• 作成日 : 2026年9月28日

RAGの仕組みとは?処理の流れとファインチューニングとの違いをわかりやすく解説

PointRAGの仕組みとは何か?

RAGは、社内データベースを検索した結果をもとにAIが回答を生成する「検索拡張生成」の仕組みです。

  • 検索・仲介・生成の3要素で構成される
  • ファインチューニングより情報更新が容易
  • SaaSなら専門的な開発知識がなくても導入しやすい

Q. RAGとファインチューニングの違いは?

A. RAGはデータ差し替えで即更新できるのに対し、ファインチューニングはモデルの再学習が必要でコストと時間がかかります。

生成AIに社内規程や業務マニュアルを読ませたい場合、どのような仕組みが必要か迷う担当者は少なくないでしょう。RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)は、AIが回答を生成する前に社内データベースを検索し、その結果をもとに回答を作る技術です。本記事では、RAGの仕組みや処理の流れ、ファインチューニングとの違い、導入メリットとセキュリティ対策を整理します。

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※(免責)掲載情報は記事作成日時点のものです。最新の情報は各AIサービスなどの公式サイトを併せてご確認ください。

RAGとはどんな仕組み?

RAGは、生成AIが回答を作る前に社内データベースから関連情報を検索し、その情報をもとに回答を生成する仕組みです。通常のAIモデルが持つ知識だけに頼らず、外部のデータを都度参照する点が特徴です。

「教科書持ち込み可の試験」で考えるとわかりやすい

RAGの仕組みは「教科書持ち込み可の試験」にたとえるとつかみやすいでしょう。LLM単体では、基本的に学習済みの知識と入力された情報をもとに回答を生成します。いわば「手元にある知識だけを使って答える試験」のようなものです。

一方、RAGでは、回答を生成する前に外部の情報源から関連情報を検索し、その内容を参考資料としてLLMに渡します。「教科書を参照しながら答案を書く」ような仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。

検索・仲介・生成の3要素で構成される

RAGの基本的な構成として、検索基盤・処理を仲介するオーケストレーション層・生成AI(LLM)の3つに整理できます。この構成により、AIが根拠のない回答を作ってしまうリスクを抑えられます。

要素 役割
検索用データベース(ベクトルデータベースが基本) 社内文書を格納し、質問に関連する情報を探し出す
オーケストレータ 質問の受付、データベースへの検索指示、LLMへの回答生成指示を仲介する
生成AI(LLM) 検索結果と質問をもとに、自然な文章で回答を作成する

LLM単体では、事実と異なる情報をもっともらしく生成してしまうことがあります。RAGでは検索で得た根拠データをLLMに渡すため、回答の裏付けを持たせやすくなる点がポイントです。

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RAGの処理の流れは?

RAGの基本的な流れは、事前のデータ登録と、質問時の検索・生成に分けて理解するとわかりやすいでしょう。エンジニアでなくても全体像を理解できるよう、各ステップを順番に見ていきましょう。

ステップ1:文書をチャンク化・ベクトル化してデータベースに登録する

まず、RAGに参照させたい社内文書をデータベースへ取り込みます。この工程で行われるのが「チャンク化」と「エンベディング(ベクトル化)」という処理です。

チャンク化は文書を数百文字程度の段落に分割する作業、エンベディングは各段落の意味を数値の並び(ベクトル)に変換し、ベクトルデータベースに格納する作業を指します。SaaSやマネージドサービスでは、これらの処理を自動化しているものもあり、利用者が個別にプログラムを実装せずに文書を登録できる場合があります。例えば100ページの就業規則をアップロードすると、「有給休暇の付与日数」「育児休業の申請方法」など、テーマごとの小さなブロックへ自動で分割されるイメージです。

ステップ2:質問に近い情報をベクトルデータベースから検索する

ユーザーが「有給休暇は入社何か月目から取れますか?」と質問すると、検索システムがインデックスやデータストアから関連する情報を取得します。

RAGではベクトル検索がよく使われます。質問と文書をベクトル化して意味の近さを比較するため、「年次有給休暇」「有休」「年休」のように表現が異なっていても、関連する情報を検索しやすい点が特徴です。

一方、RAGの検索方法はベクトル検索だけではありません。キーワード検索や、キーワード検索とベクトル検索を組み合わせたハイブリッド検索などが使われる場合もあります。

ステップ3:検索結果をプロンプトに組み込み回答を生成する

検索で見つかった関連チャンクとユーザーの質問がセットでプロンプトとしてLLMに渡されます。LLMは渡された情報を根拠に、自然な日本語で回答文を作成します。

回答の際に参照元の文書名やページ番号を表示できる仕組みを備えるサービスもあり、根拠を確認しやすい点も実務上の利点です。処理の流れを整理すると、次のとおりです。

ステップ 処理内容 イメージ
1. データ登録 文書をチャンク化・エンベディングしてベクトルデータベースに格納 本棚に資料を整理して並べる
2. 検索 質問の意味に近いチャンクをデータベースから取得 本棚から該当ページを探す
3. 生成 検索結果と質問をプロンプトに含めてLLMが回答を出力 該当ページを見ながら答案を書く

RAGとファインチューニングの違いは?

RAGとファインチューニング(追加学習)の主な違いは、情報の更新しやすさと導入コストです。両者を混同するケースも見られますが、社内文書の検索を主目的とするなら、RAGの方が更新・運用の面で扱いやすいケースが多いでしょう。

比較項目 RAG ファインチューニング
情報の更新 データソースやインデックスを更新する 必要に応じて追加学習する
導入コスト マネージドサービスで簡略化できる 学習データの作成・評価などが必要
専門知識 ノーコードツールで対応できる場合が多い MLエンジニアが必要になる場合が多い
得意な用途 社内FAQ・マニュアル検索 文体・口調の統一、専門領域の用語学習

ファインチューニングは、学習済みモデルに追加データを与えて訓練し、特定のタスクや出力形式、文体などに適応させる手法です。就業規則が改定されるたびに再学習を行う必要があり、作業時間や計算コストがかかります。

一方、RAGはデータベース内の文書を差し替えるだけで最新情報を反映できます。例えば、育児・介護休業法は令和6年の改正により令和7年(2025年)4月と10月に段階的な施行が行われました。こうした法改正があった場合でも、RAGであれば改定後の規程データをアップロードし直すだけで、AIの回答内容を更新しやすくなります。

参考:育児・介護休業法について|厚生労働省

RAGを導入するメリットは?

RAG導入の主なメリットは、ハルシネーションの抑制と社内問い合わせ対応の負担軽減です。社内固有のルールに基づいた回答を返せる仕組みであるため、バックオフィス業務との相性がよいといえます。

ハルシネーションを抑えられる

ハルシネーションとは、AIが学習データに基づかない誤った情報をもっともらしく生成してしまう現象を指します。LLM単体に「当社の交通費精算ルールを教えて」と聞くと、一般的な情報をそれらしく回答してしまうことがあります。

RAGでは、自社の経費規程から該当箇所を検索したうえで回答を生成するため、「当社では新幹線の利用は事前申請が必要」といった自社固有のルールを反映しやすくなります。根拠のない回答が生成されるリスクを抑えられる点が、RAGが選ばれる理由の一つです。

社内問い合わせへの対応負担を軽減できる

「慶弔見舞金の申請方法は?」「出張手当の上限額は?」といった問い合わせが日常的に届く総務・人事部門は少なくないでしょう。RAGで就業規則や社内FAQを検索対象に設定しておけば、従業員がチャットボットに質問するだけで回答を得られる仕組みを作れます。

担当者が同じ内容の説明を繰り返す場面を減らせるため、採用業務や制度設計など、他の業務に時間を振り向けやすくなります。

RAGの回答精度を上げるコツは?

RAGの回答精度は、投入するデータの品質に大きく左右されます。文書をそのままアップロードするだけでは、検索結果がちぐはぐになりやすい点に注意が必要です。

不要な改行やノイズデータを事前に除去する

PDFから文章を抽出すると、意図しない位置で改行が入ったり、ヘッダーやフッター、ページ番号が本文に紛れ込んだりすることがあります。こうしたノイズがチャンクに混入すると、検索精度が落ちる原因になります。

対策として、データ投入前に次のクレンジング作業を行うとよいでしょう。

  1. PDFをテキスト変換した後、不要な改行コードを削除する
  2. ヘッダー・フッター・ページ番号など繰り返し要素を除去する
  3. 目次や索引ページなど、本文以外の部分を取り除く
  4. 古いバージョンの文書が混在していないか確認し、最新版のみを残す

クレンジングに使えるツールとしては、テキストエディタの正規表現置換や、ExcelのCLEAN関数・TRIM関数が手軽です。

表データは構造を保ったまま変換する

Excelの表をそのままテキスト化すると、行と列の対応関係が崩れることがあります。例えば給与テーブルの情報が、テキスト変換後に等級と金額が入り混じった一列として並んでしまうと、AIが正しく読み取れません。

表データを扱う場合は、次のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • CSV形式やMarkdown形式など、行列の構造を維持できるフォーマットで書き出す
  • セル結合がある表は結合を解除してからエクスポートする
  • 1シートに複数の表がある場合はテーマごとに分割する

データ整備は地道な作業ですが、ここに手間をかけるかどうかでRAGの回答品質は変わります。導入初期にクレンジングの時間を確保しておくと、その後の運用がスムーズになりやすいでしょう。

RAG導入時のセキュリティ対策は?

RAGを安全に運用するには、閲覧権限の設計と情報漏洩防止の仕組みづくりが欠かせません。人事評価シートや給与規程といった機密文書を扱う場合、全社員が自由に閲覧できる状態は避ける必要があります。

フォルダ単位でアクセス権限を設計する

RAG対応のSaaSやプラットフォームの多くは、データベースをフォルダ(コレクション)単位で分割し、閲覧権限を設定する機能を備えています。運用例として、次のようなフォルダ構成が考えられます。

フォルダ名 格納データ 閲覧権限
全社共通 就業規則・福利厚生案内 全社員
人事部専用 給与規程・人事評価シート 人事部のみ
経理部専用 勘定科目表・決算資料 経理部のみ

質問者の所属部署に応じて参照先フォルダが切り替わる設計にしておけば、一般社員が人事部専用フォルダの情報を検索対象に含めずに済みます。

閉域網環境で運用する選択肢もある

社外のクラウドサービスにデータを送ることに抵抗がある場合は、閉域網(クローズドネットワーク)環境でRAGを構築する選択肢もあります。プライベートエンドポイントなどの仕組みを使い、自社のネットワーク内で生成AIサービスに接続する構成です。

Azure OpenAI Serviceのように、閉域網接続に対応した構成を提供するサービスもあり、セキュリティ要件が厳しい業種でも導入を検討しやすくなっています。

参考:Azure OpenAI Service|KDDI株式会社

RAG導入はSaaSと自社開発どちらを選ぶ?

RAGの導入方法は、大きく「SaaS(既製のクラウドサービス)の利用」と「自社でゼロから開発するスクラッチ開発」の2つに分かれます。社内にMLエンジニアがいない場合は、まずSaaSから試すケースが多いでしょう。

比較項目 SaaS スクラッチ開発
導入スピード 比較的短期間で利用開始しやすい 要件定義から開発まで時間がかかる
カスタマイズ性 サービス仕様の範囲内 自由に設計できる
運用負担 ベンダーが保守を担う場合が多い 自社で保守・監視が必要
向いているケース 社内文書中心のFAQ対応 既存システムとの高度な連携が必要な場合

SaaSは、PDFやWordなどの文書をアップロードするだけでRAGチャットボットが使えるサービスが複数あり、専門知識がなくても始めやすい選択肢です。特定部署のFAQ対応など小さな範囲で試し、効果を確認してから対象範囲を広げると、リスクを抑えて進めやすくなります。

一方、既存の基幹システムとの連携や独自の権限制御ロジックが必要な場合は、スクラッチ開発が向いています。以下のチェックリストで自社の状況を整理すると、判断の材料になります。

  • 対象データは社内文書(PDF・Word・Excel)が中心か → SaaS向き
  • 既存の基幹システムとリアルタイム連携が必要か → スクラッチ開発向き
  • 社内にエンジニアやMLの知識を持つ人材がいるか → いなければSaaSから検討
  • セキュリティ要件で閉域網環境が必須か → 閉域対応SaaSまたはオンプレ開発を検討

RAGの仕組みに関するよくある質問

RAGの仕組みに関するよくある質問をまとめました。

RAGの導入にプログラミングの知識は必要ですか?

SaaS型のRAGサービスを利用すれば、ノーコードで導入できる場合が多いです。文書をアップロードし、フォルダ構成や権限を設定するだけで運用を始められるサービスが増えています。

RAGとChatGPTはどう違いますか?

ChatGPTのような一般的な対話AIは学習済みの知識をもとに回答しますが、RAGはそこに社内データベースの検索結果を組み合わせる仕組みです。ChatGPT自体にRAGの仕組みを組み込んで、社内文書を参照させる使い方も可能です。

RAGの回答が間違っていることはありますか?

検索されたデータの品質や範囲によっては、誤った回答や不十分な回答が生成されることがあります。データのクレンジングや検索対象の見直しを行うことで、精度を改善しやすくなります。

RAGとファインチューニングは併用できますか?

併用は可能です。文体や専門用語の理解にはファインチューニングを、日々更新される社内情報の参照にはRAGを組み合わせる構成も選択肢になります。

RAGの仕組みを理解して社内データ活用を検討しよう

RAGは、社内文書をデータベースに登録し、生成AIが検索結果をもとに回答を返す検索拡張生成の仕組みです。ファインチューニングと比べて情報の更新がしやすく、SaaSを使えば専門知識がなくても運用しやすい点が特徴といえます。就業規則や社内FAQを対象にした小規模な試験導入から始めると、自社にとってのRAGの効果を確認しやすくなるでしょう。


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