理としての職務が進まなくなることもあり得ます。

その人自身よりも、その人の役割・使命にフォーカスし、理解した上で臨む。そして、あなたの経理としての使命も表しながら接してみる。このようなスタンスで当たってみることが、生産性向上に繋がり、ストレスフリーも期待できる一石二鳥以上のコミュニケーション術なのです。

実践編:個の思考“発信”→相手方の“受信”が大事。双方間の生産性向上に繋がる

最後に実践編です。前述したように、経理パーソンは、データを紐解けば、その人が所属する部署の役割、使命をわずかでも実感することができます。日常業務の中でも、あなた自身が感じたことを発信することで、コミュニケーションが生きることがあるのです。

一つの例として、“出張旅費精算書”ですが、これは、単なる事務手続き上の書類ではありません。会社の予算を使って、顧客満足度アップや利益創造のために、ある場所へ出向き、このような商談をした、成果を上げたといった報告書です。その中で経理として内容をチェックすること以外に何かしら、興味や尽力を感じるシーンがあるはずです。

例えば、“このプロジェクトは前職で私が経験している。今後はどんな方向性で進むのか?”あるいは、“〇〇部は出張が多い・・・疲れている社員が多いかも?”等、多種多様な思考、発見などが生じるはずです。それらを相手側に“発信”すれば、“理解してくれている・認めてくれている”と感じてくれることもあるでしょう。

そして、次のシーンで、税額控除や実績計上等での必要性を説明することで、相手側も経理側の役割、使命を理解してくれるので、次第にミスや遅滞が減る期待もできるのではないでしょうか。

・・・コミュニケーション実践編:他部署の人に対して、データ訂正を依頼したい・・・

フローチャート
※ 双方の部署の役割・使命が理解できれば、経理側からもより付加価値の高い、情報提供も可能になる。

まとめ

塾生のAさんもあなたも、社外に出れば、異なる世界と繋がっています。よって、たとえ同じ経理部員だとしても潜在的なセンス、能力も異なるはずです。形式にこだわらず、あなたの発見・感じたことを発信するところからスタートを切れば、案外、苦手な相手とも良好な関係性が築け、ひいては、お互いの部署における役割や使命についての理解が深まり、経理側はその部署に対してより付加価値の高い情報発信が可能になるなど、生産性向上にも繋がるのです。

次の記事:田村夕美子の『経理塾』第2回:経理パーソンが扱う“データ”そのものに向き合う

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント&ビジネス作家として、セミナーや執筆活動に従事している。著書『できる経理の仕事のコツ』(日本実業出版社)、近著に『税理士のためのコミュニケーション術』(第一法規)。『速報税理』にて「顧問先のリアル事情」、ダイヤモンド・オンラインにて「未来に続く経理道」、新潟日報おとなプラスにて「晴天になーれ」など、多数連載中。



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