- 作成日 : 2025年9月25日
キッチンカーで居酒屋を開業する方法|許可からメニューまで徹底解説
移動販売のビジネスモデルが多様化する中、「キッチンカーで居酒屋やバーを開業したい」と考える方が増えています。固定店舗に比べて低い初期投資で始められ、さまざまな場所へ移動できるのが大きな魅力です。
しかし、キッチンカーでアルコールを提供するには、食品衛生法に基づく許可はもちろん、特有の注意点や運営ノウハウが求められます。この記事では、キッチンカーで居酒屋を開業するための具体的な方法、必要な許可、そして成功へのポイントをわかりやすく解説します。
目次
キッチンカーで居酒屋を開業する魅力と可能性
固定店舗を持たずに、自由なスタイルで運営できるキッチンカー居酒屋。そのビジネスモデルには、従来の飲食店にはない独自の魅力と可能性があります。なぜ今、この業態が注目さているのか、その理由から見ていきましょう。
低い初期投資で始められる
固定店舗の居酒屋を開業する場合、物件取得費や内外装工事費で数千万円の資金が必要になることも珍しくありません。一方、キッチンカーであれば、車両購入・製作費が中心となり、初期投資を数百万円程度に抑えることが可能です。開業へのハードルが低く、スピーディーに事業を開始できる点は大きなメリットです。
場所と時間を変えて営業できる柔軟性
キッチンカー最大の強みは、その機動力です。平日のランチタイムはオフィス街、週末はイベント会場、夜は駅前や賑わいのあるエリアへと、需要に合わせて営業場所を移動できます。一つの場所で売上が伸び悩んでも、別の場所でチャンスを探せるといった、固定店舗にはない柔軟な経営ができます。
イベント出店での高い収益性
音楽フェスティバルや地域のお祭り、スポーツイベントなど、多くの人が集まる場所では、アルコール類の需要が非常に高まります。こうしたイベントに「走る居酒屋」として出店することで、短期間で高い売上を上げることが期待できます。イベントの雰囲気とマッチしたメニューを提供できれば、大きな収益の柱となるでしょう。
キッチンカー居酒屋の開業に不可欠な許可と資格
キッチンカーで居酒屋を営業し、アルコールを提供するためには、いくつかの許可と資格をクリアしなくてはなりません。ここが最も重要なポイントであり、手続きを怠ると営業停止になる可能性もあるため、正確に理解しておきましょう。
飲食店営業許可(キッチンカー)
まず基本となるのが、出店する地域を管轄する保健所から取得する「飲食店営業許可」です。これは、車内に給排水タンクやシンク、冷蔵設備などを備え、自治体が定める施設基準を満たしていることが条件となります。基準は自治体によって異なるため、車両を製作する前に、必ず図面を持って保健所に事前相談することが不可欠です。
アルコール提供に関する注意点(酒類販売業免許は必要か?)
「お酒を扱うのだから、酒屋さんのような免許が必要?」と疑問に思うかもしれません。結論からいえば、店内で栓を開けて提供する、つまり通常の居酒屋と同じ形であれば「酒類販売業免許」は不要です。
この免許は、缶ビールや瓶詰の日本酒などを「未開封のまま販売(小売)」する場合に必要となります。ただし、イベントによっては主催者側が独自のルールを設けている場合もあるため、都度確認が必要です。
食品衛生責任者の資格
食品を扱う営業施設には、必ず1名「食品衛生責任者」を置くことが義務付けられています。各都道府県の食品衛生協会などが実施する養成講習会を受講すれば取得できる資格です。調理師や栄養士などの資格を持っている方は、講習を受けずに資格者となることができます。
深夜営業に関する「深夜酒類提供飲食店営業」の届出は?
固定店舗のバーなどが深夜0時以降に営業する場合、警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。キッチンカーであっても、アルコールをメインに提供する居酒屋形態であれば、所轄の警察署に対して「深夜酒類提供飲食店営業」の届け出が必要となります。
キッチンカー居酒屋の主力となるメニュー開発のポイント
限られたスペースと設備の中で、いかに魅力的で利益の出るメニューを提供できるかが、キッチンカー居酒屋の成功を左右します。ここでは、ドリンクとフードのメニュー開発におけるポイントを解説します。
ドリンクメニューの考え方(生ビール、日本酒など)
生ビールは居酒屋の定番ですが、キッチンカーにビールサーバーを設置するには、サーバー本体、ガスボンベ、樽を冷やすための冷蔵設備などが必要で、スペースと電源の確保が課題です。
瓶や缶での提供であれば、より手軽に多様なクラフトビールや日本酒などをそろえることができます。オリジナルのカクテルや、季節のフルーツを使ったサワーなども、他店との差別化につながります。
限られたスペースで作れるフードメニュー
調理スペースが狭いため、工程が少なく、短時間で提供できるフードメニューが中心となります。唐揚げやフライドポテト、ソーセージの盛り合わせといった揚げ物や、煮込み料理などは、事前の仕込みを工夫することでお客様を待たせず提供できます。オペレーションを考え、数品に絞り込む勇気も必要です。
客単価を上げるためのセットメニュー
アルコールを提供するキッチンカー居酒屋は、フードメニューを提供するキッチンカーに比べて客単価を高く設定しやすい利点があります。「生ビールとおつまみ2品で1,000円」といったセットメニューを用意することで、お客様は注文しやすくなり、結果として客単価の向上につながります。
キッチンカー車両の選び方
コンセプトやメニューが決まったら、それを実現するための「城」となるキッチンカーを選びます。どのような車両をベースにし、どんな設備を搭載するかが、働きやすさとお店の魅力に直結します。
ベース車両の選び方(軽トラから1.5tトラックまで)
提供するメニューの品数や必要な機材、作業人数によって最適な車両サイズは変わります。ドリンクと簡単なおつまみ数品であれば、小回りの利く軽トラックでも開業可能です。ビールサーバーを設置したり、複数人で効率よく作業したりするには、1t〜1.5tトラックをベースにした、ある程度の広さがある車両が望ましいでしょう。
ビールサーバーや冷蔵設備の搭載
生ビールを提供する場合、ビールサーバーとガスボンベ、そして生樽を適切に冷却するための冷蔵設備(コールドプレートや樽専用冷蔵庫)の設置スペースを確保する必要があります。また、フードの食材や他のドリンク類を保管するための冷蔵・冷凍庫も必須です。これらの設備の消費電力を計算し、十分な容量の発電機やバッテリーを準備することが重要です。
立ち飲みスペースやカウンターの設置
キッチンカーの側面に折りたたみ式のカウンターを設置すれば、簡易的な立ち飲みスペースを作ることができます。お客様が滞在するスペースを提供することで、コミュニケーションが生まれ、お店のファンになってもらうきっかけが作れます。雨天や日差しを避けるためのタープなども用意すると、より快適な空間を演出できます。
中古キッチンカーを選ぶ際の注意点
初期費用を抑えるために中古キッチンカーを検討する方も多いでしょう。その際は、車両の状態だけでなく、搭載されている設備が保健所の営業許可基準を満たしているかを必ず確認してください。
とくに給排水タンクの容量やシンクのサイズは、自治体によって基準が異なります。購入後に基準を満たすための追加工事が必要になると、結果的に費用が高くつく場合があるので注意が必要です。
キッチンカー居酒屋の成功率を高める戦略と注意点
魅力的なキッチンカー居酒屋を作り上げても、どこで、どのように営業するかという戦略がなければ成功はおぼつきません。また、アルコールを提供するからこそ、特有のリスク管理も求められます。
ターゲット顧客に合わせた出店場所の選定
どのようなお客様に来てほしいかを考え、出店場所を選定しましょう。仕事帰りのビジネスパーソンを狙うなら駅前やオフィス街の広場、若者や観光客をターゲットにするならイベント会場や商業施設が適しています。出店場所を探すには、キッチンカーの出店場所を仲介するプラットフォームに登録するのが効率的です。
SNSを活用した集客とファン作り
キッチンカーは営業場所が日々変わるため、SNSでの出店情報の告知は不可欠です。「今日は〇〇で営業します!」といった情報発信はもちろん、新メニューの紹介やお店の裏側を見せることで、お客様とのつながりを深め、ファンを育てていくことができます。
お客様トラブルの防止策(酔客対応、騒音問題)
アルコールを提供すると、酔ったお客様とのトラブルや、話し声による騒音問題が発生するリスクが高まります。泥酔しているお客様へのアルコールの提供はお断りする、周辺への配慮を促す掲示をするといった、毅然とした対応ルールをあらかじめ決めておくことが大切です。
キッチンカー居酒屋の成功のカギは綿密な準備から
キッチンカーで居酒屋を始めるのは、初期費用をおさえつつ自由に働ける、魅力あるビジネスです。とはいえ、手軽に見える一方で、保健所の許可やアルコール提供のルール、出店場所の選び方やお客様との接し方など、しっかり押さえておくべきポイントもたくさんあります。
今回紹介した内容を一つひとつ確認しながら準備を進めることで、多くの人に愛される「走る居酒屋」が実現できるはずです。思いつきで始めるのではなく、じっくり計画して進めることが、夢をカタチにする近道になります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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