- 作成日 : 2025年11月6日
キッチンカーでアルコールを提供するには?必要な許可からビールサーバー、値段設定、立ち飲み営業の注意点まで解説
キッチンカーでのビジネスにおいて、食事メニューだけでなくアルコールも提供できれば、客単価の向上や夕方以降の集客力アップが期待できるかもしれません。しかし、キッチンカーでアルコールを販売するには、いくつかの重要な許可やルールが存在します。
この記事では、キッチンカーでのお酒販売を成功させるために不可欠な許可の種類、人気メニューの考え方、ビールサーバーの導入ポイント、そして見落としがちな注意点まで、網羅的に解説していきます。
目次
キッチンカーでのアルコール販売は儲かる?メリットとデメリット
キッチンカーでのアルコール提供は、売上向上の大きなチャンスを秘めていますが、同時に注意すべき点もあります。メリットとデメリットを正しく理解し、ご自身の事業計画に合うか判断しましょう。
アルコール提供のメリット
主なメリットは、客単価の大幅な向上と集客力の強化です。食事と一緒にドリンクを注文してもらうことで、一人当たりの売上が数百円単位で増加します。特に、ビールやハイボールはフードメニューとの相性も良く、セットでの注文を促しやすいでしょう。また、お酒を提供するキッチンカーは、フェスや夜市といったイベントで大きな魅力となり、他のキッチンカーとの差別化を図ることができます。
- 客単価の向上:フードメニューに加えてドリンクの売上が見込めます。
- 集客力の強化:イベントや夜間の営業で大きな強みとなります。
- 他店との差別化:「キッチンカーバー」や「立ち飲み居酒屋」といった独自のコンセプトを打ち出せます。
- 顧客満足度の向上:食事と一緒にお酒を楽しみたいというニーズに応えられます。
覚えておきたいデメリット
一方で、デメリットも存在します。アルコール提供が禁止されている出店場所も多く、営業できる場所が限られる可能性があります。また、酔ったお客様への対応や、それに伴うトラブルのリスクも考慮しなければなりません。年齢確認の徹底や飲酒運転防止のアナウンスなど、オペレーション上の負担が増えることも理解しておく必要があります。
- 出店場所の制限:公園や公共施設など、アルコール提供が禁止されている場所があります。
- トラブルのリスク:酔客同士の揉め事やクレーム対応の可能性があります。
- オペレーションの複雑化:年齢確認、サーバーの管理、追加の仕入れなど手間が増えます。
- 初期投資の増加:ビールサーバーや追加の冷蔵設備などが必要になる場合があります。
キッチンカーでアルコールを提供するために必要な許可とは?
キッチンカーでアルコールを提供するには、どのような許可が必要になるのでしょうか。提供方法によって必要な手続きが異なるため、正確に理解しておくことが重要です。
全ての基本「飲食店営業許可」
まず、キッチンカーで飲食物を提供するすべての事業者は、出店場所を管轄する保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。これはアルコールの有無にかかわらず必須の許可です。車両の設備要件(給排水タンクの容量、シンクの数、換気設備など)が細かく定められているため、車両製作の段階から保健所に相談することが賢明といえます。
【重要】「酒類販売業免許」が必要になるケースとは?
キッチンカーでのアルコール提供において、税務署が管轄する「酒類販売業免許」が必要かどうかは、最も注意すべき点です。この判断は、お酒をどのようなスタイルで提供するかによって明確に分かれます。
まず、ビールサーバーからカップに注いだ生ビールや、グラスに作ったハイボールやカクテルなど、その場で開封してお客様に提供する場合は、「酒類販売業免許」は原則として不要です。これは、お酒を食事と同様の「調理品」として提供し、店内で飲食させる行為と見なされるため、保健所から取得する「飲食店営業許可」の範囲内に含まれます。
一方で、お客様が持ち帰ることを前提に、未開封の缶ビールや瓶、ペットボトルのお酒を販売する場合には、「酒類販売業免許」が必須となります。これは「酒類の小売」にあたり、飲食店営業とは異なる業態と判断されるためです。
結論として、キッチンカーを「移動式の居酒屋」や「バー」として運営し、その場で飲んでもらうことを徹底するのであれば、免許は不要です。しかし、お客様から「この缶ビールをそのまま売ってほしい」と頼まれて応じてしまうと、無免許での酒類販売となり法律違反になるため、厳格に区別して運営する必要があります。
どんなアルコールメニューが人気?値段設定の考え方
アルコールメニューは、オペレーションのしやすさと、お店のコンセプトに合わせて選ぶことが成功の鍵です。
定番人気!ビールサーバーで作る本格生ビール
キッチンカーにビールサーバーが設置されていると、それだけで本格的な印象を与え、お客様の目を引きます。イベント会場で飲む冷えた生ビールは格別であり、高い集客効果が期待できます。サーバーの導入には初期費用やメンテナンスの手間がかかりますが、1杯あたりの原価は缶ビールより安く抑えられる傾向にあります。
簡単オペレーション!ハイボールとサワー
ウイスキーや焼酎を炭酸で割るだけのハイボールやサワーは、オペレーションが非常にシンプルで、提供時間を短縮できるのが大きなメリットです。シロップの種類を複数用意すれば、レモンサワー、グレープフルーツサワーなど、簡単にメニューの幅を広げることもできます。
差別化を図る!日本酒やクラフトビール
特定の客層をターゲットにするなら、日本酒やクラフトビール、ワインなどを提供するのも有効です。「地酒専門」「世界のクラフトビール」といったコンセプトを打ち出せば、他店との強力な差別化になります。ただし、品質管理(温度など)が難しく、フードメニューとのペアリング知識も求められるため、やや上級者向けの選択肢といえるでしょう。
利益を確保する値段設定の基本ステップ
アルコールの値段は、フードメニューと同様に原価計算に基づいて設定します。
- 原価の算出:1杯あたりにかかる材料費(お酒、炭酸水、氷、カップ代など)を計算します。
- 原価率の設定:一般的な飲食店のアルコール原価率は25%〜35%程度が目安とされています。例えば、原価が150円で原価率を30%に設定する場合、販売価格は「150円 ÷ 0.3 = 500円」となります。
- 周辺相場の考慮:イベント会場や他の出店者の価格帯も参考に、最終的な値段を決定します。安すぎても利益が出ませんし、高すぎると敬遠されるため、バランスが重要です。
キッチンカーでアルコールを販売する際の3つの重要注意点
アルコールの提供は、通常のフード販売以上に細やかな注意が求められます。トラブルを未然に防ぎ、安全に営業するためのポイントを解説します。
注意点1:出店場所のレギュレーションを最優先する
最も重要なのは、出店場所のルールを事前に確認し、それを厳守することです。場所によってはアルコール提供が全面的に禁止されている場合や、時間帯に制限がある場合があります。主催者や施設管理者への確認を怠ると、即時撤退を求められるなど大きなトラブルに発展しかねません。
- アルコール提供の可否
- 提供可能な時間帯
- 瓶・缶での提供の可否
- 販売エリアの指定
これらのルールは場所によって大きく異なるため、毎回必ず確認する習慣が不可欠です。
注意点2:法律の遵守(年齢確認・飲酒運転防止)
未成年者へのアルコール提供は法律で固く禁じられています。少しでも若く見えるお客様には、ためらわずに身分証明書の提示を求めましょう。「年齢確認にご協力ください」といったPOPを掲示しておくと、スムーズな確認につながります。
また、特に車での来場者が多いイベントでは、「お車を運転される方へのアルコール提供は固くお断りします」といったアナウンスを徹底することが、事業者としての社会的責任です。
注意点3:安全な運営とトラブル防止策
アルコールが入ると、お客様の声が大きくなったり、開放的な気分になったりすることがあります。キッチンカーの周辺が「立ち飲み」スペースになる場合は特に注意が必要です。
待機列の整理を丁寧に行う、大声での会話や迷惑行為がないか気を配るなど、周囲への配慮が求められます。万が一トラブルが発生した際に備え、イベント主催者や警備員との連携方法を確認しておくと安心です。
準備を万全に、新たな顧客層を掴もう
キッチンカーでのアルコール販売は、適切な許可を取得し、ルールを遵守すれば、ビジネスを大きく成長させる可能性を秘めています。カップに注いで提供するスタイルであれば「飲食店営業許可」のみで始められるため、多くの事業者にとって参入のハードルは決して高くありません。
客単価の向上や集客力の強化という大きなメリットを享受するためには、出店場所のルール確認、年齢確認の徹底、安全への配慮といった地道な準備が不可欠です。この記事で解説したポイントを参考に、あなたのキッチンカーに新たな魅力を加え、ビジネスの成功へとつなげてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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