急成長ベンチャーに聞く「資金調達のリアル」 デット、エクイティ…どう使い分ける?

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会社の成長に必要な資金調達。成長を続けるベンチャー企業の経営者は、数ある資金調達手段をどのように使い分け、活用しているのでしょうか。

その実態に迫るべく、資金調達サービスを提供するMF KESSAIが、2019年3月28日にパネルディスカッション「会計事務所と急成長ベンチャー企業が語る資金調達のリアル」を開催。

動画マーケティングを手掛けるTORIHADA・大社武社長、ネットリサーチ事業のテスティー・横江優希社長が登壇し、自社の資金調達の裏側を語りました。さらにスタートアップ企業を支援するSeven Rich Accounting・服部峻介社長が、専門家の視点から各資金調達のポイントを解説。本稿ではその様子を紹介します。

登壇者プロフィール

パネリストのプロフィール


右から大社武社長、横江優希社長、服部峻介社長

大社 武(おおこそ たける)
株式会社TORIHADA代表取締役社長
1987年東京都出身。2011年株式会社サイバーエージェント新卒入社。管轄最優秀新人賞を経て、2013年GREE株式会社との合弁会社である株式会社グリフォンを設立し、取締役就任。その後、株式会社マッチングエージェントにて「タップル誕生」のマーケティング責任者を経て、2017年10月2日株式会社TORIHADA創業。「ベストベンチャー100」に選出。
横江 優希(よこえ ゆうき)
株式会社テスティー代表取締役社長
1990年生。一橋大学商学部卒業。 株式会社マクロミルにて、エンジニア・ディレクターとして新規アプリ・サービス開発に従事。スマートフォンアプリ制作会社を設立の後、 株式会社TesTee(テスティー)を設立。会員数170万人(2019/3)のアンケートアプリ「Powl(ポール)」を運営。
服部 峻介(はっとり しゅんすけ)
公認会計士/Seven Rich Accounting代表取締役社長
北海道大学卒。有限責任監査法人トーマツ、経営コンサルティング会社での取締役を経て、2011年にSeven Rich会計事務所・株式会社Seven Rich Accountingを設立。スタートアップの支援を中心に「損する機会を防ぎ、得する機会をもたらす」ことを実践し、「経営者の左腕」としての存在を目指している。

モデレーターのプロフィール

竹田 正信(たけだ まさのぶ)
株式会社マネーフォワード取締役執行役員/事業推進本部長
2001年インターネット広告代理店にて企画営業職に従事。2003年株式会社マクロミルに入社し、2008年取締役就任。
同社の経営企画部門を主に管掌し、事業戦略、人事戦略、企業統合、新規事業開発を主導。2012年株式会社イオレに転じ、取締役経営企画室長に従事。
2016年株式会社クラビス取締役・CFOを経て、2017年株式会社クラビスのグループ会社化に伴い、マネーフォワードに参画。

TORIHADAはデットのみで資金調達

竹田:今日はよろしくお願いします。早速ですが、資金調達といっても手段は様々ですよね。みなさんはどんな資金調達をされてきましたか?

<資金調達の主な手段>
・自己資金
自分で貯めたお金
・融資(デットファイナンス/Debt Finance)
銀行や日本政策金融公庫などから借り入れるお金
・出資(エクイティファイナンス/Equity Finance)
ベンチャーキャピタルなどの投資家から出資を受けて調達するお金
・その他
補助金や助成金、クラウドファンディング、ファクタリングなどで調達するお金

大社:TORIHADAはここまでデット(融資)のみで頑張っています。 それは当社の創業背景にも絡むのですが、当社はサイバーエージェントと博報堂プロダクツ出身の30代手前のメンバー3人が「世の中のためにいいことをしよう」と集まって起業しました。

ビジョンは「鳥肌が立つ感動を作る」というもの。エモーショナルな起業の仕方というか、事業モデルを固める前にビジョンのみ決めてスタートしたんです。


TORIHADA・大社武社長

とにかく生き残るためのキャッシュフロー経営を続けています。その結果まだエクイティ(出資)はしていないというところです。

日本政策金融公庫やメガバンクなどから数千万円を調達しています。調達の目的はシンプルで、キャッシュフローと資金繰りのためです。「投資をしたい」「人材採用したい」「マーケに使いたい」などではありません。僕らは代理店ビジネスなので、どうしても支払いと売上の入金のタイミングがズレます。その穴を埋めるために、常にキャッシュを持っておいて経営を回すために資金調達しているのが僕たちのリアルです。

竹田:デットだともちろん返済しないといけないですよね。まずは投資してもらおうとは考えなかったですか?

大社:エクイティの資金調達は、僕たちが絶対やりきるコミットメントを示し、投資家に信用されて、事業を実現していくものですよね。創業時に投資家の方とお会いする機会もありましたが、当初は僕たちの事業モデルが固まっていなかったので、その段階でエクイティを考えるのは無責任かなと。

今はとにかく走り切って、「ここで勝負する!」というタイミングでエクイティを考えたいと思っています。今は売上を伸ばして単月黒字を積み上げて、キャッシュを少しずつ貯める貧乏経営ですが、その分「ストイックにハングリーにやるぞ!」というベンチャー感は強いですね。

テスティーはエクイティ→デットへと展開

竹田:横江さんはどう資金調達していますか?

横江:今の会社(テスティー)が起業2社目でして、1社目はアプリ制作会社を創業しました。そこでは受託開発がメインだったのでファイナンスは何もしていなくて、基本的に黒字でやっていました。ただ、ものすごい伸びるかってそうでもなく……。その経験からスタートアップをやりたいと思いました。


テスティー・横江優希社長

それで2社目にテスティーを創業しましたが、自社プロダクトを作ってもそれが当たるかどうかわからないので、ファイナンスの方法はエクイティしかなかったんです。

最初はエクイティをやりましたが、そこからは早くファイナンスの選択肢を増やすことを意識しました。デットをするには単月黒字が必要だったりしますが、エクイティをした後は単月黒字を出せるように意識して、なんとかファイナンスの選択肢を増やそうとしました。実際単月黒字を出せるようになってから、デットで借りることができました。

竹田:まずはエクイティで資金調達して、純資産を上げて、黒字になってきてデットが使える。その知識はどう得たんですか?

横江:隣にいる、Seven Rich Accountingの服部先生です(笑)。

会計士が解説する各資金調達のポイント


Seven Rich Accounting・服部峻介社長

竹田:お二人とも事業モデルが全然違いますが、服部先生は事業モデルやいろいろな軸に合った調達を各企業にアドバイスされるんですよね?

服部:そうですね。経営者の性格でもアドバイスの内容は変わります。お二人の場合、大社さんはガンガン攻めるタイプだったので、ガンガン借りようと。

エクイティのデメリットとして、やりたいことができない可能性がままあります。さらに、投資家はプロダクトに対してお金を出したがるというのもあります。そうするとTORIHADAのようにプロダクトは持たず、この先やりたい世界観がある場合、エクイティには向かないんじゃないかと判断しました。

横江さんの方は、最初からエクイティが入っている状態でした。投資家が入ることのメリットはガバナンス機能が働くことですね。テスティーの投資家は結構ピリっとした方たちなんですよ。私から見ても怖い(笑)。その方たちと2カ月に1回程度、会議して、いろんなことを指摘されて、ちゃんと報告をする。その結果、日々そのことを意識するようになるという意味でエクイティが必要な時期もありますね。

横江さんの性格だとキャッシュがある方が頑張れるタイプだから、お金を多めに持たせてあげたいなとか。そこはもう社長の特性で、キャラによりますね。

竹田:事業モデルだけじゃなくて創業者の人柄も見て判断するんですね。

服部:見ますね。「ちょっと借入をしたら伸びるのにな」なんて人はガンガン借り入れをした方がいいし、借入がプレッシャーに感じちゃう人はまだしなくてもいいとか。そういうのは人によって違うので、その都度アドバイスを変えていますね。

資金がショートしそうなときの調達手段

竹田:ちなみにお二人が資金調達をするとき財務に明るいメンバーはいたんですか?

大社:いなかったですね。サイバーエージェントで子会社を経営してたとはいえ、PLを前提とした経営だったんですね。キャッシュフローという概念は起業して初めてわかるじゃないですか。最初の四半期があって次の四半期があって、売上がどんどん伸びていたときに、「あれ? お金の入りと出を考えると……まずいな」というのが見えたんですよ。会社がなくなるかもとヒヤッとしましたね。それですぐ服部さんに相談しました。

横江:私も全く知識がなくて、やっぱり服部先生に相談しながらエクイティとデットの使い分けをしていました。その中でどういったファイナンス思考が必要なのかとか、PL上で黒字でもお金がなくなることは実際にあるのでキャッシュフローの資金繰りの部分についても相談しています。

竹田:ショートするのがあと数カ月といった段階では使える手段も限られてくると思います。服部先生は、そういった緊急性の高い相談はどうしていますか?

服部:緊急性が高いときは、自分が持っている金融機関のパイプを全部使うというのが1つあります。金融機関は担当者や支店長や銀行によってかなりスタンスが変わります。担当者や支店長も異動があったりするので、1年前にお願いしてダメだったけど今なら大丈夫といったこともあるので。

あとはその会社にとってのベストを考えますが、基本的にはその状況でエクイティに動くのは良くないですね。そもそもエクイティで動こうとしてる途中だったら別ですが、動いてない場合はデットを第一に考えますね。

あとはクライアントから売上を先にもらうといったことは当然やりますし、さらに厳しくなったときにはファクタリングですね。手数料は何%か取られるけど、利益率がそれ以上にあればひたすらそれで伸ばし続ける。それで売上が伸びてくればくるほどその後のデットがしやすくなります。延命しながらデットで最大借りられるところまで頑張る、というようなアドバイスはしません。

竹田:ファクタリングは、例えば受託をして先にキャッシュが出てしまうケースなど、売上が立っているフェーズにならないと使えない手段ですよね。そういう意味で言うと、大社さんの会社は営業力がある一方で、受注する際はお金があるかどうかを気にしなければならない、といった状況でしょうか?

大社:まさにその通りで、例えば予算3,000万円のプロモーション案件が決まった時点で「あ、先に出る」となるじゃないですか。だからジレンマですよね。

そのジレンマが成長を阻害だとしたら、そこを解決してくれるサービスや仕組みがあれば、僕たちはもっと攻められるということに気がつきました。それで、一旦はデットでキャッシュを作り、それに加えてファクタリングを活用しています。これが僕らの急成長の要因です。

竹田:横江さんは、フェーズごとに最適な調達手段を選んでますよね。

横江:そうですね。ベンチャーのエクイティは基本的に広告か採用に使うかだと思っていて、ある程度経営が回るようになってくるとデットとすごく相性がいいなと思っています。

僕らもファクタリングを活用していますが、攻めのためと守りのための2つの目的があると思っています。攻めのためだと、先にお金があり、それを使うことでさらに売上を増やす。手数料以上の回収ができるようなモデルであれば活用していいと思いますね。守りのためだと、最近オフィスを移転して一気にお金が出て行ったので、残資金が心配になりファクタリングを活用しました。

エクイティを考える時期

竹田:大社さんは、エクイティで大きなお金を調達するのはいつ頃に見据えていますか?

大社:最初に言ったとおり、今はキャッシュフロー経営をして組織の文化や土壌を整えているような状況です。エクイティを考えていくタイミングはプロダクトを作るときだと思います。

自分のキャリアがこれまでずっと開発屋だったこともあり 、今後も「作る」ことはしたいんですけど、今はちょっと早いかなと。僕らは社内で「そろばんを弾けないやつはロマンを語るな」という意味合いで「ロマンとそろばん」という言葉を使っているんですけど、残り半年ぐらい、2期目が終わるぐらいまでにはロマンの軸の見立てをつけたいなとは思います。

竹田:いわゆる受け仕事で経営が回っていると、自社プロダクトを作る賭けに出るのは、どうしても優先順位が下がってしまいませんか?

大社:あるあるですよね。僕は前職サイバーエージェント時代の「うまくいってるときこそ投資しろ」という文化を大切にしており、今も子会社を作ったり新規事業を始めたりといろいろ小さく見立てをつけています。お金が回っているから会社がうまくいっているとはあまり考えないですね。

竹田:横江さんは今、資金調達ニーズはあるんですか?

横江:ちょうど考えているところです。主要事業は伸びていますし、デットで回るような仕組みではあるので、そこはエクイティよりデットの方が合っていると認識しています。

一方で、エクイティを検討している理由が2つあります。

1つ目は、今やっていることは堅調に伸びるモデルではあるし、どこかでアップサイドは来ると思っています。次に何かを仕込むときに、仕込む対象は当然確実性が高いと思うので、それはデットよりエクイティの方が相性が良いんじゃないかなと思っています。つまり新しい事業をやるためにエクイティを考えています。

2つ目は不景気ですね。業界に左右されるような商売なので、一気に業界の景気が悪くなったときにどうしようと。デットがメインだと返済しなくてはいけないので、会社に資金を残すためにエクイティをしています。

竹田:ともに大きな勝負に出るにはエクイティを考えなければいけないと話されてましたが、服部さんからアドバイスはありますか?

服部:それでいいんじゃないかなとお二人には話しています。

プロダクトを作りたい大社さんに関して、エクイティのいいところはガバナンスだけでなく、パートナーになり得る人たちが力をくれるのでスピードがありレバレッジがとても効くんです。そういった事業を手掛けるときに、エクイティの方がTORIHADAは伸びるんじゃないかなと思いますね。さらに、大社さんやTORIHADAの文化に合うような人が投資家になったらいいと思います。パートナーとして一緒にやっていきたいかどうかが一番強いのかなと。

横江さんのテスティーに関しては、それも一気に伸ばすようなアイデアが出てきたら、そこに対して適正な投資家が入って一緒に伸ばそうという、そういうのが向いている会社かもしれません。

資金調達はゴールじゃないんですけど、わかっていてもつい調達をゴールにしてしまいます。そこだけ気を付けて、ちゃんと先を見据えていれば大丈夫です。

これから起業する人へメッセージ

竹田:これから起業する方にアドバイスはありますか? 例えば、今から起業しますという若者にどんな言葉を投げかけますか?

大社:起業はした方がいいと思います。でも大事なことは一人で考えるより本当に頼れる周りの人達をしっかりと活用することだと思います。起業する前に、頼れるパートナーが頭の中に思い浮かぶ状況を作っておきたいですね。

僕は創業時、先輩の経営者に「お前の女房役になるやつはいるのか」と聞かれました。つまり、創業メンバーが全員優秀であることよりも、心の拠り所になる、支え合える存在がいるのかと。これからやることに一緒にワクワクもすれば不安も共有できる、そういうパートナーがいればいいと思います。

横江:事業モデルによっても変わると思いますが、自社プロダクトが当たるかどうかはわからないので、基本的には最初は赤字というのがあります。

「死なないことを意識する」のは大事だと思います。資金500万円で会社を始めたとしても、3人で始めて月80万円しか売上がなかったら半年で死んでしまうわけですよね。

あとはすごく好きな例えで、「起業直後は崖から皆一斉に飛び降りた状態で、落下している途中に皆で飛行機を作って、落ちる前に飛び立てばまずは勝ち」というのがあり、それをすごく意識していましたね。

竹田:なるほど。誰も起業したくなくなりそうですね(笑)。

服部:将来どんな自分になりたいのか、起業は1つの手段であることをどれだけ意識できるかという話はよくしますね。クライアントには今後どういう風にやっていきたいか、目先のお金を稼ぎたいというのはありですけど、その先にどんな人生を歩みたいかを聞くようにしています。それが描けていて、起業が1つの手段としてマッチしているならすごくいいなと思うんで。

まぁ、起業に囚われすぎないことですね。いろんな起業をしてみて、やめてもいい。死ぬわけでもないので。どんな世界を作っていきたいのか、どんな人生を歩みたいのか。ここから大きくブレなければいいのかなと思いますね。

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Bizpedia編集部

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