違法な可能性大!?使途不明金と使途秘匿金の違いを解説

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使途不明金と使途秘匿金

税務処理をする際に出てくる用語として、「使途不明金」と「使途秘匿金」があります。両者はその漢字から意味を想像することはできますが、具体的には一体何が違うのでしょうか。今回はこの2つの違いと使い分けについて解説します。

使途不明金とは

使途不明金の定義は使い道がわからなかった支出です。

支出先と支出額は明らかでも、使い道がわからないものに適用されます。例えば、何に使ったのか不明な領収書が出てきた場合などです。また、支出の目的は何なのかが不明だったり、はたして会社の業務に関係のある支出なのかなどの説明ができなければ、それも使途不明金です。

しかし、例えば企業Aが企業Bとの契約を取り付けるために秘密裏に100万円を渡すような場合、それをそのまま会社の会計報告に載せるわけにはいかないため、「使途不明金」として計上されたりもします。

使途秘匿金とは

使途秘匿金は、使い道を隠しているお金です。使途不明金よりもさらに不透明な支出なので、違法性もより高くなります。

使途秘匿金とみなされる支出の条件は3つ有ります。相当の理由が無く、以下の3つを会社の帳簿に記載していない場合に、使途秘匿金として取り扱われます。

1.支出先の氏名又は名称がわからない
2.住所又は所在地がわからない
3.支出した理由がわからない

普通に会社を経営していればこのような「なんでこの分のお金が足りないのかわからない」などという状況はあり得ません。そういった場合は、意図的に隠しているとみなされるのです。これは金銭だけに限らず、他の資産の引き渡し、目的の定かでない貸付金・仮払い金なども含まれます。

使途不明金と使途秘匿金の違いは?

使途不明金と使途秘匿金の違いを一言で表すと「違法性の程度」です。違法性とはこの場合税法に違反しているかどうか、という観点からのものを示します。

法人税は会社の所得から計算が行われます。つまり、より所得が少ない方が税金は少なくて済みます。しかし、節税のために売り上げを抑制していては意味がありません。そこで何とか利益はそのままに税金を減らせないかと思い、隠してしまうと脱税になってしまいます。

脱税は言うまでもなく犯罪です。「使った先と金額はわかるけど、使い道はわからない」使途不明金と「使った先も使い道もわからない」使途秘匿金では、後者の方が脱税の可能性が高い、つまり違法性が高いと判断されます。

税務処理の違いは?

ここまでの内容をまとめると以下のようになります。

名称使い道支出先支出額違法性
使途不明金分からない明記明記低い
使途秘匿金隠しているわからないわからない高い

税務処理上の違い

前提として、使途不明金も使途秘匿金も共に経費としては計上できません。使い道がわからなければ勘定科目にも計上できないので当然です。そのためどちらも課税対象になります。

使途不明金の場合、全額が課税対象になります。支出しているにもかかわらず、その分が課税対象になるのですから、増税になり、明らかに損になります。

▼例
益金1000-損金500=500
課税されるのは500益金1000-損金400-使途不明金100=500
課税されるのは600

使途秘匿金の場合はその違法性からより厳しい税率が掛けられます。先ほどの例で言えば使途秘匿金分は損金として認められないため、600に通常の税率で課税されます。その上で使途秘匿金の100に対して40%である40の追徴課税が課せられるのです。

さらに、使途秘匿金に関しては本来法人税の支払いがない赤字企業でも、税額そのものに課税されるため納税義務が発生します。

使途不明金の趣旨は?

「不明瞭な支出」は、違法または不正な支出につながりやすく、公正な取引を阻害する恐れがあります。
こういった支出を抑制するために、追加的な税負担を課すといった税制上の措置が講じられることとなりました。

使途秘匿金の認定のポイントは?

では実際に使途秘匿金であると当局に認定を受ける可能性がある4つのポイントを解説します。

1.金銭の支出であるかどうか
これは前述しましたが、金銭以外の資産の贈与や供与は税法上「金銭の支出」として取り扱われます。仮払金や貸付金もこれに含まれます。

2.支出先の氏名などの情報が帳簿に記載されているかどうか
当局では反面調査と言って、支出先の企業に出向き、調査対象の企業との間に取引の事実があったかを確認する場合があります。この反面調査をクリアして初めて「帳簿記載されている」と認定を受けられます。

3.記載していない相当の理由があるかどうか
この相当の理由については例えばチップなどの小口の謝礼金や手帳、カレンダーなどの広告宣伝費等の相手先の氏名等を帳簿に記載しないことが慣例となっている場合が挙げられます。

4.対価性があるかどうか
支出先が不明な仕入れがあったとしても、それに対する支出額に妥当性が認められれば使途秘匿金ではないということです。

使途不明金や使途秘匿金は前述したように理性的判断で意図的に出すものと、当局の調査によって使途偽証が明らかになり、当局から使途不明金・使途秘匿金として認定を受けるものとがあります。前者の場合は自覚的なため注意するも何もないのですが、後者にあっては会社として信用に関わる問題に発展しかねません。

まとめ

支出の計上時に後で支出理由を書けばいい、などといった安易な発想で処理を行ってしまったばっかりに後々その内容が思い出せず、あえなく使途不明金になってしまった、ということも起こり得ます。結果的に会社自体の損失になるのですから、ひとつひとつの処理をきっちりするよう心掛けましょう。

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