- 作成日 : 2025年9月24日
不動産業の独立でフランチャイズに加盟|メリットやデメリット、親企業の選び方を紹介
不動産業で独立する際、フランチャイズ(FC)は有効な選択肢の一つですが、ロイヤリティや経営の自由度に不安はありませんか?
この記事では、FCの仕組みから未経験者が成功しやすい理由、加盟前に知るべきデメリットや失敗しない選び方のポイントまで紹介します。主要なFC社を10社挙げているので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも不動産フランチャイズとは?
不動産業での独立を考えた時、フランチャイズ(FC)という言葉をよく耳にします。これは、独立を目指す個人や法人が、事業本部(フランチャイザー)と契約を結ぶビジネスモデルです。加盟店は、本部のブランド名(屋号)の使用権や、長年かけて培われた成功ノウハウ、サービスを利用する権利を得て、事業をスタートさせることができます。
不動産業で独立する際、フランチャイズは有効な選択肢の一つですが、加盟しただけで開業できるわけではありません。日本で不動産仲介業を営むには、必ず宅地建物取引業免許 を取得する必要があります。さらに、各事務所には 従業者5人に1人以上の宅地建物取引士(宅建士)を置くことが法律で義務付けられています。
本部と加盟店の関係性
加盟店(フランチャイジー)は、本部のブランド力や集客力を活用できる対価として、加盟金や後述するロイヤリティを支払います。本部は加盟店に経営指導やシステム提供といったサポートを行い、ブランド全体の成長と価値向上を目指します。本部の持つ成功のための設計図を利用して、独立開業の成功確率を高める、いわば事業のパートナーシップと言えるでしょう。
ロイヤリティの仕組み
ロイヤリティとは、本部のブランドやノウハウ、システムを継続的に利用するために、加盟店が毎月支払う対価のことです。主に、毎月決まった額を支払う「定額方式」と、売上などに連動する「歩合方式」があります。
売上が少ない月の負担は軽いものの成功すると支払額も増える歩合方式か、売上が少ない月は厳しいものの成功すれば利益の大部分を享受できる定額方式か、その特徴を理解することが重要です。
不動産フランチャイズで独立するメリット
フランチャイズには、特に独立初期のオーナーが抱える集客、知識、運営といった不安を解消する多くのメリットが存在します。完全にゼロから事業を立ち上げる場合と比較して、どのような利点があるのかを具体的に見ていきましょう。
大手ブランドの信頼性を活用できる
独立開業で最も時間がかかるのが、お客様からの信頼獲得です。フランチャイズに加盟すれば、本部がテレビCMや長年の営業で築き上げてきたブランドの知名度と信頼性を、開業初日から活用できます。
これによりお客様は初対面でも安心感を抱きやすく、商談がスムーズに進んだり、交渉時間が短縮されたりといった効果も期待できます。
未経験からでも挑戦しやすい研修制度がある
不動産業界が未経験でも独立に挑戦できるのが、フランチャイズの大きな魅力です。多くの本部では、宅建業法などの法律知識、営業のロールプレイング、専用ITシステムの使い方、接客マナー、経営管理に至るまで、プロとして成功するためのノウハウが詰まった体系的な研修プログラムを用意しています。
こういった制度を活用することで、未経験者が抱える知識や経験の不足を補い、事業を始める上での不安を和らげることができるでしょう。
成功ノウハウと業務システムを利用できる
成功している店舗の経営ノウハウや、効率的な業務運営のために開発された専用のITシステム(顧客管理CRM、物件データベースなど)を利用できる点も大きなメリットです。
特に世界的に展開するグローバルブランドであれば、国際的な研修会や加盟店ネットワークを通じて、海外の成功事例や先進的なビジネスモデルに触れる機会を得られることがあります。これにより、手探りで経営を進める必要がなく、開業当初から質の高いサービスを提供できるでしょう。
集客・広告活動のサポートを受けられる
本部が主体となって、全国規模のテレビCMやインターネット広告など、個人で実施するには多額の費用がかかる広告宣伝活動を行ってくれます。これにより、加盟店は自ら多額の費用をかけずとも、ブランド全体の集客力の恩恵を受けられます。
また、地域の特性に合わせたチラシやウェブサイトの雛形が提供されるなど、日々の販促活動に関するサポートも充実しています。
加盟店同士で情報交換や協力ができる
同じブランドを掲げる全国の加盟店オーナーと、横の繋がりを築けるのも大きなメリットです。成功事例や地域の市況、効果的な広告手法といった実践的な情報を交換できるほか、経営の悩みを相談できる仲間がいることは精神的な支えになります。
時には加盟店同士で顧客を紹介し合うなど、事業面での協力も期待でき、独立後の孤独感を和らげてくれるでしょう。
不動産フランチャイズで独立する際のデメリット
多くのメリットがある一方で、フランチャイズには必ず知っておくべきデメリットや制約も存在します。加盟後に「こんなはずではなかった」という失敗を避けるため、マイナス面も冷静に比較検討しましょう。
ロイヤリティなど継続的な費用が発生する
フランチャイズに加盟する以上、ブランドやノウハウを利用する対価として、毎月のロイヤリティを本部に支払い続ける必要があります。たとえ事業が赤字であっても支払義務が生じる定額方式の場合、これが経営を圧迫する可能性があります。
そのため加盟金という初期投資だけでなく、この継続的なコストが自社の収益計画に見合うか、慎重なシミュレーションが不可欠です。
経営の自由度が制限されることがある
フランチャイズは、ブランド全体の統一性を保つために、店舗デザインや広告の出し方、扱うサービス内容、営業方法などに細かいルールが定められています。
そのため「自分のアイデアで独自のサービスを展開したい」「地域に特化した自由な経営をしたい」という志向が強い場合、本部のルールが足かせとなり、経営の自由度が低いと感じる可能性があります。
ブランドイメージ悪化のリスクがある
自店の経営が順調で、お客様に誠実な対応を心がけていても、他の加盟店が不祥事を起こした場合には「〇〇(ブランド名)は信用できない」といった形で、同じブランドを掲げる自店の評判まで悪影響を受けるリスクがあります。
これは自分の努力だけではコントロールできない、ブランドの評価を共有する関係であるフランチャイズならではのデメリットと言えます。
契約期間と違約金の縛りがある
フランチャイズ契約には、通常数年単位の契約期間が定められています。そのため、期間満了前に解約する場合には、高額な違約金が発生することがあります。
これは本部が加盟店に対して行った初期投資(研修費用など)を回収するための措置ですが、事業が思うようにいかなくても簡単には撤退できないというリスクは、事前に理解しておく必要があります。
開業エリアや店舗の立地が制限される
多くのフランチャイズ本部では、加盟店同士の過当な競争を避けるため、既存店の商圏を保護するテリトリー制を設けています。これにより、たとえ自分が希望するエリアであっても、既に他の加盟店が出店している場合はそこでは開業できない可能性があります。出店したい場所の自由度が低い点は、独立を考える上で大きな制約となり得るでしょう。
不動産フランチャイズでの独立に向いているのはどんな人?
メリットとデメリットを踏まえた上で、どのような人がフランチャイズでの独立に向いているのでしょうか。自身がどのタイプに当てはまるか、自己診断の材料としてみてください。
業界未経験で知識やノウハウに不安がある人
不動産業界での実務経験がなく、法律の知識や営業の進め方、経営の基礎に不安がある方にとって、フランチャイズは最適の選択肢です。
充実した研修制度と確立された業務マニュアルが、独立初期の大きなハードルである知識や経験の不足を補い、成功への最短ルートを提示してくれる、いわば安全網の役割を果たします。
営業活動に専念したい人
経理や総務、ITシステムの管理、集客のためのマーケティング計画といったバックオフィス業務は得意ではない、あるいは時間をかけたくない、という方にも向いています。
これらの業務の多くを本部が代行・サポートしてくれるため、自分は最も得意な営業やお客様との関係構築に集中し、強みを最大限に活かした事業運営が可能になります。
安定した経営基盤を早期に築きたい人
完全にゼロから独立する場合、地域に認知され、事業が安定するまでには数年かかることも珍しくありません。
大手ブランドの力を借りて、開業初期から安定した集客と売上を確保し、できるだけ早く事業を軌道に乗せたい、そして経営者として安定した収入を早期に確保したいと考える方にとって、フランチャイズは有効な手段です。
独立に失敗しない不動産フランチャイズの選び方
フランチャイズでの独立を成功させるためには、加盟する本部の選択が、自身の努力と同じくらい重要です。ここでは、加盟後に後悔しないための本部選びの重要ポイントを解説します。
ジャンルごとの強みを比較する
不動産仲介業と一口に言っても、売買に強いブランド、賃貸に強いブランド、あるいは両方をバランス良く扱うブランドなど様々です。高額な取引で大きな成果を目指したいなら売買中心、安定した収益基盤を築きたいなら賃貸中心といったように、自身の目指す事業の姿を明確にしましょう。
本部のノウハウや広告戦略も、そのジャンルに最適化されているため、ビジョンに合った本部を選ぶことが成功の第一歩です。
加盟店数とエリアの空き状況を確認する
加盟店数は、そのフランチャイズの成長性や安定性を測る一つの指標です。店舗数が多いほどブランドの知名度が高く、スケールメリットを活かした広告展開や、加盟店同士の豊富な情報交換が期待できます。
一方で、店舗数が多いということは、希望するエリアに既に出店があり、開業できない可能性も高まります。本部にテリトリーの空き状況や今後の出店計画を確認することが重要です。
契約内容と加盟条件を確認する
加盟にあたって、宅建士資格以外に不動産業での実務経験を求められるか、法人でなければ契約できないかなど、本部ごとの加盟条件を確認しましょう。
また、契約書は細部まで読み込む必要があります。フランチャイズ契約は数年単位の長期契約が一般的で、違約金やエリア制限が設けられています。ただし、これらの契約条件は独占禁止法やフランチャイズガイドラインに基づき「加盟者を不当に拘束しない」ことが求められています。契約前には、リスク条項が適切かどうか、専門家の助言を受けながら慎重に確認することが重要です。
加盟料やロイヤリティの体系を比較する
開業時に支払う加盟金や、毎月発生するロイヤリティの金額と算出方法(定額か歩合か)は、事業の収支に直結します。
特に注意したいのが、ロイヤリティ以外に発生する隠れた費用です。例えば、本部が指定するITシステムの月額利用料や、全国規模の広告キャンペーンの分担金などが別途必要ないか、契約前に全ての費用項目をリストアップしてもらい、全体の資金計画と比較検討しましょう。
本部のサポート体制を比較する
独立後の成功を大きく左右するのが、本部のサポート体制です。開業前の研修内容はもちろん「開業後、スーパーバイザー(SV)は月に何回、どのような指導をしてくれるのか」「SVの専門知識や経験は豊富か」などを具体的に比較します。
そして最も確実なのは、実際に加盟している複数のオーナーに話を聞くことです。本部が紹介する成功者だけでなく、様々な状況のオーナーから実情を聞き、サポート体制の実態を見極めましょう。
フランチャイズで独立開業できる主な不動産仲介業10選
ここでは、フランチャイズ展開している代表的な不動産仲介業のブランドを紹介します。
※各社の店舗数等、2025年8月時点の情報になります。検討する際は公式サイトで最新の情報を確認してください。
センチュリー21
世界86の国と地域に広がる不動産ネットワークを持つ、米国発祥のグローバルブランドです。日本では伊藤忠商事が資本参加し、全国に約1,000店舗を展開しています。その国際的なブランド力を背景にした売買仲介に強みを持ち、加盟店の地域密着性と専門性を高める研修制度を重視しています。
参考:センチュリー21
ハウスドゥ
不動産売買仲介、リフォーム等を全国で700店舗以上展開するブランドです。特に、住みながら家を売却できる「ハウス・リースバック」や積極的な不動産買取といった、独自のサービスに特徴があり、他社との差別化を図っています。
参考:ハウスドゥ
ピタットハウス
賃貸仲介と売買仲介の両方にバランス良く強みを持つブランドで、全国に640店舗以上を展開しています。スターツコーポレーション株式会社の子会社であるピタットハウスネットワーク株式会社が運営しています。「貸したい」「借りたい」「売りたい」「買いたい」という多様なニーズに応える地域密着型の店舗づくりを重視しています。
参考:ピタットハウス
イエステーション
売買仲介に特化した専門家集団としてのブランド戦略を採っており、全国で200店舗以上が加盟しています。特に「売却」に強みを持ち、売主への手厚いサービスや、地域専門家としてのデータに基づいた売却提案を重視している点が特徴です。
参考:イエステーション
アパマンショップ
全国に1,000店舗以上を展開する、賃貸仲介・斡旋の分野で高い知名度を誇るブランドです。ウェブサイトや公式アプリを通じた高い集客力に定評があり、賃貸事業を主軸に独立を考え、安定した集客、仲介件数を確保したい場合に有力な選択肢となります。
参考:アパマンショップ
LIXIL不動産ショップ
住宅設備・建材メーカーであるLIXILグループが運営する不動産ショップです。世界30以上の国と地域に広がる国際的なネットワークを持ち、国内では約450店舗が加盟しています。LIXILの総合力を活かした、リフォームやリノベーションの提案力に特徴があります。
参考:LIXIL不動産ショップ
RE/MAX(リマックス)
エージェント(営業担当者)一人ひとりの独立性を最大限に尊重する、世界100以上の国と地域に展開するネットワークです。各エージェントが個人事業主として活動し、オフィスオーナーが提供する事務所やサポートを共有する独自のビジネスモデルを採用しており、高い成果報酬を目指せます。
参考:RE/MAX JAPAN
エイブル
直営店とフランチャイズ店を合わせて全国に800店舗以上を展開する、賃貸仲介の老舗ブランドです。長年の歴史で培われた高いブランド力と、テレビCMなどによる大規模なプロモーションが強みです。
参考:エイブル
ホームメイト
建設・不動産賃貸大手の東建コーポレーションが運営するフランチャイズです。賃貸仲介に強みを持ち、全国に約1,000店舗を展開しています。親会社の安定した基盤と、長年培われた賃貸経営のノウハウを共有できる点が特徴です。
参考:ホームメイト
ミニミニ
賃貸仲介の分野で高い知名度を誇るブランドです。「敷金・礼金0」の物件を積極的に扱うなど、独自の戦略で集客力に定評があります。入居者向けに家具・家電付きプランを提供するなど、顧客ニーズに応えるサービスが充実しています。
参考:ミニミニ
フランチャイズは不動産業で独立する際の手段の一つ
不動産フランチャイズは、本部が提供するブランド力や経営ノウハウと、加盟店が支払うロイヤリティや経営上のルールが対になった仕組みです。どちらの要素を重視するかは、独立する方の価値観や事業計画によって異なります。この記事で解説した両側面を深く理解し、自身の目指す姿と照らし合わせることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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